不妊治療と仕事の両立|通院頻度と休み方の実例を解説
2026年 7月 14日

不妊治療と仕事の両立において、最も従業員を悩ませるのは「治療そのもののつらさ」以上に「先が読めない通院スケジュール」だと言われている。結論から言えば、不妊治療の通院頻度は治療のステージによって週1回未満から週2〜3回以上まで大きく変動し、しかも当日や前日に受診日が決まるケースが多い。企業がこの「不規則性」を前提に休暇制度や働き方を設計できるかどうかが、両立支援の成否を分ける。本記事では、通院頻度の実例を軸に、HR・労務担当者が制度設計・運用で押さえるべきポイントを解説する。
不妊治療の通院頻度はステージによって大きく異なる
不妊治療は大きく「タイミング法」「人工授精」「体外受精・顕微授精」の3段階に分けられ、段階が進むほど通院頻度と1回あたりの拘束時間が増える傾向にある。
- タイミング法: 排卵日を推定するための超音波検査などで、月に数回程度の通院が一般的とされる
- 人工授精: タイミング法よりやや頻度が増え、排卵誘発剤の使用状況によっては月に数回〜週1回程度の通院が生じることがある
- 体外受精・顕微授精: 採卵に向けたホルモン検査・超音波検査が数日おきに必要になる時期があり、採卵周期には短期間で週2〜3回以上の通院が集中することがある
不妊治療(体外受精)は通院回数が多く、頻繁な通院が必要となる時期が発生することは厚生労働省の資料でも指摘されているとされる(要出典確認・具体的な調査名・数値は末尾出典欄を参照のうえ公開前に一次情報で確認すること)。ただし通院回数や頻度は個人の体質・治療方針・医療機関によって差があるため、具体的な数値を従業員一律の前提として制度設計に組み込むのは避け、「変動が大きい」という前提そのものを制度に反映することが重要である。
なぜ「当日に休みが決まる」働き方になるのか
不妊治療の通院で企業側が最も対応に苦慮するのが、受診日の予測不可能性である。特に体外受精・顕微授精では、ホルモン値や卵胞の育ち具合を見ながら医師が「明日、あるいは今日の午後に来てください」と指示するケースが珍しくない。これは排卵や採卵のタイミングが数値・数時間単位でずれ込むことがあり、事前に日程を固定できない治療特性による。
そのため、一般的な有給休暇取得のように「1週間前に申請」という運用は不妊治療とは相性が悪い。この特性を管理職が理解していないと、「急に休むなんて」という誤解や不信感につながりやすい。通院頻度の実態を数字で伝えるだけでなく、「なぜ前もって休みを言えないのか」という理由まで併せて周知することが、現場での摩擦を防ぐ鍵になる。
休み方の実例:半休・時間単位休暇・時差出勤の組み合わせ
通院1回あたりの所要時間は、検査のみであれば1〜2時間程度で済む場合もあるが、採卵・移植を伴う日は数時間の院内滞在や体調面の配慮が必要になることもある。この「日によって必要な休み方が変わる」という特性から、実務では以下のような制度・運用の組み合わせが有効とされる。
- 時間単位年休: 数時間の検査通院であれば、半日や1日単位の休暇より従業員の心理的ハードルが下がりやすい
- 半休制度: 午前の通院後に午後から出社する、といった柔軟な働き方に対応できる
- 時差出勤・フレックスタイム: 通院後の始業時刻をずらすことで、有休を消化せずに済むケースがある
- 不妊治療休暇(法定外の独自制度): 企業が任意で新設する休暇制度で、取得理由を詳細に申告させない設計にすることでプライバシー面の心理的抵抗を下げられる
- テレワーク: 通院後に体調が優れない場合、対面出社を求めずに済む選択肢として機能する
重要なのは、いずれか一つの制度で完結させようとしないことである。通院頻度も1回あたりの負荷も治療段階で変わるため、複数の休み方を組み合わせて選べる設計にしておくことで、従業員が状況に応じて使い分けられるようになる。
制度はあっても「使われない」問題への対処
不妊治療の両立支援で企業がよく直面するのが、制度を整備しても利用率が上がらないという課題である。背景には、不妊治療自体への職場の理解不足や、「治療していることを知られたくない」という心理的ハードルがある。不妊治療は他の育児・介護関連の休暇と異なり、外見からは状況が分かりにくく、取得理由を職場に説明すること自体が従業員にとって負担になりやすい。
この課題に対しては、制度の有無以前に「そもそも不妊治療とはどのようなものか」「なぜ通院頻度が読めないのか」という基礎知識を、本人だけでなく管理職・同僚層にも浸透させることが有効である。厚生労働省も「不妊治療を受けながら働き続けられる職場環境の整備」を企業の取り組みとして推奨しているとされ、社内研修や情報提供を通じた理解促進を求めているとされる(要出典確認・具体的な文言・出典は末尾出典欄を参照のうえ公開前に一次情報で確認すること)。
こうした社内理解の底上げには、外部の専門研修を活用する方法もある。Wellflowでは、不妊治療を含む女性特有の健康課題について、従業員・管理職双方が正しい知識を得られる法人向け研修プログラムを提供しており、制度の「使われない」問題を解消する一歩として活用されるケースがある。
管理職・同僚への周知で気をつけるべきこと
制度を作った後の運用面では、管理職への伝え方が特に重要になる。不妊治療は治療結果が不確実であり、精神的な負担も大きいことから、以下の点に配慮した周知が求められる。
- プライバシーへの配慮: 治療の有無や進捗を必要以上に聞き出さない。休暇取得の理由を詳細に申告させない運用にする
- 急な休みへの理解: 通院日が前日・当日に決まる特性を管理職に説明し、緊急の休暇申請を前提としたシフト・業務分担の柔軟性を持たせる
- 治療の見通しが立てにくいことへの理解: 妊娠に至るまでの期間は個人差が大きく、「あと何回で終わる」という見通しを本人も持てないケースが多い。管理職が短期的な結果を急かさない姿勢が求められる
- 相談窓口の明確化: 直属の上司に言いにくい場合に備え、人事や産業保健スタッフなど複数の相談経路を用意する
これらは制度設計の書面上だけでなく、管理職研修やeラーニングを通じて繰り返し伝えることで初めて浸透する。一度の説明で終わらせず、定期的な周知の機会を持つことが実効性を高める。
まとめ
不妊治療と仕事の両立を支援する上で、HR・労務担当者がまず理解すべきは「通院頻度も所要時間も治療ステージによって変動し、当日・前日に受診日が決まることが多い」という治療特性そのものである。この前提を踏まえたうえで、時間単位年休・半休・時差出勤・独自の不妊治療休暇・テレワークなどを組み合わせて選択肢を用意し、あわせて管理職・同僚層への理解促進を行うことで、制度が「あるだけ」で終わらない実効的な両立支援につながる。制度設計と現場理解の両輪を回すことが、これからの人事施策に求められている。
出典・参考リンク
- 厚生労働省「不妊治療と仕事の両立サポートサイト」(要出典確認・執筆時点の情報)
- 厚生労働省「不妊治療、仕事との両立に関する調査研究」(要出典確認・執筆時点の情報)
- 厚生労働省 職場における妊娠・出産・育児等に関する両立支援制度に関する情報(要出典確認・執筆時点の情報)
※本文中の通院頻度・所要時間に関する記述は一般的な傾向を示したものであり、個人差・医療機関による差が大きいため、公開前に厚生労働省等の一次情報での数値確認を推奨する。 ※本文中で「厚生労働省の調査」「厚生労働省の推奨」として言及した2箇所は、具体的な調査名・文言を執筆時点で一次情報照合できていないため、公開前に必ず出典を特定・確認すること。





