更年期による女性管理職の離職・昇進辞退——企業が取り組むべき支援策
2026年 7月 15日

更年期の症状が重くなりやすい40代後半から50代は、多くの企業で女性が管理職に登用される時期とも重なります。この重なりが、離職や、降格・昇進辞退を含む雇用条件の劣化という形で表面化していることが、複数の調査から見えてきています。本記事では、なぜこの2つのタイミングが衝突するのか、データが示す実態、そして企業が取り組むべき支援策について整理します。
なぜ「更年期」と「管理職登用のタイミング」が重なるのか
更年期とは、閉経の前後約10年間、一般的には45歳から55歳頃を指す期間であり、この間にホットフラッシュ、不眠、抑うつ、集中力の低下といった症状が現れやすくなります。一方で、多くの企業ではこの40代後半から50代という年代が、課長・部長クラスへの昇進や、より重い役割への登用が検討される時期でもあります。
つまり、心身の変化が最も大きくなりうる時期と、キャリア形成上の重要な意思決定が求められる時期が、偶然にも同じ年代に重なっているのです。マイナビキャリアリサーチLabのコラムでも、この「更年期の壁」がキャリア継続を阻害する要因として取り上げられており、症状の重さと昇進のタイミングが交差する構造そのものが、女性のキャリア形成における特有の課題であると指摘されています。
データで見る更年期離職・昇進辞退の実態
労働政策研究・研修機構(JILPT)のリサーチアイ第70回(周燕飛氏)では、更年期症状が原因とみられる離職者数について、推計で約20万人から46万人程度にのぼる可能性が示されています。離職率で見ると40代で8.1%、50代で10.1%、45歳から54歳の層に限ると9.0%という数値が示されており、非正規雇用の女性は正社員より離職割合が3.3ポイント高くなっています。
さらに注目すべきは、離職に至らないまでも「降格」「昇進辞退」「非正規化」といった雇用条件の劣化を伴うケースです。同リサーチアイでは、こうした広義の「更年期ロス」に該当する女性が33万人から75万人規模にのぼると見積もられており、JILPTが調査対象とした一定条件を満たす40〜59歳の有業女性のうち15.3%が、更年期症状による何らかの雇用劣化を認識していたとされています。この中には「管理職への昇進を辞退せざるを得なかった」という事例も含まれます。
経済的な影響についても、東京都の「働く女性のウェルネス向上委員会」は、2021年のNHK調査に基づき、更年期離職による経済損失を男女合わせて約6,300億円(うち女性は約4,200億円)と紹介しています。パーソル総合研究所の定量調査でも、40代から50代の正社員女性の44.5%が軽度以上の更年期症状を抱えており、症状レベルが高いほど仕事のパフォーマンスや継続就業意向が低下する傾向が確認されています。
女性管理職候補が直面する「言えない」問題
これらのデータが示すもう一つの側面が、症状を自覚していても職場で言い出しにくいという心理的なハードルです。JILPTのリサーチアイでは、更年期症状を自覚した女性のうち約70%が医療機関を受診していないという実態も示されています。
管理職やその候補となるポジションにいる女性の場合、この「言えなさ」はさらに複雑になりがちです。周囲に「弱さを見せられない」というプレッシャーを感じやすい一方、相談できる同世代・同性の上司が社内に少ないケースも多く、相談先そのものが構造的に不足しています。JILPTのリサーチアイでは、更年期症状により離職した人に限ると、離職理由として「仕事を続ける自信がなくなった」が6割で最多だったとされており、単なる体調の問題にとどまらず、キャリア継続への自信そのものが揺らいでいる実態がうかがえます。
企業が取り組むべき更年期支援の3本柱
パーソル総合研究所は、更年期による離職やパフォーマンス低下を防ぐ職場支援として、「セルフケア」「ラインケア」「ピアサポート」という3つの柱を提示しています。セルフケアは本人が正しい知識を持ち体調管理に主体的に取り組めるようにすること、ラインケアは上司が柔軟な働き方(在宅勤務、フレックス、時間単位の休暇取得など)を許容し部下のパフォーマンスを支えること、ピアサポートは同僚同士が経験を共有し支え合うことです。これを企業の実務に落とし込むと、更年期の正しい知識を管理職・従業員双方に広げる研修、婦人科など適切な医療機関への受診を後押しする仕組み、フレックスタイムや在宅勤務といった柔軟な働き方・体制の整備という3つの取り組みが軸になります。症状を自覚しながら受診していない女性が多数を占める現状を踏まえれば、受診勧奨のハードルを下げる意義は特に大きいといえます。
Wellflowの更年期研修が女性管理職の定着に貢献できること
こうした3本柱を職場に根づかせる出発点として有効なのが、更年期に関する正しい知識を組織全体で共有する研修です。Flora(フローラ)が提供する法人向け女性の健康研修プログラム「Wellflow」では、更年期症状の基礎知識や、管理職・同僚が取りうる配慮について学ぶ機会を提供しており、管理職本人だけでなく周囲の理解を広げることで、「言えない」構造そのものを変えていく一歩となり得ます。
まとめ——更年期支援は女性管理職比率向上の見落とせない実務課題
多くの企業が女性管理職比率の向上を目標に掲げていますが、更年期症状への支援が伴わなければ、せっかく育成してきた管理職候補が症状を理由に昇進を辞退したり、離職に至ったりするリスクが残り続けます。JILPTやパーソル総合研究所のデータが示す通り、更年期による離職・雇用劣化は無視できない規模で存在しています。正しい知識の理解促進、受診勧奨、柔軟な働き方の整備という3本柱を土台に、女性管理職比率の向上を目指す企業にとって、更年期支援は見落とせない実務課題になりつつあります。
出典・参考リンク
- JILPTリサーチアイ第70回「働く女性の更年期離職」(周燕飛氏) https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/070_211105.html
- 働く女性のウェルネス向上委員会(東京都)「更年期離職の経済損失は6300億円」 https://women-wellness.metro.tokyo.lg.jp/columns/09/
- パーソル総合研究所「更年期の仕事と健康に関する定量調査」 https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/menopause/
- パーソル総合研究所「更年期による離職やパフォーマンス低下を防ぐ『職場支援の三本柱』とは」 https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/thinktank-column/202509010001/
- マイナビキャリアリサーチLab「キャリア継続の障壁 更年期の壁」(周燕飛氏) https://career-research.mynavi.jp/column/20240401_72021/





