エンゲージメント研修とは?離職防止・健康経営に効果的な実施方法を解説
2025年 9月 30日

エンゲージメント研修は、離職率低下や健康経営を実現する戦略的投資として位置づけられています。しかし、どのような研修を選択すべきか、どのように導入・運用すればよいかといった具体的な方法については、多くの人事担当者が課題を感じているのが現状です。
本記事では、エンゲージメント研修の基本的な概念から効果、具体的な研修の種類、成功するための実践ポイントまでを体系的に解説します。
健康経営や女性活躍推進との連動方法も紹介しますので、自社に最適なエンゲージメント研修の導入にお役立てください。
エンゲージメント研修とは

社員のモチベーション低下や離職率の高さに悩む企業にとって、エンゲージメント研修は重要な解決策の一つとして注目されています。エンゲージメント研修は、社員と企業の関係性そのものを見直し、相互の成長を促進する戦略的な取り組みです。
エンゲージメントの意味
「エンゲージメント」という言葉は、人事領域では「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係」という意味で使われます。
また、エンゲージメントは「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の2つに分けることもできます。
ワークエンゲージメントは、仕事にやりがいを感じて活力を得ている状態を指す一方、従業員エンゲージメントは所属組織への貢献意欲を指すのが特徴です。
エンゲージメント研修の目的
エンゲージメント研修の目的は、社員が仕事へのやりがいや目的意識を高め、組織への信頼や一体感を持てるようにすることで、主体性や生産性を引き出し、離職防止や業績向上につなげることです。また、コミュニケーションを円滑にして心理的安全性を高め、個々の強みやキャリア形成を支援することで、社員の成長と企業の成長を両立させる基盤を築くことにあります。
エンゲージメント研修の目的には 、エンゲージメントサーベイの結果改善も含まれます。研修によって社員の意識・行動を変え、マネジメント改善やコミュニケーション活性化を促すことで、次回以降のサーベイ結果の改善につながるでしょう。
▼関連記事:エンゲージメントサーベイとは?企業成長を加速させる組織改善ツールを解説
企業が直面する課題と背景
現代の企業がエンゲージメント研修に注目する背景には、深刻化する人材課題があります。また、働き方の多様化が進む中、画一的な管理手法では社員の多様なニーズに応えることができません。
それに加え、エンゲージメントの向上はメンタルヘルスの改善や働きがいの向上と密接に関連しており、健康経営の推進でも重要な要素です。
エンゲージメント研修は、このような企業が抱える人材課題に対して、包括的なソリューションを提供します。組織文化の変革を通じた根本的な解決を目指すアプローチが、多くの企業から注目される理由なのです。
エンゲージメント研修の効果

エンゲージメント研修を行うことにより、企業にとって嬉しいさまざまな効果が現れます。ここでは4つの効果について解説します。
離職率が低下し人材が定着する
エンゲージメント研修を実施すると、離職率の大幅な改善が期待できます。従業員のエンゲージメントが高まると、会社への愛着や仕事への情熱が増し、離職を考える人が減少するからです。
離職率が下がることで、人材が定着するだけでなく専門的なノウハウや顧客との信頼関係が組織内に蓄積されます。さらに、ベテラン社員による若手育成が進み、組織全体のスキル向上と競争力強化につながります。
生産性が向上する
エンゲージメント研修は、業務パフォーマンスを直接的に高める効果も持っています。
研修によってエンゲージメントが高まった社員は、自ら課題を発見し解決に取り組む姿勢を持っているため、管理業務にかかる工数が削減され、組織全体の生産性が向上するでしょう。
また、仕事に対する誇りや責任感が高まることで業務の質が向上し、ミスややり直しが減少します。
顧客満足度が上がる
社員のエンゲージメントが高まることは、顧客へのサービスにも大きな影響を与えます。
仕事への情熱と責任感を持った社員は、顧客と接する場面でも質の高い対応・サービスを提供し、顧客が満足することでリピート率が向上します。
さらに、満足した顧客が自発的に口コミや紹介を行うことで新たな顧客が獲得され、ブランド価値が高まります。
健康経営・女性活躍との関連性
エンゲージメント研修は、健康経営や女性活躍推進といった現代企業の重要な経営課題とも密接に関連しています。これらの取り組みを統合的に進めることで、より大きな効果が期待できるでしょう。
エンゲージメントの向上はメンタルヘルスやワークライフバランスの実現、健康意識の向上の点で健康経営と強い関連性を持ちます。また、エンゲージメント研修は女性活躍の推進でも重要な役割を果たします。
エンゲージメント研修の種類

エンゲージメント研修には、対象者や目的に応じてさまざまなタイプがあります。自社の課題や組織の状況に合わせて適切な研修を選択することが、効果的な結果を得るための重要なポイントです。
管理職向け研修(1on1・マネジメント)
管理職向けのエンゲージメント研修は、部下との関係性を改善し、チーム全体のエンゲージメント向上を図る研修です。管理職がいかに部下の意欲を引き出すかに焦点を当てています
1on1スキル向上研修
1on1スキル向上研修とは、管理職が部下との1on1において、部下の成長を促し信頼を築く対話スキルを身につけたり、社内に育成文化を根付かせたりすることです。
特にこの研修を通して上司は、部下の自発的な気づきを促す質問方法を学びます。また、共感を示すスキルを身につけ、建設的で成長につながるフィードバックの与え方を習得し、部下のモチベーション向上を図ります。
従来の指示型コミュニケーションから、対話型コミュニケーションへの転換ができるようになるでしょう。
マネジメント力強化研修
マネジメント力強化研修は、自部門の部下のエンゲージメントを高めるためのスキルを学ぶプログラムです。管理職が効果的なマネジメントを実践することで、部下との信頼関係を構築し、組織全体のエンゲージメント向上を図ることを目的としています。
マネジメント力強化研修は、管理職が直面する業務改善、コミュニケーション、モチベーション、ストレス管理などの課題にアプローチし、部下に対するマネジメント力を強化します。
全社員向け研修(チームビルディングなど)
全社員を対象としたエンゲージメント研修は、組織全体の一体感を醸成し、協働意識を高めることが目的です。
チームビルディング研修は、ワークショップやゲームなどを通してチームをメンバーが同じ目標に向かって協力し合える組織にしていく手法を身に付ける研修です。
これにより、各自のスキルや能力、経験などを最大限に発揮して目標を達成できるチームに近づくでしょう。
健康経営やダイバーシティと連動した研修
健康経営を通して従業員エンゲージメントを高める研修では、ストレスマネジメントや、メンタルヘルス対策、健康的な職場づくりのための具体的手法などを学びます。エンゲージメントが向上するだけでなく、医療費を削減できるというメリットがあります。
ワークエンゲージメントが高まれば、業務パフォーマンスや人間関係の改善、ストレス要因の排除に期待できます。従業員が心身ともに健康で、仕事に対して高い意欲を持つことで、組織全体のパフォーマンス向上が実現されるでしょう。
また、ダイバーシティ研修とはダイバーシティを実現するために必要な考え方や価値観を身につけるために行われる研修のことです。
多様性を尊重する職場環境は、すべての従業員が能力を発揮しやすくなり、結果として組織全体のエンゲージメント向上につながります。
ダイバーシティ研修によって、創造性やイノベーションの促進、社員のエンゲージメント向上、企業の社会的責任の積極的推進、グローバルビジネスの強化といった、さまざまなメリットが見込まれるとされます。
成功するエンゲージメント研修のポイント
エンゲージメント研修を成功させるためには、自社の課題を正確に把握するなど4つのポイントが重要になります。
自社課題にあった研修を選ぶ
まずは、自社の課題を正確に把握し、それに適した研修プログラムを選択することです。画一的な研修ではなく、組織の実情に合わせたカスタマイズが不可欠です。
研修を選ぶ前には、現在の社員のエンゲージメントレベルを定量的に把握しましょう。また、離職理由の分析や管理職の課題把握も必要です。
コミュニケーション課題が中心の場合
- 1on1スキル向上研修
- チームビルディング研修
- 多世代コミュニケーション研修
組織の方向性に対する理解不足が課題の場合
- ビジョン浸透研修
- 価値観共有ワークショップ
- 組織目標と個人目標の連携研修
働き方や環境に課題がある場合
- ワークライフバランス研修
- 健康経営連動研修
- ダイバーシティ推進研修
社員参加を促す工夫をする
研修の効果は、参加者の積極性に大きく左右されます。なぜこの研修が必要なのか、どのような効果が期待できるのかを事前に丁寧に説明します。トップからのメッセージも効果的です。
研修内容が参加者の日常業務や個人的な成長にどのように役立つかを具体的に示し、ディスカッション、グループワーク、実践演習を多く取り入れましょう。
また、柔軟な実施形態や業務調整のサポートを行うことで、参加しやすい環境づくりを整えることも大切です。
研修前後の効果測定を行う
エンゲージメント研修の効果を最大化するためには、効果測定が不可欠です。
研修前後のアンケート調査やチームパフォーマンス指標の変化を確認しましょう。特に心理的安全性やコミュニケーション満足度などの定性的指標と、生産性や離職率などの定量的指標の両面から評価することをおすすめします。
研修前、研修直後(即時評価)、3ヶ月後(短期効果測定)、6ヶ月〜1年後(中長期効果測定) といった時期に測定し、組織全体への波及効果、持続的な変化を追いましょう。
課題に合わせて適切な施策を行う
エンゲージメント研修を実施する過程で、研修だけでは解決できない根本的な課題が明らかになることがあります。労働環境が悪い、人間関係、健康問題など、このような場合、研修と並行して組織の制度や環境の改善も行う必要があります。
まとめ
エンゲージメント研修は、企業が直面する重要な人材課題を解決するために効果的な施策です。
自社の課題と目標に応じて適切なプログラムを選択し、段階的に展開することが成功の鍵となるでしょう。エンゲージメント研修を通じて明らかになった労働環境や人間関係、制度上の課題は、研修と並行して改善に取り組むことで、より持続的で根本的な解決が期待できます。
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