不妊治療を会社にどう伝える?上司への伝え方と配慮してほしいこと

2026年 7月 13日

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結論:「言い方」より前に、伝えるための土台を整えることが先

不妊治療と仕事の両立で従業員が最初にぶつかる壁は、実は「上司にどう言うか」という話し方のテクニックではありません。多くの場合、その手前にある「そもそも言っていいのか」「言ったら評価に響かないか」という不安のほうが大きな壁になっています。

結論から言えば、伝え方の工夫(タイミング・伝える範囲・具体的な依頼内容の整理)は確かに有効ですが、それが機能するのは会社側に「相談されたら適切に受け止める体制」がある場合に限られます。HR担当者にとって重要なのは、個々の伝え方指南よりも先に、相談を受ける上司側の理解と、休暇制度・情報管理のルールを整えておくことです。

本記事では、従業員側が実践しやすい「上司への伝え方」の型と、それを受け止める企業側が事前に準備しておくべき体制の両方を解説します。

なぜ「上司にどう伝えるか」で従業員が悩むのか

不妊治療は、他の傷病と異なり通院頻度が高く、かつ治療周期に合わせて数日前にしか通院日が確定しないことが少なくありません。厚生労働省が実施した調査でも、不妊治療をしながら働く人の多くが「通院と仕事の両立の難しさ」を課題として挙げており、両立できずに離職・転職に至るケースや、雇用形態を変えざるを得なかったケースが一定数存在することが報告されています(具体的な離職率・件数の数値は年度・調査により異なるため、詳細な数値は厚生労働省の一次資料でご確認ください)。

従業員側が上司への相談をためらう主な理由は、次のようなものです。

  • 治療内容がプライベートかつセンシティブで、どこまで話すべきか分からない
  • 「いつまで続くか分からない」治療のため、休暇取得の見通しを説明しにくい
  • 伝えたことで「これから頑張れない人」と評価されるのではという不安
  • 過去に社内で妊活・不妊治療に関する心ない発言を見聞きした経験がある

これらの不安は、本人の伝え方だけで解消できるものではありません。上司・会社側が「相談されたらどう対応するか」の基本姿勢を持っているかどうかが、実際には最も大きな要因です。

従業員向け:上司に伝えるときの実践的な型

とはいえ、従業員本人にとって「何をどう伝えるか」の型があるだけで、心理的なハードルはかなり下がります。HR担当者が相談を受けた際にアドバイスできるよう、代表的な伝え方の要点を整理します。

伝えるタイミングは「治療が本格化する前」が望ましい

通院回数が増えてから慌てて伝えるより、治療を開始する段階、あるいは検討している段階で早めに伝えておくと、上司側も業務調整の準備がしやすくなります。繁忙期の直前など、伝えにくいタイミングを避けられるよう、本人が主導権を持って時期を選べるとよいでしょう。

伝える内容は「詳細」より「必要な配慮」にフォーカスする

治療の医学的な詳細まで伝える必要はありません。上司が知っておくべきなのは、主に次の3点です。

  1. 通院のために突発的な休み・遅刻・早退が発生する可能性があること
  2. おおよその頻度や期間の見通し(分かる範囲でよい)
  3. 業務上、具体的にどう配慮してほしいか(有給の使い方、在宅勤務の可否、当日連絡の許容など)

「不妊治療をしています」という事実だけを伝えて終わるのではなく、「こういう配慮があると助かります」という具体的な依頼までセットで伝えると、上司側も対応しやすくなります。

誰にどこまで伝えるかは本人が選べるようにする

直属の上司だけに伝えるのか、チームメンバーにも共有するのかは、本人の意向を尊重すべき事項です。会社側がこれを画一的なルールで強制しないことが重要です。

上司・HR担当者側が事前に準備しておくべきこと

従業員からの相談を適切に受け止めるために、企業側は次のような体制を事前に整えておくことが望まれます。

相談を受けたときの基本姿勢を共有しておく

上司向けに、以下のような基本姿勢を研修やガイドラインで共有しておくと、相談を受けた際の対応のばらつきを防げます。

  • 治療の詳細を根掘り葉掘り聞かない
  • 「いつまで続くの?」「子どもは諦めたら?」といった発言は絶対に避ける
  • 本人が共有を望まない範囲は、他のメンバーに伝えない(情報管理の徹底)
  • 業務調整の相談として淡々と受け止め、特別視や過度な同情を示さない

不妊治療の場合、当事者は「気を遣われすぎること」自体を負担に感じるケースもあります。過剰な配慮の押し付けも、無関心と同様に負担になり得るという点は、上司研修で伝えておく価値があります。

利用できる制度を整理し、いつでも説明できるようにしておく

企業によっては、不妊治療のための休暇制度(独自の特別休暇、時間単位年休、時差出勤、在宅勤務制度など)を設けている場合があります。厚生労働省は「くるみんプラス」認定制度や「両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)」など、不妊治療と仕事の両立に取り組む企業への支援策を設けており、両立支援制度の導入を後押ししています(制度の名称・詳細は執筆時点の情報のため、最新の一次情報を必ずご確認ください)。

自社にどのような制度があるか、HR担当者がすぐに一覧で説明できる状態にしておくことが重要です。制度があっても周知されていなければ、従業員は「休暇を取っていいのかどうか」から悩むことになります。

管理職向けの研修・情報提供を行う

不妊治療について正しい知識を持たないまま管理職になっている人は少なくありません。悪気なく発した一言が、部下を深く傷つけ、相談自体をためらわせてしまうこともあります。

こうした知識ギャップを埋めるには、個別の注意喚起だけでなく、組織的な研修としてリテラシーを底上げする取り組みが有効です。Wellflowのような法人向けの女性の健康研修プログラムを活用し、不妊治療を含む女性特有の健康課題について管理職層が体系的に学べる機会を設けている企業もあります。従業員一人ひとりの「伝え方の工夫」に負担を寄せるのではなく、受け止める側の理解を組織として高めておくことが、根本的な解決につながります。

相談を受けた後、避けるべきNG対応

最後に、実際に相談を受けた際にHR担当者・上司が陥りがちなNG対応を整理します。

  • 詮索しすぎる: 「原因は?」「どちらに問題が?」といった質問は不要かつ不適切です
  • 勝手に周囲へ共有する: 本人の同意なく他のメンバーやさらに上位の管理職に伝えることは避けるべきです
  • 評価に無意識に反映させる: 通院による欠勤・遅刻を理由に、評価や昇進の判断に影響を与えることがないよう、評価者側の意識づけが必要です
  • 「みんな我慢している」という比較: 他の育児中社員等と比較して負担を相対化する発言は避けるべきです

これらはいずれも、悪意なく行われがちな対応です。だからこそ、個人の注意力に任せるのではなく、組織としてのガイドラインや研修で防いでいく必要があります。

まとめ

不妊治療を上司にどう伝えるかという課題は、従業員個人の伝え方の工夫だけで解決するものではありません。伝えるタイミング・伝える内容・依頼の具体性といった実践的な型は確かに役立ちますが、それが機能するかどうかは、受け止める側である上司・会社に「適切に対応できる体制」があるかどうかにかかっています。

HR担当者としては、休暇制度の整備・周知、管理職向けの基礎知識の共有、相談を受けた際の基本姿勢の徹底という3点を先に整えることが、結果として従業員が安心して伝えられる環境づくりにつながります。

出典・参考リンク

  • 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」関連ページ(要出典確認・最新の一次情報は厚生労働省公式サイトでご確認ください)
  • 厚生労働省 仕事と不妊治療の両立に関する調査・事例集(要出典確認)
  • 厚生労働省 くるみんプラス・両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)関連情報(要出典確認・制度名称は執筆時点のものであり、改廃の可能性があるため最新情報を要確認)

※本記事の統計・制度に関する記述は執筆時点の一般的な情報に基づいています。制度の詳細・数値は厚生労働省等の一次情報で必ずご確認のうえ、社内制度設計にご活用ください。