産休・育休明けに見落とされる健康課題——復職支援で企業ができること
2026年 7月 15日

厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、在職中に出産した女性のうち一定時点までに育児休業を開始した者等の割合は86.6%(令和5年度は84.1%)に達しています。育休を取得すること自体は多くの職場で定着しつつある一方、復職した後の女性が抱える健康課題への支援は、まだ手薄なままになっているケースが少なくありません。本記事では、育休取得率の現状と、そこから抜け落ちがちな「復職後」の視点について整理します。
女性の育休取得率は86.6%——しかし「復職後」の支援は手薄
前述の雇用均等基本調査は、厚生労働省が毎年実施している調査で、企業調査は常用労働者10人以上、事業所調査は常用労働者5人以上を対象としています。令和6年度の結果では、事業所調査において、在職中に出産した女性のうち一定時点までに育児休業を開始した者等の割合が86.6%(令和5年度84.1%)、男性は40.5%(同30.1%)となっており、女性の育休取得は高い水準で推移しています。
ただし、この数値はあくまで「育児休業を取得したかどうか」を示すものであり、復職した後に職場でどのような支援を受けられているかを示すものではありません。育休取得率という指標が注目される一方で、復職後の女性が直面する健康課題への支援については、相対的に議論が手薄になりがちです。
産後女性が抱える健康課題は「産休・育休」だけでは終わらない
出産・育児に伴う女性の心身の変化は、産休・育休期間中だけで完結するものではありません。身体面では、出産による筋力の低下、貧血、そして妊娠・出産に伴うホルモンバランスの変化が、育児休業終了時点で必ずしも回復しきっているとは限りません。育児による睡眠不足や体力的な負担が重なる中で、本来の体調が万全でないまま職場復帰を迎えるケースも想定されます。
メンタル面についても同様の課題があります。産後うつをはじめとする気分の落ち込みは出産後の女性に一定の割合で見られることが知られていますが、復職を控えた時期や復職直後は、仕事と育児の両立への不安、キャリアが中断したことへの焦りなど心理的な負荷が重なりやすいタイミングでもあります。しかし多くの職場では、復職前後のメンタル面への配慮は体調管理そのものよりさらに手薄になりがちです。
第1子出産前後の継続就業率から見える両立支援の課題
内閣府男女共同参画局が公表した資料「『第1子出産前後の女性の継続就業率』及び出産・育児と女性の就業状況について」では、第15回出生動向基本調査(2010〜2014年に第1子を出生した初婚どうし夫婦が対象)のデータとして、出産前に有職だった女性の継続就業率が53.1%まで上昇したことが示されています。これまで4割前後で推移してきた継続就業率が5割を超えた点は前進といえますが、裏を返せば同調査における出産退職の割合は46.9%にのぼるということでもあります。なお、これは2010〜2014年出生コーホートの調査結果であり、令和6年度の育休取得率のデータとは調査時点が異なる点に留意が必要です。
継続就業率の上昇そのものは育休制度の普及や取得しやすさの向上を反映していると考えられますが、出産を機に半数近くの女性が離職している事実は、育休制度が整っているだけでは就業継続を保証しきれないことを示しています。復職後に直面する健康面・体制面での課題が十分にケアされていないことも、離職を選択する背景の一つと考えられます。
経産省が示す「健康経営」における産後支援の企業事例
経済産業省が令和7年3月に公表した「健康経営における女性の健康課題に対する取組事例集」では、出産・育児からの復職支援に関する企業の具体的な取り組みが紹介されています。例えば製造業の日本エー・エム・シーでは、外部のキャリアコンサルタントを月1回招き中堅女性社員向けの「エンカレッジプログラム」を実施しており、特に育児休業から復帰する社員を優先して仕事と育児の両立に関する相談の機会を提供しています。当初は女性社員向けの取り組みでしたが、現在は男女問わず毎月10人程度が利用する制度に発展しています。また同事例集では、出産・不妊、月経・PMS・更年期、女性特有のがんといったテーマごとに休暇制度やセミナー、相談窓口などを組み合わせ、復職支援を単発ではなく継続的な体制として設計している企業の取り組みが紹介されています。
企業が復職支援で見落としがちな3つのポイント
こうした先進事例がある一方、多くの企業の復職支援には共通する見落としがあります。1つ目は、復職面談が就業規則や時短勤務の説明にとどまる制度周知だけで終わり、本人の体調や心理状態を丁寧に確認する時間が確保されていないことです。2つ目は、時短勤務などの制度はあっても体調面のフォローが伴わないことです。勤務時間を短縮しても業務量や責任の重さが変わらなければ、体力が回復しきっていない状態での就業負荷は解消されません。3つ目は、管理職の理解不足による孤立です。産後の身体的・精神的な変化について管理職自身が正しい知識を持っていない場合、本人からの相談を受け止めきれず、結果として本人が孤立してしまうリスクがあります。
Wellflow研修が復職支援にもたらす価値
こうした見落としを防ぐ出発点として有効なのが、管理職・従業員双方が産後の健康課題について正しい知識を持つことです。Flora(フローラ)が提供する法人向け女性の健康研修プログラム「Wellflow」では、産後の身体的・精神的な変化について学ぶ機会を提供しており、復職面談や日常のマネジメントの中で管理職が適切な配慮を行えるようになることを後押しします。
まとめ——「育休を取らせる」から「健康に配慮して迎え入れる」へ
女性の育休取得率が86.6%に達している一方、2010〜2014年出生コーホートを対象にした内閣府の調査では出産前に有職だった女性の46.9%が第1子出産を機に離職しており、育休制度の普及だけでは就業継続を十分に支えきれていない実態があります。産後の身体面・メンタル面の課題は産休・育休期間で完結するものではなく、復職後も継続してケアが必要です。経産省の事例集が示すように、キャリア相談の機会や健康施策を組み合わせた継続的な支援体制を整えることが、「育休を取らせて終わり」ではなく「健康に配慮して迎え入れる」復職支援への転換につながります。
出典・参考リンク
- 厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」結果(女性育休取得率86.6%) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r06/06.pdf
- 内閣府男女共同参画局「第1子出産前後の女性の継続就業率」 https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_45/pdf/s1.pdf
- 内閣府男女共同参画局「動向関連データ集」 https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_39/pdf/ss1.pdf
- 経済産業省「健康経営における女性の健康課題に対する取組事例集」(令和7年3月初版) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/002_03_00.pdf





