女性のがん検診受診率はなぜ低いのか?企業ができる受診率向上策と補助制度

2026年 7月 15日

https://reliable-friends-900b141288.media.strapiapp.com/cancer_screening_rate_corporate_support_hero_00901f8c03.webp

厚生労働省が把握しているデータでは、企業や健康保険組合で実施されるがん検診の受診率は、がん種によって大きなばらつきがあり、乳がん検診で44%前後、子宮頸がん検診で35%前後にとどまっています。胃がん・肺がん・大腸がんと比べても、女性特有のがん検診は受診率が低い傾向にあります。

結論から言うと、この背景には「時間が取れない」「休暇が取りにくい」といった就業環境上の阻害要因があり、国は受診率向上を政策目標に掲げつつも、達成には企業側の取り組みが欠かせない構造になっています。本記事では、受診率の現状、阻害要因、国の目標、そして企業が実際に導入できる受診率向上策までを整理します。

女性のがん検診受診率の現状

厚生労働省が実施した調査(がん対策推進企業アクション推進パートナー企業・団体を対象、有効回答704社)によれば、回答企業・健保組合におけるがん検診受診率(加重平均)は、胃がん51%、肺がん75%、大腸がん65%に対し、乳がん44%、子宮頸がん35%と、女性特有のがん検診で相対的に低い水準にとどまっています。これは調査に回答した企業・健保組合における値であり、全国民や企業全体の受診率を表すものではない点に留意が必要です。従業員規模別に見ても、乳がん・子宮頸がんの受診率は5,000名以上の企業で41%・33%とさらに低い傾向がみられますが、その理由は同調査だけでは特定できません。

クレアージュ東京が実施した「子宮頸がん検診に関する調査2025」でも、過去に受診経験がある人は47%いる一方、2年に1度以上の定期受診率は35%にとどまり、年代別では20代の受診経験率が相対的に低いという結果が出ています。国立がん研究センターが公表する国民生活基礎調査ベースの推計値でも同様の傾向が確認されており、女性特有のがん検診の受診率の低さは複数の調査に共通する課題といえます。

なぜ受診率が上がらないのか

受診率が伸び悩む理由として、厚生労働省の資料では「がん検診を受けた者の約30〜60%が職域におけるがん検診を受けている」(平成28年国民生活基礎調査)とされ、職域が受診機会の提供において重要な役割を担っていることが示されています。裏を返せば、職域での受診機会が十分に整っていない場合、個人が休暇を取得して自治体検診や医療機関を自ら予約する必要があり、これが受診の障壁になりやすいと考えられます。

子宮頸がん検診や乳がん検診は、胃がん・肺がん検診のように「基本項目として加入者全員に実施」される割合が低く、「オプションとして希望者に対して実施」される割合が相対的に高いという実施状況の違いがあります。受診率差の直接的な原因とまでは資料上示されていませんが、こうした実施範囲の違いが一因となっている可能性はあります。オプション扱いの検診は、従業員が自ら申し込み、受診のための時間を確保する必要があるため、業務の都合で後回しにされやすいことが推測されます。

さらに、要精密検査対象者を把握している保険者はおよそ3割程度にとどまり、把握していない理由としては「精密検査受診の判断は対象者に任せている」(50.3%)が最も多く挙げられています。これらのデータからは、受診の機会提供だけでなく、受診後のフォロー体制の整備も課題であることがうかがえます。

国が掲げる受診率目標と職域検診の役割

国は第4期がん対策推進基本計画(令和5年3月28日閣議決定)において、「がん検診の受診率の目標値を60%とすること」「精密検査受診率の目標値を90%とすること」を個別目標として掲げています。がん検診による早期発見・早期治療を通じてがん死亡率の減少を目指すという計画全体の目標のもと、受診率向上と精度管理の充実が両輪として位置づけられています。

先述の通り、がん検診受診者の約3〜6割が職域におけるがん検診を経由しているとされることから、目標達成には自治体検診だけでなく、企業・健康保険組合が提供する職域検診の役割が大きいことが厚生労働省の資料でも指摘されています。つまり、女性特有のがん検診の受診率向上は、国の政策目標という観点からも、企業の取り組みと無関係ではない課題です。

企業が導入できる受診率向上策

厚生労働省の調査では、企業・健保組合が実際に取り組んでいる受診率向上策として、以下のようなものが挙げられています。

検診費用補助・人間ドックオプション化 調査対象企業のうち71%が「がん検診費用を会社・健保で補助している(全額または一部)」と回答しており、最も広く実施されている施策です。人間ドックの受診項目に乳がん検診・子宮頸がん検診をオプションとして組み込むことで、従業員が個別に医療機関を探す手間を減らせます。

検診のための特別休暇制度・受診時間の確保 「従業員から申し出があった場合、検診のための特別時間を設けている」と回答した企業は37%でした。業務時間内に受診できる仕組みづくりや、希望する日時に合わせて受診日を決定できる運用は、受診率向上の一因になっていると考えられます。

受診勧奨と結果把握の仕組みづくり 「要精検査対象者に受診勧奨をしている」企業は40%です。ただし、受診勧奨後の受診状況の確認方法は「本人からの情報提供」(66.8%)が中心で、体系的な把握には一定の手間がかかることがうかがえます。受診を呼びかけるだけでなく、その後の受診状況まで確認する仕組みを整えている企業は限定的です。

がん対策推進企業アクションへの参加という選択肢

厚生労働省が事務局を務める「がん対策推進企業アクション」は、企業・団体が推進パートナーとして参加することで、がん検診受診率向上や治療と仕事の両立支援に関するコンテンツ・ノウハウの提供を受けられる枠組みです。令和6年3月31日時点で5,560社・団体が推進パートナーとして参加しており、コンテンツ作成やWeb運営を通じた情報発信、事業者向け説明会による意識啓発などが行われています。

自社の取り組みをゼロから設計するのではなく、こうした国の事業に参加し、既存の啓発コンテンツやチェックリストを活用することも、受診率向上に向けた選択肢の一つです。

Wellflowの研修で従業員のヘルスリテラシーを底上げする

がん検診の受診率向上には、費用補助や休暇制度といった「機会の提供」に加えて、従業員自身が検診の必要性を理解し、自ら受診行動を取れるようになる「ヘルスリテラシーの向上」も欠かせません。Flora(フローラ)が提供する法人向け女性の健康研修プログラム「Wellflow」では、女性特有の健康課題やがん検診の重要性について、従業員・管理職双方の理解を深める研修を提供しており、制度整備とあわせて活用することで、受診率向上に向けた土台づくりの一助となります。

まとめ

厚生労働省の調査では、企業・健保組合における乳がん検診の受診率は44%前後、子宮頸がん検診は35%前後にとどまり、胃がん・肺がん・大腸がんと比べて低い水準にあります。この背景には、検診がオプション扱いになりやすいことや、受診のための時間確保が難しいといった就業環境上の要因があると考えられます。国は第4期がん対策推進基本計画でがん検診受診率60%という目標を掲げており、受診者の約3〜6割が職域検診を経由しているとされることから、企業の取り組みが目標達成の鍵を握る構造になっています。検診費用補助・特別休暇制度・受診勧奨の仕組みづくりに加えて、がん対策推進企業アクションへの参加や、従業員のヘルスリテラシー向上を目的とした研修の活用も、受診率向上に向けた具体的な選択肢といえます。数値の詳細・最新の改訂状況は、厚生労働省をはじめとする公表資料を必ずご確認ください。

出典・参考リンク

  • 厚生労働省「がん検診」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html
  • 厚生労働省「令和3年度 がん検診受診率の現状調査、がん検診推進の取り組み、及びがん患者の就労支援の実態調査結果報告」(第36回がん検診のあり方に関する検討会 参考資料7) https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000964652.pdf
  • 厚生労働省「職域におけるがん検診の現状と課題について」(第42回がん検診のあり方に関する検討会 資料2-1) https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001271790.pdf
  • 国立がん研究センター「がん検診受診率」(国民生活基礎調査推計値) https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/screening/screening.html
  • がん対策推進企業アクション https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/about/law.html
  • クレアージュ東京「子宮頸がん検診に関する調査2025」(PR TIMES) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000073845.html