PMS(月経前症候群)と仕事の両立|企業が知っておくべき基礎知識

2026年 7月 13日

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PMSと仕事の両立に悩む従業員は珍しくない

PMS(月経前症候群)は、月経が始まる3〜10日ほど前から生じる心身の不調で、月経が始まると軽くなったり消えたりするのが特徴です。イライラ、気分の落ち込み、頭痛、腹部の張り、眠気や集中力の低下など症状の種類や強さには個人差がありますが、多くの女性が何らかの形で経験するとされています。

結論から言うと、PMSは「本人の甘え」や「一時的な体調不良」として片付けられる問題ではなく、毎月周期的に業務パフォーマンスへ影響しうる、企業として向き合うべき労務課題です。特別な制度を新設しなくても、社内の理解を広げ、相談しやすい環境を整えるだけで、従業員の負担も、周囲のマネジメントの負担も軽減できます。

本記事では、HR・労務担当者がまず押さえておきたいPMSの基礎知識と、仕事との両立を支えるために企業ができることを整理します。

PMSとは何か - 症状と仕事への影響を正しく理解する

PMS(Premenstrual Syndrome、月経前症候群)は、月経周期に伴うホルモンバランスの変化によって、月経前の一定期間に心身にさまざまな症状が現れる状態を指します。主な症状は以下のように多岐にわたります。

  • 身体的症状: 頭痛、腹部の張り・痛み、乳房の張り、むくみ、肌荒れ、眠気、倦怠感
  • 精神的症状: イライラ、気分の落ち込み、不安感、集中力の低下、涙もろさ

症状の強さや種類には個人差が大きく、「少し気になる程度」の人もいれば、日常生活や仕事に支障が出るほど重い症状を抱える人もいます。中には、精神症状が特に強く現れる「PMDD(月経前不快気分障害)」と呼ばれる状態に該当するケースもあり、この場合は産婦人科や心療内科など専門医への相談が望ましいとされています。

仕事の場面では、PMSの時期に次のような影響が出ることがあります。

  • 集中力が落ち、通常より業務に時間がかかる
  • 感情のコントロールが難しく、対人コミュニケーションで消耗しやすい
  • 頭痛や倦怠感で欠勤・遅刻・早退につながる
  • 「体調が悪い」と伝えにくく、無理をして働き続けてしまう

重要なのは、これが「特定の月だけの特殊な事情」ではなく、多くの女性従業員にとって毎月起こりうる周期的な波だという点です。単発の体調不良とは異なり、繰り返し発生することを前提に、業務調整や理解の土台を整えておく発想が必要です。

なぜ企業がPMSに向き合う必要があるのか - プレゼンティーズムという視点

PMSへの対応を考えるうえで欠かせないのが「プレゼンティーズム」という考え方です。プレゼンティーズムとは、従業員が出社はしているものの、心身の不調によって本来のパフォーマンスを発揮できていない状態を指します。

欠勤(アブセンティーズム)であれば「休んだ日数」として把握しやすいのに対し、プレゼンティーズムは目に見えにくく、企業側が気づかないまま生産性の損失が積み重なっていくことが指摘されています。PMSはまさにこのプレゼンティーズムを引き起こす代表的な要因のひとつです。出社していても本調子ではない状態が月に数日〜1週間程度、周期的に発生するとすれば、年間で見た累積の影響は決して小さくありません。

さらに、PMSへの無理解は次のようなリスクにもつながります。

  • 本人が不調を我慢し続けることによる、症状の悪化やメンタルヘルス不調への発展
  • 「なぜ急に機嫌が悪いのか」といった周囲の誤解による人間関係の悪化
  • 相談できる雰囲気がないことによる、優秀な人材の離職

つまりPMSへの対応は、単なる「女性従業員への配慮」にとどまらず、組織全体の生産性とエンゲージメントに関わる経営課題として捉える視点が求められます。

企業ができる両立支援 - 制度・環境・コミュニケーションの3方向

PMSと仕事の両立を支えるために、企業が取り組める施策は大きく3つの方向に整理できます。

制度面の整備

生理休暇は労働基準法第68条で定められた制度で、生理日の就業が著しく困難な女性従業員が休暇を請求した場合、事業主はその者を就業させてはならないとされています(執筆時点の情報、条文の正確な文言は一次情報で要確認)。ただし、PMSの症状は月経開始前に現れるため、生理休暇の対象期間と厳密には一致しない場合がある点に注意が必要です。

生理休暇に加えて、時差出勤やフレックスタイム制、在宅勤務(テレワーク)といった柔軟な働き方の選択肢を用意しておくことも有効です。「体調が悪い日だけ在宅にする」「重い症状が出やすい期間は始業時間を後ろ倒しにする」といった運用ができれば、無理に出社して低いパフォーマンスで働き続ける状況を避けやすくなります。

環境・体制面の整備

制度があっても「使いにくい」状態では意味がありません。生理休暇の取得率が低い企業は少なくないとされており、その背景には「言い出しにくい」「上司が男性で相談しづらい」といった心理的なハードルがあると考えられます。

体制面では、産業医・保健師への相談窓口を周知する、管理職が体調不良の申し出を否定的に受け止めない、といった土台づくりが重要です。特に管理職自身がPMSやその他の女性特有の健康課題について正しい知識を持っているかどうかは、部下が相談しやすい雰囲気に直結します。

コミュニケーション・意識づけ

PMSは個人差が大きく、症状のない人にとっては実感を持ちにくいテーマでもあります。だからこそ、社内研修や啓発の機会を通じて「PMSとはどのようなものか」「本人にどう配慮できるか」を組織全体で共有することが、両立支援の土台になります。

こうした知識の共有は、人事担当者だけが抱え込むのではなく、管理職や全従業員を巻き込んだ形で行うことで効果を発揮します。例えばWellflowのような法人向けの女性の健康研修プログラムを活用し、PMSを含む月経随伴症状やプレゼンティーズムについて外部の専門的な知見を交えて学ぶ機会を設けるのも、社内だけでは進みにくい理解促進を後押しする一つの方法です。

従業員本人ができるセルフケアと、企業がその実践を後押しする方法

企業側の制度・環境整備と並行して、従業員本人によるセルフケアも症状の緩和に役立つとされています。代表的なものとしては、次のような取り組みが挙げられます。

  • 睡眠リズムを整える、適度な運動を続ける、といった生活習慣の見直し
  • カフェインや塩分の摂りすぎを控えるなど食生活への配慮
  • 低用量ピルなど医療的な選択肢について婦人科で相談する
  • 自分の周期を記録し、症状が出やすい時期を事前に把握しておく

ただし、こうしたセルフケアはあくまで個人の努力に委ねられる部分であり、「本人が対策すればよい」という自己責任論に矮小化してしまうと、企業側の対応責任が曖昧になってしまいます。企業にできることは、こうしたセルフケアを実践しやすい環境(残業を強要しない、休みを取りやすくする等)を整えること、そして必要に応じて婦人科への受診を後押しする情報提供を行うことです。

症状が重く、日常生活に大きな支障が出ている場合は、我慢せず産婦人科を受診するよう案内することも大切です。低用量ピルなどの治療によって症状が大きく改善するケースもあるとされていますが、これは医療的判断が必要な領域であり、企業側が治療方針に踏み込むことは避け、あくまで受診を後押しする立場に徹するべきです。

まとめ - 「知っている」ことが両立支援の第一歩

PMSは多くの女性従業員が経験しうる、周期的な心身の不調です。プレゼンティーズムという形で組織の生産性に影響しうる一方、その実態は目に見えにくく、放置されやすいテーマでもあります。

企業がPMSと仕事の両立を支えるためにできることは、以下の3点に整理できます。

  1. 生理休暇や柔軟な働き方など、制度面の選択肢を整える
  2. 相談しやすい体制・雰囲気をつくり、管理職の理解を深める
  3. 社内研修などを通じて、組織全体でPMSへの正しい理解を広げる

特別な予算や大掛かりな制度改革がなくても、「PMSとはどのようなものか」を組織で正しく知ること自体が、両立支援の土台になります。まずは自社の現状(生理休暇の取得しやすさ、相談窓口の有無、管理職の理解度など)を棚卸しするところから始めてみてください。

出典・参考リンク

  • 厚生労働省「生理休暇について」(労働基準法第68条に関する解説ページ、要出典確認)
  • 厚生労働省「働く女性の健康促進のための対策」関連資料(要出典確認)
  • 日本産科婦人科学会「月経前症候群(PMS)」の解説ページ(要出典確認)
  • プレゼンティーズムに関する各種調査(東京大学 環境予防医学分野 等による職域健康関連の調査報告、要出典確認)

※上記は制度・団体名として一般に知られているものを記載していますが、URLは実在確認ができていないため掲載していません。公開時には各リンク先の一次情報を編集担当者にて確認・差し替えをお願いします。