ダイバーシティの取り組み事例7選!取り組みの進め方も解説

2025年 7月 16日

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ダイバーシティ推進は、多様な人材が活躍できる組織づくりに欠かせないテーマですが、具体的に何から始めればよいか迷う企業も多いでしょう。

本記事では、ダイバーシティの取り組み事例を7つ厳選して紹介します。自社の課題と似た課題を抱えていた企業や、同じ規模感の企業などはぜひ参考にしてみてください。

また、企業の担当者が実務として段階的に着手できる進め方をわかりやすく解説します。これを読むことで、自社のダイバーシティ推進の成功に向けた道筋が見えてくるはずです。

ダイバーシティの定義と種類

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ダイバーシティ(多様性)とは、性別・年齢・国籍など、さまざまな違いを受け入れ、尊重し合う考え方です。ビジネスの場においても、単に多様な人材を採用するだけでなく、その個性や背景を理解し活かす姿勢が求められています。

ダイバーシティには、大きく分けて「表層的ダイバーシティ」「深層的ダイバーシティ」の2種類があります。

表層的ダイバーシティ

表層的ダイバーシティとは、外見や属性など目に見える違いを指し、主に以下が含まれます。

  • 性別:女性・男性・ノンバイナリーなど
  • 年齢:若年層・中堅層・シニア層
  • 国籍・人種・文化:外国籍、多民族、異文化背景
  • 障害の有無:身体・精神・発達障害の有無
  • 雇用形態:正社員・非正規社員・派遣社員・副業人材

これらは採用・制度設計の面で把握しやすく、企業としてもダイバーシティ推進の「入り口」となりやすい項目です。

深層的ダイバーシティ

深層的ダイバーシティは、外見からはわかりにくい、内面的な価値観や背景の違いを指します。より本質的なインクルージョン(受容)の実現には、この層への配慮が不可欠です。

  • 性的指向・性自認:LGBTQ+、またはそれを理解・支援するアライ(Ally)
  • 家庭環境・ライフスタイル:育児・介護中、ひとり親、共働きなど
  • 学歴・職歴・キャリア経歴:高卒、大卒、中途入社、業界経験
  • 宗教・信仰:宗教的価値観、戒律、食事制限、礼拝の習慣
  • 価値観・思考スタイル:リスク志向/保守志向、創造型/実行型
  • 働き方の志向:フルリモート、ワークライフバランス重視、副業思考

深層的ダイバーシティへの理解が不足していると、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)により、働きづらさや孤立感を生む原因になります。そのため、企業はこうした目に見えにくい違いにも丁寧に向き合い、心理的安全性の高い環境づくりに取り組むことが重要です。

ダイバーシティの取り組みが必要な背景

ダイバーシティの取り組みは、人口減少や労働力不足、働く人の価値観の多様化、企業の競争力強化、そしてESGやジェンダーギャップ指数などの社会的要請を背景に、ますます重要となっています。こうした変化に対応するため、多様な人材を活かす環境づくりが企業に求められています。 

人口減少・労働力不足への対応

日本は少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少しています。総務省のデータによると、2040年には労働力人口が1,000万人以上減少する見込みです。

従来の「男性・正社員中心」の働き方だけでは人材確保が難しくなり、多様な人材が活躍できる環境が求められています

シニア層や女性、外国人、障害者、副業人材など、これまで活用されにくかった人材の力を引き出す制度設計が鍵になります。

▼参考:総務省 令和4年版 情報通信白書

働き手の価値観の多様化

Z世代を中心に「安定・出世」よりも「自己実現・多様性・心理的安全性」を重視する人が増えています。育児や介護、副業、フルリモートなど、柔軟な働き方を求める声も高まっており、企業は価値観の違いを受け入れる制度設計が必要です。

また、「誰もが自分らしく働ける環境」を整えることは、企業ブランディングにもつながり、採用競争力の強化にも寄与します。

イノベーションと競争力の向上

マッキンゼーの調査によれば、多様性の高い組織は業績が良い傾向にあります。多様な視点が集まることで、新しいアイデアが生まれ、イノベーションが加速します。グローバル市場や新商品開発においても、多様性は強みになります。

異なるバックグラウンドを持つ人材同士が意見をぶつけ合うことで、これまでにない発想や新しい市場のニーズに応える商品・サービスが生まれやすくなります。

▼参考:マッキンゼーの調査

ESG・SDGs・ジェンダーギャップ指数への対応

投資家や社会からは、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)への対応が強く求められています。特に「社会」の分野では、多様性と包摂性(インクルージョン)が重要視されており、日本のジェンダーギャップ指数の低さも企業に行動を促しています。

上場企業を中心に、人的資本開示の中で「女性管理職比率」や「多様な人材の育成」などの指標が注目されており、非財務情報の整備も経営課題となっています。

女性活躍推進の社会的要請と経営的メリット

日本の女性管理職の割合は2023年で平均10.9%と非常に低く、国際比較では2024年で日本のジェンダーギャップ指数は146か国中118位と後れを取っています。女性の活躍推進は、労働力確保だけでなく、消費の意思決定層である女性視点を経営に取り入れることにもつながります。

また、管理職・経営層への登用は、ロールモデルの存在として若手女性社員のモチベーションにも直結します。

▼参考:帝国データバンク 女性登用に対する企業の意識調査

▼参考:内閣府 男女共同参画に関する国際的な指数

ダイバーシティの取り組み事例7選

ここでは、性別・ライフステージ・LGBTQ+・シニア活躍など、多様な観点から先進的な取り組みを行っている企業事例を紹介します。それぞれの事例から、自社に取り入れられるヒントや実践のポイントを見つけていきましょう。

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性別特有課題への理解とサポートに関する研修(ユニリーバ・ジャパン)

ユニリーバ・ジャパンは、従業員向けに生理や更年期障害に関する正しい理解を深める研修を実施。性別に関わらず学び合うことで、心理的安全性の高い職場づくりにつなげています。

  • 課題:生理や更年期など性別特有の健康課題に対する理解不足で職場の心理的安全性が低い。
  • 取り組み内容:従業員向けに性別特有課題を学ぶ研修を実施し、知識共有と理解促進を図った。
  • 効果:性別の壁を越えたコミュニケーションが増え、心理的安全性が向上。職場環境の改善につながった。

▼参考:ユニリーバ・ジャパンのダイバーシティの取り組み

ライフステージの健康課題と仕事に関するQ&A集(LINEヤフー)

LINEヤフーは、妊娠・育児・更年期など、健康課題に関する社内Q&Aを整備。従業員が安心して働き続ける環境をサポートしています。

  • 課題:妊娠・育児・更年期などの健康課題で仕事を続けにくい状況があった。
  • 取り組み内容:健康課題に関するよくある質問をまとめたQ&A集を社内に展開し、情報アクセスを容易にした。
  • 効果:従業員の不安軽減と早期相談促進につながり、離職防止や生産性向上に寄与。

▼参考:LINEヤフーのダイバーシティの取り組み

女性向けヘルスケアアプリ「Wellflow」の提供(MS&ADインターリスク総研株式会社)

MS&ADインターリスク総研株式会社は、女性の体調管理や健康リテラシー向上を支援するアプリを開発し、福利厚生として導入。従業員のエンゲージメント向上にも寄与しています。

  • 課題:女性従業員の健康管理やセルフケアが不十分で、体調不良によるパフォーマンス低下が懸念された。
  • 取り組み内容:女性の体調管理を支援するヘルスケアアプリを福利厚生として提供。
  • 効果:自己管理意識が高まり、健康課題への理解も深まることで、働きやすさとエンゲージメントが向上。

▼参考:MS&ADインターリスク総研株式会社のダイバーシティの取り組み

女性の健康課題に関する実地研修(東急電鉄)

東急電鉄は、駅や現場職場で働く従業員を対象に、女性の健康課題に配慮した体験型研修を実施。現場特有の課題に即した取り組みで、働きやすい環境づくりを推進しています。

  • 課題:現場で働く女性社員の健康課題に対する理解不足と支援体制の不足。
  • 取り組み内容:女性の健康課題を体験しながら学ぶ実地研修を実施。
  • 効果:管理職・同僚の理解が深まり、女性が働きやすい職場環境の醸成に貢献。

▼参考:東急電鉄のダイバーシティの取り組み

LGBTQ+当事者による社内講演会(株式会社リクルート)

リクルートは、LGBTQ+当事者を招き、ダイバーシティと心理的安全性について学ぶ機会を提供。現場での無意識の偏見を防ぐきっかけづくりを実践。

  • 課題:LGBTQ+に関する無理解や偏見による職場の孤立や心理的負担。
  • 取り組み内容:LGBTQ+当事者を招いた講演会を開催し、理解促進と意識改革を推進
  • 効果:多様性に対する理解が深まり、インクルーシブな文化が醸成された。

▼参考:リクルートのダイバーシティの取り組み

育児・介護とキャリアの両立支援(味の素株式会社)

味の素は、育児・介護中の社員が参加できる社内コミュニティを整備。両立支援ガイドブックの配布や、オンライン相談会の実施も行っています。

  • 課題:育児・介護と仕事の両立が難しく、離職リスクが高まっていた。
  • 取り組み内容:育児・介護中社員向けのコミュニティ運営や相談会を実施し、情報共有を促進。
  • 効果:働き続けやすい環境が整い、離職率の低下と社員満足度向上に寄与

▼参考:味の素のダイバーシティの取り組み

シニア人材の活躍推進プログラム(株式会社大和証券グループ)

大和証券は、定年後の再雇用者向けにキャリア支援・自己啓発プログラムを導入。年齢に関係なく活躍できる人事制度を整備しています。

  • 課題:定年後の再雇用者が活躍できる環境が不足していた。
  • 取り組み内容:シニア向けのキャリア支援・自己啓発プログラムを導入し、年齢に関係ない活躍を促進。
  • 効果:シニア社員のモチベーション向上と人材活用の多様化に成功。

▼参考:大和証券のダイバーシティの取り組み

ダイバーシティの取り組みの進め方

ダイバーシティ推進は、単なる制度の導入ではなく、企業文化や意識改革も含めた中長期的なプロジェクトです。そこで、まずは現状をしっかり把握して、会社に合った方針や制度を作りながら、徐々に取り組みを広げていくことが大切です。

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フェーズ1:現状把握と基盤整備(初期の3〜6か月)

まずは社内の人員構成やダイバーシティに関する意識・課題を把握し、取り組みの出発点を明確にする段階です。経営層と共通認識を持つことが、その後の施策実行をスムーズにします。

  • 社内の人員構成や雇用データを整理し、可視化する。
  • KPI(例:女性管理職比率、育児休業取得率)を現状値と目標値で設定する。
  • 社内アンケートを実施し、意識や課題を把握する。
  • 経営層に現状・課題・方針をレポートで共有する。

フェーズ2:方針策定と制度準備(6か月〜1年)

次に、会社としてどのような方向に進むのかを明確化し、必要な制度や体制を整えていきます。実行可能な小さなステップを積み重ねていくことが大切です。

  • 自社に合ったダイバーシティ方針を明文化する。
  • 数値目標をSMART原則で設定する(具体的・測定可能・期限あり)。
  • 既存制度の棚卸しを行い、必要な制度を追加・改善する。
  • 課題別ワーキンググループを立ち上げる。

フェーズ3:制度運用・カルチャー浸透(1年〜)

制度を導入したら終わりではなく、現場で活用され、文化として根づくことが重要です。教育や社内広報を通じて意識変容を促し、継続的な改善にもつなげていきます。

  • アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)研修を管理職向けに実施する。
  • 社内でロールモデルとなる事例を積極的に発信する。
  • 取り組み状況を年次でレポートし、外部認証も取得する。
  • 月次でKPIを確認し、社内相談窓口を活用する。

補足:推進室の月次タスク例

ダイバーシティ推進室や人事部門は、下記のようなタスクを定期的に行うと、取り組みの継続性と実効性を高められます。

  • KPI進捗のモニタリングとレポーティング
  • 社内相談窓口・アンケートフォームの運用と対応
  • 社内向けの取り組み進捗報告・事例紹介(ポータル・掲示板など)
  • 勉強会・研修・座談会など、学びの場の企画と開催

ダイバーシティに取り組むならWellflowで

本記事では、実際にダイバーシティの取り組みを行う企業の事例を紹介しました。

ダイバーシティの取り組みは、単なる「多様な人材の受け入れ」ではなく、その一人ひとりが力を発揮できる環境を整えることに本質があります。人口減少や働き手の価値観の多様化、ESG投資やジェンダーギャップへの社会的要請が高まる中、ダイバーシティは今や企業の競争力を左右する重要な経営戦略です。

まずは自社の現状を把握し、小さな一歩から始めることが成功への近道です。

Wellflowでは、ダイバーシティ推進に取り組む企業に向けたさまざまなサービスを提供しています。本記事で紹介した女性の健康課題をテーマにした研修や、従業員向けのヘルスケアアプリをはじめ、サーベイや健康経営や女性活躍に関する認定の支援など、貴社の課題合ったソリューションを提供します。

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