更年期研修を全社員向けに実施する意義と進め方
2026年 7月 15日

更年期研修というと、部下のマネジメントに直結する管理職向けに実施されることも多いテーマです。しかし本当に効果を高めたいなら、対象を全社員に広げる選択肢を検討する価値があります。更年期世代の同僚・部下として日常的に関わる全社員が正しい知識を持つこと、また女性だけでなく男性の更年期も含めて男女相互理解を進めることが、職場の心理的安全性を底上げするからです。本記事では、全社向け研修の意義、健康経営優良法人の評価軸との関係、実施形態の選択肢、設計時の注意点を解説します。
なぜ管理職限定にとどめるべきでないか
更年期世代への対応マニュアルは管理職向けに整備されている企業が多いものの、実際に更年期世代の同僚として日々接するのは同じ部署のメンバーや後輩世代の社員です。管理職だけが知識を持っていても、日常の声かけやちょっとした配慮は同僚同士の関係の中で生まれます。全社員が更年期症状の基礎知識を共有していれば、体調不良を「甘え」や「やる気の問題」と誤解せず、自然な配慮につながりやすくなります。
もう一つ重要な観点が、男女相互理解という視点です。更年期は女性特有のテーマと捉えられがちですが、男性にも更年期症状が生じることが知られています。研修の対象を女性のみに限定せず、男女双方が互いの体調変化を理解し合う機会として設計することで、特定の性別だけが配慮される・される側という非対称な構図を避けることができます。
健康経営優良法人の評価軸における位置づけ
健康経営優良法人の認定制度では、女性の健康に関する取り組みとして、更年期を含む健康課題についての知識提供の実施状況や、その対象者の範囲が調査項目に含まれています。経済産業省が公表する健康経営における女性の健康の取り組みに関する資料でも、研修等による知識提供が評価対象の一つとして位置づけられています。
健康経営度調査の設問でも、制度の有無だけでなく実施状況や対象範囲が問われる傾向にあり、研修を一度実施しただけの実績にとどめず、対象範囲を広げ、継続的に取り組んでいることを示せるかどうかが、認定申請や更新の場面で評価につながるポイントになります。
全社向け研修の実施形態
全社員を対象にする場合、実施形態にはいくつかの選択肢があります。
一つ目は集合研修やオンラインセミナーです。外部講師を招いて一定時間の講義形式で実施する方法で、質疑応答を通じてその場で疑問を解消できる利点があります。全社員を一度に集めることが難しい企業では、部署ごと・拠点ごとに複数回に分けて実施したり、オンライン配信で参加のハードルを下げたりする工夫も有効です。
二つ目はeラーニングや動画教材です。各自のタイミングで受講できるため、シフト制や拠点が分散している企業でも展開しやすい形式です。受講履歴が記録として残るため、健康経営優良法人の申請時に実施実績を示しやすいという実務上の利点もあります。
三つ目は外部講師によるワークショップ形式です。一方向の講義だけでなく、グループワークや対話を交えることで、参加者同士が更年期についての認識をすり合わせる機会になります。一般財団法人女性労働協会が提供する「男女相互理解のための更年期セミナー」のように、男女双方の相互理解を主眼に置いた企業向けセミナーも存在します。
研修設計で押さえるべきポイント
全社向け研修を設計する際にまず意識すべきは、対象を「女性のみ」にしないことです。更年期症状そのものは女性特有のテーマを含みますが、研修の目的は症状の医学的な理解にとどまらず、職場全体の相互理解と協力体制の構築にあります。男性社員を対象から外してしまうと、かえって「女性側の問題」という認識を固定化しかねません。
もう一つの重要な論点が、実施後のフォロー体制です。研修を単発のイベントで終わらせず、相談窓口や既存の休暇・柔軟勤務制度と接続しておくことで、知識を得た社員が実際に行動を起こせる導線を作れます。研修で得た知識が実際の職場での配慮や相談行動につながらなければ、実施実績としては残っても実効性は乏しくなってしまいます。
導入企業に見る実施形態の傾向
厚生労働省の女性就業支援バックアップナビでは、職場で使える更年期関連の研修用資料や動画教材が公開されており、企業が自社で研修を内製する際の土台として活用されています。一方で、外部の専門機関やプログラムを活用し、講師派遣型の研修やセミナーを導入する企業も増えています。自社にノウハウがない場合は、外部の専門プログラムを組み合わせることで、全社展開のハードルを下げられます。Flora(フローラ)が提供する法人向け女性の健康研修プログラム「Wellflow」も、更年期を含む女性特有の健康課題について、管理職・従業員双方の理解を深める研修を提供しており、全社向け展開を検討する際の選択肢の一つとなります。
まとめ
更年期研修を管理職限定から全社員向けに広げることで、日常的に同僚・部下として関わる社員全体の理解が深まり、男女相互理解という観点からも職場の心理的安全性向上につながります。健康経営優良法人の評価軸も、制度の有無から実態・利用状況へと重心を移しており、対象範囲の広さと継続的な実施が問われる時代になっています。集合研修・eラーニング・ワークショップ形式など自社に合った実施形態を選び、相談窓口や既存制度との接続を含めて設計することが、実効性のある研修運営の鍵となります。
出典・参考リンク
- 経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf
- 経済産業省「健康経営優良法人2026」認定法人決定に関する報道発表 https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260309002/20260309002.html
- 一般財団法人女性労働協会「男女相互理解のための更年期セミナー」 https://www.jaaww.or.jp/corporate-seminar/cs-article/8575/
- 一般財団法人女性労働協会「健康経営 男女相互理解のための更年期セミナー」 https://www.jaaww.or.jp/health/course-feature/healthmanagement/
- 厚生労働省「女性就業支援バックアップナビ」職場で使える研修用資料・動画一覧 https://joseishugyo.mhlw.go.jp/program/program_r3.html





