PMS・生理痛のセルフケア(OTC医薬品)活用と職場ができる環境整備

2026年 7月 15日

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生理痛に対して、働く女性が実際に最も頼っているのは市販の鎮痛剤です。東京都「働く女性のウェルネス向上委員会」のアンケート調査では、市販薬を利用すると答えた女性が77.8%にのぼる一方、労働基準法上請求できる生理休暇を取得しているのはわずか5.1%にとどまります。本記事では、このセルフケアの実態と、そこに存在する「OTC医薬品購入の税制優遇」という仕組み、そして企業が取り組むべき環境整備について整理します。なお、PMS(月経前症候群)と生理痛は症状や対処法が異なるため、以下で紹介するデータは主に生理痛に関する調査結果であることをお断りしておきます。

生理痛への対処、実際に最も選ばれているのは「市販薬」

東京都「働く女性のウェルネス向上委員会」が実施したアンケート調査によれば、働く女性の57.4%が生理痛により仕事に何らかの支障を受けており、うち27.1%は「業務が困難なほど重い症状」を経験しています。これに対する対処法として最も多いのが市販の鎮痛剤で77.8%が利用しており、次いで有給休暇の取得が17.0%、低用量ピルの服用が8.7%と続きます。

一方、労働基準法68条に基づき請求できる生理休暇の取得率はわずか5.1%です。同法は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合に就業させてはならないと定めるものであり、その日を有給とするか無給とするかは各企業の就業規則等によります。同調査では働く女性の半数以上(50.8%)が生理休暇を法的権利と認識しておらず、正規社員の65.2%が「職場に制度がある」と答える一方、非正規社員では33.2%にとどまります。利用しない理由は「利用している人がいない職場環境」が44.9%、「上司への報告のしづらさ」が35.5%で、制度はあっても心理的なハードルが利用を妨げている構図がうかがえます。

OTC医薬品とは何か、なぜ職場で語られるべきなのか

市販薬、いわゆるOTC医薬品(Over The Counter、処方箋なしで薬局・薬店で購入できる医薬品)には、もともと医師の処方箋が必要だった医薬品が転用された「スイッチOTC医薬品」というカテゴリーがあります。厚生労働省が案内する「セルフメディケーション税制」は、このスイッチOTC医薬品(および令和4年1月以降に拡充された非スイッチOTC医薬品の一部)を対象に、一定の要件を満たせば所得控除を受けられる制度です。

この制度が職場で語られるべき理由は、「病院に行くほどではないが我慢するのもつらい」という中間層の症状に対して、セルフケアを後押しする仕組みとして機能しうるためです。生理痛・PMSへの対処で市販薬は既に最も選ばれている手段であり、その購入行動に税制上の後押しがあることを知っているかどうかは、従業員にとって実質的なメリットの差につながります。

なお、この税制はあくまで「対象医薬品の購入費用」に関する所得控除の仕組みであり、生理用品(ナプキンやタンポン等)そのものが対象になるわけではありません。国税庁の案内によれば、その年に自己または生計を一にする配偶者・親族のために12,000円を超える対象医薬品を購入した場合、その超過分について控除を受けられる仕組みであり、通常の医療費控除とは選択適用(どちらか一方のみ)となります。適用には健康診査や予防接種など「健康の保持増進及び疾病の予防への取組」を行っていることが要件です。また、これは所得控除であるため実際の税負担軽減額は所得税率・住民税率や購入額によって従業員ごとに異なり、一律のメリットが保証されるものではありません。

セルフケアだけでは解決しない職場側の課題

市販薬によるセルフケアは有効な選択肢である一方、それだけに頼ることで見えなくなる課題もあります。一つは、症状を市販薬で抑え込みながら無理に出社を続ける、いわゆる「隠れたプレゼンティーズム」です。株式会社明治の調査では、働く女性の生理中のパフォーマンスは通常時を100とした場合に平均80.2まで低下するとされており、市販薬で痛みを抑えられていても集中力や判断力への影響が完全になくなるわけではありません。

もう一つは、症状の個人差と重症化の見逃しです。生理に伴う不調には個人差が大きく、市販の鎮痛剤で対処できる範囲を超えた強い痛みや日常生活に支障をきたすほどの症状は、月経困難症など医療的な対応が必要な状態である可能性があります。セルフケアで「なんとかなっている」と判断してしまうことで、本来受診すべき症状が見過ごされるリスクが生じます。東京都の別コラムでは、生理の不調による労働損失を年間約5,000億円(社会経済的負担全体の72%)と紹介しています。

企業ができる環境整備

生理休暇という制度に頼るだけでなく、企業には休暇制度以外のアプローチも求められます。休憩スペースの整備や、体調に応じた在宅勤務・時差出勤の許容など、「休むか出社するか」の二択ではない選択肢を用意することです。生理休暇の利用が進まない理由には「言い出しにくさ」があるため、休暇取得を前提としない配慮の方が実際には機能しやすい場合があります。常備薬の設置を検討する場合は、企業が服用を推奨する形にならないよう、産業医・薬剤師等に相談したうえで、購入補助や休憩スペースの整備を中心に設計し、服用するかどうかの判断はあくまで本人に委ねることが望まれます。また、セルフメディケーション税制のような制度を従業員に周知することも有効です。制度の詳細が公表されていても、対象者本人がその存在を知らなければ活用しようがなく、人事・総務部門が年末調整や確定申告の時期に合わせて情報提供することは、コストをかけずにできる支援策の一つです。そして最も重要なのが、セルフケアで対応しきれない症状を抱える従業員が婦人科などの適切な医療機関につながる導線を作ることです。

Wellflow研修が果たす役割——セルフケアと受診行動の両立支援

Flora(フローラ)が提供する法人向け女性の健康研修プログラム「Wellflow」では、PMSや生理痛に関する正しい知識や、セルフケアと受診の使い分けについて学ぶ機会を提供しています。市販薬によるセルフケアを否定するのではなく、それでも改善しない症状や重い症状は医療機関に相談するという判断軸を、従業員・管理職双方が持てるようにすることが、こうした研修の狙いの一つです。

まとめ——「我慢して市販薬」から「適切なセルフケア+受診」への転換

生理痛・PMSへの対処として市販薬が広く定着している一方、生理休暇の取得率はわずか5.1%にとどまり、その背景には制度の認知不足や言い出しにくさが残っています。セルフメディケーション税制はOTC医薬品購入に対する税制優遇であり、生理用品そのものを対象とする制度ではない点を正確に理解した上で、企業は休暇制度に限らない環境整備、税制の周知、婦人科受診への橋渡しを組み合わせていくことが求められます。「我慢して市販薬でしのぐ」状態から、「適切なセルフケアと必要な受診を両立できる」状態への転換が次の一歩です。

出典・参考リンク

  • 働く女性のウェルネス向上委員会(東京都)アンケート調査結果 https://women-wellness.metro.tokyo.lg.jp/questionnaire/01/
  • 働く女性のウェルネス向上委員会(東京都)「『年間5,000億円の労働損失』招く"生理の不調"の放置は損!」 https://women-wellness.metro.tokyo.lg.jp/columns/02/
  • 厚生労働省「セルフメディケーション税制について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html
  • 国税庁「セルフメディケーション税制とは(令和7年分確定申告特集)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/self-medication.htm
  • 株式会社明治「20代〜40代男女1万人に聞く、生理の悩み実態調査」(PR TIMES) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000100482.html