不妊治療、男性社員はどう関わる?企業支援の実際
2026年 7月 15日

不妊治療というと女性側の課題として語られることが多いですが、原因は男女どちらか一方に限られるわけではありません。にもかかわらず、企業の支援制度は「女性向け」という前提で設計されがちです。
結論から言うと、不妊治療支援は本人だけでなく付き添うパートナーも対象に含めることで、より実効性の高い制度になると考えられます。くるみんプラス認定の基準においても、休暇・両立支援制度は性別・雇用形態を問わず利用できることが求められています。本記事では、男性不妊への理解不足という現状から、くるみんプラス認定が示す制度設計の考え方、企業が導入できる具体策まで解説します。
不妊治療は女性だけの課題ではない
不妊の原因は女性側だけでなく男性側にもあることが知られていますが、企業の福利厚生制度を見渡すと、不妊治療支援は依然として「女性向け」という前提で語られがちです。男性社員が検査や治療の当事者になり得るという認識が、職場に十分浸透していないのが実情です。
もう一つ見落とされがちなのが、「付き添い」も治療の一部だという視点です。不妊治療は通院回数が多く、検査や治療のタイミングも計画通りにいかないことが少なくありません。パートナーの通院に付き添うことも、治療を継続する上で重要な役割であり、これも支援の対象として捉える必要があります。
男性社員が直面する両立の壁
男性社員が不妊治療に関わろうとする際、いくつかの壁に直面します。一つは、検査や通院のための休暇の取りにくさです。有給休暇はあっても、理由を詳しく説明せずに取得できる仕組みがなければ、心理的なハードルは下がりません。
もう一つが、相談しづらい職場風土です。不妊治療自体がまだオープンに話しにくいテーマであることに加え、「男性が不妊治療のために休む」という状況が職場で想定されていないケースも多く、上司や同僚に相談すること自体を躊躇する社員も少なくないと考えられます。
くるみんプラス認定に見る「性別を問わない」制度設計
こうした課題に対して、公的な認定制度の側でも「性別を問わない」設計の必要性が示されています。厚生労働省が運用するくるみんマーク・プラチナくるみんマークの認定制度には、不妊治療と仕事の両立支援に関する基準を満たした企業向けの「くるみんプラス」という認定区分があります。
くるみんプラスの認定基準には、休暇制度や両立支援制度の整備が含まれており、性別・雇用形態にかかわらず利用できる制度であることが求められています。基準が直接定めているのは「治療を受ける労働者」への支援ですが、その趣旨を踏まえれば、付き添いや、パートナーの治療に関わる社員まで対象を広げる制度設計は、より実効性を高める選択肢の一つと言えます。自社の休暇制度が男性社員も対象にしているかどうかを確認することが、認定取得の検討における最初のステップになります。
企業が導入できる具体的な制度
具体的な制度としてまず挙げられるのが、有給・特別休暇の対象拡大です。治療を受ける本人だけでなく、付き添い休暇を含めて対象を広げることで、男性社員が制度を利用しやすくなります。
活用できる公的支援としては、両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)があります。企業が不妊治療と仕事の両立に関する制度を整備し、実際に利用実績を作ることで、助成金の対象となる仕組みです。制度の詳細な要件は厚生労働省・都道府県労働局の公表資料で確認する必要があります。
そしてもう一つ重要なのが、管理職・同僚への理解研修です。制度があっても、周囲の理解がなければ利用しにくいままです。男性不妊や付き添いの重要性について、管理職を含めた職場全体の理解を広げることが、制度を実際に機能させる鍵になります。
制度を「使われる」ものにするための周知設計
制度を整備しても、実際に使われなければ意味がありません。特に男性社員にとっては、申請すること自体が「不妊治療に関わっている」という開示につながるため、申請しやすい窓口や言葉選びが重要になります。「不妊治療休暇」といった直接的な名称だけでなく、目的を限定しない汎用的な休暇制度として設計することで、利用のハードルを下げられる場合もあります。
こうした周知や理解促進の一環として、外部の研修プログラムを活用する企業も増えています。Flora(フローラ)が提供する法人向け女性の健康研修プログラム「Wellflow」は、月経随伴症状や更年期症状に加え、不妊治療に関する理解を管理職・従業員双方に広げる内容を扱っており、男性社員も含めた職場全体の意識づけを進める手段の一つとして検討する余地があります。
まとめ
不妊治療は女性だけの課題ではなく、男性社員が検査・治療・付き添いのいずれの立場でも関わり得るテーマです。くるみんプラス認定が示すように、休暇・両立支援制度は性別を限定せず設計することが求められています。有給・特別休暇の対象拡大、両立支援等助成金の活用、管理職・同僚への理解研修を組み合わせ、申請しやすい周知設計を行うことが、制度を実効性のあるものにする鍵になります。認定基準や助成金の詳細は随時更新される可能性があるため、検討の際は厚生労働省の最新の公表資料を確認することをおすすめします。
出典・参考リンク
- 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14408.html
- 厚生労働省「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html
- 厚生労働省 くるみんプラス認定基準資料(PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001451305.pdf
- 厚生労働省東京労働局「両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_ryouritu.funinntiryou.html
- 両立支援のひろば「くるみん認定・プラチナくるみん認定・トライくるみん認定・くるみんプラス認定とは?」 https://ryouritsu.mhlw.go.jp/hiroba/nintei.php





