女性活躍はなぜ必要?企業が今取り組むべき理由と実践のヒント

2025年 7月 15日

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「女性活躍が必要」とはよく言われますが、その理由を自分の言葉で説明できる人は意外と多くありません。

一方で、社会や法制度の整備や社会環境の変化を受けて、すでに多くの企業が女性活躍を“戦略的に”進めており、業績や組織力の向上といった目に見える成果を出しています。

この記事では、女性活躍がなぜ今求められているのか、取り組むことで得られるメリットや他社の成功事例をわかりやすく紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

女性活躍はなぜ今、企業に求められるのか

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現在、女性活躍推進は多くの企業に求められている課題の一つです。

女性活躍推進は、単なる社会的責任を超え、企業の持続的成長と競争力強化に直結する経営戦略として位置づけられています。

その背景には、社会構造の変化や法制度の整備、そして企業を取り巻く経営環境の変化があります。以下では、その具体的な背景と理由を詳しく解説していきます。

社会構造の変化と労働力不足

わが国の労働市場は深刻な人手不足に直面しています。パーソル総合研究所の調査によると、2023年の労働市場では189万人の働き手が不足しており、2035年には現在の1.85倍もの労働力不足が予想される状況です。

この労働力不足を解決するためには、女性が安心して働ける環境を整え、活躍の場を広げていくことが欠かせません。少子高齢化の進展により生産年齢人口の減少が加速する中、企業が持続的に成長するためには、従来の男性中心の労働力だけでは限界があります。女性の能力を最大限に活用する体制づくりが、企業の生存戦略として不可欠なのです。

▼参考:パーソル総合研究所 労働力不足予測調査

政府や自治体の政策・制度の動き

政府は女性活躍推進を重要な成長戦略として位置づけ、法制度の整備を積極的に進めています。2015年に制定された女性活躍推進法の改正や、えるぼし認定、くるみん認定などの企業評価制度により、取り組みへのインセンティブが高まっています。

現在、従業員数101人以上の企業の50.8%が女性活躍データベースを活用しており、制度の浸透が進んでいます。また、公共調達においても女性活躍推進企業を優遇する動きが広がっており、政府との取引を重視する企業にとって競争優位性の確保にも直結するでしょう。

▼参考:女性の活躍推進企業データベース利用状況(2024年度_2025年1月末時点)

人的資本経営・ESG経営において高評価の要素に

近年、企業価値評価において売上や利益などの数字だけでなく、従業員の働きやすさなど非財務情報の重要性が高まっています。人的資本経営とESG経営の観点から、女性活躍推進の取り組みが投資家や金融機関から高く評価される要素となっているのです。

ESG投資とは、環境(E)・社会(S)・企業統治(G)の3つの観点から企業を評価する投資手法です。女性活躍推進は「S(社会)」の要素として重視されています。女性管理職比率、男女間賃金格差、育児休業取得率など、女性活躍に関する指標は、企業の社会的責任を果たす能力と将来性を測る重要な目安となっているのです。

▼参考:内閣府男女共同参画局 資本市場における女性活躍評価

▼参考:日本総研 ESG投資を通じた女性活躍推進

企業評価や上場基準への影響

2023年度からプライム市場上場企業を対象とした人的資本の開示が義務化されました。これは、女性活躍推進に関するデータ――例えば女性比率、採用・昇進・管理職登用の状況など―を定量的に示すことが求められていることを意味します。

投資家や金融機関は、これらの開示情報を基に企業の将来性を評価するため、女性活躍推進の取り組みが株価や企業価値に直接影響する可能性があります。

また、各種企業ランキングや「健康経営優良法人」認定などでも、女性活躍推進が重要な評価項目となっており、企業のブランド力を高める要因の一つとなっています。

生産年齢人口の減少と共働き世帯の増加

生産年齢人口の減少が続く中、共働き世帯数は継続的に増加し、1997年には共働き世帯が片働き世帯数を上回りました。この社会構造の変化により、男女問わず仕事と家庭の両立支援が求められています。

また、日本の女性就業率(15〜64歳)は、1985年に約57%だったのが、2021年には71.3%まで上昇しています。これまで男性優位になりがちだった企業制度や社内文化を見直して、女性が働きやすい環境が求められています。

▼参考:第1節 就業 - 内閣府男女共同参画局 令和4年版 男女共同参画白書

男女格差解消への国際的な流れ

国連のSDGsでも「ジェンダー平等の実現」が掲げられ、世界的な取り組みが展開されています。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数において、日本は148か国中118位でありG7(主要7カ国)の中では最下位です。先進国の中でも依然として低位にあり、国際競争力向上の観点からも女性活躍推進は急務です。

海外の取引先や投資家からも女性活躍推進への取り組みが重要視される傾向が強まっており、グローバルに事業を展開する企業にとって、この国際的な評価は事業機会の獲得に直接影響する要因となっています。

▼参考:内閣府男女共同参画局 男女共同参画に関する国際的な指数

女性活躍を進めることで得られるメリット

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女性活躍推進は、投資効果の高い経営戦略として、以下の5つの主要なメリットがあります。これらのメリットは相互に関連し合い、企業の総合的な競争力向上につながります。

社員のモチベーションや定着率が向上する

女性活躍推進に取り組む企業では、女性従業員だけでなく全社員のモチベーション向上と定着率改善が見られます。

実際にえるぼし認定やくるみん認定を取得している企業ほど、女性正社員の平均勤続年数が長い傾向が明らかになっています。働きやすい環境整備や柔軟な働き方の導入により、従業員エンゲージメントが高まり、結果として優秀な人材の流出を防ぐことができるでしょう。

特に、育児や介護と仕事の両立支援制度の充実は、長期的な人材確保にもつながります。

また、ワークライフバランスの改善は男性従業員にも好影響を与え、組織全体の生産性向上が見込まれるでしょう。従業員が安心して働き続けられる環境づくりは、採用コストの削減と組織の安定性向上をもたらすのです。

▼参考:令和5年度・厚生労働省 女性活躍に関する調査 結果概要

組織の発想が多様化することで意思決定の質が高まる

多様な視点を持つ人材が意思決定に関わることで、判断の質が高まり、イノベーションが生まれやすくなります。BCGの国際調査では、管理職の多様性が高い企業は、そうでない企業と比べてイノベーションによる収益割合が19%、税引前利益が9%高いことが明らかになっています。商品・サービス開発に女性ならではの視点や感性を活かすことができれば、新たな顧客層の開拓や市場ニーズの発見が可能になるかもしれません。

また、リスク管理の観点からも、女性活躍は組織に大きなメリットをもたらします。

同質性の高い組織では、見落としや偏った意思決定が生じやすくなりますが、多様な視点が加わることで、リスク要因の洗い出しや意思決定の妥当性が高まり、組織としての判断がより慎重かつ的確になります。

▼参考:ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー 組織の多様性はどこで、どのように業績を高めるのか

企業価値とブランドイメージが向上する

女性活躍推進への積極的な取り組みは、社会的責任を果たす企業としてのブランドイメージ向上につながります。

消費者の企業選択において、CSR(企業の社会的責任)への取り組みが重要視される現代では、女性活躍推進は企業の信頼性を示す重要な指標となっているでしょう。

株式市場においても、ESG投資の拡大により、女性活躍推進に積極的な企業が投資家から高く評価される傾向が強まっています。

外部評価や認定取得によって競争力が上がる

えるぼし認定やくるみん認定などの外部認定取得により、公共調達での優遇措置や金融機関からの評価向上が期待できます。特に、政府や自治体の入札においては、女性活躍推進企業への加点制度が設けられているケースが多く、受注機会の拡大につながるでしょう。

また、各種企業ランキングでの上位評価により、企業の知名度と信頼性が向上します。

金融機関との関係においても、ESG経営の観点から女性活躍推進企業への融資条件優遇や、専用融資商品の提供を行う銀行が増加しています。「働きがいのある会社」ランキングや「健康経営優良法人」認定などでは、女性活躍推進の取り組みが重要な評価基準となっており、メディア露出機会の増加も期待できるのです。

優秀な人材の確保と活用ができる

女性活躍推進企業として認知されることで、優秀な女性人材の採用力が向上します。特に、管理職や専門職を目指す女性にとって、キャリア形成の機会が豊富な企業は魅力的な選択肢となり、競合他社との差別化要因となるでしょう。

また、既存の女性従業員の能力を最大限活用することで、組織全体の生産性向上と人材力強化が実現できます。

さらに、女性活躍推進の取り組みは、男性従業員にとっても働きやすい環境整備につながります。育児参加の機会拡大や柔軟な働き方の導入により、性別に関わらず全従業員のパフォーマンス向上が期待できるのです。

女性活躍推進の初めてのステップ

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女性活躍推進を成功させるためには、体系的で段階的なアプローチが重要です。

多くの企業が「何から手をつければよいかわからない」という課題に直面していますが、以下のステップを順序立てて実行することで、確実な成果につなげることができるでしょう。

現状の課題とニーズを把握する

効果的な女性活躍推進を行うためには、自社の現状を正確に把握することから始める必要があります。社内の女性比率や管理職数、離職率などのデータを収集・分析することで、取り組むべき課題の優先順位を明確化できるようになります。

定量的なデータ分析に加えて、社員アンケートやヒアリングを実施し、現場の生の声を吸い上げることが重要です。

「なぜ女性の管理職登用が進まないのか」「どのような支援があれば働き続けられるか」といった具体的な課題を把握し、部署や年代別の課題の違いを分析することで、効果的な施策を検討できます。現状把握の結果は、経営層や関係部署と共有し、推進計画策定の基礎資料として活用しましょう。

社内コミュニケーションと啓発活動を行う

女性活躍推進の取り組みを社内に浸透させるためには、継続的なコミュニケーションと啓発活動が欠かせません。女性活躍の意義や社内施策について、説明会や社内報などを通じて周知徹底を図ることが重要です。

管理職向けの研修を定期的に実施し、具体的なサポート方法やコミュニケーションスキルを学んでもらいましょう。

また、女性活躍推進の成功事例や他社の取り組み事例を紹介することで、取り組みの必要性と効果を具体的にイメージしてもらうことができます。社内イントラネットや全社会議での進捗報告により、取り組みの透明性を確保し、社員の関心と参加意識を高めることも重要です。

進捗を見える化し、PDCAサイクルを回す

女性活躍推進の取り組みを継続的に改善していくためには、KPI設定と定期的な進捗管理が不可欠です。女性管理職比率、育児休業取得率、定着率などの数値指標に加えて、従業員満足度や職場風土に関する定性指標も設定しましょう。

月次または四半期ごとに進捗状況をモニタリングし、目標達成に向けた課題と改善策を検討することが重要です。進捗状況や成果は、経営層への報告だけでなく、全社員に対しても定期的に共有することで、取り組みの成果を実感してもらい、更なる協力を得ることができます。

課題が明らかになった場合は、速やかに改善策を検討し、柔軟に計画を修正することで、より効果的な推進体制を構築できるでしょう。

小規模な施策から段階的に開始する

女性活躍推進を成功させるためには、小規模な施策から段階的に開始することが重要です。育児・介護休暇の取得促進やフレックスタイム制導入など、実現可能な施策から始めることで、社員の理解と協力を得やすくなるでしょう。

まず、コストをかけずに実施できる取り組みから着手し、成果を確認しながら徐々に範囲を広げていくアプローチが効果的です。小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体の自信と推進力を高めることができます。各施策の効果を丁寧に検証し、成功要因を分析することで、次の施策展開に活かすことが可能です。

H2:女性活躍推進に取り組む企業事例

実際に女性活躍推進で成果を上げている企業の具体例を見ることで、自社での取り組みイメージが明確になります。以下では、規模や業界を問わず参考になる成功事例をご紹介します。これらの事例から、具体的な施策と効果を学び、自社の状況に合わせた取り組みを検討しましょう。

中小企業の成功事例

厚生労働省の「テレワーク活用の好事例集」によると、製造業やサービス業の企業で女性社員の定着率向上や働きやすい環境づくりを目的にテレワーク制度を導入し、離職率の改善や生産性の向上が報告されています。

一部の事例では、離職率が導入前の約30%から5%に低下した企業や、組織全体の生産性が約10%向上した企業もあります。また、キャリア面談や研修制度の充実により、女性管理職の割合を3年間で0%から20%に引き上げた事例も紹介されています。

▼参考:厚生労働省 テレワーク活用の好事例集

女性管理職登用の工夫事例

経済産業省の報告では、IT業界の企業が「女性リーダー候補者プログラム」を導入し、管理職登用の2年前からマネジメント研修やプロジェクトリーダーの経験を積ませる仕組みを整えています。

この取り組みにより、女性管理職の定着率は95%を超え、組織のパフォーマンスも約15%向上しています。

さらに、建設業界の企業では長時間労働を見直し、効率化とデジタル化を進めることで、女性現場監督の採用率が導入前の5%から15%へ増加。安全管理の強化により労災事故も20%減少しています。

▼参考:経済産業省 令和6年度「なでしこ銘柄」選定企業事例集

売上にも繋がった事例

小売業の企業では、女性管理職の割合を3年間で2倍以上に高めたことで、店舗の売上が10%以上増加した事例があります。スタッフ間のコミュニケーションや顧客対応の質の向上が、売上にもつながることが分かります。

これらの具体的な成果は、女性活躍推進が単なる理念や義務ではなく、企業の経営課題解決や競争力向上に直結する取り組みであることを示しています。

▼参考:厚生労働省 女性活躍推進好事例集

まとめ

女性活躍推進は、現代の企業経営において避けて通れない重要な経営課題です。労働力不足の深刻化、人的資本経営の重要性向上、ESG投資の拡大といった社会情勢の変化により、女性活躍推進への取り組みは企業の競争力に直結する要素となっています。

本記事でご紹介した段階的なアプローチと具体的な企業事例を参考に、自社の状況に応じた女性活躍推進計画を策定してみてください。小さな取り組みから始めて着実に成果を積み重ねることで、組織全体の成長と持続的な競争優位性の確立につなげることができるでしょう。

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