健康経営エキスパートアドバイザーとは?導入メリットや業務内容を解説
2025年 8月 18日

「健康経営エキスパートアドバイザー」とは、企業の健康経営をより専門的かつ実践的に支援する専門家です 。
この記事では、アドバイザーが中小企業の抱える健康課題をどのように解決に導くのか、具体的な役割や導入メリットを解説します。また、女性活躍推進との相乗効果や、企業の成功事例もご紹介しながら、アドバイザーがいかに企業価値を高めるかを紐解きます。
自社の健康経営を次のステージに進め、従業員と企業の双方にとって明るい未来を築くための最初の一歩として、ぜひ本記事をお役立てください。
健康経営エキスパートアドバイザーとは?
企業の持続的な成長には、従業員の健康を経営的な視点から捉え、戦略的に取り組む「健康経営」が不可欠です 。しかし、多くの企業は具体的な進め方が分からなかったり、社内リソースの不足により施策が形骸化してしまったりといった課題を抱えています 。
健康経営エキスパートアドバイザーは、こうした企業の課題を解決に導く専門家です 。健康経営の導入支援を行う「健康経営アドバイザー」の上位資格として位置づけられており、既に健康経営を検討・実施している企業に対して、より専門的で実践的な支援を担うことを目的としています 。この資格は、単なる知識の有無ではなく、実践的なコンサルティング能力にその価値があると言えるでしょう 。
健康経営エキスパートアドバイザーを導入するメリット
健康経営エキスパートアドバイザーを導入する最大のメリットは、社内だけでは解決が難しい課題に対し、外部の専門家による客観的かつ効果的な支援を得られる点にあります 。
専門家による客観的な健康診断と課題抽出
専門的な視点から企業の健康経営の現状を分析し、自社だけでは見つけにくい潜在的な課題を特定します 。健康診断データやストレスチェック結果など、客観的な情報に基づいた課題抽出を行うでしょう 。このプロセスは、ワークショップで習得するヒアリングスキルと健康経営診断報告書の作成能力に裏付けられています 。
実効性の高い改善提案と計画策定
抽出された課題に対し、関連法規や先進事例などを踏まえた、具体的で実行可能な改善策を提案します 。アドバイザーは、企業の状況に合わせたオーダーメイドの計画策定を可能にし、従業員の健康管理を効率化し、生産性向上へと導きます 。
PDCAサイクルを回すための継続的なサポート
健康経営は一度きりのイベントではなく、施策実行後の効果測定、見直し、改善を繰り返すPDCAサイクルを回すことが成功の鍵です 。エキスパートアドバイザーは、この一連のプロセスを継続的に支援する「伴走者」としての役割を担います。
健康経営エキスパートアドバイザーの業務内容
健康経営エキスパートアドバイザーの業務は多岐にわたりますが、その基本は「実践支援」です 。
・ヒアリング・現状分析
従業員や経営層への丁寧なヒアリングを通じて、企業の健康課題を深く掘り下げます 。
・健康経営診断報告書の作成
分析結果に基づき、企業の現状、課題、改善策をまとめた診断報告書を作成します。これは経営層の理解を深める重要なツールとなります 。
・具体的な施策の提案
健康セミナーの開催やラジオ体操の導入、健康診断の二次検査受診勧奨、ストレスチェックの実施など、多岐にわたる施策を提案します 。コストのかかる施策だけでなく、すぐに始められる低コストな取り組みから提案することも可能です 。
・施策実行の伴走と効果検証
提案した施策の実行をサポートし、その後は定期的に効果を測定し、PDCAサイクルを回し続けます 。
健康経営と女性活躍推進のシナジー
健康経営は、全従業員の健康増進を目指すだけでなく、女性特有の健康課題に焦点を当てることで、より大きな成果を生み出すことができます 。
女性の月経随伴症状や更年期症状などの健康課題は、労働意欲の低下や業務パフォーマンスの悪化につながり、年間4,911億円もの労働損失を生み出しているという試算もあります 。また、女性従業員の約5割が健康課題で困った経験がある一方で、管理職の約4割もその対応に困っているのが現状です 。特に男性管理職からは「男性にはわからない女性特有の症状に的確にアドバイスできない」という声が上がっており、専門家による支援の必要性が示唆されています 。
エキスパートアドバイザーが導く女性活躍支援
健康経営エキスパートアドバイザーは、女性の健康課題に対応するための専門的な知識とノウハウを提供し、企業の女性活躍推進を支援します。
・ヘルスリテラシー向上に向けた研修やセミナー
女性従業員だけでなく、男性や管理職も対象とした健康教育を通じて、女性のライフステージに応じた健康課題への理解を深めます 。NTTドコモの事例では、女性若手職員と男性上司を対象としたセミナーが好評を得ており、組織全体の意識改革につながることが示されています 。
・女性の健康に配慮した相談窓口・制度の導入
女性の健康課題は個人差が大きいため、気軽に相談できる窓口の設置は非常に重要です 。また、月経や更年期症状に配慮した休暇制度や、不妊治療のための休暇制度など、柔軟な働き方を支援する制度設計をサポートします 。
・婦人科検診の受診促進
法定の健康診断には含まれない婦人科検診の費用補助や勤務時間調整などの支援を通じて、女性特有の病気の早期発見・治療を促します 。
実践事例から紐解く健康経営の成功法則
健康経営エキスパートアドバイザーが関与した成功事例からは、企業成長のヒントが見えてきます。
成功に共通するポイントと導入事例
健康経営の成功には、経営トップの強いコミットメントが不可欠です 。笠間製本印刷の事例のように、経営陣自らがマラソンに参加することで、従業員の理解が深まり、取り組みが社内に浸透しやすくなります 。
また、自社だけでは解決できない課題や、知見が不足している分野については、外部の専門家と連携することが有効です 。株式会社ライフィでは、自社の取り組みに専門家(保健衛生分野)の見地が加わることで、施策への納得感が向上したと報告されています 。フェリコ株式会社では、各分野の専門家の助言で健康経営の取り組みをレベルアップさせました 。
このように、エキスパートアドバイザーは企業の規模や業態を問わず、多様な企業でその知見を活かしています 。例えば、株式会社TGM(小売業)は朝食の重要性を周知し朝食欠食率を改善 、有限会社丸和建設工業(建設業)はラジオ体操の実施が労働災害の防止に寄与 、株式会社三恵(小売業)は女性の健康問題に着目し生産性向上につなげました 。
また、株式会社服部商会は、健康経営優良法人に3年連続で認定されるなどの実績を公開することで、ホワイト企業として地域での認知度を拡大しました 。大塚製薬株式会社の事例のように、エキスパートアドバイザーの知見を既存事業と組み合わせて新たな収益源とする企業も存在します 。
健康経営エキスパートアドバイザーになるには
健康経営エキスパートアドバイザーは、高度な専門性と実践力を兼ね備えた人材として、中小企業から大企業まで幅広く求められています。資格を取得することで、企業の健康経営を推進する専門家としての信頼性や市場価値を高めることができ、独立や副業、企業内でのキャリアアップにもつながる可能性があります。
受講資格と認定までの流れ
健康経営エキスパートアドバイザーの資格は、高度な専門性と実践的なスキルが求められるため、その受講資格は厳格に定められています 。
受講資格は、以下の二つの条件を両方満たす必要があります。
・健康経営アドバイザー認定者であること(認定期間が有効な者に限る)
・所定の有資格者または所定の実務経験者であること
「所定の有資格者」には、中小企業診断士、社会保険労務士、医師、保健師、看護師、公認心理師、管理栄養士、健康運動指導士などが含まれます 。また、「所定の実務経験者」には、「健康・医療・保健」「経営」「人事労務」「健康経営」に関する実務に概ね1年以上携わった経験が求められます 。
認定試験の難易度と合格のポイント
認定には「知識確認テスト」と「ワークショップ」の両方に合格する必要があります 。合格率は公式には発表されていませんが、合格には高い正答率が必要であり、「簡単な試験ではない」とされています 。
・知識確認テスト
多肢選択式50問で、80%以上の正答率が合格の目安です 。出題範囲は多岐にわたり、配布される例題になかったような細かい知識も問われることがあります 。
・ワークショップと診断報告書作成
テスト合格者は、事例企業を題材としたワークショップに参加します。その後、「健康経営診断報告書」を作成・提出し、80点以上の評価を得ることで認定されます 。この実践的なプロセスが、専門家としての実務能力を保証します 。
資格取得には、知識確認テスト(テキスト発送ありの場合7,700円、なしの場合5,500円)とワークショップ(22,000円)の費用がかかります 。認定期間は2年間で、更新には研修動画の視聴と更新テストの合格、更新料(16,500円)が必要です 。なお、東京商工会議所から仕事の斡旋や紹介は行われないため、事前に理解しておく必要があります 。
まとめ
健康経営はもはや福利厚生の一環ではなく、従業員の健康を戦略的に管理し、組織全体の生産性や企業価値の向上を目指すための重要な投資です。健康経営エキスパートアドバイザーは、客観的な現状分析、実効性の高い計画策定、継続的なPDCAサイクルの支援を通じて企業の未来を拓く専門家であり、とくに中小企業においては、専門知識やリソース不足で健康経営の一歩を踏み出せない場合や、女性活躍推進といった複雑な課題を同時に解決する必要がある場合に大きな力を発揮します。
もし御社が健康経営の進め方に悩み、離職率低下や生産性向上、女性社員が働きやすい環境整備を目指しているのであれば、専門家の支援を検討することで、自社だけでは気づけなかった課題を明確にし、より効果的な施策を打つことができるでしょう。健康経営エキスパートアドバイザーとの出会いは、健康課題を解決し企業価値を高めるための最初の一歩となるはずです。