テレワークの課題を徹底解説!健康経営・人事評価の改善方法
2025年 8月 18日

テレワークは、現代の働き方において不可欠な要素となりました。
特にコロナ禍を機に急速に普及し、通勤時間の削減や働き方の多様化といった多くのメリットをもたらしています 。しかし、その一方で、企業も従業員も様々な課題に直面しているのが現状です。
本記事では、「テレワーク 課題」というキーワードで検索される皆様、特に企業の経営者、人事担当者、健康経営や女性活躍推進を担う部門の責任者の皆様が抱える具体的な悩みに焦点を当て、その解決策を多角的に深掘りしていきます。
テレワークの課題を乗り越えることは、単に業務効率を改善するだけでなく、従業員の健康増進や女性のキャリア継続支援といった、企業の持続的な成長に不可欠な健康経営・女性活躍推進にも繋がる重要な機会となるでしょう。
テレワークにおける課題
コミュニケーション不足と孤独感の増大
テレワーク環境では、オフィスでの偶発的な交流が減少し、コミュニケーションの質と量が大きく変化します。雑談の減少が最も顕著な変化で、業務連絡が中心のコミュニケーションになりがちです。これにより従業員間の人間関係が希薄になり、チームの一体感が損なわれる可能性があります。
このような変化は、従業員の孤独感や孤立感を増大させ、精神的な不調につながる恐れがあります。特に、上司や同僚が周囲にいない環境では、心身の変調に気づきにくく、メンタルヘルス不調の早期発見が困難になる傾向が見られます。
日本生産性本部の調査では、管理職がテレワーカーの課題として「孤独感や疎外感の解消策」を最も多く挙げており、その割合は46.8%に上ります。さらに、テレワーク廃止・制限時に16.4%の従業員が「退職・転職を検討する」と回答しており、コミュニケーション不足が離職意向に直接影響することが示されています。
テレワークでは従業員のモチベーション状態が把握しにくいという課題も指摘されており、これは気力の少ない従業員に過剰な業務が割り振られるなど、さらなるモチベーション低下に繋がる可能性を秘めています。コミュニケーション不足は単なる情報伝達の問題に留まらず、従業員の心理的安全性、エンゲージメント、ひいては離職率にまで影響を及ぼす複合的な課題と言えます。
オンオフの切り替えの難しさと自己管理の課題
自宅が職場となることで、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、オンオフの切り替えが困難になる従業員が多く報告されています。これにより退勤後も仕事が頭から離れない、無意識のうちに長時間労働に陥るといったリスクが高まります。厚生労働省の調査でも、テレワークのデメリットとして「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」(38.3%)、「長時間労働になりやすい」(21.1%)が挙げられています。
また、自宅の生活音や家族の存在が集中を妨げ、生産性の低下に繋がることもあります。自己管理が難しい従業員の場合、業務の進行が滞ったり、仕事の質が低下したりする可能性も指摘されています。
企業側も「労働時間管理が難しい」と回答しており、これは従業員が自己管理できていないという側面だけでなく、企業側が適切な管理体制を構築できていない側面も大きいことを示唆しています。労働時間管理の困難さは、従業員が「会社側からサボっていると思われそうで不安」と感じる原因にもなり、過剰な自己抑制やサービス残業を誘発する可能性があります。
執務環境の整備も重要な課題です。従業員が自宅で業務に集中できる環境を整えるのは容易ではなく、業務に適したデスクやスペースの不足、近所や家族の生活音などが集中を妨げ、生産性低下の原因となることがあります。また、インターネット環境、電気代、適切な機器購入など、意外とコストがかかります。企業によってはこれらの費用を従業員が自己負担するケースもあり、不公平感や不満の原因となる可能性があります。
運動不足と健康への影響
テレワークの普及により、通勤がなくなることで従業員の身体活動が大幅に低下し、運動不足に陥るケースが急増しています。2021年・2022年の調査では、「運動不足」が健康面の変化の1位となっており、1日あたりの平均歩数が50%以上減少したという報告もあります。これにより、「コロナ太り」といった体重増加の悩みだけでなく、身体機能の低下や高血圧などの生活習慣病リスクが高まることが懸念されます。
運動不足は身体的な健康だけでなく、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼします。テレワーク実施企業では、非実施企業と比較して「コミュニケーション不足」が生じ、メンタル不調者や休職者が増加しているという調査結果も出ています。これらの健康課題は「健康二次被害」として認識されており、企業が積極的に対策を講じるべき喫緊の課題となっています。
特に、メンタル不調は早期発見が難しく、突然の休職や退職に繋がりやすいという深刻な問題を含んでいます。テレワークにおける運動不足やメンタルヘルス不調は、健康経営の推進が求められる具体的な領域であり、従業員の生産性向上、医療費削減、企業イメージ向上といった健康経営の目的と直結する課題と言えるでしょう。
労務管理と人事評価の難しさ
テレワークでは、従業員のタスク進行状況や勤務態度、勤務時間の把握が極めて困難になります。これにより業務量の偏りや一部の従業員への仕事の集中といった問題が生じ、社員間の不公平感に繋がりやすいことが指摘されています。
完全非対面のため、誰が何の業務をどれだけ行ったか不明瞭になりがちで、明確な評価項目が設定されていないと評価にバラつきが生じ、公正な評価が困難になります。特に、業務における創意工夫や改善提案といったプロセスが見えにくくなることで、従業員のモチベーション低下にも繋がります。
日本生産性本部の調査では、テレワーカーの課題として「仕事ぶり(プロセス)についての評価の適切さ」(30.7%)、「仕事の成果についての評価の適切さ」(29.4%)が挙げられています。これらの課題は、従来の「時間管理型」や「対面観察型」のマネジメントでは対応しきれないことを示唆しており、成果主義への移行だけでなく、プロセスを可視化し、評価する仕組みが不可欠であることを意味しています。
マネジメント層自身も「部下のマネジメントの難しさ」を感じており、上司と部下の信頼関係がテレワーカーの評価不安や孤独感を抑制するという調査結果もあります。これは、単に制度を変えるだけでなく、マネジメント層のスキルアップ、特に「観察力(部下情報の把握度)」の向上が求められていることを示しています。
セキュリティリスクの増大
オフィス外で業務を行うテレワークでは、情報漏洩のリスクが大幅に高まります。特に懸念される要因として、暗号化されていないフリーWi-Fiの利用、端末・USBの紛失・盗難、不適切な作業環境での機密情報の取り扱いなどが挙げられます。
BYOD(Bring Your Own Device: 私物端末の業務利用)の場合、従業員のセキュリティ対策が企業基準に満たないことが多く、マルウェア感染や不正アクセスのリスクが増大します。情報漏洩は企業の信用失墜だけでなく、法的責任を問われる可能性もあるため、経営課題として最優先で取り組むべき重要な問題です。
セキュリティ対策は、単なるIT部門の責任ではなく、経営層が主導し、全従業員が意識を高める「組織文化」として根付かせる必要があります。特に中小企業では、セキュリティ対策への労力やコストが導入の障害となることが指摘されており、外部のクラウドサービス活用など、安全かつ安価な運用方法を模索することが重要です。
技術的対策(データ暗号化、VPN、ウイルス対策)、物理的対策(作業スペース確保、書類管理)、人的対策(セキュリティ教育)の三位一体での取り組みが求められており、継続的な投資と教育が必要な領域と言えます。
業務内容とIT環境の課題
製造業やサービス業、医療・福祉関係など、対物・対人の現場作業が必須の業種では、そもそもテレワークの適用が困難な場合があります。また、大企業のように業務がシステム化されておらず、出社しないと対応できない業務が多い企業も少なくありません。
特に深刻なのは、ペーパーレス化が進んでおらず、紙媒体での業務や押印による承認体制が一般的な企業です。このような企業では、テレワーク導入時に業務が滞る根本的な原因となります。IT環境の未整備やモバイルツールの不足も、テレワーク導入・運用の大きな障壁となっています。
これらの課題は、企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の遅れと密接に関連しています。テレワークの推進は、業務プロセスの見直し、ペーパーレス化、ITツールの導入といったDXの取り組みを加速させる契機となりますが、同時にテレワークの導入は、単なる場所の変更ではなく、業務そのものの「棚卸し」と「切り分け」を促します。
これにより、非効率な業務プロセスが浮き彫りになり、結果として企業全体の生産性向上に繋がる可能性が考えられます。テレワークはDX推進の「手段」であり、DXはテレワーク成功の「基盤」であるという相互依存の関係が見て取れ、企業の既存の業務プロセスやITインフラの脆弱性を浮き彫りにし、DXの必要性を再認識させる機会となっています。
課題解決のための具体的な施策
コミュニケーションを活性化する施策
効果的なコミュニケーションツールの導入と活用が重要です。ビジネスチャットは、メールや電話よりも手軽にコミュニケーションが取れる点が魅力であり、迅速な情報共有や雑談の場としても活用できます。Web会議システムは、顔を見ながら話すことでニュアンスが伝わりやすくなり、会議だけでなく、オンラインランチ会や雑談での活用も推奨されます。さらに、メタバースのような仮想空間に雑談ルームを構築することで、リアルに近い臨場感のある交流が可能になります。
意図的な雑談と1on1ミーティングの実施も不可欠です。企業側が積極的にオンラインでの雑談の場を設けることが推奨され、例えば、オンラインランチ会やオンライン飲み会を定期的に開催し、時間内の出入り自由、食事を見せなくてOK、家族の飛び入り参加OK、事前にトークテーマを決めるなどの工夫を凝らすことで、参加しやすさを高めることができます。ただし、雑談が負担になる従業員もいるため、強制せず、月1回程度の頻度で業務時間内に設定するなど、自由参加にすることが重要です。
上司と部下の1対1での定期的な1on1ミーティングの実施は、従業員一人ひとりの状態を確認し、コミュニケーション不足を補う上で非常に有効です。テレワークでは従業員の考えを把握しにくいため、雑談に加えて1on1ミーティングを増やす工夫が必要で、これにより心理的安全性が確保され、信頼関係の構築に繋がります。
業務状況の可視化も、コミュニケーションを円滑にする上で不可欠です。誰が何をしているのかを把握できるように、チームで共有しているカレンダーへの入力徹底や、スプレッドシートなどで業務の進捗が分かりやすいフォーマットの作成、勤怠入力の徹底が推奨されます。特に、テレワークと出社が混在するハイブリッドワークでは、誰がどこで稼働しているかを共有する工夫が求められます。
人事評価と労務管理を適正化する施策
テレワークに適した人事評価を実現するためには、評価項目の明確化が不可欠です。評価基準に数値目標や定量指標を取り入れ、テレワークに合わせた明確な「期限」と「目標」を共有することで、成果が可視化されやすくなります。目標管理制度(MBO)は、上司と部下が目標を定め、その達成度を評価することで、テレワーク中でも従業員の高いモチベーションと主体的な業務を促す有効な手法です。
また、成果だけでなく業務プロセスを評価することも重要です。定期的に1on1ミーティングを開催し、プロセスに関する対話を行うことが推奨されます。360度評価のように、上司や同僚など複数の立場の人が評価を行う制度は、従業員の納得度を高め、不平等を解消するのに役立ちます。評価方法を統一し、評価者に対する研修を実施することも、評価のブレや偏りをなくすために不可欠です。
勤怠管理と業務の可視化も重要な要素です。テレワークにおける労働時間の適正把握は、労働安全衛生法により企業に義務付けられており、勤怠管理システムの導入は、労働時間や有給休暇、シフトを一元管理し、従業員が過剰な業務を抱えないように正確な労働時間を把握する上で有効な手段です。タスク管理ツールの活用も、業務の可視化に貢献し、タスクをリストアップし、進捗状況を可視化することで、従業員は仕事の終わりが見え、モチベーションを維持しやすくなります。
従業員の健康をサポートする施策
従業員の運動不足解消のためには、多様なアプローチが考えられます。オンライン運動プログラムや運動に関する動画の配信は、在宅勤務者でも空いた時間を利用して運動できるため効果的です。スポーツ優待券の配布、運動施設利用費の補助、健康運動手当の導入など、運動不足解消に繋がる独自の福利厚生を検討することも重要です。
「ながら運動」の推奨も有効な手段です。テレビを見ながら、仕事をしながらなど、何かをしながら手軽にできる運動を促すことで、時間の取れない従業員も運動しやすくなります。社内ウォーキングイベントの開催や、歩数計アプリを活用した目標達成競争など、楽しみながら参加できるイベントや制度を導入することで、運動に対するハードルを下げ、社内コミュニケーションの促進にも繋がると期待できます。
メンタルヘルス対策と相談体制の整備も不可欠です。ストレスチェック制度の活用は、従業員自身のストレス状態を把握させ、適切なセルフケアを促す上で重要です。ストレス緩和ケアやセルフケア研修の実施も、ストレスへの対処方法や相談先を案内する上で有効です。
従業員が気軽に相談できる窓口の設置は、不調のサインを早期に発見し、適切な措置を講じるために非常に重要です。企業によっては、メールやチャットでの相談サービスを導入することで、テレワークで利用しやすい相談体制を確保している事例もあります。また、管理職向けの研修を実施し、テレワークにおける業務調整や管理方法、従業員のメンタルヘルス不調への対応方法を学ぶ機会を提供することも理想的です。
まとめ
テレワークの課題は多岐にわたり複雑ですが、コミュニケーション不足、労務管理、人事評価、セキュリティ、従業員の健康、そしてIT環境といった各課題に対して戦略的かつ体系的なアプローチを講じることで、確実に解決可能です。
重要なのは、これらの課題を単独で捉えるのではなく、相互に関連する組織全体の課題として包括的に取り組むことです。適切な施策の実施により、従業員のエンゲージメント向上、離職率の低下、優秀な人材の確保、そして企業の持続的成長という好循環を創出することができます。
特に、従業員の健康を経営的な視点から捉える「健康経営」と、女性がその能力を最大限に発揮できる環境を整備する「女性活躍推進」は、テレワークの適切な運用と密接に結びついています。テレワークは、育児や介護と仕事の両立を支援し、女性のキャリア継続を可能にする強力なツールとなるでしょう。
企業は今こそ、テレワークを単なるコストセンターではなく、持続可能な成長と競争力強化のための戦略的投資として位置づけ、従業員が安心して最大限の能力を発揮できるテレワーク環境の構築に取り組むべき時期にあります。補助金・助成金の活用や外部機関との連携も視野に入れながら、これからの企業経営において不可欠な要素となるテレワーク環境を整備していくことが重要です。