ストレスチェックの法律や規則を解説!罰則も理解し健康経営を行おう

2025年 8月 21日

https://reliable-friends-900b141288.media.strapiapp.com/1_1ade4be4c0.webp

ストレスチェック制度は、労働安全衛生法で規定されており、実施金があります。

そのため、単なる健康経営の施策ではなく、法令遵守が求められる重要な制度です。

本記事では、ストレスチェック制度に関わる法律の全体像から違反時の罰則まで、コンプライアンス対応に必要な知識を体系的に解説します。

労働安全衛生法を中心とした関連法令の要点を押さえ、適法で効率的な制度運用を実現しましょう。


ストレスチェックを規定している法律

ストレスチェック制度は、「労働安全衛生法(安衛法)」で明確に定められた義務制度です。

同法は、平成27年12月1日に施行され、ストレスチェックの実施から面接指導、その後の措置まで、事業者が取るべき対応が段階的に規定されています。

労働安全衛生法(安衛法)

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした法律です。毎年1回、ストレスチェック検査を全ての労働者※に対して実施することが義務づけられました。

※ 契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間 労働者は義務の対象外です。また、常時50人未満の労働者の事業場では努力義務とされています。

以下がストレスチェック制度の法的根拠となる、第66条の10における条文です。

  • 第66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

2 前項の検査の結果に基づき、厚生労働省令で定める基準に該当する労働者から申出があったときは、事業者は、医師による面接指導を行わなければならない。

3 事業者は、第一項の検査の結果を記録し、これを保存しなければならない。

4 前三項に定めるもののほか、検査の実施の方法その他必要な事項は、厚生労働省令で定める。

「検査の方法」「実施者」「結果通知の扱い」など詳細は、後述する労働安全衛生規則 第52条の9〜の条文で規定されています。

  • 第66条の10-3

検査を行った医師、保健師その他厚生労働省令で定める者は、当該検査を受けた労働者に対し、当該検査の結果を通知しなければならない。

2 前項の検査を行った者は、労働者の同意を得なければ、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。

「結果は本人に伝えるもの」であって、「会社が勝手に把握できるものではない」という個人情報保護の仕組みが説明されています。

  • 第66条の10-6

事業者は、労働者の同意を得て当該労働者の検査の結果を収集し、及びこれを集団ごとに分析した上で、当該集団における心理的な負担の程度の状況を把握し、その結果を当該集団に属する労働者に通知するように努めなければならない。

ストレスチェックの検査の結果の集団的分析は、業者の努力義務であり、必ずやらなければならない「義務」ではありません。労働者の同意が前提であるため、個人情報を守りながら「集団分析」を行い、職場環境の改善」につなげましょう。


ストレスチェック詳細を規定した法律・規則

労働安全衛生法は制度の骨格を定めていますが、具体的な運用方法は関連する省令や指針で詳細に規定されています。実務担当者が制度を正しく運用するためには、これらの関連法令も併せて理解する必要があります。

労働安全衛生規則(安衛則)

労働安全衛生規則の第52条の9から第52条の13では、ストレスチェック制度の具体的な運用方法が定められています。

  • 第52条の10(検査の実施者等)

法第66条の10第1項の心理的な負担の程度を把握するための検査は、次の者に行わせなければならない。

一  医師

二  保健師

三  厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師又は精神保健福祉士

ストレスチェックの実施は、医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師が行えます。人事権を有する者は実施者になれないという制限もあり、客観性の確保が重視されています。

  • 第52条の11~14(実施手順、結果通知の方法)

検査は、労働者が自らの心理的な負担の程度を把握することができるような方法で、かつ、労働者の心身の状態に配慮して行わなければならない。

検査結果の通知は実施者から直接労働者個人に行い、事業者が労働者の同意なしに結果を取得することは禁止されています。ストレスチェックは、単に事業者のためでなく、労働者本人のセルフケアの観点が重視されています。

  • 第52条の15~19(面接指導)

検査の結果、心理的な負担の程度が高いと判定された労働者が医師による面接指導を希望する場合は、事業者に申し出ることができる。

労働者から申出があった場合、事業者は遅滞なく医師による面接指導を行わなければならない。

医師は面接指導において、労働者の心理的な負担の状況や就業状況を聴取し、必要に応じて就業上の措置について意見を述べる。

面接指導の記録は作成され、事業者がこれを保存しなければならない。

事業者は、医師の意見を勘案して、必要に応じて労働時間の短縮、深夜業の制限、配置転換などの就業上の措置を講じなければならない。

高ストレス者と判定された人は、自分の意思で 事業者に面接指導を申し出る権利 があります。労働者から申し出があった場合の面接指導の具体的手順や、面接を行う医師の要件などが詳細に定められています。

  • 第52条の13(検査結果の通知等)

検査の結果は、本人に直接通知しなければならない。

また、本人の同意なく事業者に提供してはならない。

ストレスチェックの結果は、原則として労働者本人にのみ通知されます。事業者が本人の結果を直接把握することは認められていません。事業者に結果を提供する場合には、必ず労働者本人の同意が必要となります。

  • 第52条の18(面接指導の記録の保存)

面接指導の記録は作成・保存しなければならないが、事業者が結果を直接知ることはできず、取り扱いには個人情報保護の観点から厳重な管理が必要。


ストレスチェック後の面接記録は、医師やストレスチェック実施者が作成・保存します。事業者がその内容を本人の同意なく閲覧することはできません。記録は労働安全衛生法や個人情報保護法に基づき、外部に漏れないよう厳格に管理される必要があります。


厚生労働省 告示・指針

厚生労働省が定める「心理的な負担の程度を把握するための検査等及び面接指導の実施並びに当該結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成27年厚生労働省告示第265号)は、ストレスチェック制度を適切に運用するための具体的な実施指針です。

この指針は、労働安全衛生法第66条の10から第13条および労働安全衛生規則第52条の10から第19条を前提に、現場での運用方法を示す“実務マニュアル”の役割を担っています。


この指針には「① 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」「② 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」「③ 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」「④組織的な職場環境改善への活用に関する項目」の4つを一連の流れを定めています。


ストレスチェックに関連する法律

ここからは、ストレスチェックに関連がないように見えて、実は関連している法律を紹介します。

個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)

  • 第16条第1項

個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない。

ストレスチェックの結果と面接指導の結果は要配慮個人情報に該当するため、収集・利用には本人の同意や適切な管理が必要です。

特に注意すべきは、労働者の同意を得ないままストレスチェックの結果を事業者に提供してはならないことです。事業者は、実施者に結果の提供を強要したり、労働者に同意を無理に求めたりしてはなりません。


労働契約法(第5条・安全配慮義務)

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

ストレスチェックは、メンタルヘルス不調を未然に防ぎ、労働者が安全に働ける環境を整えるための仕組みです。事業者には労働者の心身の安全を守る法的義務(安全配慮義務)があり、その実践の一環としてストレスチェックを活用することが重要となります。


労働基準法

  • 第5条

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって労働者の就業の自由を妨げてはならない。

  • 第32条

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

長時間労働による健康障害防止と関連して、高ストレス者への就業配慮措置を行う際の根拠となります。ストレスチェックで高ストレス者と判定された場合の労働時間短縮や業務軽減などの措置は、労働基準法とも関連すると言えるでしょう。


自殺対策基本法

  • 第2条

国及び地方公共団体は、自殺対策を講ずるに当たっては、自殺の背景に様々な社会的要因が存在することに鑑み、これらの要因を総合的に解決することを旨としなければならない。

  • 第12条

事業主は、労働者の心身の健康の保持増進のための施策を推進しなければならない。

ストレスチェック制度における高ストレス者への対応は、自殺対策基本法の趣旨と密接に関連しています。ストレスチェック制度はメンタルヘルス不調の予防だけでなく、最悪の事態である自殺の防止にも寄与する重要な制度になっています。


ストレスチェックの法律に違反した場合の罰則

ストレスチェック制度は法的義務であり、違反した場合には明確な罰則が定められています。人事・労務担当者は、どのような場合に罰則が適用されるのか、正確に把握しておきましょう。

1. ストレスチェックの結果報告義務違反

根拠:労働安全衛生法 第66条の10(常時50人以上の事業場に義務)

ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業場で、毎年1回以上の実施が義務付けられています。ただし、実施しなかったこと自体に直接の罰則はありません。

一方で、実施結果を労働基準監督署に報告しなかった場合や、虚偽の報告を行った場合は、労働安全衛生法第120条第5項に基づき、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

ポイント:

  • 「実施しない=罰則」ではなく、「報告しない=罰則」という点が重要
  • ただし実施を怠った場合は、従業員がメンタル不調に陥った際に安全配慮義務違反として損害賠償を請求されるリスクがある
  • 労働基準監督署の立入調査では、ストレスチェックの実施状況や報告体制が詳しく確認される

2. 実施者の資格要件違反

根拠:労働安全衛生規則 第52条の9(医師・保健師等が実施者)

ストレスチェックは、医師・保健師・厚生労働大臣が認めた研修を修了した看護師や精神保健福祉士といった有資格者しか実施できません。

もし、資格を持たない人が勝手に実施したり、実施者が人事や労務管理に関与して労働者の匿名性を守らなかったりすると、法律違反となります。この場合も、労働安全衛生法の罰則規定(第120条など)が適用され、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

3. 面接指導の未実施

根拠:労働安全衛生法 第66条の10

高ストレス者からの申し出に対する面接指導を怠ったり、医師以外が面接指導を行ったりした場合、50万円以下の罰金が科されることがあります。

4. 個人情報の不適切な取扱い

根拠:安衛法第104条(秘密保持義務)

ストレスチェックの実施者および実施事務従事者には、労働安全衛生法104条によって秘密保持義務が課されています。違反した場合は、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。

まとめ:法令遵守で効率的にストレスチェックを行う

ストレスチェック制度は労働安全衛生法を中心とした複数の法律により詳細に規定されており、違反時の罰則も明確に定められています。人事・労務担当者にとって、法的要件を正確に理解し適切に運用することは、リスクマネジメントの観点からも重要です。

制度の複雑さや個人情報保護の厳格さを考慮すると、外部委託も有効な選択肢です。

Floraが提供しているサービス「Wellflow」ではアプリ上でストレスチェックを実施できます。オプションとして設問アレンジや分析レポートの作成も対応可能です。

Wellflowのサービスページはこちら

法令を正しく理解し、効率的な運用体制を構築することで、ストレスチェック制度を組織の発展に寄与する制度として活用していきましょう。

▼引用:e-Gov 法令検索 労働安全衛生法

▼引用:e-Gov 法令検索 労働安全衛生規則

▼引用:厚生労働省 ストレスチェック制度関係法令等

▼引用:e-Gov 法令検索 個人情報の保護に関する法律

▼引用:e-Gov 法令検索 労働契約法

▼引用:e-Gov 法令検索 労働基準法

▼引用:e-Gov 法令検索 自殺対策基本法