生理休暇の取得率を上げるには?企業の制度設計のポイント
2026年 7月 13日

生理休暇は労働基準法で定められた権利でありながら、実際の取得率はごくわずかにとどまっているのが実情です。制度を「導入している」ことと、「使われている」ことの間には大きな溝があります。取得率を上げるために企業ができることは、就業規則の文言を整えることだけではありません。申請のしやすさ、上司の理解、代替要員の仕組み、そして「取りづらい空気」そのものを変える組織的な取り組みが必要です。本記事では、生理休暇の取得率が低い背景を整理したうえで、企業が制度設計・運用面で取り組める具体策を解説します。
生理休暇の取得率はなぜ低いのか
生理休暇は労働基準法第68条に定められており、生理日の就業が著しく困難な女性労働者が休暇を請求した場合、企業はその労働者を生理日に就業させてはならないとされています。有給・無給の別は法律上定められておらず、各企業の就業規則等で定めることができます。
厚生労働省が実施している「雇用均等基本調査」では、生理休暇の請求権を行使した女性労働者の割合(取得率)が長年にわたって1%を下回る水準で推移していることが示されています(執筆時点の情報。最新の数値は厚生労働省の公表データで要確認)。制度自体は多くの企業で規定されているにもかかわらず、実際に使われる場面が極めて少ないというギャップが存在します。
取得率が低い理由として、一般的に以下のような要因が挙げられます。
- 生理に関する話題を職場で口にしづらい心理的ハードル
- 「生理休暇」という名目で申請すること自体への抵抗感
- 上司や同僚が男性中心の職場での申請のしにくさ
- 無給扱いの企業が多く、経済的なデメリットがあること
- そもそも制度の存在や取得手続きが周知されていないこと
- 生理痛など体調不良を「甘え」と捉えられることへの不安
つまり、取得率の低さは制度の欠陥というより、制度を取り巻く職場文化・運用設計の問題であるケースが大半です。ここを見誤ると、就業規則を整備しただけで「対応した」と考えてしまい、実態は変わらないという結果になりかねません。
申請のハードルを下げる制度設計
取得率を上げるための第一歩は、申請そのもののハードルを下げることです。
呼称の見直し 「生理休暇」という名称を申請書や勤怠システム上でそのまま使うと、口頭申請や紙の申請書で他者の目に触れる場面が発生し、心理的抵抗が生まれやすくなります。「生理休暇」を給与体系上の呼称として残しつつ、勤怠システムの選択肢では「特別休暇」「体調不良休暇」といった括りに含める、あるいは有給休暇の一部として柔軟に処理できるようにするなど、申請時の心理的負荷を下げる工夫が有効です。
申請経路のデジタル化 上司に口頭で理由を伝える必要がある申請フローは、心理的ハードルを大きく上げます。勤怠管理システムやチャットツールでの非対面申請に切り替え、理由の詳細記載を必須にしないなど、プライバシーに配慮した申請経路を整えることが重要です。
取得単位の柔軟化 生理痛の程度は日によって異なり、丸1日ではなく半日・時間単位での取得ニーズもあります。半休・時間単位年休の仕組みと組み合わせ、生理休暇についても柔軟な単位での取得を認めることで、「休むほどではないが辛い」という中間的な状態にも対応できます。
有給化・待遇面の見直し
法律上、生理休暇は無給でも違法ではありません。しかし無給のままでは「休むと収入が減る」という経済的デメリットが取得を妨げる要因になります。
一部の企業では、生理休暇を有給(または一部有給)として制度化したり、既存の有給休暇や特別休暇の枠組みに組み込んだりすることで、取得のハードルを下げる取り組みが行われています。全日制で有給化することが難しい場合でも、月に一定日数までは有給扱いとする、傷病手当的な位置づけで一部補填するといった段階的な導入も選択肢になります。
待遇面の見直しを検討する際は、就業規則の変更手続き(労働者代表の意見聴取、労働基準監督署への届出等)が必要になるため、社会保険労務士等の専門家に確認しながら進めることが望ましい対応です。
管理職・職場全体のリテラシー向上
制度をどれだけ整えても、申請を受け取る上司や同僚の理解が伴わなければ、取得率は上がりません。「生理痛くらいで休むのか」といった無理解な反応が一度でもあると、その情報は職場内で共有され、以降の申請を萎縮させます。
管理職に対しては、生理に伴う体調不良が本人の意思でコントロールできるものではないこと、申請理由を詮索しないこと、代替対応(業務の一時的な引き継ぎ体制)を事前に整えておくことなどを、研修やガイドラインの形で伝えることが有効です。
このような管理職・従業員向けのヘルスリテラシー研修は、生理休暇に限らずPMS(月経前症候群)や更年期など女性特有の健康課題全般への理解を深める機会にもなります。Flora社が提供する法人向け研修プログラム「Wellflow」では、こうした女性の健康に関する組織的な理解促進を、外部講師によるオンライン研修という形で支援しています。社内だけで完結させることが難しいテーマだからこそ、外部リソースを活用した継続的な取り組みが取得率向上の後押しになります。
取得率を測定し改善サイクルを回す
取得率を上げるための施策は、実施して終わりではなく、効果を測定し改善を続けることが重要です。
- 勤怠システム上で生理休暇(または該当する特別休暇区分)の取得件数・取得者数を定期的に集計する
- 匿名アンケートで「申請しづらさを感じたことがあるか」「制度を知っているか」を定点観測する
- 施策実施前後で取得率・満足度の変化を比較する
- 産業医や人事部門と連携し、体調不良による欠勤・遅刻・生産性低下の実態も合わせて把握する
数値化することで、経営層への説明材料にもなり、単なる福利厚生の話ではなく、従業員の健康管理・生産性向上・離職防止といった経営課題として位置づけやすくなります。
まとめ
生理休暇の取得率の低さは、制度の不備というより、申請のしづらさ・職場の理解不足・経済的デメリットが複合的に絡み合った結果です。取得率を上げるには、呼称や申請経路の見直しといった運用面の改善、有給化などの待遇面の検討、そして管理職を含めた職場全体のリテラシー向上を、あわせて進める必要があります。制度を「作る」から「使われる」ものへと変えていくことが、これからの企業に求められる対応と言えるでしょう。
出典・参考リンク
- 厚生労働省「雇用均等基本調査」(生理休暇の請求者割合等の統計。最新年度の数値は厚生労働省公式サイトで要確認)(要出典確認)
- 厚生労働省 労働基準法第68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)関連の解説ページ(要出典確認)
- 各都道府県労働局・労働基準監督署が公表する生理休暇に関するQ&A・リーフレット(要出典確認)





