ダイバーシティとは?企業の成長を加速する多様性の活用法

2025年 8月 29日

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企業の存続と成長のために、これまでのように「コスト削減」や「売上最大化」だけを追求するのではなく、従業員という「人財」をいかに活かすかという視点が不可欠になっています。この新たな視点から生まれたのが「ダイバーシティ」という概念です。

この記事では、「ダイバーシティ」の定義から、なぜ現代企業に不可欠な経営戦略とされているのか、その具体的なメリットと推進のためのロードマップまでを、専門的かつ実践的な視点から解説します。

この記事を読み終えたとき、貴社が次の一歩として何から始めるべきか、その具体的な道筋が見えてくることでしょう。

ダイバーシティとは?その定義とインクルージョンとの関係性

多様性を意味する「ダイバーシティ」の定義

「ダイバーシティ(Diversity)」は、日本語で「多様性」を意味します。これは、性別、年齢、国籍、人種、障がいの有無といった外見から判断しやすい「表層的」な属性だけでなく、経歴、経験、働き方、価値観、思考といった内面的な「深層的」な多様性も含む概念です。

この概念は、単に異なる属性を持つ人々を組織に集めることだけではありません。それぞれの個性や価値観を尊重し合い、強みを活かすことで、新たな視点や発想が生まれることが期待されるでしょう。

多様性を活かす「インクルージョン」の重要性

単に多様な人材を組織に受け入れる「ダイバーシティ」だけでは、その真価を発揮することは難しいと考えられます。それぞれの違いを認め、尊重し、個々の能力を最大限に発揮できるような環境づくりが不可欠です。この「多様性を活かす」という考え方が「インクルージョン(Inclusion)」であり、近年は「D&I」としてセットで語られることが増えています。

インクルージョンは、多様な人材が互いの違いを認め合った上で、能力を最大限に発揮し、活躍できている状態を指します。つまり、ダイバーシティが「多様な人材が職場に存在している状態」であるのに対し、インクルージョンは「多様な人材の個性を認め合い、活かされている状態」であり、両者は切っても切れない関係にあると言えるでしょう。

なぜ今、企業にダイバーシティが不可欠なのか?

ダイバーシティ経営は、単なる「社会的責任」の遂行にとどまらない、明確なビジネス上のリターンをもたらします。

変化する市場に対応する経営戦略

ダイバーシティ経営が現代において不可欠となった背景には、いくつかの社会的な変化があります。グローバル化の進展により、企業は多様な文化や市場に対応する必要が生じました。また、消費者のニーズも画一的ではなくなり、多様な視点から新しい価値を創造することが求められています。さらに、日本においては少子高齢化が進み、人手不足が深刻な経営課題となっています。こうした変化に対応するには、外国人材、育児や介護と両立する人材、シニア層など、多種多様な人材を活用することが必須と言えるでしょう。

優秀な人材の確保と定着率の向上

柔軟な働き方(テレワーク、フレックスタイム制など)や育児・介護支援制度を整えることは、多様なライフステージにある従業員にとって働きやすい環境を創出します。これにより、優秀な人材の獲得に繋がるだけでなく、従業員の満足度が高まり、離職率の低下も期待できます。実際に、Z世代と呼ばれる若者(18〜25歳)を対象とした調査では、65.2%が働き方や社員の多様性といったダイバーシティ&インクルージョンをより重要視していると回答しています。

イノベーション創出と企業競争力の強化

多様な視点や価値観が組織に加わることで、これまでとは異なる新しいアイデアや発想が生まれやすくなります。これは、変化の激しい市場において、新たな製品やサービスの開発を促進し、企業の競争力を維持・強化する上で不可欠な要素です。多様な人材が集まり、業務を多角的に捉えることで、アウトプットの質と量を高め、効率的な業務プロセスへの改善も期待できるでしょう。

従業員の働きがい向上と生産性アップ

自分の個性や能力が尊重され、活躍できる環境が整うことで、社員は組織に対するモチベーションや貢献意欲を高めることができるでしょう。このような心理的安全性も確保された働きやすい環境は、結果的に企業全体の生産性向上にも繋がり、健全な好循環を生み出します。実際に、多様な人材がいることで「働き方の効率化・生産性向上」に繋がったと回答する企業が約5割に上るという調査結果も報告されています。

ダイバーシティ推進を成功させるための具体的なステップ

ダイバーシティを単なるスローガンで終わらせず、企業文化として定着させるためには、経営トップの強いコミットメントと、体系的な取り組みが不可欠です。

方針を明確にし、全社に周知する

まず、企業全体の方針としてダイバーシティを推進することを明確にします。具体的な目標やビジョンを設定し、従業員に対して「なぜ多様性が必要なのか」「どのような効果があるのか」を伝え、全社員に共有することが重要です。これにより、企業全体でダイバーシティの意識を高めることができるでしょう。

研修と教育で意識改革を促す

従業員一人ひとりがダイバーシティの意義を理解し、実践できるようにするための研修や教育を行います。特に、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を学ぶ研修は、ダイバーシティ推進の土台として非常に有効です。社内の事例を用いたワークショップや外部のファシリテーターを招くことで、参加者の認識を深め、実際の行動変容に繋げることができるでしょう。

制度を整備し、心理的安全性を確保する

ダイバーシティを推進するための制度を整備し、実際に運用することが必要です。例えば、柔軟な働き方(在宅勤務、短時間勤務など)の導入や育児・介護休業制度の充実、外国人材やシニア層の活用、LGBTQへの配慮などが挙げられます。また、これらの制度が形骸化しないよう、管理職が正しい理解を持ち、従業員が安心して制度を利用できるような心理的安全性の高い職場風土を醸成することが不可欠です。

定期的な評価と改善を繰り返す

実施した取り組みを定期的に評価し、必要に応じて改善を行うことが重要です。従業員アンケートや個別面談などを通じて、現状の課題を明確にすることで、ダイバーシティの取り組みが継続的に進化し、実効性を高めることができます。

ダイバーシティ推進を実践する企業事例

女性活躍推進の先進事例

資生堂

資生堂は、DE&Iを重要な経営戦略と位置づけ、女性活躍を積極的に推進してきました。2017年から女性リーダー育成塾を開始するなど、長期的な視点で取り組んだ結果、国内グループの女性管理職比率は2024年1月時点で40%に達しています。また、事業所内保育所や保育料補助などの育児支援制度を充実させ、女性社員の復職率を92.3%という高水準で維持しています。

日本生命保険

女性が約9割を占める同社では、女性活躍推進を企業の持続的成長を支える経営戦略として位置づけています。2030年までに女性管理職比率を30%以上とすることを目標に掲げ、キャリア形成支援を実施しています。

働き方の多様性を実現する事例

JAL(日本航空)

JALでは、2022年度から男性社員の育児参加を促進するため、連続2週間以上の育児休業取得を推奨しており、育休計画を立てることを通じて、チーム全体で働き方を見直す意識改革を進めています。また、グループ全体で多様な人材の活躍を促進するため、社外の有識者とも連携してD&Iに関する施策を検討・提言する「JALD&Iラボ」を運営しています。

熊谷組

建設業の熊谷組は、社長を委員長とする働き方改革推進委員会を立ち上げ、長時間労働を是正しました。男性育児休業取得を促進するため、育児休業開始時の14日間を有給化する独自の制度を設けています。また、現場作業所に女性用トイレや更衣室を整備する「ダイバーシティパトロール」を実施するなど、多様な人材が働きやすい環境づくりを進めています。

ソニー

ソニーは多様性を企業文化の核心に据え、イノベーションの源泉としています。その一環として、世界中のソニーグループ各社で「DiversityWeek」を開催し、性別、人種、国籍、性的指向、障がいといった多様性について深く考える機会を提供しています。

まとめ

「ダイバーシティ」は、単なる概念ではなく、企業の持続的な成長のための重要な経営戦略です。

現代の企業が直面する人材不足やイノベーション創出の課題は、性別や年齢、国籍といった目に見える多様性だけでなく、価値観や経験といった内面的な多様性も積極的に受け入れ、活かすことで解決の糸口が見えてくるでしょう。

まずは、自社の現状を把握し、今回ご紹介したステップや事例を参考にしながら、多様な人材がその能力を最大限に発揮できるような環境づくりから始めてみてはいかがでしょうか。

多様性がイノベーションを生み、それが企業の成長へと繋がる「好循環」を築くこと。これこそが、これからの時代に求められる企業の姿であり、貴社の未来を切り拓く経営戦略となるはずです。