【2025年度版】テレワーク推進助成金・補助金の種類や申請方法を解説
2025年 7月 16日

テレワークの導入や拡充を検討している企業にとって、助成金・補助金の活用はコスト面の大きな後押しになります。
特に2025年度は、厚生労働省や経済産業省、自治体によるテレワーク支援制度がさらに整備・拡充されています。導入にかかる機器購入費やクラウドサービスの利用料、人事制度の整備費用などが対象となるケースが増えています。
本記事では、2025年度の最新情報を踏まえながら、テレワーク導入・推進を支援する助成金・補助金について詳しく解説します。
社内のテレワークを推進したい方や助成金・補助金の申請を検討されている方は、ぜひご一読ください。
テレワーク導入支援の助成金・補助金の種類
テレワーク導入に活用できる代表的な助成金・補助金は、以下の通りです。

人材確保等支援助成金:厚生労働省
厚生労働省が実施する「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」は、中小企業がテレワークを導入・拡充する際にかかる費用の一部を助成する制度です。
就業規則の整備や社内研修、クラウドサービス導入、機器購入などが対象になり、条件を満たすと最大20万円(加算条件あり)まで支給されます。
2025年4月以降、事前の計画認定が不要となり、手続きの簡略化が図られています。
▼参考:厚生労働省 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
IT導入補助金(通常枠):経済産業省
中小企業・小規模事業者が、業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を目的としてITツール(グループウェア、勤怠管理、顧客管理・分析など)を導入する際に使える補助金です。
テレワーク体制の構築を目的としたクラウドサービスやチャットツールの導入なども対象で、補助率は1/2以内(条件を満たした場合は2/3以内)、補助額は5万円〜150万円(業務プロセスによっては最大450万円)までとされています。
▼参考:経済産業省 IT導入補助金(通常枠)
自治体ごとの助成金
都道府県や市区町村でも、独自にテレワーク関連の助成制度を設けている場合があります。例えば、東京都の「テレワークトータルサポート助成金」は、都内の中小企業向けの新制度です。ICT専門家による無料相談・コンサルティングを受けた上で、テレワーク機器や環境整備にかかる経費が助成対象となります。
他にも、大阪府・神奈川県・名古屋市など、各自治体が独自に制度を設けている例があります。
各自治体で助成対象や申請条件、申請方法が異なるため、最新情報は自治体の公式サイトを確認してください。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)を申請するには?
「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」を活用するには、対象企業・対象取り組みをしっかり確認したうえで、適切なスケジュールで申請を進めることが重要です。
助成金対象の企業・業種
助成対象の企業は中小企業で、雇用保険の適用事業主であることが条件です。
業種による制限はありませんが、テレワークが業務において実効性を持つ職種であることが重要です。そのため、建設業・運輸業など現場作業が主体の業務は対象外となる可能性があります。
対象となる取り組み
人材確保等支援助成金は、以下のような取り組みが対象になります。
- 労働者がテレワークを実施しやすい職場風土作りの取り組み
- 就業規則・労使協定などの整備・変更
- 外部専門家によるコンサルティング
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修
※コンサルティング、研修及び就業規則等については、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を踏まえた内容であることが必要です。
助成金の金額や上限
人材確保等支援助成金は、導入初期の取り組みに対する「制度導入助成」と、継続的な活用・改善に対する「目標達成助成」の2段階で構成されています。
- 【制度導入助成】上限20万円(対象経費の3/4)
- 【目標達成助成】10万円(賃金引上げ要件を満たす場合:加算15万円)
※「制度導入助成」は初期導入に対する支援、「目標達成助成」はテレワークの継続実施と賃上げなどの成果に対する追加支援です。
申請スケジュール
2025年度は、以下の流れに基づいて申請が進められます。
1. 評価期間(3ヶ月間):テレワークの導入・運用を実施
2. 評価終了後2ヶ月以内:制度導入助成の申請書を提出
3. 制度導入助成の評価開始から12ヶ月後:目標達成助成の評価期間(3ヶ月間)を実施
4. 評価終了後2ヶ月以内:目標達成助成の申請書を提出
申請受付期間や詳細については、各都道府県労働局または厚生労働省の公式サイトをご確認ください。
▼参考:厚生労働省 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
IT導入補助金(通常枠)を申請するには?
IT導入補助金は、テレワーク環境を整えるためのITツールの導入支援としても広く利用されています。補助対象やスケジュールを確認して、早めの準備を進めましょう。
補助金対象の企業・業種
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者(資本金・従業員数に関する基準あり)が対象です。さまざまな業種や法人形態(医療法人、財団法人、特定非営利活動法人など)が幅広くカバーされています。
※資本金または従業員数などの基準を満たしている必要があります(詳細は公式サイト参照)。
対象となるITツール
補助対象となるツールは、あらかじめ「IT導入支援事業者」によって登録されたものに限られます。主なカテゴリは以下の通りです。
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 供給・在庫・物流
- 会計・財務・経営
- 総務・人事・給与・教育訓練・法務・情シス・統合業務
- その他業種固有のプロセス
- 汎用・自動化・分析ツール
助成金の金額や上限
補助率は原則1/2以内ですが、従業員の賃金を一定割合以上引き上げることを申請時に約束し、かつ実行した場合は、補助率が 2/3以内に引き上げられます。
通常の補助額上限は150万円ですが、導入するITツールが「4つ以上の業務プロセス」に対応している場合は、補助上限額が 最大450万円 に引き上げられます。
対象となる業務プロセスには、「会計」「人事」「顧客管理」「在庫管理」などが含まれます。
申請スケジュール
2025年度は以下のスケジュールで複数回の公募が行われます。申請前にはGビズIDプライムの取得および支援事業者との連携が必須です。

助成金・補助金の申請に落ちることはある?
テレワーク関連の助成金や補助金は審査制であり、申請内容が要件を満たしていない場合や、必要な実績・資料が不十分な場合は不採択(=不支給)となるケースがあります。
ここでは、実際に不採択となった3つのケースをもとに、よくある失敗の原因と注意点を整理します。

事例1:対象業務と乖離していたケース
NGポイント:業務内容とテレワークの実施がそもそも適合していなかった
ある飲食業の企業が、「本社事務スタッフの業務効率向上」を目的にテレワーク用PCを導入し、人材確保等支援助成金(テレワークコース)を申請しました。
しかし実際の就業実態が「スタッフの9割以上がホール・キッチン業務」だったことから、テレワーク導入の実効性が乏しいと判断され、不採択となりました。
対策ポイント: 対象職種にテレワーク導入が現実的であるか、業務内容と整合性が取れているかを必ず確認しましょう。
事例2:テレワーク実施の裏付けが不足していたケース
NGポイント:実施実績を証明する書類が整っていなかった
テレワーク用の環境整備後、助成金を申請したが、勤怠ログ(ログイン・ログアウト履歴)や、テレワーク実施報告、週ごとの稼働状況の記録が未提出または不備ありと判断され、不採択。
この企業では、「社内で実施した」という認識があったものの、第三者が確認できる客観的証拠がない状態でした。
対策ポイント: 実施の有無だけでなく、「いつ・誰が・どのようにテレワークを行ったか」を証明する記録を残しておきましょう。
事例3:補助対象外ツールでの申請
NGポイント:事前確認なしで補助対象外ツールを申請していた
中小企業がIT導入補助金を活用しようと、独自開発の業務支援システムを導入。しかし、このツールは「IT導入支援事業者」を通じて登録されたツールではなかったため、補助対象外とされ不採択となりました。
補助金には、「事前に登録されたITツールのみが対象」というルールがあり、それを見落としていたことが原因です。
対策ポイント: IT導入補助金は、必ず「IT導入支援事業者」と連携し、補助対象に登録されたツールを使用する必要があります。事前確認を徹底しましょう。
テレワーク以外に取り組むべき「働き方改革」
テレワーク導入は、働き方改革を進めるうえでのあくまで第一歩にすぎません。真に持続可能で魅力ある職場環境を構築するには、企業文化や制度そのものを根本から見直す視点が必要です。
ダイバーシティ推進
性別・年齢・国籍・障がいなどにとらわれず、多様な人材が活躍できる環境整備が求められます。
例えば、フレックスタイム制度や介護・育児との両立支援制度、LGBTQフレンドリーな福利厚生などが挙げられます。人的資本経営の観点からも、ダイバーシティ施策は採用力・社員定着率の向上に直結します。
福利厚生の充実
従業員が安心して働き続けるには、「働きやすさ」だけでなく「生活の質」も欠かせません。
健康診断の拡充や婦人科検診支援、メンタルヘルス対策、保育費・介護費用補助、スポーツクラブ会員制度、ウェルネスアプリとの連携など、従業員の健康と生活を支える制度は、生産性と満足度の向上につながります。テレワークが増える中で希薄化しがちな企業とのつながりを補完する手段にもなります。
キャリア支援
働き方の自由度が増す一方で、社員のキャリアパスや学び直し(リスキリング)支援がますます重要になっています。
オンライン研修やeラーニングの整備、資格取得支援などを通じて、社員のスキルアップとキャリア形成を支援する体制づくりが必要です。こうした取り組みは、社員のスキルアップだけでなく、企業にとっての競争力向上や離職率の低下にもつながります。
評価制度の見直し
テレワーク下では、「働いている姿」が見えにくくなるため、「時間ベース」から「成果ベース」の評価へと軸足を移す必要があります。
- OKR(Objectives and Key Results)の導入
- 業務日報や週報による自己管理・見える化
- バリュー(行動指針)に基づいた定性評価の仕組み
こうした制度は、納得感のある評価を生み出し、モチベーションの維持にも効果的です。
まとめ
テレワーク推進のための助成金・補助金は制度面で年々充実しており、企業規模にかかわらず活用しやすくなっています。ただし、申請には明確な目的意識と適切な準備が欠かせません。導入後の運用・評価体制も含めた中長期的な視点での活用が重要です。
また、テレワーク導入は「働き方改革」のスタート地点にすぎません。ダイバーシティやキャリア支援など、より広い視野での組織改革が、企業の持続的成長と従業員の幸福度向上を支えます。
今後の制度変更や公募スケジュールについては、必ず各種公式サイトで最新情報をご確認ください。
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