メンタルヘルス対策とは?企業が取り組むべき理由と実践ポイント

2025年 7月 15日

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近年、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性がますます高まっています。従業員の心身の健康は、個人のパフォーマンスだけでなく、組織全体の生産性や企業イメージにも直結するからです。

本記事では、企業が取り組むべきメンタルヘルス対策を、具体的な実践ポイントとともに解説します。

女性活躍推進も踏まえて健康経営の重要性もまとめているので、参考にしてみてください。

なぜ、メンタル不調になるのか?

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メンタル不調は、職場での業務過多や人間関係の悩み、ライフイベントとの両立負荷など、多様なストレス要因が重なることで起こります。原因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

仕事量・労働時間の過多や役割の曖昧さ

過剰な業務量や長時間労働、休日出勤が続くと、慢性的な疲労や睡眠不足を招き、心身に大きな負担がかかります。回復が追いつかない状態が続くと、メンタル不調が起こるリスクが高まります。

また「役割の曖昧さ」も強いストレス要因です。「何をすれば良いか分からない」「誰に相談すればいいか不明」といった状況は、過度な責任感や孤立感を生みやすくなります。

こうした事態を防ぐには、業務分担や労働時間の管理に加え、明確な役割と期待の共有が重要です。

職場の人間関係やハラスメント

人間関係がぎくしゃくした職場では孤立感や不安感が強まり、安心して働くことが難しくなります。パワハラやセクハラといった明確なハラスメントはもちろんのこと、「話しかけにくい」「あいさつを無視される」といった些細な言動も、受け手にとっては強い心理的ストレスになります。

こうした状態を防ぐには、上司と部下の信頼関係や、チーム内での心理的安全性を高める取り組みが重要です。あわせて、ハラスメントに対する正しい理解を深める研修や教育の導入も有効です。

ライフイベントとの両立負荷(育児・介護・更年期など)

育児や介護、不妊治療、更年期など、個人のライフイベントによって生じる身体的・精神的な負荷は、仕事との両立において大きなストレス要因となります。特に女性社員は、周囲の無理解や職場制度の不備が、心身の不調をさらに悪化させることも少なくありません。

「誰にも相談できない」「配慮を求めにくい」と感じる状況が続くと、孤立感や疲労感が強まります。こうした課題に対応するには、両立支援制度の整備や、リモートワーク・時短勤務など柔軟な働き方の選択肢を広げることが重要です。

自己肯定感の低下・成果主義のストレス

成果を強く求められ、他者と常に比較される職場では「自分には価値がない」「自分はダメだ」と感じやすくなります。特に若手社員や完璧主義の傾向がある人は、自分を責めすぎてしまい、心身が疲弊しやすく、燃え尽き症候群に陥ることもあります。

こうした状態を防ぐには、結果だけでなく努力の過程も評価する仕組みや、日々の頑張りを認め合う職場文化をつくることが重要です。

メンタルヘルス対策:1次予防(未然防止)

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メンタルヘルス対策で最も重要なのは、従業員がメンタルヘルス不調に陥るのを未然に防ぐ「1次予防」です。早期の段階でリスクを特定し、適切な対策を講じることで、従業員が安心して働ける環境を整えられます。

ストレスチェック制度の活用

ストレスチェック制度は、従業員の心理的負担を把握し、個人のセルフケアや職場改善につなげるための重要な取り組みです。

2015年12月の改正労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を雇用する事業場では、年1回のストレスチェック実施が義務づけられています。対象には、一定条件を満たすパートタイム労働者も含まれます。

さらに2025年5月の国会で、これまで実施が義務付けられていなかった50人未満の事業場でも、ストレスチェック実施が義務付けられることが決定しました。ストレスチェックの拡大は、2028年5月13日までに施行される予定です。

ストレスチェックの本来の目的は、単なる「実施」にとどまりません。部署ごとの集団分析を通じて職場の課題を浮き彫りにし、業務量の偏りや人間関係の問題といったストレス要因を特定することが重要です。

分析結果は衛生委員会などで共有し、具体的な改善アクションを策定・実行。従業員へのフィードバックも忘れずに行いましょう。

参考:労働安全衛生法の一部を改正する法律案について - 厚生労働省 参考:厚生労働省

ハラスメント防止研修

ハラスメントは、従業員の尊厳と心理的安全を脅かす深刻な問題です。企業は、発生を防ぐとともに、早期発見・対応体制を整備する必要があります。

効果的なハラスメント防止研修は、対象や目的に応じて柔軟に設計しましょう。全従業員向けには、ハラスメントの定義、種類、具体例、相談窓口など、基礎知識の習得を目的としたe-learningが有効です。

管理職やリーダー層向けには、グループワークやロールプレイングを交えた対面研修で、ハラスメント発生時の適切な対応方法や部下との信頼関係構築の重要性を深く学び、実践的な行動変容を促すのがおすすめです。 新入社員には、入社時に会社のハラスメント防止方針を明確に伝え、意識付けを行いましょう。

ハラスメントを許さない職場文化の醸成も重要です。経営陣の明確なメッセージ発信と、匿名相談窓口の整備・周知は必須。就業規則に具体的な懲戒規定を明記することで、抑止効果も期待できます。

管理職向けラインケア教育

管理職は、部下の心身の健康状態を日常的に把握し、適切なサポートを行う「ラインケア」の重要な担い手です。

部下の小さな変化にいち早く気づき、声をかけるのは管理職にしかできない役割です。日々の観察と信頼関係が、不調の「初期サイン」に気づくカギになります。

  • 業務量や人間関係の負担に目を配る
  • 声をかけやすい雰囲気をつくる
  • 必要に応じて社内外の専門機関と連携
  • 職場環境改善への提案

などが管理職に求められる行動です。

効果的なラインケアのためには、管理職のスキルアップが不可欠です。定期的な面談の機会を設け、部下の話を引き出す質問の仕方や、共感的な返答方法などを習得させる面談スキルの向上を図りましょう。

部下の話を途中で遮らず、最後まで耳を傾け、相手の感情や意図を正確に理解する「傾聴」のスキルを身につけるトレーニングも効果的です。これにより、部下は「理解されている」と感じ、より本音を話しやすくなります。

実際の場面を想定したロールプレイングを通じて、実践的な対応力を養い、自信を持って部下と向き合えるようにすることも有効です。

2次・3次予防(早期発見・再発防止)

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1次予防に加え、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う2次予防も重要です。そして、休職からの復帰支援や再発防止を図る3次予防も、従業員の健康を守る上で欠かせません。

社内相談窓口や産業医との連携

従業員が安心して相談できる体制を整えることは、メンタルヘルス不調の早期発見につながります。

部署や立場に関係なく利用しやすい窓口を設けましょう。社内カウンセラーの常駐や、匿名相談が可能なチャットツールの導入など、心理的ハードルを下げる工夫も有効です。

産業医は、従業員の心身の健康維持において中核的な役割を果たします。定期的な連絡会を設け、現場の状況や課題を共有することで、予防的な対応が可能になります。

また、従業員が不調を訴えた際、スムーズに産業医とつながれるよう、紹介フローを明文化し、社内に周知しておきましょう。

相談しやすい環境には、徹底したプライバシー保護が欠かせません。相談内容は本人の同意なしに第三者へ開示しないことを基本とし、社内規定や研修などを通じて守秘義務の重要性を全従業員に周知することが重要です。

また、制度があっても「知られていない」「使いにくい」では意味がありません。社内報やメール、掲示物、イントラネットのバナーなどで繰り返し周知を図りましょう。ヘルスケアアプリやチャットボットの活用など、若手層にもなじみやすいタッチポイントを設けることで利用率を高められます。

復職支援プログラムの整備

メンタルヘルス不調により休職した従業員が、安心して職場に復帰し、再発なく働き続けられるよう、計画的な復職支援プログラムを整備しましょう。

復職直後からフル稼働するのではなく、短時間勤務や軽度な業務からスタートし、徐々に通常業務へ移行するステップ復帰の設計が重要です。在宅勤務や部署異動の活用も含め、従業員の体調に応じた柔軟な対応を心がけましょう。

また、セルフケアや産業医面談を継続できるようサポートする体制を整えるとともに、職場の上司や同僚にも必要な配慮事項を共有し、孤立を防ぎましょう。加えて、状況に応じたタスク調整や定期面談の実施も効果的です。

復職者本人だけでなく、受け入れ側の職場も不安や戸惑いを抱えることがあります。復職プランの共有、必要な配慮の説明、相談窓口の案内などを通じて、職場全体で復職を支える雰囲気づくりを行いましょう。管理職向けの復職対応研修や、職場説明会を設けることも有効です。

定期的なフォロー面談の導入

メンタルヘルス対策として、全従業員を対象に定期的なフォロー面談を実施することは、日常的なストレスや変化の早期発見に有効です。

面談は上司・人事・産業医などが連携し、それぞれの立場から多面的に実施しましょう。上司は業務パフォーマンスや日常の様子に基づいた声かけを、人事はキャリアや働き方への希望を、産業医は健康状態に関する助言を担います。

面談では、従業員の声や課題を丁寧に記録し、それを基に具体的な改善アクションを設定・実行することが大切です。個別対応にとどまらず、職場環境や制度改善にも反映させることができれば、組織全体の健康文化の醸成にもつながります。なお、記録はプライバシーに配慮しつつ、関係者間で適切に共有することが求められます。

定期面談は「入社後3か月、半年、1年」などの節目に加え、全社的に「年1回以上」実施するルールを設けることで、形骸化を防ぎます。内容も、単なる形式的な確認にとどまらず、キャリアの希望、現在のストレス状況、職場環境への意見など、従業員一人ひとりの状態や気持ちに寄り添う時間とすることが重要です。

メンタルヘルス外部サービス・専門家の活用

自社のリソースや専門性だけではカバーしきれない課題に対応するには、外部のサービスや専門家の力を借りることが効果的です。第三者の視点や専門的知見を活用することで、より実効性のあるメンタルヘルス対策が可能になります。

メンタルヘルスマネジメント検定の取得支援

メンタルヘルスマネジメント検定は、従業員一人ひとりのメンタルヘルスに対する理解を深め、組織全体のリテラシー向上を図るために有効な資格です。

検定の概要(Ⅰ種・Ⅱ種・Ⅲ種)と対象者

  • Ⅲ種(セルフケアコース): 一般従業員向けで、自身のストレスに気づき、対処する方法を学びます。
  • Ⅱ種(ラインケアコース): 管理監督者向けで、部下のメンタルヘルスケアや職場環境改善に関する知識を習得します。
  • Ⅰ種(マスターコース): 人事労務担当者、経営幹部向けで、社内のメンタルヘルス対策の企画・推進に必要な知識を習得します。

検定取得を奨励し、社内研修と組み合わせることで、従業員全体のメンタルヘルスリテラシーを高められます。報奨金制度の導入や勉強会の開催も、受験促進に効果的です。

特にⅡ種やⅠ種の取得を推進することで、管理職や人事担当者の専門性を向上させ、より質の高いメンタルヘルス対策を社内で実施できる体制を構築できます。

EAP(従業員支援プログラム)の導入

EAPは、従業員が抱えるさまざまな悩みに、心理カウンセラーや弁護士などの専門家が中立的な立場で相談に応じるプログラムです。仕事上のストレス、ハラスメント、人間関係、家族の問題、健康問題、法的問題など、多岐にわたる課題に中立的かつ専門的に対応します。

従業員が利用しやすいよう、メール、電話、Web会議、対面など、多様な相談方法を提供しているEAPサービスを選ぶことが重要です。これにより、従業員は自身の状況や都合に合わせて、最適な方法で相談できます。

EAPの導入は、従業員が抱える問題を早期に解決することで、メンタル不調による休職・離職の防止に貢献します。また、従業員のストレスが軽減され、安心して業務に集中できる環境が整うことで、生産性の向上やエンゲージメントの向上にもつながります。

コンサルティング・研修サービスの活用

外部の専門家によるコンサルティングや研修サービスを活用することで、より効果的で継続的なメンタルヘルス対策を推進できます。

自社の状況に合わせた最適なメンタルヘルス対策の制度設計や、より良い職場風土を醸成するためのサポートを、専門家から受けることができます。現状分析から課題特定、具体的な施策立案まで、客観的な視点と豊富なノウハウに基づいた支援が期待できます。

また、従業員や管理職向けに、ストレスマネジメント、アンガーマネジメント、レジリエンス(回復力)向上など、実践的なテーマの研修を導入できます。外部講師による研修は、社内では得られない専門的な知見や、異なる視点からの学びを提供します。

例えば、健康経営や女性活躍をサポートする「Wellflow」というサービスでは、女性の健康課題をテーマにした男性社員向けのオンライン研修や管理職(監督者)向け対面研修など、さまざまな研修を提供しています。

Wellflowのサービスページ

メンタルヘルス対策を怠るとどうなる?

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メンタルヘルス対策を怠ることは、従業員の健康を損なうだけでなく、企業経営にも甚大な悪影響を及ぼします。

休職・離職による人材ロスと採用コスト負担

メンタル不調は、突然の長期休職や退職につながるケースが多く、企業にとっては業務の停滞や人材損失を招きます。残された従業員の業務負担が増え、新たなメンタル不調を誘発する悪循環に陥ることもあります。

優秀な人材の採用や育成には時間もコストもかかるため、未然防止が経営的にも合理的であることを強調しましょう。

生産性や職場のエンゲージメント低下

メンタル不調により集中力や判断力が低下し、プレゼンティーズム(出勤はしているが生産性が低い状態)が発生します。

その結果、チーム全体のモチベーションやエンゲージメントも下がり、成果に直結する悪循環を生む可能性があります。

労災申請や訴訟など法的リスクの増加

メンタル不調に企業側が適切に対応できなかった場合、労災認定をはじめ、損害賠償請求や訴訟に発展するケースもあります。

企業名の公表、報道によるレピュテーションリスクの高まりなど、社会的信用の低下にもつながりかねません。安全配慮義務や労働関連法令を遵守する体制の整備は不可欠です。

女性活躍推進とメンタルヘルス支援のつながり

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近年、女性の社会進出が進む中で、女性活躍推進とメンタルヘルス支援は密接に関係しています。女性が安心して能力を発揮できる環境は、結果として全ての従業員にとって働きやすい職場へとつながります。

女性が抱えるライフステージ特有の不安や負荷

妊娠・出産・育児・更年期といったライフステージに伴う心身の変化は、女性のメンタル不調につながる大きな要因です。特にホルモンバランスの変化や体調不良が、業務パフォーマンスや職場での人間関係に影響を及ぼすこともあります。

不妊治療との両立や、介護と育児のダブルケアなど、複雑な負荷を抱えるケースも少なくありません。

企業として、産休・育休制度の充実はもちろん、不妊治療支援、介護支援、更年期サポートといった柔軟な制度設計が求められます。また、制度の整備だけでなく、上司や同僚による理解と配慮を促す研修やガイドラインの導入も効果的です。

「頑張りすぎる女性社員」へのケアの重要性

「迷惑をかけたくない」「期待に応えたい」と無理をしてしまう女性社員は少なくありません。特に責任の大きいポジションにある女性は、成果を求められるプレッシャーや、管理職としての役割期待から、自分の不調を後回しにしてしまいがちです。

こうした社員が安心して本音を打ち明けられる風土や、感情面に配慮したマネジメントが欠かせません。

定期的な1on1やフィードバック面談での対話機会を設けること、上司自身が弱音を許容する姿勢を示すことが、部下の安心感につながります。また、「頑張りすぎ」サインに早く気づき、適切なフォローができるよう、ラインケアやメンタルヘルスリテラシーを強化することも重要です。

女性が安心して活躍できる職場は誰にとっても働きやすい

女性の働きやすさを追求することは、柔軟な制度設計や心理的安全性の高い風土づくりに直結し、全従業員にとっての働きやすさにつながります。

リモートワークや時短勤務、フレックスタイムなどの制度は、子育て中の女性だけでなく、通院が必要な従業員やライフバランスを重視する若手社員にも恩恵があります。

こうした制度が整い、誰もが安心して声を上げられる環境は、職場のエンゲージメント向上、離職率低下、採用ブランディングの強化といった、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

多様性を尊重し、一人ひとりの違いを受け入れる文化の醸成が、これからの企業には不可欠です。

まとめ

本記事では、メンタルヘルス対策の重要性とその実践ポイントについて、1次予防から2次・3次予防、外部サービスの活用、そして対策を怠るリスク、女性活躍推進との関連性まで幅広く解説しました。

従業員のメンタルヘルスは、個人の問題に留まらず、企業の持続的な成長に不可欠な経営課題です。健康経営を推進し、全ての従業員が心身ともに健康で、安心して働ける職場環境を構築するためにも、本記事で紹介した内容を参考に、貴社に合ったメンタルヘルス対策を積極的に推進していきましょう。

健康経営の取り組みを始めたいが、何から取り組めばいいか分からない企業様は、ぜひ、Wellflowにご相談ください。メンタルヘルス対策はもちろん、女性活躍推進やダイバーシティ、働き方改革など、さまざまな課題をトータルサポートします。