女性活躍にうんざりするのはなぜ?職場の本音と対策
2025年 7月 15日

女性活躍の制度や数値目標は整ってきた一方で、「うんざり」と感じている社員がいるのも事実です。
女性活躍推進が前向きに受け取られない背景には、現場の温度差や、形だけの取り組みへの懐疑心があります。
この記事では、職場の本音を紐解きながら、「うんざりしない女性活躍」ための具体的な対策を健康などの面から考えていきます。
女性活躍推進に課題感のある企業様は、ぜひ参考にしてみてください。
「女性活躍」にうんざり?その理由は

「女性活躍」が社会に広がる中、うんざりだと感じる理由には女性・女性以外からの不満が存在します。まずは「女性活躍」にうんざりする背景を5つの観点で解説していきます。
プレッシャーに感じる女性もいるから
女性の中には、活躍を期待されることにプレッシャーを感じる人もいます。
また、「女性の代表として」とあたかも本人一人で全ての女性を背負うかのような言葉を投げかけられる場合もあるでしょう。
女性自身が優遇されているように感じ、男性への「逆差別」だと悩むこともあります。
負担がかかると、女性活躍どころか働きにくさを覚えることにつながります。女性活躍に力を入れる企業は、社員「本人がどうありたいか」に寄り添う姿勢が求められます。
女性が優遇されすぎていると感じるから
女性自身が優遇されすぎていると感じることがあると前述しましたが、もちろん女性以外も同じです。
女性が過剰に優遇されていると女性以外が感じることにより、女性活躍にうんざりしていることもあります。このうんざり感は、今まで比較的優遇されていた男性が感じやすいです。
しかし、女性活躍は女性を優遇するものではなく、これまで男性優位になりがちだった社会を見直して平等な社会を作ろうという考えです。性別に関係なく、一人ひとりが活躍できる会社にできることを最終ゴールとしましょう。
形式的な施策への「懐疑心」があるから
企業が女性活躍を推進する際「うんざり」と感じさせてしまう一因は、形式的な施策への懐疑心です。企業のなかには、法律やコンプライアンスへの対応として、いわば「渋々」女性活躍施策を導入するケースもあります。またトップダウンで経営者や上司に言われたから、とりあえず施策を実施している企業もあるかもしれません。
女性活躍推進に関する定量調査によると、自社の女性活躍施策が「法改正に合わせて行っているだけ」「世間体を整えているだけ」など、従業員の懐疑心が広く見られるという結果が出ました。この懐疑心があるままではどれだけ施策を講じても女性の意欲は上がりません。
▼参考:パーソル総合研究所 女性活躍推進に関する定量調査
女性枠で評価されるのがイヤだから
活躍を見込まれ抜擢された女性にはしばしば「女性初の」という枕詞がつきがちです。
この言葉が、逆に特別扱いをされている感覚を覚えさせることがあります。
また、女性枠として「女性だから登用された」と見られていると不公平感が生じ、社内の雰囲気・人間関係の悪化につながります。「数合わせ」や「性別」によって活躍する人材に選ばれたと感じると、女性は自信を失ってしまうでしょう。
「男性はどうでもいいの?」という声もある
女性以外から「自分たちは置き去りにされている気がする」という声が上がることもあります。女性活躍は文字通り「女性」のみにフォーカスされ、男性社員の「働き方改革」が見逃されます。
例えば、健康問題への対応、育休取得や家事・育児・介護への参画などです。長時間労働を強いられることが多い男性を含めた全ての人が活躍することが最終的なゴールでしょう。
なぜ女性活躍が必要なのか

女性活躍は企業に必要不可欠な要素です。ただ、その理由が組織全体で納得できていない場合、「うんざり」の意識は変わりません。ここからは必要な理由を5つのポイントで解説します。
組織の生産性と創造性を高めるため
女性活躍を進めることは、組織の生産性と創造性を高めるうえで不可欠です。
現在、多くの組織では人員配置において男性にはリーダー職、女性にはサポート業務が割り当てられる傾向が依然として見られます。こうした固定的な配置は、多様な視点を活かすチャンスを狭め、組織の潜在力を十分に引き出せない原因にもなっています。
性別役割意識にとらわれない人材配置で、より多角的なアイデアや判断が生まれやすくなり、チーム全体の生産性と創造性の向上につながります。女性活躍は、個人のためだけでなく、組織全体の競争力を高める戦略的な取り組みでもあるのです。
賃金格差の是正が必要だから
男女で賃金格差に差があるという問題があります。令和6年賃金構造基本統計調査によると、男性を100とした場合、女性は75.8という結果が出ました。つまり、女性は男性より4分の1ほど少ない賃金しか受け取っていません。その背景には3つの問題があるでしょう。
- 女性が結婚や育児で退職し主婦、あるいは非正規雇用として働くこと
- 退職せずとも育児などで時短勤務になり給与が減ること
- 管理職など給与が多い仕事をしている女性が少ないこと
これらの要因を社内で取り除く必要があります。賃金の差異を公表し施策を行った企業の中には改革をして売り上げが5倍以上になった事例もあります。
▼参考:厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査
▼参考:厚生労働省 男女の賃金の差異の情報公表に関する企業の事例紹介
意思決定層に多様な視点を取り入れるため
経営や組織の意思決定において、多様な視点が変化の激しい時代における大きな強みとなります。
特に、性別や世代、ライフスタイルが異なる人材が意思決定に関与することで、リスクを多角的に捉えたり新しい市場ニーズを発見したりする力が高まります。
一方で、日本では依然として意思決定層の多くが男性に偏っており、特定の価値観や経験だけで議論が進んでしまうことも少なくありません。この構造は、イノベーションの阻害や多様な顧客層への対応力の欠如につながるおそれがあります。
人的資本経営を進める必要があるから
多くの企業で「人的資本経営」が重要視されています。
これは単なるトレンドではなく、2023年3月31日以降に終了する事業年度に係る有価証券報告書より、人的資本の開示項目が義務化されました。上場企業4,000社を対象として、有価証券報告書に人材育成方針や女性管理職比率などの情報を記載することが義務付けられています。
女性が能力を発揮し、管理職としても活躍できる環境を整えることは、企業の持続的成長や投資家からの評価にも直結します。人的資本経営を本気で進めるのであれば、女性活躍の推進は欠かせない要素なのです。
▼参考:金融庁 サステナビリティ情報の開示に関する情報
採用力を高め、優秀な人材が集まる職場をつくるため
少子高齢化が進む中で、企業にとって「優秀な人材を確保すること」は年々難しくなっています。
求職者が企業を選ぶ時代だからこそ、どれだけ安心して働ける環境を整えているかが重要です。
女性が転職先として「男女別の平均賃金」「女性管理職・役員比率」の項目を知りたい人が多い結果もあります。実績や環境整備の有無は、志望度に大きく影響します。
▼参考:パーソル総合研究所 女性活躍推進に関する定量調査
うんざりしない女性活躍を推進する策
女性が活躍できる社内環境を作るには、「またか」「やらされているだけ」といった「うんざり感」を生まないことが重要です。実効性があり、従業員の共感を得られる取り組みこそが、女性活躍を前向きに進めるカギとなります。
ここでは、うんざりさせないための視点と、効果につながる施策の進め方を紹介します。
具体的な健康問題に考慮する
女性活躍の前に女性が健康に働ける環境が必要不可欠です。そのためには、女性特有の健康課題を考慮した職場環境の整備が欠かせません。
なぜなら、PMS(月経前症候群)や更年期障害、妊活や不妊治療など、女性はライフステージごとに身体的・精神的な変化を経験し、それがキャリアに大きく影響する可能性があるからです。女性特有の健康課題や体の変化がキャリアに与える影響が大きいことを認識する必要があります。
健康に自信がある女性ほど、長く働き続ける自信があるという調査結果もあります。

▼出典:日経BP総研メディカル・ヘルスラボ・一般社団法人ラブテリ 働く女性の仕事と健康に関する調査
つまり、健康への不安を減らして安心して働ける環境を整えることは、実効性のある女性活躍推進策の一つといえるでしょう。
「女性だから」ではなく「その人だから」で仕事を任せる
評価の本来の目的は「性別に関係なく、その人の力を正しく評価すること」のはずが、いつの間にか「女性であること」が前面に出てしまうと不信感や疲労感につながります。
うんざり感を防ぐために大切なのは、「女性だから」ではなく「その人だから」仕事を任せることです。
本人の能力・適性・希望に基づいてチャレンジの機会をつくることが、納得感と信頼につながります。
具体的な数値を伴った目標・施策を作る
女性活躍を「実現可能なもの」にするためには、具体的な数値目標とそれを達成するための実行計画が欠かせません。数値を明示することで進捗が可視化され、組織全体で共有・理解しやすくなります。
一方で、「女性管理職30%を目指す」といった目標だけが独り歩きし、「数合わせ」や「形式的な登用」につながってしまうケースも見受けられます。これが女性社員にとってプレッシャーや不信感を生む要因になっています。
そのため、たとえば次のような具体的な施策とセットで設計することが重要です。
- 管理職候補となる女性社員の母集団を拡大する(例:30代女性社員の育成プログラム参加率を70%に)
- 育児中の社員の昇進意欲と評価のギャップを調査し、制度改善につなげる
- 昇進前後の1on1面談・メンター制度の導入率を100%にする
- 部署ごとに女性比率や登用状況を見える化し、上司の評価指標に組み込む
こうした施策が具体化されていれば、目標達成は単なる“見せかけの数字”ではなく、一人ひとりのキャリアと向き合うプロセスになります。
推進担当者・管理職の温度差をなくすコミュニケーション設計をする
女性活躍推進が「形だけの取り組み」と受け取られてしまう背景には、推進担当者と現場の管理職との「温度差」が大きな要因としてあります。いくら制度を整えても現場の理解や納得が得られなければ、かえって「うんざり感」を生むことになりかねません。
特に、女性管理職の登用にあたっては、本人への丁寧な説明や支援の申し出、配置の意図を明確に伝えるといったフォローが欠かせません。そうした働きかけが不足していると、本人が孤立感を抱いたり、周囲に誤解を与えることにもつながります。
押しつけ感のない理解促進には人事改革が鍵
「女性活躍=ノルマや押しつけ」と受け取られてしまう背景には、現場と経営層の間にある温度差が関係しています。パーソル総合研究所の調査によると、経営・人事層からは「登用や育成は実力によって行うべき」「女性自身が望んでいない」という声が根強くあります。

▼出典:パーソル総合研究所 女性活躍推進に関する定量調査
こうした考えがある中で、推進を一方的に進めると「空回り」や「やらされ感」に繋がりかねません。だからこそ、人事部門自体が変わることが重要です。人事に以下のような要素を備えることで、経営層や現場からの共感と理解を得やすくなります。
- 多様な価値観を持つメンバー構成
- ダイバーシティ推進に関する専門知識や経験
- 形式ではなく“意味ある提案”を行う企画力
女性活躍は、単なる人員登用ではなく、組織づくりの視点から丁寧に設計するべきものです。人事が先陣を切って柔軟な視点を提示できれば、社内の風向きも変わっていきます。
まとめ:環境を整えて、うんざりと思わない「女性活躍」を

女性活躍は、女性の活躍を推進することで全ての人が平等になるように変えていくために存在します。
形式的な施策や間違った理解によって「うんざり」だと思われることも少なくありません。女性活躍推進を本質的なものにするためには、制度を整えるだけでなく、現場の納得感や実効性をともなった環境づくりが不可欠です。
人事や女性活躍推進担当者と管理職の温度差をなくし、現場の声に耳を傾けながら、誰もが納得できる形で施策を実装していくことが、真の意味での「女性活躍」につながります。
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