生理休暇の名称変更例!言い換えることで男女に配慮ある制度運用にしよう

2025年 8月 1日

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生理休暇は労働基準法で定められた制度ですが、実際の取得率はわずか0.9%。その背景には、「生理」という言葉に対する恥ずかしさや偏見、申請しづらい職場の空気があります。こうした課題を解決するため、近年では名称変更や制度運用の見直しが進んでいます。

この記事では、名称変更の具体例と導入時の工夫、女性の健康やライフステージに寄り添う支援制度を紹介します。

生理休暇とは何か

生理休暇は、生理日の就業が困難な女性に対する措置であり、労働基準法第68条によって定められています。企業は従業員からの請求があった場合、必ず休暇を与えなければなりません。

しかし、厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、生理休暇の取得率は令和2年度で0.9%です。現実には「男性上司に言いづらい」「名称が直接的で心理的ハードルが高い」といった声があります。この背景から、名称の見直しが注目されています。

▼参考:労働基準法第68条

▼参考:厚生労働省 雇用均等基本調査

生理休暇の名称変更例・言い換え例

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生理休暇の取得しやすさを向上させるため、多くの企業が名称の見直しに取り組んでいます。直接的な表現を避けつつ、制度の趣旨を伝える工夫が求められています。ここでは、実際に企業で導入されている主要な言い換え表現を詳しく見ていきましょう。

ウェルネス休暇

「ウェルネス休暇」は、健康全般をサポートする休暇制度として位置づけられる表現です。生理だけでなく、体調不良全般に対応できる包括的な名称として採用する企業が増えています。

カルビー株式会社では、2022年に生理休暇の名称を「ウェルネス休暇」へ変更しました。同社の事例では、生理休暇だけでなく、男女ともに利用できる休暇として、不妊治療の検査や通院にも適用できるよう制度の内容も変更しています。

▼参考:特集 働く女性と生理休暇:企業取組事例

エフ休暇

「エフ休暇」は、Female(女性)の頭文字「F」を取った表現で、2014年にサイバーエージェントが導入した名称として知られています。生理という具体的な身体機能を直接表現せずに、女性特有の体調不良に対応する休暇であることを示しています。

カウシェでは、2022年5月より「エフ休(Female休暇)」として、生理や更年期障害、妊娠前の検査などに月1回取得できる特別休暇制度として運用されています。

▼参考:厚生労働省 サイバーエージェントの取り組み

▼参考:カウシェ 「生理休暇ってあるんだっけ?」からはじまったエフ休制度の導入

エクイティ休暇

「エクイティ休暇」は、公平性(Equity)の観点から命名された休暇制度です。この表現は、性別による生物学的な違いを考慮した公正な職場環境を提供するという意味が込められています。

「エクイティ」という言葉は、近年のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の文脈で頻繁に使われており、企業の社会的責任や公平性への取り組みを表現する上で適切な名称といえるでしょう。

▼参考:MSDジャパン 女性の健康支援 インタビュー-WN

Her Day Leave(ハーデイ・リーブ)

「Her Day Leave(ハーデイ・リーブ)」は、英語表記によるスマートかつ柔らかい印象を与える名称です。直訳は「彼女の日の休暇」で、生理という直接的な言葉を避けながら趣旨を明確に伝えます。

英語表記は日本語特有の抵抗感を和らげ、国際的な職場環境にもなじみやすい点が特徴です。 多様性を重視する企業文化の表れとしても有効で、申請時の心理的負担を軽減します。

Female Care休暇

「Female Care休暇」は、女性の健康管理を前向きなケアとして捉えた名称です。「Care」という言葉が、休暇取得を責任ある自己管理としてポジティブに印象付けます。

健康経営の一環として導入されることが多く、社内の健康意識向上に貢献します。 医療や介護分野にも馴染みがあり、専門性と信頼性を示す表現としても適しています。

ボディケア休暇

「ボディケア休暇」は、性別を限定せず身体ケア全般を対象とする包括的な名称です。生理だけでなく、定期検診や予防医療など幅広い健康支援を取り込むことが可能です。

フィットネスや美容の文脈で用いられるため、前向きで明るいイメージがあります。職場全体の健康意識を底上げする制度として、近年注目を集めています。

女性健康休暇

「女性健康休暇」は、シンプルで分かりやすい健康志向の名称です。健康管理の重要性を前面に出し、従業員が前向きに休暇を取得しやすくなります。

婦人科検診などの定期受診促進にも活用され、早期発見や健康維持に貢献します。 健康経営を推進する企業が社内外に取り組みを示す際にも有効な表現です。

生理休暇を名称変更するときのポイント

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使いやすく前向きな制度にするためには、名称の工夫と社内の理解促進が大切です。ここでは名称変更するときのポイントを解説します。

女性の健康課題特有のスティグマ(偏見・恥)の緩和

「生理」という言葉に恥ずかしさや偏見を感じる人も多いため、直接的な表現を避けた名称変更は、その心理的障壁を下げる有効な方法です。

たとえば、英語表記(例:Her Day Leave)や、柔らかい言い換え(例:リズム休暇、ヘルスケア休暇)などは、「恥ずかしい」「周囲に知られたくない」といった気持ちを和らげ、利用しやすい雰囲気をつくるのに役立ちます。

経産省も、女性特有の健康課題には“使いやすい雰囲気”づくりや管理職研修が重要だとしています。名称変更と併せ、周囲の理解促進を進めましょう。

▼参考:経済産業省 男女共同参画局

生理休暇の利用のしやすさ(申請しやすさ)

厚生労働省は、生理は日数を就業規則で制限できない(=個人差が大きい)と明確に示しており、半日・時間単位での請求も可能です。申請時に理由を明かさなくて済む仕組みや、「誰が取得しても違和感のない」名称を採用することで、制度利用の心理的ハードルを大きく下げられます。

さらに、対象症状の例示や申請方法を簡素化し、社員が迷わないガイドを整備することが大切です。

▼参考:厚生労働省 労働基準法のあらまし(生理休暇)

健康全般に配慮した印象

生理に限らず、PMSや不妊治療、更年期障害、婦人科検診など幅広い体調ケアを想定した制度設計にすることで、より納得感のある名称になります。

たとえば、ウェルネス休暇やフェムケア休暇、ボディケア休暇など、前向きで包括的な表現を使うことで企業の配慮や姿勢が伝わりやすくなります。

ジェンダー平等と整合性

「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」にエクイティ(Equity=公正性)を加えたDE&Iの考え方では、「同じものを一律に与える(Equality)」ではなく、個々のニーズに応じた支援をすることが重視されます。そのため、生理や更年期といった性差やライフステージの課題に対し、公平性や制度の趣旨が伝わる名称を選ぶことが大切です。

「女性だけの特別休暇」と誤解されないよう、男性にも理解されやすい呼び方にすることで、制度が社内に定着しやすくなります。

▼参考: JPCネット働きがい研究所

法令遵守と運用ルールの明確化

生理休暇は、労働基準法第68条の趣旨「請求があれば就業させられない」「日数を限定できない」を満たす必要があります。

そのため、有給・無給の扱い、証明書の要否、時間単位取得の可否、管理職への周知範囲などを文書化し、就業規則や社内ポータルに明記しましょう。

名称変更で使いやすくするだけでなく、透明性を高めることで、不公平感やハラスメントの抑止にもつながります。

女性活躍推進につながる制度と配慮

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生理休暇に限らず、働く女性の健康やライフステージに寄り添う制度は多様に存在します。ここでは、制度導入の参考となる具体的な取り組みや支援例を紹介します。

男女ともに使える生理休暇

「生理休暇」という名称に代えて、男女を問わず取得可能な休暇制度として設計する企業もあります。前述のように「ウェルネス休暇」や「ボディケア休暇」など、体調不良全般に対応する形にすることで、性別を問わない公平な制度運用が可能になります。こうした配慮は、社内の理解促進や制度の定着にもつながります。

不妊治療休暇・支援制度

不妊治療を受ける従業員に対して、通院や検査に対応できる休暇制度を設ける企業も増えています。治療は時間的・精神的負担が大きいため、配慮のある制度設計が必要です。自治体による助成や、厚生労働省の「不妊治療と仕事の両立支援ハンドブック」も参考に、社内制度を整備するとよいでしょう。

▼参考:厚生労働省 不妊治療と仕事との両立について

プレコンセプションケア支援

プレコンセプションケアとは、将来妊娠を希望する人が、妊娠前から自身の心身の健康を整えておくためのケアや支援のことです。たとえば、風疹抗体の有無や婦人科系の検査、生活習慣の見直しなどが含まれます。

企業がこの考え方を取り入れ、健康診断項目の拡充や情報提供を制度として整えることで、従業員が安心して将来の選択肢を持てる環境を作れます。これは女性だけでなく、妊娠や出産を支える立場にある男性にとっても有益であり、全社員への周知と支援が求められる取り組みです。

更年期サポート制度

更年期の症状に悩む従業員への配慮も、重要な取り組みのひとつです。勤務時間の柔軟化や体調に応じた業務配分の見直し、産業医・外部相談窓口の設置など、症状に合わせた選択肢を提示することが求められます。見えにくい不調に寄り添う姿勢が、安心して働ける環境づくりにつながります。

健康デバイスの配布・活用支援

従業員の健康リテラシー向上とセルフケア促進を目的に、ヘルスケアアプリやウェアラブルデバイスを導入する企業もあります。

たとえば、Floraが提供するWellflow(ウェルフロー)は、女性従業員の体調やライフステージに寄り添う法人向けのサービスで従業員向けのヘルスケアアプリを提供しています。 生理周期やPMS、睡眠、気分、排便、体重などを日々記録でき、ユーザー自身が体調の変化を可視化・管理することで、セルフケア意識の向上が期待できます。

一方、企業側は従業員の同意のもとで、匿名化された集計データを分析し、健康課題の傾向を把握可能です。これにより、健康経営や女性活躍推進の施策設計、管理職向け研修の充実など、科学的根拠に基づく社内制度の見直しが可能になります。 日々の記録と組織単位のデータ活用を両立し、個人と組織の双方に価値をもたらすソリューションです。

こうしたツールの導入は、従業員一人ひとりの健康意識を高めながら、組織全体のウェルビーイングを底上げする起点となります。

▼ 参考:Wellflowのサービス詳細はこちら

泌尿器・前立腺検診補助

女性の健康支援に偏りすぎず、男性特有の健康課題にも目を向けることが、DE&Iの観点では重要です。前立腺がん検診や泌尿器系の検診費用補助は、その一例です。男性も含めた「誰もが健康に働ける職場づくり」を意識した取り組みとして、バランスのとれた支援設計が求められます。

育児・介護と両立しやすいシフト制度

女性活躍推進を実現するには、家庭との両立支援が欠かせません。コアタイムなしのフレックス制度や、短時間勤務の選択肢、曜日・時間帯に配慮したシフト設計などは、育児や介護を担う従業員にとって大きな安心材料となります。柔軟な働き方を可能にする制度が、長期的な定着と活躍につながります。

まとめ

生理休暇の取得しやすさは、制度そのものだけでなく、「名称」や「社内の空気感」に大きく左右されます。前向きな言い換えや、誰でも取得しやすい名称に変えることで、心理的ハードルを下げることが可能です。

また、不妊治療や体調不良全般にも使えるなど、性別を問わず活用できる制度にすることも重要です。アプリの活用や検診補助など、企業にできる配慮は数多く存在します。

名称変更をきっかけに、従業員の健康と多様な働き方を支える制度設計を見直すことで、組織の信頼性と生産性向上につながります。

女性活躍推進をご検討中の企業様は、ぜひWellflowにご相談ください。貴社の課題や組織体制に合わせた最適なプランをご提案いたします。

▼参考:Wellflowのサービス詳細はこちら