メンタルヘルスマネジメントとは?資格や具体的な施策を解説

2025年 7月 16日

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働き方の多様化やハイブリッドワークの普及により、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性が一層高まっています。企業が持続的に成長するためには、従業員の心の健康を守る「メンタルヘルスマネジメント」が欠かせません。本記事では、基本的な概念から具体的な施策、導入ステップまでを網羅的に解説します。

メンタルヘルスマネジメントとは?

「メンタルヘルスマネジメント」とは、従業員の心の健康(メンタルヘルス)を維持・向上させるための組織的な取り組みや管理のことを指します。

企業が職場環境や働き方に配慮し、メンタル不調を未然に防いだり、早期に発見して対応したりするための活動全般が含まれます。

メンタルヘルスマネジメントの目的

メンタルヘルスマネジメントの目的は、職場におけるストレス要因を把握・低減し、従業員が心身ともに健康な状態で働き続けられる環境を整えることです。

これは単なる「不調者対応」ではなく、組織全体の生産性や創造性を維持・向上させるための戦略的取り組みでもあります。

特に昨今では人的資本経営やウェルビーイングの観点からも注目されており、企業の社会的責任(CSR)やESG経営にも直結する重要施策です。

メンタルマネジメントとの違い

メンタルマネジメントは、個人の心の状態を自律的にコントロールするスキルやアプローチを指すことが多い一方、メンタルヘルスマネジメントは組織全体で従業員のメンタルヘルスを支える枠組みを指します。

つまり、前者は「個人のスキル」、後者は「組織としての仕組み」と捉えると理解しやすいでしょう。

両者は対立する概念ではなく、むしろ相補的に活用することで、心の健康を多層的に守ることが可能になります。

メンタルヘルスマネジメントの必要性

なぜ今、メンタルヘルスマネジメントがこれほど求められているのでしょうか。その背景にある社会的・経済的な変化や、企業が直面する課題を見ていきます。

メンタル不調による労働損失が深刻化している

厚生労働省の報告によると、精神疾患による労災申請件数は年々増加傾向にあります。加えて、プレゼンティーイズム(出勤しているが集中力が落ちる状態)やアブセンティーイズム(欠勤)の増加も企業に大きな経済的損失をもたらしています。従業員の心の健康管理は、もはや福利厚生ではなく経営課題そのものといえるでしょう。

▼参考:厚生労働省 過労死等の労災補償状況

労働法による義務化と社会的責任が求められている

2015年に施行されたストレスチェック制度により、常時50人以上の労働者を雇用する事業所には年1回の実施が義務付けられました。また、改正労働安全衛生法が2025年5月に成立し、従来ストレスチェックの実施が努力義務とされてきた従業員50人未満の事業場にも、義務化する方向で規定が変更され、施行は公布後3年以内(最長で2028年5月頃)とされています。

ストレスチェック制度により、企業は従業員のメンタル不調を未然に防ぐ努力が法的にも求められるようになりました。さらに、ESGやSDGsへの対応の一環として、メンタルヘルス対策は企業の社会的責任(CSR)の一部として位置づけられています。

▼参考:厚生労働省 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等

メンタル不調の予防が採用・定着にも影響する時代に

Z世代・ミレニアル世代を中心に、職場の心理的安全性や働きがいを重視する傾向が強まっています。メンタルヘルス対策が整っている企業は「安心して働ける職場」として評価され、採用競争力の強化や社員の定着率向上にもつながります。

企業のブランディング施策としても、メンタルヘルスマネジメントは欠かせない要素となっています。

ハイブリッドワーク時代の新たな課題に対応するため

リモートワークと出社を組み合わせたハイブリッド型の働き方が主流となる中で、孤立感やコミュニケーション不足、オン・オフの切り替え困難など、従来とは異なる新たなメンタルヘルス課題が顕在化しています。

企業はこれらの変化に柔軟に対応し、働き方に応じたケア体制を再構築する必要があります。

経営にとっても大きなリターンがある

メンタルヘルスマネジメントの導入は「コスト」ではなく「投資」です。職場の心理的安全性が高まることで、離職率の低下や業務効率の向上が期待でき、最終的には生産性や利益にも好影響を与えます。

また、人的資本情報の開示が進む中で、こうした取り組みは企業の評価や株主の信頼にも寄与します。

メンタルヘルスマネジメントの具体的な施策

メンタルヘルス対策は、「一次予防」「二次予防」「三次予防」という3つの段階に分けて実施されます。ここでは、それぞれの段階で行うべき具体的な取り組みを見ていきましょう。

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【一次予防】= 未然防止・メンタル不調を起こさせない

一次予防は、従業員がストレスを感じにくい職場環境を整えるための施策です。

具体的には、職場の人間関係改善、柔軟な働き方の導入、業務量の適正化、管理職へのラインケア研修などが挙げられます。ストレスチェックの活用も一次予防に位置づけられ、組織の課題を見える化する重要な手段となります。

【二次予防】= 早期発見・早期対応

二次予防では、メンタル不調の兆候を早期に察知し、適切な対応を行うことが求められます。相談窓口の設置や産業医との連携、定期的な1on1ミーティングの実施などが効果的です。

また、管理職が部下の変化に気づけるような教育・訓練も欠かせません。早期対応が復職率の向上や重症化の防止に寄与します。

【三次予防】= 再発防止・職場復帰支援

三次予防は、メンタル不調からの回復後の支援を指します。復職にあたっては、段階的な業務再開や勤務時間の調整など、無理のない職場復帰プログラムが必要です。

また、再発を防ぐためには、復職後の定期的な面談やフォローアップの仕組みが求められます。個別対応と組織的支援のバランスが重要です。

メンタルヘルスマネジメント検定(資格)とは?

メンタルヘルスマネジメントの取り組みを推進するうえで、知識と理解を深めることが求められます。ここでは、大阪商工会議所が実施する「メンタルヘルス・マネジメント検定試験」について紹介します。

メンタルヘルス・マネジメント検定試験は、職場における心の健康管理に必要な知識や対処方法を評価するための資格です。Ⅰ種(マスターコース)、Ⅱ種(ラインケアコース)、Ⅲ種(セルフケアコース)の3段階があり、それぞれ経営者・管理職・一般従業員と役割に応じた内容となっています。団体特別試験の制度もあり、組織ぐるみで受験している企業も多く見られます。

▼参考:大阪商工会議所 メンタルヘルス・マネジメント検定試験

メンタルヘルスマネジメントの進め方

メンタルヘルスマネジメントを有効に機能させるには、段階的かつ計画的な進行が不可欠です。ここでは、現状把握から評価までの3ステップを紹介します。

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ステップ1:現状把握と課題の可視化(サーベイなど)

最初のステップは、自社の現状を正しく把握することです。

従業員向けのストレスチェックやエンゲージメントサーベイを実施することで、どの部署にどのような課題があるのかを可視化できます。このフェーズで得たデータを基に、次のステップでの施策の方向性を決定します。

ステップ2:体制づくりと役割分担(産業医・人事・外部支援)

次に、メンタルヘルスマネジメントの実行体制を構築します。産業医や保健師、人事部門など社内の関係者を巻き込み、役割分担を明確にしましょう。

また、専門性が必要な場面では外部機関の支援を活用することも有効です。組織内外のリソースを組み合わせることで、実効性のある体制が実現します。

ステップ3:施策の実行と評価(PDCAサイクル)

​​施策はやりっぱなしにせず、定期的にその効果を検証することが重要です。実施後にはアンケートや業務指標などからフィードバックを得て、必要に応じて改善を図ります。

このPDCAサイクルを継続的に回すことが、メンタルヘルスマネジメントの定着と質の向上につながります。

メンタルヘルスマネジメントの注意点

制度として導入するだけでは十分とは言えません。実際に効果的に機能させるためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。

制度をつくるだけで満足しないこと

メンタルヘルス対策を「制度として整えた」だけで終わってしまう企業も少なくありません。重要なのは、制度が現場でどのように活用されているか、従業員にとって意味のあるものになっているかです。机上の制度ではなく、実際に役立つ仕組みとして運用することが求められます。

メンタル不調を「自己責任」とみなさない

メンタル不調を「本人の問題」として済ませてしまう姿勢は、職場の安全性を損なう大きなリスクとなります。メンタル不調の背景には、職場環境や人間関係、過重労働などの組織的要因があることも少なくありません。企業としての責任を自覚し、組織全体で支える視点が不可欠です。

管理職任せにしすぎないこと

ラインケアの重要性が叫ばれる一方で、管理職に全責任を負わせてしまうケースも見られます。管理職の負担が過大になると、逆に組織としての支援が機能しなくなるおそれがあります。制度や研修を通じて管理職を支援しつつ、企業全体で支える体制を築くことが重要です。

個人のプライバシーと人権に配慮すること

メンタルヘルスの情報は非常にセンシティブです。情報管理には最大限の注意が必要であり、本人の同意なしに第三者へ共有することは原則として避けなければなりません。

また、プライバシーを尊重した対応が信頼関係の構築にもつながります。

職場風土そのものの見直しもセットで行うこと

制度や施策の導入だけではなく、根本的な職場の文化や価値観の見直しも必要です。心理的安全性を重視した風土づくりや、オープンなコミュニケーションを促進する取り組みがあってこそ、メンタルヘルスマネジメントは真に効果を発揮します。

まとめ

メンタルヘルスマネジメントは、企業の持続的成長と従業員の幸福を両立するための不可欠な取り組みです。

社会的要請や法的義務を踏まえつつ、自社の文化や課題に合った方法で実践していくことが大切です。施策の実行や検定の取得にとどまらず、組織全体での意識改革と仕組みづくりを進めていきましょう。

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