働き方改革推進支援助成金とは?これから取り組む企業必見!

2025年 7月 15日

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働き方改革が進む今、さまざまな施策が行われていますが、予算確保に頭を抱える企業も少なくありません。

そこで、ぜひ活用したいのが「働き方改革推進支援助成金」です。

本記事では、これから助成金の活用を検討している企業の皆様向けに働き方改革推進支援助成金の概要や申請方法、注意点を解説します。

助成金を得ながら従業員が働きやすい環境を整えることで、生産性が向上するなどのメリットが得られます。各コースごとの活用事例を含め、自社の取り組みに活用してみてください。

働き方改革推進支援助成金とは?

働き方改革推進支援助成金は、中小企業事業主が労働時間の縮減や年次有給休暇の促進をする場合に、実施にかかる費用の一部を助成するものです。厚生労働省が、中小企業での労働時間が改善されることを目的として支援しています。

また、この助成金は「会社単位の助成」と「団体単位の助成」の2つに分かれます。次以降の章で会社単位・団体単位の助成金コースをお伝えします。

▼参考:厚生労働省 助成金のご案内 | 働き方改革特設サイト

▼参考:厚生労働省 労働時間等の設定の改善 |厚生労働省

会社単位で受けられる助成金3コース

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会社単位で支給される助成金には以下の3つのコースがあります。

  1. 労働時間短縮・年休促進支援コース
  2. 勤務間インターバル導入コース
  3. 業種別課題対応コース(業種が限定)

<支給対象の事業者>

この助成を受けられる中小企業事業主とは、以下のAまたはBの要件を満たす中小企業です。

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業種別課題対応コースは、業種が限定されており、業種によって要件が異なる点があるため、詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください。

<支給対象の取り組み(1つ以上実施)>

各コースの成果目標の達成の有無に関わらず、前提として以下の取り組みを1つ以上実施しなければ、助成金は支給されません。

  1. 労務管理担当者への研修
  2. 労働者への研修・啓発
  3. 外部専門家によるコンサルティング
  4. 就業規則・労使協定の作成・変更
  5. 人材確保の取組
  6. 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  7. 労務管理用機器の導入・更新
  8. デジタル式運行記録計の導入・更新
  9. 労働能率向上設備・機器の導入・更新

取り組みの実施期間は、交付決定日から当該年度の1月30日までです。

※砂糖製造業は3月13日まで

2025年度の申請の受付は、2025年11月28日(金)まで(必着)です。なお、支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、2025年11月28日より前に受付を締め切る場合があります。

<注意事項>

  • パソコン、タブレット、スマートフォンは原則対象外
  • 助成金は取組実施後の成果目標達成状況に応じて支給
  • 詳細は各コースの交付申請マニュアルを確認要

ここからはそれぞれのコースを詳しく見ていきます。

労働時間短縮・年休促進支援コース

生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するコースです。

<対象事業主の条件>

  • 労働者災害補償保険に加入している中小企業
  • 年5日の年次有給休暇取得に向けた就業規則を整備済み
  • 成果目標の要件を満たしている

<成果目標(1つ以上選択)>

  1. 36協定の時間外労働時間を月60時間以下、または月60~80時間以下に設定
  2. 年次有給休暇の計画的付与制度を新規導入
  3. 時間単位年休+特別休暇制度を新規導入

上記の成果目標に加えて、指定対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額を引上げることを成果目標に加えることができます。

<支給額>

  • 補助率:3/4(従業員30人以下で特定取組は4/5)
  • 上限額
    • 成果目標1:50万円~150万円(時間短縮幅により変動)
    • 成果目標2・3:各25万円
    • 賃金引上げ加算:3%以上の賃上げで追加支給あり

▼参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース) |厚生労働省

勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバル制度は、勤務終了から次の勤務開始までに一定時間以上の休息時間を確保することで、従業員の健康保持や過重労働の防止を目的とした制度です。

この制度では、終業から次の始業までの休息時間を就業規則などで明確に定めていることが求められます。例えば、「○時以降の残業を禁止し、かつ○時以前の始業を禁止する」といった時間帯の制限や、所定外労働を行わないという取り決めによって、十分な休息時間が確保される場合も、制度を導入しているものと見なされます。休息時間数の長短にかかわらず、明文化されていることが重要です。

<対象事業主の条件>

  • 労働者災害補償保険に加入している中小企業
  • 以下のいずれかに該当する事業場を有する
    • 勤務間インターバル未導入
    • 9時間以上のインターバル導入済みだが対象労働者が半数以下
    • 9時間未満のインターバル導入済み
  • 36協定の締結・届出済み
  • 過去2年間に月45時間超の時間外労働実態あり
  • 年5日の年次有給休暇取得に向けた就業規則整備済み

<成果目標>

休息時間9時間以上または11時間以上の勤務間インターバルを導入

以下のいずれかを実施:

  • 新規導入:労働者の半数超を対象とする9時間以上のインターバル制度
  • 適用範囲拡大:既存制度の対象を労働者の半数超に拡大
  • 時間延長:既存の9時間未満制度を2時間以上延長して9時間以上に

上記の成果目標に加えて、指定対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額を引上げることを成果目標に加えることができます。

<支給額>

  • 補助率:3/4(従業員30人以下で特定取組は4/5)
  • 上限額
    • 9時間以上11時間未満:新規導入100万円、その他50万円
    • 11時間以上:新規導入120万円、その他60万円
    • 賃金引上げ加算:3%以上の賃上げで追加支給あり

▼参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース) |厚生労働省

業種別課題対応コース

業種別課題対応コースは、特定の業種における長時間労働などの構造的な課題を改善し、労働環境の向上と働き方改革の推進を目的とした制度です。

このコースでは、宿泊業、運輸業、小売業、介護・保育業など、業種ごとに特有の労働課題に対応した取り組みを支援します。具体的には、労働時間の削減や業務改善、就業規則の見直し、シフト制の導入、労務管理ツールの導入などが対象となります。助成対象となる取り組み内容や上限額は、業種ごとの課題に応じて設定されており、それぞれの現場に即した効果的な改善が求められます。

<対象業種>

  • 建設業
  • 運送業
  • 病院等
  • 砂糖製造業
  • 情報通信業
  • 宿泊業

業種別に要件が異なるため、詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください。

<対象事業主の条件>

  • 労働者災害補償保険に加入している中小企業
  • 上記6業種のいずれかに該当
  • 36協定の締結・届出済み
  • 年5日の年次有給休暇取得に向けた就業規則整備済み

<成果目標>

  1. 36協定の時間外労働時間短縮(全業種)
  2. 年次有給休暇の計画的付与(全業種)
  3. 時間単位年休+特別休暇(全業種)
  4. 勤務間インターバル制度導入(全業種)
  5. 所定休日の増加(建設業のみ)
  6. 医師の働き方改革推進(病院等のみ)
  7. 3直3交代制等の勤務割表整備(砂糖製造業のみ)

上記の成果目標に加えて、指定対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額を引上げることを成果目標に加えることができます。

<支給額>

  • 補助率:3/4(従業員30人以下で特定取組は4/5)
  • 上限額
    • 成果目標1:100万円~250万円
    • 成果目標2・3:各25万円
    • 成果目標4:60万円~170万円(業種・休息時間により変動)
    • 成果目標5:25万円×増加日数(最大100万円)
    • 成果目標6:50万円
    • 成果目標7:350万円
    • 賃金引上げ加算:3%以上の賃上げで追加支給あり

▼参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース) |厚生労働省

団体単位で受けられる「団体推進コース」

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団体推進コースは、中小企業事業主の労働条件の改善、特に時間外労働の削減や賃金の引上げを支援することを目的とした制度です。個々の事業主ではなく、業界団体や事業主団体、またはその連合体が申請主体となり、傘下の複数の事業主(構成事業主)に対して横断的な支援を行います。

団体が主導して労働時間管理や業務効率化のための研修、ツール導入、制度整備などに取り組むことで、構成事業主全体の労働環境改善を図る仕組みです。事業主団体を通じた取り組みにより、単独の事業所では難しい広域的・体系的な働き方改革の推進が可能となります。

<対象者>

事業主団体等(3事業主以上で構成、1年以上の活動実績が必要)

  • 事業協同組合、商工会議所、商工会など法律で規定する団体
  • 共同事業主(協定書作成等の要件あり)
  • 中小企業事業主が構成事業主全体の1/2超を占める必要

<助成対象の取り組み(いずれか1つ以上)>

コースの成果目標の達成の有無に関わらず、前提として以下の取り組みを1つ以上実施しなければ、助成金は支給されません。

  1. 市場調査
  2. 新ビジネスモデル開発・実験
  3. 材料費・水光熱費等の削減実験
  4. 取引先との調整(労働時間改善向け)
  5. 展示会開催・出展
  6. 好事例の収集・普及啓発
  7. セミナー開催
  8. 巡回指導・相談窓口設置
  9. 共同利用設備・機器の導入・更新
  10. 人材確保に向けた取組

<成果目標>

構成事業主の2分の1以上に対して、時間外労働削減または賃金引上げに向けた取組・結果を活用すること

<取り組みの実施期間>

交付決定日から当該年度の2月13日まで

<支給額>

以下のうち最も低い額

  • 対象経費の合計額
  • 総事業費から収入額を控除した額
  • 上限額:500万円(一定条件で1,000万円)

▼参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)|厚生労働省

働き方改革推進支援助成金の申請方法

働き方改革推進支援助成金を申請する際に必要な書類、そして申請の流れを見ていきましょう。

申請に必要な書類は交付申請書、事業実施計画、支給申請書があります。それぞれのコースで様式などが異なるため、詳細は厚生労働省のホームページを参考にしましょう。

申請の流れは以下の通りです。

  1. 交付申請書の提出※事業実施計画を添付
  2. 審査の結果・通知を受理
  3. 事業実施
  4. 支給申請書の提出
  5. 支給・不支給の決定・通知
  6. 助成金の受け取り

▼参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金 (業種別課題対応コース) 申請マニュアル (2024年度)

▼参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金 (労働時間短縮・年休促進支援コース) 申請マニュアル (2025年度)

▼参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金 (勤務間インターバル導入コース) 申請マニュアル (2025年度)

▼参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金 (団体推進コース) 申請マニュアル (2025 年度)

働き方改革推進支援助成金の注意点

働き方改革推進支援助成金を受ける場合に注意しなければならない点が7つあります。ここからは注意点を詳しく見ていきましょう。

事前に計画書の提出が必須

助成金は「事前申請・認定方式」です。対象となる取り組みを始める前に「事業実施計画」を提出し承認される必要があります。

例えば、計画を提出する前に労務管理用機器の導入をするなど、先立って機器購入・制度導入を行うと、対象外(=不支給)になることがあります。

対象となる取り組みが明確に定められている

働き方改革推進支援助成金は、支給の対象になる取り組みが明確に定められています。

例えば、単なるパソコン購入や社内ルールの変更だけでは対象外になる可能性があります。「成果目標」や「制度の導入効果」が要件となるため、数値的な裏付け(労働時間削減など)も求められます。

証拠資料の整備が必要

就業規則の変更届、労働時間の記録、導入機器の購入証明など、書類で証明できる実績が求められます。

提出資料が不足していたり、記載ミスがあると審査に通らないリスクもあるため注意が必要です。社労士や中小企業診断士などの専門家を活用する方法のもおすすめです。

成果目標の達成が支給要件

例えば、「月45時間超の残業をしている従業員数を0にする」などの具体的な成果目標があります。この目標が未達成の場合、助成金が支給されない、または減額されることもあります。成果として設定した目標を達成することが、助成金を受け取る要件です。

採択されても振込まで時間がかかる

成果報告後の確認・審査に時間がかかるため、実際に振り込まれるのは半年以上先ということもあります。そのため、取り組みを進めつつ、キャッシュフローへの影響も考慮する必要があります。

年度ごとに要件やスケジュールが変わる

毎年、助成内容や条件、申請期限が変更される可能性があるため、必ず最新版の公募要領を確認することが大切です。また、予算上限に達すると早期終了するケースもあるため、申請は早めに行うのが鉄則です。

2025年度の申請の受付は、2025年11月28日(金)まで(必着)です。

専門家と連携した方がスムーズ

社労士や中小企業診断士などの専門家を活用すると、制度要件に沿った計画作成・申請ができるため、不支給リスクを下げられます。

自力で申請しようとして、時間や手間だけかかって結局通らないというケースも少なくありません。

助成金の活用事例

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ここからは、実際に助成金を使って働き方改革を行った企業の例を見ていきます。

帳票の作成から発行までのデジタル化による労働時間の短縮|労働時間短縮・年休促進支援コース

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鳥取県にある農業事業を行う会社では、納品書・請求書・領収書を手書きで作成して発行していたため時間が多くかかっていました。さらに、販売量の増加に伴って負担も増えるという課題がありました。

そこで、納品書・請求書・領収書の発行・管理システム及び電子端末を導入したことで、注文の集計から発行までの作業がほぼゼロにまで削減できたそうです。

労働時間の適正把握による勤務間インターバルの導入|勤務間インターバル導入コース

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長野県の金属製品製造業を行う会社では、管理職による20時以降の残業の抑制や、勤務間インターバルの導入を検討していました。また、労働時間の記録を記録できていなかったという問題がありました。

そのため、労務管理用ソフトウェアと付随するタイムレコーダーを導入しました。労働時間を適正に記録することで、時間外労働や労働時間が可視化されました。

以前は年間平均で月 40〜 50 時間だった管理職の残業時間は月20〜30時間になり、勤務間インターバルの導入に向けた環境を整えられたそうです。

販路拡大に向けた展示会出展、組合員へのコンサルティング|団体推進コース

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SAGA COLLECTIVE 協同組合は、共通の課題として売上を増やしていくためには佐賀県外への販路の拡大が必要でした。また、突発的な受注にも対応しながら計画的・効率的に生産していくことが必要とされていました。

そこで、テストマーケティングの開催に向けた什器(商品陳列棚)を開発しました。

羽田空港における共同展示(2週間程度)をし、限られたスペースで11社の商品をいかに披露できるかを検証し、今後の展示会・イベント等における販売に向けた知見を得ました。大学生を招き、1社の労働生産性向上に向けた改善提案や個別指導を依頼した後、その内容を他の10 社にも共有しました。

▼参考:厚生労働省 生産性向上のヒント集

まとめ

働き方改革推進支援助成金は、中小企業が労働環境の改善や多様な働き方の導入を進める際に活用できる制度です。申請には計画書の事前提出や資料の整備、成果目標の達成が求められ、制度の詳細や申請の流れは毎年度変更されるため、専門家のサポートを得ながら進めることが推奨されます

さらに、助成金の活用には具体的な事例や実務上の注意点を参考にすることで、スムーズな申請・受給が可能になります。助成金の制度を上手く活用することで、企業の働き方改革を加速させ、従業員の定着や生産性向上に繋げることができます。

働き方改革推進支援助成金のよくある質問:働き方改革推進支援助成金について疑問をお持ちの方は多いでしょう。申請前に知っておきたい重要なポイントから、実際の手続きで迷いやすい点まで、よくある質問にお答えします。 Drag