健康経営優良法人「ホワイト500」とは? 認定基準から事例、取得メリットまで徹底解説

2025年 8月 27日

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健康経営の取り組みが特に優れていると社会的に認められる称号が、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する健康経営優良法人です。

特に大規模法人部門の上位500社に与えられる称号が「ホワイト500」です。

本記事では、この「ホワイト500」がどのような制度で、取得することでどのようなメリットが得られるのか、さらには認定を受けるための具体的な基準や成功事例までを徹底的に解説いたします。

この記事が、皆様の企業における健康経営推進の羅針盤となることを願っています。

健康経営優良法人「ホワイト500」とは?

経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」とは

健康経営とは、単なる従業員の健康管理ではなく、将来的な収益性向上を見据えた「投資」であるという考え方に基づいています。この考え方のもと、従業員の健康づくりを経営的な視点で考え、戦略的に実践している法人を「見える化」するために、経済産業省と日本健康会議が共同で「健康経営優良法人認定制度」を創設しました 。この制度は、地域の健康課題や健康増進の取り組みをふまえ、特に優良な健康経営を実践している企業を顕彰するものです 。

「ホワイト500」の定義と大規模法人における位置づけ

「ホワイト500」は、経済産業省が推進する「健康経営優良法人制度」の中でも、大規模法人部門に認定された企業のうち、特に優れた上位500社に与えられる特別な称号です 。この制度の目的は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人を「見える化」することにあります 。

「健康経営優良法人」の認定は、大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれており、ホワイト500は大規模法人部門の頂点に位置づけられています 。名称の「500」は、制度創設時のスローガン「健康経営に取り組む企業を500以上にする」に由来しており、実際に認定企業数は500社を超えることがあります 。大規模法人部門の対象は、従業員数や業種によって区分されます 。

「ホワイト500」に認定される5つのメリット

「ホワイト500」への認定は、単なる名誉ではありません。それは、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するための重要な経営戦略ツールです。ここからは、認定取得がもたらす具体的なビジネス上のメリットを5つの観点から解説します。

企業イメージの向上とブランド力強化

「ホワイト500」に認定されると、経済産業省の公式ウェブサイトで企業名が公表される他、認定企業専用のロゴマークの使用が許可されます。このロゴマークは、会社のパンフレット、名刺、ホームページ、さらには採用サイトなど、さまざまな場面で利用でき、求職者や顧客、取引先、そして投資家といったステークホルダー全体に「従業員の健康を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる優良法人」であることを分かりやすくアピールできます。

多くの認定企業が、プレスリリースを通じて「〇年連続で認定」といった形でこの成果を積極的に発信しています。これは、ステークホルダー、特に顧客や求職者に対して、「この企業は一貫して従業員を大切にしている」という揺るぎないメッセージを送り、長期的な企業価値の向上に貢献する重要なブランド資産となっていることを示唆しているのでしょう。

優秀な人材の確保と離職率の低下

現代の求職者は、給与や仕事内容だけでなく、働きやすい職場環境を重要な判断基準としています。ホワイト500に認定されているということは、「社員への思いやりがある会社」であることの客観的な証明となり、安心して長く働き続けられる職場であることを強力にアピールできます。

育児や介護との両立支援、ワークライフバランスを重視した働き方を推進する取り組みは、従業員の離職防止にも直接的に役立ちます。経済産業省の調査でも、健康経営度の高い企業ほど離職率が低い傾向にあることが示唆されています。また、健康経営度調査を分析すると、「従業員の働きがいの向上」や「人材の確保」を経営課題として健康経営を推進する企業が多いことが分かっています。このことから、健康投資が、単なる福利厚生ではなく、企業の持続的な成長に不可欠な「人的資本投資」として認識されている証拠だと言えるでしょう。

企業全体の生産性と業績の向上

従業員の健康状態が良好であれば、モチベーションやエンゲージメントが高まり、パフォーマンスの向上に繋がります。これにより、心身の不調によってパフォーマンスが低下する「プレゼンティーズム」を改善し、企業全体の生産性向上を図ることができます。

海外では、健康経営への投資が具体的なリターンをもたらすことが示唆されています。米国のジョンソン・エンド・ジョンソン社が実施した調査では、健康経営に1ドル投資するごとに、3ドルのリターンがあったと試算されています。この事例は、健康経営が抽象的な概念ではなく、明確な投資対効果を持つことを示しています。

しかし、その効果を最大限に引き出すためには、単に施策を行うだけでなく、経営戦略として位置づけ、数値目標を設定し、効果を定量的に測定・評価する「戦略的なアプローチ」が不可欠です。これにより、企業は健康投資をコストセンターからプロフィットセンターへと変貌させることができるでしょう。

株価上昇や融資における優遇措置

健康経営に取り組む企業は、長期的な成長が期待できる企業として投資家からも高く評価される傾向にあります。経済産業省の資料によると、「健康経営銘柄」に選定された企業の平均株価は、TOPIX(東証株価指数)を上回る形で推移していることが分かっています。このような高い社会的評価は、金融機関からの融資においても有利に働く可能性があります。従業員の健康を大切にする姿勢は、企業が安定した事業基盤と持続可能性を持っていることの証明となり、信用力の向上につながるでしょう。

従業員のエンゲージメント向上と働きがいの創出

従業員が「会社が自分の健康を気遣ってくれている」と感じることは、会社への信頼感と帰属意識を高めます。これにより、従業員は「この会社で長く働き続けたい」「もっと会社に貢献したい」という前向きな気持ちを持つようになり、働きがいの向上に繋がります。このような内発的なモチベーションは、組織全体の活性化をもたらし、イノベーションや生産性の向上といった好循環を生み出すでしょう。

「ホワイト500」認定取得に向けた5つの評価基準

「ホワイト500」への道のりは、戦略的な計画と実行に裏打ちされています。認定には、経済産業省が定める5つの評価基準を満たす必要があります。ここでは、その基準の具体的な内容を見ていきましょう。

経営理念から法令遵守まで5つの必須要件

ホワイト500の認定要件は、以下の5つの項目で構成されています。

① 経営理念

経営者が健康経営の戦略をアニュアルレポートや統合報告書などを通じて社内外に発信し、トップランナーとして普及に取り組んでいることが要件です。

② 組織体制

役員以上の役職者が健康づくりの最高責任者を担い、産業医や保健師、健康保険組合などとの連携体制が必須です。

③ 制度・施策実行

「健康経営の推進計画の策定」と「受動喫煙対策」が必須要件です。さらに、「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」「健康経営の実践に向けた土台づくり」「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策」に関わる項目のうち、13項目以上を満たす必要があります 。この中には、女性の健康保持・増進に関する項目も含まれています。

④ 評価・改善

実施した取り組みの効果を検証し、その結果に基づいて施策を改善するプロセスが求められます。

⑤ 法令遵守・リスクマネジメント

定期健診やストレスチェックの継続的な実施、および労働基準法や労働安全衛生法などの法令に重大な違反がないことが必須です。

成功企業に共通する「戦略的」な健康経営の視点

成功している企業が、単なる福利厚生ではなく、経営戦略として健康経営を推進していることは、多くのデータや事例から読み取ることができます。健康経営と経営戦略を紐づけている企業ほど、長期的な計画を策定し、数値を活用した明確な効果測定を実施する割合が高いことが分かっています。

連続して認定を受けることは、その取り組みが一時的なものではなく、企業文化として定着していることを証明しており、真の「健康経営」の姿を示していると言えるでしょう。このような企業は、健康経営を経営の中心に据え、従業員の健康を企業の持続的成長の源泉として捉えているのです。

まとめ

本記事では、健康経営優良法人「ホワイト500」の定義から、認定取得がもたらす企業価値向上、人材確保、そして生産性向上といった多岐にわたるメリットについて解説いたしました。また、5つの評価基準と、それらをクリアするための具体的な取り組み事例についてもご紹介しました。

「ホワイト500」への認定は、一朝一夕に実現するものではありません。トップダウンの強い意志、従業員の健康課題を正確に把握する体制、そしてその効果を数値で測定し改善を繰り返すPDCAサイクルが必要です。しかし、これらのプロセスを通じて従業員の健康と働きがいが向上し、結果として企業の持続的な成長に繋がるという好循環が生まれることは、国内外のデータが示唆しています。

今や健康経営は、単なる福利厚生ではなく、企業の競争力を高めるための重要な経営戦略です。本記事が、皆様の企業が健康経営という次なるステージへと踏み出すきっかけとなれば幸いです。