女性活躍推進法とは?2025年の法改正予想のポイントも解説

2025年 7月 16日

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女性活躍推進法とは、正式名称が「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」であり、働く上で女性が活躍できるように定められました。

本記事では、女性活躍推進法の詳細やポイント、女性活躍推進の背景や対応方法について詳しく解説します。

特に何度か法改正が行われており、2025年にも改正される可能性があるため、ぜひ参考にしてみてください。

女性活躍推進法とは?

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まずは「女性活躍推進法」の基本を解説します。違反した場合、法的な罰則はありませんが、厚生労働省大臣から助言や指導、勧告を受けることがあります。

概要

女性活躍推進法は、女性が職場で能力を発揮しやすい環境を整えて、活力ある社会を実現するために2016年に施行されました。管轄は厚生労働省です。

女性活躍推進法の対象は以下です。

国・地方公共団体

常時雇用する労働者が101人以上の民間事業主(※2022年4月より対象が拡大)

対象となる事業者は、自社の女性活躍に関する状況を把握し、課題を分析したうえで、行動計画を策定・公表する義務があります。また、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」への情報掲載も求められます。

基本原則

女性活躍推進法の基本原則は以下となっています。

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  • 採用・昇進などの機会を性別に関係なく公平に提供すること
  • 性別によって役割を決めず、個人の選択を尊重すること
  • 仕事と家庭の両立ができる職場環境を整備すること
  • 女性本人の意思が尊重されること

詳細については政府のウェブサイトをご覧ください。

▼参考:厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ

男女共同参画社会基本法との違い

「女性活躍推進法」とよく比較されるのが「男女共同参画社会基本法」です。両者は目的が似ているようで、実はフォーカスの範囲が異なります。女性活躍推進法は、女性が職業生活においてその能力を発揮し、活躍できるようにすることを目的とした法律です。

一方で男女共同参画社会基本法は、性別にかかわらず、すべての人が個性と能力を発揮できる社会の実現を目指す法律です。

つまり、「女性活躍推進法」は職場における女性支援に特化した法律であり、「男女共同参画社会基本法」は社会全体における性別の平等を目指すより包括的な枠組みです。

2025年最新!女性活躍推進法の改正ポイント

女性活躍推進法はこれまで複数回にわたり改正が行われており、制度の拡充と対象企業の拡大が進められてきました。ここでは、これまでの主な改正と、2025年以降に予想される改正の動きについて解説します。

2020年4月数値目標の設定を義務化

この改正は「第1次改正」と呼ばれ、企業に対して行動計画への数値目標の設定義務などを課す大きな転換点となりました。

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2022年4月義務対象を拡大

第2次改正は、2019年の法改正における施行の第2段階として実施されました。企業規模のハードルが引き下げられたことにより、より多くの企業が制度の対象となっています。

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2022年7月プラチナえるぼし認定を運用開始

法改正ではありませんが、2022年の7月にプラチナえるぼし認定の運用がスタートしました。

プラチナえるぼし認定は、えるぼし認定の上位区分であり、特に優良な女性活躍推進の実績がある企業に与えられます。

まずは「えるぼし認定」を取得する必要があります。(一般事業主行動計画の策定・届出が前提)そのうえで、一定の基準を満たした企業が「プラチナえるぼし」に認定されます。

2025年予想!10年延長の法改正が実施される可能性

現在、女性活躍推進法は2026年3月末までの時限立法ですが、2024年に開催された「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」では、10年間の延長が適当と提言されています。これまで、女性活躍推進法は以下のように制定・施行が進んできました。

  • 制定:2015年(平成27年)8月
  • 施行:2016年(平成28年)4月1日
  • 現行の期限:2026年3月末まで(2025年度末)

現時点で公表されている「重点方針2024」では、以下の方針も示されています。

  • 女性登用目標の継続「指導的地位に女性を30%」
  • 中小企業への支援強化
  • 賃金格差

▼参考:厚生労働省 女性活躍・男女共同参画の重点方針 2024(女性版骨太の方針 2024)

これらを踏まえると、2025年の通常国会で改正案が提出・成立する可能性が高く、以下のような内容が盛り込まれると見られます。

  • 法律の有効期間の延長(2036年3月末まで)
  • 義務対象企業のさらなる拡大
  • 情報公表項目の強化(例:育休取得率、男女比の推移 など)

企業としては、こうした改正を見据えて、今後も女性の職業生活における活躍を支援し続ける姿勢が求められます。

▼参考:厚生労働省 雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会報告書

女性活躍が推進されるべき背景

女性活躍推進法が制定される背景には、社会的・構造的な課題が数多く存在します。ここでは、企業が知っておくべき4つのポイントに整理して紹介します。

女性特有の健康課題への配慮不足

女性の中にはPMS(月経前症候群)や更年期障害などライフステージに応じた特有の健康課題があります。PMSは月経(生理)の前に現れる心身の不調で、集中力の低下やイライラ、倦怠感などの症状があります。また更年期障害は、40代後半〜50代前半に起きやすく、ほてり・のぼせ・気分の浮き沈みなど、症状は100種類以上とも言われます。

また、妊娠を望む女性の中には、妊活による通院や体調管理がキャリアの負担になるケースも多いです。職場での理解が得られにくいという課題もあるため、精神的・身体的な負担を一人で背負う場合も少なくありません。

このように女性特有の健康課題や体の変化がキャリアに与える影響が大きいことは、企業として認識すべき重要な視点です。

ライフイベントとキャリアの衝突

個人によって異なりますが、女性は結婚や妊娠、出産、育児などのライフイベントを経験します。これらのライフイベントをキャリアと並行してこなすことは簡単ではなく、退職や時短勤務などを余儀なくされる場合があります。

また、家事・育児と仕事を両立できても昇進が難しくなる「マミートラック」という現象が起こることもあります。

「家事・育児と仕事の両立=キャリア停滞」と見なされやすい環境が、長期的な活躍の妨げになることがあります。

女性管理職比率の低さ

2023年時点の調査によれば、従業員100人以上の企業における女性管理職比率は以下の通りです。

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▼出典:内閣府男女共同参画局 民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合の推移

このように女性の管理職比率が低い状態が続くと、ロールモデルがいないために次世代の女性が役職を目指しづらい土壌が形成されてしまいます。

ジェンダー・ギャップ指数の低さ

世界経済フォーラムが発表している「ジェンダー・ギャップ指数(2025年)」において、日本は148カ国中「118位」という結果になりました。G7の中でも最下位に位置します。

指数が低い理由として、政治分野に加え経済分野での女性活躍が進んでいないことが挙げられます。

具体的には、男女で賃金格差が大きいことや女性管理職比率の低さなどがあります。2024年の賃金構造基本統計調査では、男性の賃金を100とした時の女性の指数は75.8でした。過去最高だったものの、まだまだ差が大きい現状が明らかになりました。

▼参考:男女共同参画局 男女共同参画に関する国際的な指数

▼参考:厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査

女性活躍推進法への対応4ステップ

女性活躍推進法への対応は、決して難しいものではありません。企業は以下の4ステップを踏むことで、着実に制度対応を進めることができます。

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ステップ1. 状況把握、課題分析

まずは、自社における女性活躍の現状を把握・分析することが必要です。以下のような視点でチェックを行いましょう。

【女性の活躍に関するチェック項目】

①採用者に占める女性比率/労働者に占める女性比率

②男女別の平均勤続年数

③平均残業時間(月あたり・性別別)

④管理職(課長以上で役員以外)に占める女性比率

特に男女間で大きな偏りがある場合は、組織文化や人事制度の見直しが必要かもしれません。

ステップ2. 一般事業主⾏動計画の策定、社内周知、公表

現状把握、課題分析が終わると、「一般事業主⾏動計画」への対応を進めましょう。


計画策定のポイントは以下の通りです。

計画期間は2年~5年を目安にする

数値目標(例:女性管理職比率〇%)を必ず含める

目標達成のための具体的な取り組み内容を明記する

男女雇用機会均等法など関連法令と矛盾しないよう注意する

策定後は、社内への周知と外部への公表が必要です。

社内周知:社内ネットワークや掲示板、メール等で社員に共有

外部公表:会社ホームページや「女性の活躍推進企業データベース」への登録

厚生労働省のホームページからファイルをダウンロード可能です。

ステップ3. 一般事業主⾏動計画の届出

策定した行動計画は、各地の労働局への届出が必要です。郵送が推奨されているので、控えが必要な場合は正副2部と切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。

届出様式も厚生労働省のホームページなどからダウンロードできます。

ステップ4. 取り組みの実施、効果の測定

行動計画に基づいた取り組みを実行し、その効果を継続的に検証しましょう。計画(Plan)は立てられたので、実行(Do)、その計画に対する評価(Check)、改善(Action)のPDCAサイクルを行います。

実績データの記録・分析を行い、課題の再抽出につなげていきましょう。

対応によるメリット!公共調達などさまざまな点で有利に

4つのステップで計画の策定と実施を行うと、以下のようなメリットがあります。

  • 両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)

行動計画に盛り込んだ取り組み内容を実施し3年以内に達成した場合に助成金が支給されます。

  • 公共調達による優遇措置

えるぼし認定やプラチナえるぼし認定を取得しておくと、国や自治体の入札で優遇される場合があります。

  • 日本政策金融公庫による融資制度

行動計画の策定や「えるぼし」認定を取得した中小企業は、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」をより低金利で利用できます。

女性活躍を進めるポイント5ヶ条

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女性活躍推進を実効性のあるものとするには、法律への対応だけでなく、社内の環境整備や意識改革も重要です。ここでは、企業が押さえておくべき「5つのポイント」を紹介します。

ポイント1. 女性特有の健康問題を考慮する

「女性活躍が推進されるべき背景」にあるように、女性には特有の健康問題が存在します。PMSや更年期、妊活など、女性のライフステージに応じた健康課題が職場でのパフォーマンスや就労継続に影響を与えることは多くの調査でも明らかになっています。

また、健康課題に対応する施策を考える際には、個人のプライバシー保護に留意する必要があるとされています。

ポイント2. 女性が多様なキャリアを選べるようにする

女性が活躍できる職場づくりには、結婚・出産・育児・キャリアアップの有無にかかわらず、本人が望むキャリアを自由に選べる環境が欠かせません。

  • 管理職として活躍したい人
  • 子育てをしながら柔軟に働きたい人
  • 生涯現場でスキルを磨きたい人

こうした多様な働き方を認めることで、社内に複数のロールモデルが生まれ、女性の活躍が持続的に広がります。

ポイント3. 教育制度を充実させる

女性だけでなく、男性社員や管理職も含めて全員が、女性を取り巻く現状や推進の背景を理解することが不可欠です。

  • 管理職へのジェンダー研修
  • 健康課題への理解を深めるeラーニング
  • 男性育休や両立支援制度への理解促進セミナー

教育を通じて社内全体の意識醸成を図り、「誰かだけの問題」ではなく組織全体の課題として捉える文化を育てましょう。

ポイント4. 女性活躍支援ツール・サービスを利用する

社内だけで取り組みを進めるのが難しい場合は、外部の女性活躍支援サービスを活用してみましょう。Floraが提供しているサービス、「Welflow」は健康経営や女性活躍を推進するためのさまざまな機能が備わっています。

従業員向けのヘルスケアアプリやサーベイの実施から施策の提案、くるみんやえるぼしなどの認定取得の支援まで行っています。

▼Wellflowのサービスページはこちら

ポイント5. 社員の声を拾う仕組みをつくる

制度を整えても実際に社員に届いているか・機能しているかを確認するには、フィードバックが欠かせません。匿名のアンケートや社内ヒアリング、キャリア面談や常設の相談窓口などが有効です。

先ほど紹介したWelflowには、アンケート機能も備わっており、社員のリアルな声を定量的に把握する手段として活用できます。

まとめ:女性の健康問題に着目して活躍できる環境を作りましょう

女性活躍推進法は、女性がその能力を最大限に発揮できるよう、企業に対して行動計画の策定や情報公表を求める法律です。

義務だから対応するというだけでなく、女性特有の健康課題やライフイベントを理解し、長期的に働き続けられる環境を整えることが、真の意味での「女性活躍」につながります。企業が積極的に取り組むことで、以下のような好循環が生まれます。

  • 従業員満足度の向上
  • 採用力・定着率の強化
  • 企業ブランドの向上
  • 助成金や公共調達などの制度的メリット

取り組みは小さなことからでも構いません。まずは自社の現状を「見える化」し、女性の声に耳を傾けながら、誰もが安心して活躍できる会社づくりを目指しましょう。