働き方改革の具体例12選|成功事例と導入手順
2025年 7月 16日

働き方改革は、従業員の満足度向上や人材確保、生産性向上など、企業の持続的成長に欠かせない重要なテーマです。
しかし、「具体的にどのような取り組みを進めればいいのか」「自社の規模や業種でも実践できるのか」と悩む人事・総務・経営層の方も多いでしょう。
本記事では、テレワークや時短勤務、RPAの活用など、実際に効果を上げている働き方改革の具体例を詳しく解説します。
課題設定から効果測定、低コストで始められる施策や助成金の活用まで、他社事例を参考にしながら、自社に合った取り組みを見つけるヒントをお届けします。
働き方改革とは?基本的な考え方

近年、急速に注目を集めている働き方改革ですが、これは単なる制度的な変更ではありません。日本の労働市場は、深刻な構造的課題に直面しており、働き方改革によって乗り越えていく必要があります。
企業の人事担当者や経営者の皆さんにとって、働き方改革は「取り組まなければならない課題」から「企業の存続に関わる重要な投資」へと位置づけが変化しています。
ここでは、なぜ働き方改革が現在これほど重要視されているのか、その背景となる7つの要因を詳しく解説します。
少子高齢化と労働力人口の減少
日本の労働市場は、過去に例のない深刻な人手不足に直面しています。総務省の調査によると、生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれています。
この労働力人口の減少は、既に企業経営に深刻な影響を与えています。2023年第3四半期時点で、公表されている産業区分全てで雇用人員判断DIはマイナスを記録しており、すなわち雇用人員不足の回答が人員過剰の回答を上回っている状況です。
つまり、企業は限られた労働力を効率的に活用し、従業員の定着率を向上させる必要性に迫られているのです。
▼参考:総務省 生産年齢人口の減少
長時間労働の常態化と健康被害
日本の労働環境において、長時間労働は長らく深刻な問題となってきました。この問題は単に働きすぎの問題ではなく、従業員の生命に関わる重大な健康リスクを引き起こしています。
令和5年度の厚生労働省発表によると、過労死等に関する請求件数は4,598件(前年度比1,112件の増加)、支給決定件数は1,099件(前年度比195件の増加)となっており、過労死の問題は改善されるどころか悪化している状況です。
厚生労働省は、健康障害へのリスクが高まる目安として、時間外労働や休日労働が月100時間超、もしくは2〜6ヶ月間の平均が80時間超という指標を出しています。
企業にとって、従業員の健康を守ることは法的義務であり、同時に優秀な人材を失うリスクを回避する重要な経営課題でもあるのです。
▼参考:厚生労働省 過労死等の労災補償状状況
▼参考:厚生労働省 過労死防止
ワークライフバランスへの関心の高まり
現代の働き手は、仕事だけでなく、家庭生活、自己実現、健康維持など、人生のさまざまな要素を重視する傾向が強まっています。特に若い世代ほど、給与や地位だけでなく、働き方の質やワークライフバランスを重視する価値観が広がっています。
企業にとって、優秀な人材を採用し定着させるには、在宅勤務、フレックスタイム制、短時間勤務など、多様な働き方の選択肢を用意することが重要です。
女性の就業促進とライフイベントとの両立課題
政府の「女性活躍推進法」などの政策により、女性の就業率は着実に上昇しています。
しかし、出産・育児による離職やキャリア形成の停滞といった課題が依然として存在し、柔軟な働き方や両立支援の仕組みが重要になっています。
女性が持つ豊富な能力と多様な視点を活かすためには、育児休業制度の充実、短時間勤務制度の導入、在宅勤務の活用など、ライフイベントとキャリアの両立を支援する取り組みが不可欠です。これらの制度は、性別に関わらず、すべての従業員が能力を発揮できる環境整備につながります。
価値観の多様化と個人主導のキャリア志向
近年、働き手の価値観は大きく多様化しています。「会社に依存せず、自律的に働きたい」「副業・パラレルキャリアを持ちたい」といった価値観が拡大し、従来の終身雇用・年功序列を前提とした働き方に対する意識が変化しています。
この変化により、企業は働き手に「選ばれる」立場になり、柔軟で公正な労働環境整備が不可避となっています。
企業の競争力維持・生産性向上への危機感
日本の労働生産性は、2023年時点で時間当たり56.8ドルとOECD加盟38カ国中29位となっており、主要7カ国(G7)の中では最下位という状況が続いています。トップのアイルランドと比べると約3分の1という水準で、国際競争力の低下が深刻な課題となっています。
働き方改革は、この生産性向上の重要な手段として位置づけられ、「量」ではなく「質」で勝負できる労働環境の構築が国レベルで急務となっています。
▼参考:日本生産本部 労働生産性の国際比較2024
感染症拡大による働き方の強制的な転換
2020年以降のコロナ禍は、多くの企業に働き方の急激な変化を迫りました。テレワークや時差出勤、オンライン会議など、それまで「導入が困難」と考えられていた働き方が短期間で広く普及しました。
従来の「オフィスに出社して働く」前提が覆され、場所や時間にとらわれない働き方の可能性が実証されました。コロナ禍の経験により、働き方の柔軟性が危機対応力の向上につながることが実感され、今後の組織体制構築の基盤として働き方改革が位置づけられています。
働き方改革の具体例【時間・場所編】

働き方改革を進めるうえで大切なのは、「いつ」「どこで」働くかを柔軟に見直す視点です。特に新型コロナウイルス感染症の拡大は、テレワークやフレックスタイム制といった柔軟な働き方を一気に広げる大きな転機となりました。
ここからは、具体的な企業事例を交えながら、時間と場所の柔軟性を実現する取り組みを紹介します。
テレワーク・在宅勤務の導入
テレワーク・在宅勤務は、オフィス以外の場所で業務を行う働き方です。パーソル総合研究所の調査によると、2024年7月時点のテレワークの実施率は正規雇用社員で22.6%となっており、企業の定着が進んでいます。
テレワーク導入は、従業員と企業の両方にメリットをもたらします。従業員側では通勤時間の削減、仕事と家庭の両立のしやすさ、集中できる環境での生産性向上が期待できます。企業側では、オフィス賃料や光熱費の削減、優秀な人材の離職防止、災害時の事業継続性向上などが実現されています。
導入は段階的なアプローチが重要です。まず特定の部署から開始し、週1〜2日からスタートして試行期間を設定します。その後、社内規程の整備、勤怠管理システムの導入、セキュリティ対策の強化を行い、対象者の拡大を図ります。
カルビー株式会社は2025年5月から「カルビーハイブリッドワーク」を導入し、社員が出社とモバイルワークを柔軟に選べる働き方へ移行しました。
本社オフィスを約792㎡増床し全社員分の座席を確保。さらに、出張先や最寄り事業所を勤務地とできる「スマートワーク」も本格導入しました。
交通費は定期券上限を撤廃し実費精算に変更。多様性とリアルコミュニケーションを両立させ、より自律的で成果につながる働き方を推進しています。
導入時の注意点として、セキュリティ対策ではVPN接続の整備や機密情報の取り扱いルール策定、コミュニケーション課題に対しては定期的なオンライン会議の実施やチャットツールの活用、労務管理では労働時間の適切な管理が重要になります。
▼参考:パーソル総合研究所 テレワークに関する定量調査
▼参考:カルビー株式会社 取り組み事例
フレックスタイム制の活用
フレックスタイム制は、従業員が一定の時間帯(コアタイム)を除き、始業・終業時刻を自由に決められる制度です。厚生労働省の調査によると、フレックスタイム制を導入している企業は全体の8.0%で、1,000人以上の企業では31.2%に上っています。
フレックスタイム制の導入効果は大きく、個人の生活リズムに合わせた勤務が可能になり、通勤ラッシュを避けることでストレスが軽減され、集中力の高い時間帯での作業が実現できます。また、家族との時間確保、習い事や自己啓発の時間創出により、ワークライフバランスが改善されます。
サイボウズ株式会社では「働き方の多様性」を重視し、フレックスタイム制を含む複数の働き方を選択できる制度を導入しています。従業員は複数の働き方から選択可能で、定期的な見直しと変更ができます。この取り組みにより、同社では離職率が28%から4%に大幅に改善され、従業員満足度の向上と多様な人材の採用が可能になりました。
導入時のポイントとして、制度設計では業務の性質に応じたコアタイムの設定、清算期間の決定、労働時間の上限設定が重要です。運用体制では、勤怠管理システムの整備、管理職への研修実施、定期的な効果測定が必要になります。
▼参考:厚生労働省 フレックスタイム制
▼参考:サイボウズ株式会社 取り組み事例
時短勤務制度の拡充
時短勤務制度は、育児や介護などの事情を抱える従業員が、通常より短い時間で勤務できる制度です。法定の制度では3歳未満の子を養育する従業員に対して6時間勤務を認めていますが、これを超えた拡充により、優秀な人材の継続雇用が可能になります。
法定制度を超えた拡充例として、対象者を小学校6年生まで、介護事情のある従業員まで範囲を広げたり、勤務時間を4〜7時間の中から選択可能にしたりすることができます。また、適用期間についても事情に応じた柔軟な期間設定を行います。
時短勤務制度の導入効果は大きく、従業員側では仕事と家庭の両立が可能になり、キャリアの継続と精神的な負担の軽減が実現できます。企業側では、優秀な人材の離職防止、採用競争力の向上、ダイバーシティ推進の実現というメリットがあります。
株式会社資生堂では「カンガルースタッフ制度」として、育児中の従業員向けに柔軟な働き方を提供しています。短時間勤務の選択肢が豊富で、在宅勤務との組み合わせも可能です。この制度により、同社では育児休業からの復職率98%を達成し、女性管理職比率の向上と従業員エンゲージメントの向上を実現しています。
導入時の注意点として、時短勤務者の業務量の調整、チーム全体での業務分担の見直しが必要です。また、時間ではなく成果を重視した評価制度の構築、時短勤務に対する理解の促進も重要な要素となります。
▼参考:資生堂株式会社 取り組み事例
働き方改革の具体例【休暇・福利厚生編】

長時間労働の是正や柔軟な勤務制度の導入と並んで注目されているのが、「休暇制度」と「福利厚生」の充実です。
実際に有給休暇の取得促進や育児・介護支援、副業解禁などを進めた企業では、具体的な成果が表れています。
有給休暇取得率向上の取り組み
有給休暇の取得率向上は、働き方改革を象徴するテーマのひとつです。
大手食品メーカーのカルビー株式会社では、毎年6月と10月に全社員へ有給休暇の計画的取得を呼びかける「計画取得推進日」を設け、取得率向上を図っています。この取り組みを続けた結果、2022年度の有給休暇取得率は約82.3%と高水準を記録しています。
このように制度だけでなく、風土づくりや管理職の意識改革を合わせて進めることが、実効性を高めるポイントです。
▼参考:カルビー株式会社 取り組み事例
育児・介護支援制度の充実
育児や介護と仕事の両立を支援する制度も、働き方改革の重要な柱です。
三菱UFJ銀行では、介護と仕事を両立する社員を支援する「介護休暇」や「介護時短勤務」制度を用意し、介護を理由としたキャリア断念を防いでいます。また、休職・復職前後の社員を対象とした研修や、柔軟な働き方を可能とする制度等を整備し、産休・育休取得者の円滑なキャリア継続のサポートもしています。
このような支援制度は、従業員に安心感を与えるだけでなく、企業全体の定着率向上にもつながるといえます。
▼参考:三菱UFJ銀行株式会社 取り組み事例
副業・兼業制度の解禁
副業・兼業を認める企業も増えています。
株式会社リクルートでは、2018年から副業を全面解禁し、多様なキャリア形成を支援しています。実際、従業員数17,047人に対し、1,268人がパラレルワークを実践しています(2022年3月時点)。副業で得た知見を本業に還元する好循環を目指しており、実際に新規事業の提案や社外ネットワークの拡大に結びついています。
副業制度を導入する際は、情報漏えい防止や業務時間外での活動管理などのルール整備が不可欠です。
しかし、適切に運用すれば、社員のモチベーション向上やイノベーション創出という効果も期待できます。
▼参考:リクルート株式会社 取り組み事例
働き方改革の具体例【業務効率化編】

働き方改革を進めるうえで、「生産性向上」は避けて通れないテーマです。
実際に、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIツールの導入、ペーパーレス化、会議時間の短縮などを通じて、大幅な業務効率化を実現した企業の事例が増えています。それでは、具体的な取り組みを詳しく見ていきます。
(H3)RPA・AIツールの活用
RPAやAIツールを導入することで、これまで人手で行っていた定型業務を自動化し、社員がより付加価値の高い業務に集中できる環境をつくる企業が増えています。
オリックス株式会社では、RPAを活用して経理業務や顧客データの入力業務を自動化し、年間約3万時間の業務時間削減を達成しています。この取り組みは、業務の正確性向上にもつながっています。
導入にあたっては、既存業務の棚卸しとプロセスの標準化が重要です。まずは負担の大きい単純作業から小さく始めることが、成功のポイントといえるでしょう。
▼参考:オリックス株式会社 取り組み事例
ペーパーレス化の推進
紙の書類を削減し、電子化を進めるペーパーレス化は、コスト削減と業務効率化の両面で大きな効果を発揮します。
ライフコーポレーション株式会社では、首都圏・近畿圏あわせて270名の店長が参加する店長会議の資料準備を効率化するため、タブレット端末を使ったペーパーレス会議システムを導入しました。
その結果、毎月6万枚分の印刷費や人件費を削減するだけでなく、カラーを効果的に使う、1ページに情報を詰め込みすぎないなど、資料作成の考え方も大きく変えることができました。ペーパーレス化は、環境負荷低減の観点からも社会的に意義がある取り組みです。
導入の際には、電子署名やワークフローシステムの整備、社内のルールづくりが欠かせません。
▼参考:ライフコーポレーション株式会社 取り組み事例
会議時間短縮の取り組み
「会議が長すぎる」という課題は、多くの企業で共通しています。そこで、会議時間の短縮を目的としたルールやツールを導入する動きが広がっています。
日立製作所では、社内会議を原則30分以内とし、資料も最大6ページに制限する取り組みを実施しています(日立製作所 サステナビリティサイト)。結果として、社員の会議参加時間が削減され、より戦略的な業務に時間を使え、マネージャーが現場の状況を把握しやすくなり的確な指示が出せるようになりました。
このような取り組みでは、「会議の目的とゴールを事前に明確化する」「資料は簡潔にまとめる」など、ルール化と意識改革の両面がカギとなります。
▼参考:日立製作所株式会社 取り組み事例
働き方改革の具体例【組織・制度編】

働き方改革を進めるうえで欠かせないのが、「制度や組織文化」の変革です。評価制度や管理職の意識改革、社内コミュニケーションの活性化は、社員一人ひとりのモチベーションを高め、健康経営や女性活躍推進とも相乗効果を生む取り組みです。
評価制度の見直し
評価制度を時代に合わせて柔軟に見直すことで、社員の自律性や挑戦意欲を高めることができます。
メルカリ株式会社では、急成長する事業環境に対応し、社員一人ひとりが主体的にチャレンジできる組織づくりを目指して、2015年からOKR(Objectives and Key Results)を導入しています。
全社から個人までの目標をクオーター(四半期)ごとに設定し、進捗を定期的に確認・共有することで、変化の早い市場でも柔軟かつスピード感のある経営を実現しています。
また、評価制度においては、OKRの達成度そのものではなく、挑戦的な目標に取り組む過程やチームへの貢献、そしてメルカリのバリュー(Go Bold、All for One、Be Professional)を実践できているかを重視。これにより、目の前の業務だけでなく、新しい価値を生み出す行動を促しています。
▼参考:株式会社メルカリ 取り組み事例
管理職の意識改革
働き方改革を現場に浸透させるには、管理職のマネジメントスタイルの変革が欠かせません。
大和ハウス工業株式会社では、「ダイバーシティマネジメント研修」を通じて、部下の多様な働き方を支援する意識を育てています。柔軟な勤務制度の活用を促す声かけや、育児・介護と仕事の両立支援などが実際に定着してきたとのことです。
また、経営の意思決定の場を多様にするため、グループ各社で女性管理職の数値目標を掲げて、女性管理職の育成・教化に取り組んでいます。
管理職の意識が変わることで、制度だけに頼らない現場主導の改革が加速します。
▼参考:大和ハウス株式会社 取り組み事例
社内コミュニケーション活性化
社員同士の信頼関係や心理的安全性を高めることで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
パナソニックグループでは、社内コミュニティ「キャリアクロスオーバー」(略して「キャリクロ」)を開催しています。キャリクロは、社内の所属部署や担当業務を超えて、社員同士が「バーチャル同期」として気軽に相談し合えるコミュニティです。特にキャリア採用で入社した社員は、新卒入社の社員と比べて社内に同期が少なく、悩みや課題を相談しにくい傾向があります。キャリクロは、そんなキャリア採用者同士をつなぎ、異なる業界や企業で培った経験を共有し合える場としてスタートしました。
現在では、キャリア採用者だけでなく経営層を含む多くの社員が参加し、立場や部署に関わらず公平に情報へアクセスできる仕組みとしても機能しています。
▼参考:パナソニック株式会社 取り組み事例
中小企業でも実践可能な施策

「働き方改革は大企業だけのものでは?」と感じている方も少なくないでしょう。
しかし実際には、低コストで始められる工夫や国の支援制度を活用しながら、着実に改革を進める中小企業も増えています。
ここでは、自社の規模に合った改革を進めるための具体的な取り組みや、失敗を防ぐ導入の工夫、そして活用しやすい助成金・補助金について詳しく紹介します。
低コストで始められる取り組み
働き方改革というと、大規模な制度改定や高額なシステム投資を想像しがちですが、小さく始める工夫も十分に効果を発揮します。
たとえば、就業時間を30分単位で前後できる「簡易型フレックスタイム制」や、月1回のノー残業デーの導入などは、初期投資をほとんどかけずに始められます。
広島県の「株式会社サタケ」では、ノー残業デーを段階的に整備し、さらに業務の棚卸を実施し、無駄な業務を削減し、2009年月平均で23.5時間だった残業時間が、2019年には月平均6.8時間まで減少させることが出来ました。
また、会議のオンライン化や資料のペーパーレス化も、無料または低価格のクラウドツールを活用すればすぐに実現できます。
▼参考:サタケ株式会社 取り組み事例
段階的導入のポイント
一度にすべてを変えるのではなく、効果を確認しながら段階的に進めることが、現実的でリスクも低い方法です。
東京都の「働き方改革成果事例集」では、段階的導入の代表例として、部署単位からテレワークを試す取り組みが紹介されています。部署ごとにルールや業務負荷を検証しながら、運用上の調整を進めています。
都内企業の事例では、一部社員に限定して時差出勤やテレワークなどの制度をまず導入し、社内アンケートや勤怠データで効果を確認。その数ヶ月後に、対象範囲を広げたり頻度を増やしたりしています。
利用実績に基づき、課題が明らかになってからルールやIT環境を整えたことで、全社導入への障壁が低くなっています。
助成金・補助金の活用方法
中小企業が働き方改革を進めるうえで心強いのが、国や自治体の助成金・補助金制度です。
特に注目されているのが、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」。たとえば、「勤務間インターバル導入コース」では、一定条件を満たすと最大120万円の助成金が受けられます。ほかにも、テレワーク環境の整備や、労務管理システムの導入、社内研修費用などに使える補助金もあります。
制度は毎年変更や追加があるため、「J-Net21」(中小企業基盤整備機構)や各都道府県の産業振興センターの情報も定期的に確認すると安心です。
▼参考:厚生労働省 助成金・補助金制度
働き方改革の導入手順

働き方改革は「すぐに制度を導入する」だけでは定着しません。自社の課題を把握し、現実的な計画を立て、効果を検証しながら改善していくことが重要です。
ここでは、多くの企業で実践されている導入の基本ステップを解説します。
現状分析と課題設定
最初のステップは「何が問題か」を明確にすることです。
定量データ(勤怠・有給取得率など)と定性データ(社員の声)を組み合わせることで、課題を立体的に把握できます。経営層への説明にも説得力が増し、社内の納得感も高まります。
優先順位の決定
すべての課題を一度に解決するのは難しいため、「何から取り組むか」を絞ることが重要です。
たとえば、和歌山県の新中村工業株式会社では、まず「有給休暇取得率の向上」に焦点を当てました。背景には、人手不足で長時間労働が発生していたこと、若手社員の定着率を上げたいという狙いがありました。
結果的に、週に一度の「ノー残業デー」と年3日の計画年休制度を導入し、先に実績を作ることで社内の理解を得やすくしました。中小企業にとっては「影響が大きい」「始めやすい」「効果が見えやすい」取り組みから着手するのが現実的です。
▼参考:新中村工業株式会社 取り組み事例
効果測定の方法
取り組みを実施したら、必ず数字で効果を測定することが大切です。
PDCAサイクルを回すことで、制度が形骸化せずに現場に根づきます。また、数値は経営層や取締役会への報告資料としても有効です。
無料または低コストの勤怠管理ツールやGoogleフォームなどを活用すれば、集計作業も効率化できます。
まとめ 働き方改革成功のポイント
働き方改革の本質は、制度を導入すること自体ではなく、自社の課題を解決しながら従業員の働きやすさと企業の生産性を両立させることにあります。
特に中小企業では、現状の可視化と優先度の高い施策からの段階的な取り組みが重要です。効果を数値で測定し、改善を重ねることで制度を形骸化させず、着実に成果につなげることができます。助成金や補助金の活用によって、コスト面の課題も軽減可能です。
さらに女性活躍推進やダイバーシティ施策と組み合わせることで、企業価値を一層高めることも期待されます。
Wellflowでは、女性の健康課題をテーマにした研修や従業員向けヘルスケアアプリ、サーベイ、健康経営や女性活躍に関する認定取得支援など、企業の状況や課題に合わせた幅広いソリューションを提供しています。
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