男性の産休とは|産後パパ育休の期間・給付金・2025年改正を徹底解説

2025年 10月 31日

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「男性も産休を取れるって聞いたけど、具体的にどんな制度なの?」「育休とは違うの?」―このような疑問を抱く方は少なくないでしょう。

2022年10月から始まった「産後パパ育休」は、男性が出産直後に柔軟に休業を取得できる新しい制度です。さらに2025年4月からは給付金が手取り約10割相当に引き上げられ、経済的な不安なく育児に専念できる環境が整いつつあります。

本記事では、男性の産休について、制度の基本から具体的な取得方法、給付金の内容、2025年の法改正まで詳しく解説します。これから父親になる方や、男性の育児休業取得を支援したい企業担当者の方に、実践的な情報を提供いたします。

男性の産休とは

男性の産休、正式には「産後パパ育休(出生時育児休業)」と呼ばれる制度について、基本的な内容を確認しておきましょう。

産後パパ育休は、2022年10月に創設された男性の育児参加を促進するための休業制度です。子どもの出生後8週間以内に、最大4週間(28日間)の休業を取得できます。

この制度が「男性版産休」と呼ばれる理由は、出生後8週間という期間が女性の産後休業と重なるためです。女性が産後の回復に専念する時期に、男性も育児や家事をサポートできるよう設計されています。

従来の育児休業との大きな違いは、取得時期の柔軟性です。産後パパ育休は2回まで分割して取得できるため、「退院時と里帰りから戻るとき」といった家庭の事情に合わせた活用が可能になりました。また、労使協定を締結すれば休業中に一部就業することもでき、仕事の状況に応じた調整ができます。

厚生労働省の調査によると、男性の育児休業取得率は2023年度に30.1%に達しました。前年度の17.13%から大幅に上昇しており、政府目標の「2025年までに30%」を前倒しで達成しています。産後パパ育休の創設が、男性の育児参加を後押しする大きな要因となっているのです。

男性の産休の期間と対象

産後パパ育休を取得できる期間と対象者について詳しく見ていきましょう。

取得期間

産後パパ育休は、子どもの出生後8週間以内に最大4週間(28日間)取得できます。この4週間を2回に分割して取得することも可能で、柔軟な働き方を実現できるのが特徴です。

分割取得する場合は、初回の申出時に2回分をまとめて申請する必要があります。たとえば「出産直後に2週間、その後1ヶ月経ってからさらに2週間」といった取得パターンが考えられるでしょう。

出産日が予定日よりも早くなった場合は実際の出産日から取得でき、逆に予定日よりも遅れた場合は当初の出産予定日から取得可能です。状況に応じて柔軟に対応できる仕組みになっています。

対象者

産後パパ育休の対象となるのは、原則として出生後8週間以内の子どもを養育する労働者です。「産後パパ育休」という名称ではありますが、法律上の親子関係があれば実子だけでなく養子も含まれます。

雇用形態による違いもあります。正社員は原則として全員が対象となり、入社後の勤続期間による制限もありません。有期雇用労働者の場合は、子どもが生まれてから8週間を経過する日の翌日から起算して6ヶ月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかな場合は対象外となります。

また、労使協定により一定の労働者を対象外とすることも可能です。具体的には、入社1年未満の労働者、申出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者などが該当します。

通常の育休との併用

産後パパ育休は、通常の育児休業とは別の制度として設けられています。そのため、産後パパ育休を取得した後に、さらに通常の育児休業を取得することも可能です。

通常の育児休業は、子どもが原則1歳になるまで取得でき、2022年10月の改正により2回まで分割取得できるようになりました。産後パパ育休と組み合わせることで、男性は子どもが1歳になるまでに最大4回まで育児休業を分割して取得できるのです。

この柔軟な制度設計により、夫婦で育児の時間を分担しやすくなり、女性のキャリア形成にもプラスに働くでしょう。

男性の産休の給付金

産後パパ育休を取得した際に受け取れる給付金について解説します。

出生時育児休業給付金

産後パパ育休を取得した場合、一定の条件を満たすと「出生時育児休業給付金」が雇用保険から支給されます。給付額は、休業開始時賃金日額×休業日数×67%です。

賃金日額とは、休業開始前の6ヶ月間の総収入を180日で割って計算した1日あたりの平均収入額を指します。たとえば月給30万円の場合、賃金日額は約1万円となり、4週間(28日)の産後パパ育休を取得すると約18万7,600円が支給される計算です。

ただし、休業中に就業した日がある場合、その日は休業日数に数えられません。また、休業期間中の就業日数が最大10日、または就業時間が80時間を超えると、給付金が不支給となる可能性があるため注意が必要です。

2025年4月からの新制度

2025年4月1日からは、「出生後休業支援給付金」という新しい給付金制度がスタートしました。この制度により、一定の条件を満たすと、休業開始時賃金日額の13%相当額が追加で受給できます。

既存の出生時育児休業給付金(67%)と合わせると、最大28日間は賃金額面の80%が受給できるのです。さらに育児休業期間中は社会保険料が免除となり、給付金は非課税であることを踏まえると、手取りにして約10割相当の収入が確保できます。

出生後休業支援給付金の支給要件は以下のとおりです。雇用保険の被保険者が対象期間中に出生時育児休業を通算して14日以上取得したこと、配偶者についても対象期間中に同一の子について出生時育児休業を通算して14日以上取得したことが条件となります。

配偶者が専業主婦(主夫)の場合や、ひとり親家庭の場合は、配偶者の育児休業取得がなくても給付率は引き上げられます。

社会保険料の免除

産後パパ育休期間中は、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が被保険者本人、事業主負担分ともに免除されます。毎月の給与から通常15%前後が天引きされている社会保険料が免除されることで、実質的な手取り収入はさらに増えるのです。

従来、社会保険料免除の対象は「育休開始日が属する月から、育休終了日の翌日が属する月の前月まで」でした。2022年10月以降は、同一月内で育休を開始し終了した場合でも、その日数が14日以上であれば保険料の免除対象になります。

ただし、賞与に係る保険料は、賞与支払月の月末を含み連続1ヶ月を超える育休を取得した場合に限り免除されます。産後パパ育休の場合、休業期間が最大4週間なので原則として賞与保険料は免除されません。

男性の産休の申請方法

産後パパ育休を取得するための手続きについて、具体的な流れを解説します。

申出期限

産後パパ育休を取得したい従業員は、原則として休業開始予定日の2週間前までに会社に申し出る必要があります。通常の育児休業が1ヶ月前までの申出であるのに対し、産後パパ育休は2週間前でよいため、より柔軟に対応できるのです。

出産予定日は前後することが多いため、2週間前という期限は実態に即した設計となっています。ただし、企業が一定の要件(産後パパ育休に関する研修の実施、相談窓口の設置など)を満たし、労使協定を締結している場合は、申出期限を2週間超1ヶ月以内に設定することも可能です。

申出に必要な書類

従業員は「出生時育児休業申出書」を会社に提出します。申出書には、休業の期間や職場復帰予定日などを記載する必要があります。

産後パパ育休を2回に分割して取得する場合は、初回申出時に1回目と2回目の休業期間について記載しなければなりません。後から追加で申し出ることはできないため、計画的に申請することが重要です。

また、産後パパ育休期間中に就業を希望する場合は、従業員がその条件を事業主に申し出る必要があります。事業主は従業員が申し出た条件の範囲内で候補日や時間を提示し、双方が合意した範囲で就業が可能になるのです。

企業側の対応

2022年の育児・介護休業法改正により、企業には「配偶者が妊娠・出産した旨を申し出た従業員に対して、育休制度の周知と取得意向の確認を個別に行うこと」が義務付けられました。

具体的には、産後パパ育休制度の内容、出生時育児休業給付金について、社会保険料の取り扱いについて、産後パパ育休取得中の従業員の労働条件や待遇についてなどを周知する必要があります。

周知方法としては、面談での説明、書面の交付、FAXの送付、電子メールの送信などが認められています。単に制度を伝えるだけでなく、取得を希望するかどうかの意向確認まで行うことが求められているのです。

企業は、正当な申出があった場合、それを拒否することはできません。取得を拒んだり、取り下げを迫ったり、取得を理由に不利益な取扱い(解雇や賃金の引き下げなど)をしたりすると、育児・介護休業法違反となります。

男性の産休取得のメリット

産後パパ育休を取得することには、従業員本人と企業の両方にメリットがあります。

従業員側のメリット

男性が産後パパ育休を取得すると、妻が産後うつになる可能性を軽減できます。出産直後は母親の身体的・精神的負担が非常に大きい時期です。夫と妻が互いに育児へ参加することで、妻へかかる負担を減らし、良好な関係を保てるのです。

出産後の体が元の状態に戻るまでのおよそ6〜8週間の期間を「産褥期(さんじょくき)」と呼び、女性はたっぷりの睡眠と安静が必要とされています。この時期に男性が育児や家事をサポートすることで、妻の回復を助けられるでしょう。

また、父親が早い段階から育児に関わることで、子どもとの絆が深まります。授乳以外の育児スキルを習得し、夫婦で協力して子育てをスタートできることは、長期的な家族関係にもプラスに働くのです。

経済面でも、2025年4月からの給付金引き上げにより、手取り約10割相当の収入が確保できるため、金銭的な不安を軽減しながら育児に専念できます。

企業側のメリット

企業にとっても、男性の産後パパ育休取得促進には大きなメリットがあります。従業員が働きやすい環境を整えることで、優秀な人材の確保と定着につながるのです。

2025年4月からは、従業員数300人超の企業に対して男性の育児休業取得率などの公表が義務付けられています。取得率が高い企業は社会的な評価が向上し、採用活動でも有利に働くでしょう。

また、男性の育児参加が進むことで、女性が安心してキャリアを継続できる環境が整います。女性の離職を防ぎ、多様な人材が活躍できる組織づくりにつながるのです。

男性の育児休業取得を支援する企業には、厚生労働省の「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」などの助成金制度も用意されています。適切に活用することで、企業の経済的負担も軽減できるでしょう。

男性の産休取得時の注意点

産後パパ育休を取得する際に、押さえておくべき注意点があります。

通常の育休との違いを理解する

産後パパ育休と通常の育児休業は別の制度です。混同しないよう、それぞれの特徴を正しく理解しておきましょう。

産後パパ育休が子の出生後8週間以内の取得であるのに対し、育児休業は原則として子が1歳(最長2歳)になるまで取得できます。申出期限も、産後パパ育休は原則2週間前、育児休業は原則1ヶ月前と異なります。

出生後8週間以内の育休の申出を一律「出生時育児休業」の申出として扱うことは認められません。どちらの申し出なのか不明な場合は、従業員本人にどの制度を利用するのか確認が必要です。

休業中の就業について

産後パパ育休の特徴の一つが、休業中に一部就業できることです。ただし、これは労使協定の締結と個別の合意が必要であり、無制限に働けるわけではありません。

休業期間中の就業には制限があります。休業期間中の所定労働日と所定労働時間の半分が上限となり、休業開始日と終了予定日に就業する場合は当該日の所定労働時間数未満でなければなりません。

また、就業日数が多くなると出生時育児休業給付金が不支給となる可能性があるため、給付金を受け取りたい場合は就業日数に注意が必要です。

取得しやすい環境づくり

制度があっても、職場の雰囲気が取得を阻害していては意味がありません。企業は育休を取得しやすい雇用環境を整えることが義務付けられています。

具体的には、研修の実施、相談体制の整備、制度や事例の情報提供、方針の周知などが求められます。また、育休取得者に対して不利益な取り扱い(昇進の停止や賃金の減額など)は法律で禁止されており、ハラスメント(パタニティハラスメント、パタハラ)とみなされる可能性があります。

従業員自身も、早めに会社に相談し、計画的に申請することが大切です。業務の引き継ぎや復帰後のフォロー体制について、上司や同僚と事前に話し合っておくことで、スムーズな取得と復帰が実現できるでしょう。

まとめ

男性の産休、正式には産後パパ育休について、制度の概要から具体的な取得方法まで解説しました。

産後パパ育休は、子どもの出生後8週間以内に最大4週間取得できる制度で、2回まで分割取得が可能です。通常の育児休業とは別の制度であり、両方を組み合わせることで男性も柔軟に育児参加できるようになりました。

給付金については、出生時育児休業給付金として休業開始時賃金の67%が支給されます。2025年4月からは出生後休業支援給付金が新設され、条件を満たすと手取り約10割相当の収入が確保できるのです。社会保険料の免除も合わせて、経済的な不安を軽減しながら育児に専念できる環境が整っています。

申請は原則として休業開始予定日の2週間前までに行い、出生時育児休業申出書を会社に提出します。企業には制度の周知と取得意向の確認が義務付けられており、正当な申出を拒否することはできません。

男性の産後パパ育休取得は、妻の産後うつ予防、子どもとの絆の深まり、経済的な支援といった従業員側のメリットだけでなく、企業にとっても人材確保や社会的評価の向上につながります。

出産は家族にとって大きなライフイベントです。産後パパ育休制度を積極的に活用し、夫婦で協力して子育てをスタートすることで、あなたと家族の人生がより豊かになるでしょう。