健康経営優良法人とは?2025年の最新動向や取得方法をわかりやすく解説

2025年 10月 15日

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近年、働き方改革や人材確保の重要性が高まる中で、企業が従業員の健康を経営課題として捉え、積極的に関与する「健康経営」の取り組みが注目を集めています。

その中でも、経済産業省と日本健康会議が連携して実施している「健康経営優良法人認定制度」は、健康経営を実践する企業にとって非常に重要な制度です。

本記事では、2025年版の最新情報をもとに、健康経営優良法人についてわかりやすく徹底的に解説します!

これから健康経営優良法人を取得しようと考えている方は、ぜひご参考ください。

健康経営優良法人とは?制度の概要と目的

まずは、健康経営優良法人の制度について、その成り立ちや目的を詳しく解説します。

健康経営優良法人認定制度とは

「健康経営優良法人認定制度」は、従業員の健康増進や職場環境の改善に積極的に取り組む企業を評価・認定する制度です。

経済産業省の支援のもと、日本健康会議が主体となって運営しています。認定された法人は「健康経営優良法人」としてロゴマークの使用や各種支援制度の対象となるなど、社会的信頼の向上が見込めます。

この制度の大きな特徴は、企業の取り組みを「見える化」することで、従業員や求職者、投資家、取引先などの関係者に対して、信頼性のあるポジティブな情報発信ができる点です。単なるイメージ戦略ではなく、科学的根拠やデータに基づく実践的な取り組みが求められます。

なお、認定を受けるには、企業は毎年の申請が必要です。事業年度ごとに定められた評価指標(例:健康診断の受診率、メンタルヘルス対策の実施状況など)に基づいて自己評価を行い、申請書類を提出する必要があります。

経済産業省が推進する背景と目的

経済産業省が「健康経営優良法人認定制度」を推進する背景には、少子高齢化に伴う労働人口の減少や、増加し続ける医療費の抑制といった日本社会が抱える深刻な課題があります。

これらの課題に対応するためには、企業が健康で生産性の高い人材を維持・育成することが不可欠です。これは、日本全体の経済基盤の維持にも直結するでしょう。

同省は、働く世代の「健康寿命の延伸」を重要な政策課題として位置づけており、企業活動の場における健康づくりを通じて医療費を抑制、生産性の向上、さらには企業の競争力強化につなげることを目指しています。

▼参考:経済産業省 健康経営の推進について

健康経営優良法人の認定区分と認定要件

健康経営優良法人制度では、企業規模に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つの認定区分が設けられています。それぞれの部門では、評価指標に基づいて一定以上の健康経営の取り組みが確認された法人に対して認定が行われます。

大規模法人部門

「大規模法人部門」は、従業員数が301人以上(医療法人は101人以上)の企業や医療機関等が対象です。この部門では、経済産業省が実施する「健康経営度調査」への回答が必須で、調査結果に基づいて評価・認定が行われます。

さらに、調査結果上位500社には「ホワイト500」という称号が与えられ、企業ブランドや社会的評価の向上につながります。

認定を受けるためには、以下のような項目が特に重視されます。

  • 健康経営を経営戦略に位置づけているか
  • 経営層が関与する組織的な健康管理体制の有無
  • 生活習慣病予防、メンタルヘルス対策の取り組み
  • 長時間労働の是正、職場環境改善の実績
  • 健康投資に対するKPI設定と成果測定

中小規模法人部門

一方で「中小規模法人部門」は、従業員300人以下(医療法人は100人以下)の企業や医療機関が対象です。申請には、「健康宣言」の実施が前提となり、専用のチェックシートに基づいた自己評価と申請書類の提出が求められます。

評価の指標は大規模法人と共通する部分もありますが、より実務的かつ導入しやすい内容となっており、以下のような点が重視されます。

  • 健康診断の受診率(100%が推奨)
  • 再検査・精密検査を促す体制の整備
  • ストレスチェックの実施とその後のフォロー体制
  • 社員の運動促進・禁煙・食習慣改善の支援
  • 産業医、EAP(従業員支援プログラム)など外部専門機関との連携

さらに、特に優れた健康経営の実践を行う中小企業500社には「ブライト500」の称号が与えられます。近年では、上位501位〜1500位の企業に対して「ネクストブライト1000」という称号も新設され、年々注目度が増しています。

2025年版|健康経営優良法人の最新動向

「健康経営優良法人2025」では、過去最多となる法人が認定を受け、制度の拡大と深化が注目されています。

ここでは、認定数の推移や新たに導入された評価基準、最新の注目トピックについて整理します。

2025年の認定企業数と傾向(前年比との比較)

2025年3月に発表された「健康経営優良法人2025」の認定結果によると、全国で以下のような認定数となりました。

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▼参考:経済産業省 「健康経営優良法人2025」認定法人が決定しました

注目すべきは、中小規模法人の伸びです。2021年度の約7,600社から5年で2.6倍以上と、右肩上がりの増加が続いています。

都道府県別の認定数増加率では、青森県が最多となり、富山県や長崎県がそれに続きました。地域単位での支援や取り組みが、認定件数の増加に貢献していると見られます。

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2025年のトピック:新基準や評価ポイントの変化

2025度は、健康経営の多様化に伴い、評価基準にもいくつかの改定が加えられました。以下はその主な変更点です。

  1. メンタルヘルス対策の強化:ストレスチェックの活用に加え、産業医や外部カウンセラーの導入、心の健康に関する研修の実施など、実効性と継続性が重視されるようになりました。
  2. 「女性の健康課題」への配慮:フェムテック(女性特有の健康課題を解決するテクノロジー)導入の有無や、月経・更年期などに配慮した社内制度も評価対象に。企業のダイバーシティ経営との接続点としての評価が高まっています。
  3. 社員の健康行動の「見える化」推進:歩数アプリや食事記録アプリなどのデジタルツールを活用した社員の健康行動の可視化が評価対象になりました。これらは「エンゲージメント指標」の間接的評価にもつながっています。
  4. 自治体との地域連携:2025年から一部自治体では、健康経営に積極的に取り組む企業に対し、補助金や税制優遇を提供する動きが広がっており、その取り組み内容が評価基準に組み込まれるケースも出てきています。

▼参考:経済産業省 これからの健康経営について

2025年のホワイト500/ブライト500とは何か?

健康経営優良法人制度には、特に優れた取り組みを行っている企業に対する上位表彰制度が設けられています。

  • ホワイト500(大規模法人部門):大企業の中から健康経営の実践が特に顕著な500社を選出。審査基準は認定基準よりも厳格で、情報公開の透明性や、従業員参加型の施策、外部評価なども重視されます。
  • ブライト500(中小規模法人部門):中小企業版ホワイト500ともいえる制度で、地域や業種に関係なく、他の模範となる取り組みを行っている500社が対象です。2025年からは、「ネクストブライト1000」(上位501〜1500位の企業)も選出対象に追加され、ステップアップ制度として位置付けられました。

ホワイト/ブライト認定企業は、メディア掲載、行政連携事業への参加優遇、金融機関との優遇融資制度対象になることもあり、ブランディング価値の向上という観点から非常に注目が高まっています。

健康経営優良法人を取得する5つのメリット

健康経営優良法人の認定を受けることで、企業には多方面でのメリットがもたらされます。ここでは特に重要な5つのメリットをまとめました。

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採用力・企業ブランドの向上

健康経営優良法人の認定は「従業員を大切にしている会社」であることの公的な証明となります。これは、採用活動におけるブランディング要素として非常に有用です。

特に20〜30代の若年層は、給与や業務内容だけでなく「働きやすさ」「福利厚生」「職場の安心感」などを重視する傾向にあります。健康経営に積極的に取り組む姿勢は、こうした層に強く響くアピールポイントとなります。

加えて、認定ロゴは企業ホームページや採用パンフレットに掲載可能で、目に見える信頼の証として活用できるのは大きなメリットです。

社員の健康改善による生産性向上

健康施策を計画的に実施することで、社員の体調不良による欠勤(アブセンティーズム)や、出勤していても体調がすぐれずに生産性が落ちる状態(プレゼンティーズム)を防ぐ効果が期待できます。

例として

  • 健康診断および二次検診の受診フォローによる早期発見・治療
  • 職場でのウォーキングキャンペーンや食生活改善セミナーの実施
  • 睡眠や運動に関する研修や啓発活動

こうした施策は、社員のモチベーションや集中力の維持にも直結し、結果として企業全体の業務効率や業績向上にもつながります。

離職率の低下・従業員満足度の向上

社員の健康と心理的安全性に配慮した企業文化は、離職の抑制に大きく寄与します。

例として

  • メンタルヘルス支援制度の整備
  • キャリア面談やライフステージに応じた相談制度
  • 女性特有の健康課題(月経・更年期等)への理解と支援

従業員が「この会社は私の健康に本気で向き合ってくれている」と感じることができれば、エンゲージメントや貢献意識の向上につながり、職場全体の一体感や働きがいも高まります。

補助金・助成金などの制度的支援

健康経営優良法人に認定されることで、自治体・商工会議所・金融機関などからの各種支援を受けやすくなります。

例として

  • 東京都:認定企業に対して最大50万円の「職場環境改善助成金」を支給
  • 静岡県:健康経営に取り組む中小企業への融資利率優遇
  • 商工会議所:健康経営実践に関する無料のコンサルティング支援やセミナーの提供

また、日本政策金融公庫などの政府系金融機関でも、健康経営推進企業向けに事業融資の利率優遇を提供しており、資金面でもメリットが見込めます。

これらの支援は地域や年によって変動がありますが、自治体側でも「健康経営=地域経済の持続性」に寄与するという観点から、積極的な支援体制が整いつつあります。

取引先や地域社会からの信頼取得

認定を受けた企業は、取引先・地域社会・行政機関などのステークホルダーに対して「コンプライアンス意識が高く、従業員を大切にする企業」というイメージを築くことができます。

例として

  • 大手企業や自治体の入札案件で、認定の有無が選定基準になるケースあり
  • 健康イベントを通じた地域医療機関やNPOとの連携
  • 地域密着型のブランディング活動への波及効果

このように、健康経営の取り組みはCSR(企業の社会的責任)活動の一環としても高く評価され、企業の社会的信用を高める強力な後押しとなります。

中小企業でも取得できる?健康経営の導入ハードルを下げるポイント

「健康経営は大企業だけのもの」と思われがちですが、中小企業こそ取り組む価値がある「健康経営」。

ここでは、導入しやすい制度設計や、低コストでも始められる施策例、導入時の注意点について解説します。

健康経営=大企業向けという誤解

「健康経営」と聞くと、「人手も予算も潤沢な大企業だけの話では?」という印象を持たれる方も少なくありません。しかし、実際には中小企業の取り組みこそが、制度全体を牽引する存在となっています。

2025年の健康経営優良法人の認定結果によると、中小規模法人部門で認定を受けた企業は19,796法人に達し、前年から大きく増加しました。

この背景には、制度設計そのものが中小企業にも配慮されていることが挙げられます。評価項目は業種・規模・地域性に応じて柔軟に設定されており、無理なく自社に合った形で始めることができるよう工夫されています。

中小企業こそ取り組む意義がある理由

中小企業にとっての健康経営は、生産性の安定や人材定着に直結する重要な施策です。少人数体制での業務が中心となる中小企業では、一人ひとりの従業員の健康状態が企業全体のパフォーマンスに直結するからです。

例えば、数名のスタッフで回している部署に欠勤が出ると、それだけで業務が滞り、生産性や売上に影響が及びかねません。そのため、病気の予防や早期発見、職場環境の改善に積極的に取り組むことが、事業の持続性を高めることに直結します。

さらに、人材の確保や定着が課題となる中小企業において、「健康に配慮した企業であること」は、採用において他社との差別化にもなり得ます。

健康経営優良法人の認定を通じて、求職者や取引先に対して、「社員を大切にしている会社」というブランドイメージを確立できるのです。

まずは「見える化」からスタート

健康経営の導入にあたり、最初に重要なのは自社の現状を「見える化」することです。具体的には、以下のような初歩的な診断やチェックリストを活用すると良いでしょう。

  • 健康診断受診率を把握しているか?
  • ストレスチェックを実施しているか?
  • 労働時間の把握・管理はできているか?
  • 福利厚生制度の内容を整理しているか?

こうした項目をチェックすることで、「何ができていて、何が不足しているのか」を明確にすることが、取り組みの第一歩です。

認定取得のステップとスケジュール

健康経営優良法人に認定されるまでには、いくつかの手順と準備が必要です。

ここでは、2025年の申請スケジュールをもとに、スムーズな取得のためのポイントを整理します。

「健康経営優良法人2026」の申請スケジュールと変更点

毎年秋頃にIDの交付申請受付が始まり、その後本申請・審査を経て翌年3月頃に認定法人が発表されます。最新情報は「ACTION!健康経営」ポータルで公開されているのでチェックしましょう。

以下、申請ステップとスケジュールです。

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▼参考:健康経営優良法人認定事務局 申請について

必要な提出書類と準備物

健康経営優良法人の申請には、企業が実施している健康施策や、従業員の健康管理体制に関する情報を、専用フォーマットにまとめて提出する必要があります。

主な準備物は以下の通りです(中小規模法人部門の場合)

  • 健康経営度調査票(エクセル形式)
  • 健康診断受診率に関するデータ
  • ストレスチェックの実施状況
  • 組織体制・健康管理方針の記述
  • 具体的な取り組み(例:食生活改善、運動促進)の事例
  • 評価項目一覧に基づいたチェックシート
  • 任意提出資料(例:産業医やEAPとの契約書など)

評価基準の概要

評価項目は、健康経営の実践度を多面的に測定できるよう、以下の5つの領域に分類されています。

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▼参考:健康経営優良法人認定事務局 健康経営とは

これらの項目に対し、加点方式で得点化され、一定点数を超えた企業が認定されます。

よくある失敗と成功のコツ

申請時に注意すべき「失敗例」と、それを回避する「成功のコツ」を以下にまとめます。

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ありがちな失敗

  • 健康診断やストレスチェックの受診率が基準に届いていない
  • 実施している施策が評価項目と一致していない
  • 継続性や効果測定が書類で示されていない
  • 取り組みがトップダウンのみで従業員の参加が乏しい
  • 外部専門機関(EAP、産業医など)を活用していない

成功のコツ

  • 小さな施策でも「目的・対象・効果」まで丁寧に記載する
  • KPIやPDCAの記録を残し、改善プロセスを明示する
  • 社内報・掲示板などで社内の取り組みを定期的に周知・可視化する
  • 地元の商工会議所や社会保険労務士などに早期相談する
  • Action!健康経営」の資源を活用する

まとめ

健康経営優良法人認定は、企業が従業員の健康を経営課題として捉え、持続可能な成長を実現するための取り組みです。

制度の取得は、採用力や企業イメージの向上、生産性改善にも直結し、特に中小企業にとっては大きな差別化要素となります。

いきなり完璧な取り組みを目指す必要はありません。まずはできることから、健康診断の再受診促進やストレスチェックの導入など、小さな施策から始めてみましょう。

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