生理用品のオフィス常備、税務・コスト面の実務を解説

2026年 7月 15日

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トイレットペーパーやハンドソープと同じように、生理用品をオフィスに常備する企業が広がっています。導入を検討する総務・人事担当者がまず気になるのは、コストと税務処理ではないでしょうか。結論から言うと、生理用品には軽減税率が適用されず消費税率10%が課される一方、全従業員を対象に一定の要件を満たして支給する場合は、従業員側で給与として課税されず、企業側でも福利厚生費として処理できる可能性があります。本記事では、常備という発想の背景、税率をめぐる現状、非課税処理の要件、コストを抑える運用方法までを解説します。

生理用品のオフィス常備という発想

生理用品のオフィス常備とは、トイレの個室やパウダールームなどに生理用品を備品として設置し、従業員が必要なときに使える状態にしておく取り組みです。トイレットペーパーが個人の持ち物ではなく共用の備品として当然のように用意されているのと同じ発想で、生理用品も職場の基本的な備品として位置づける考え方が背景にあります。

こうした取り組みが広がっている背景には、女性活躍推進や健康経営の評価軸の中で、女性特有の健康課題への配慮が企業の取り組みとして注目されるようになったことがあります。急な生理の発来や用品の不足は、外出先や会議中など対応が難しい場面で従業員の負担になりやすく、常備によってその負担を軽減できるという実務上のメリットが導入の動機になっています。

生理用品は軽減税率の対象外という現状

生理用品を導入する際にまず押さえておきたいのが、税率の位置づけです。消費税の軽減税率は飲食料品や新聞など一部の品目に限定されており、生理用品はその対象に含まれていません。そのため、生理用品の購入には標準税率10%が適用されます。

生活必需品でありながら軽減税率の対象外であることについては、生理の貧困問題への関心の高まりとともに、位置づけを見直すべきだという議論も見られます。ただし現時点で軽減税率が適用される制度変更が行われたという事実はなく、企業が生理用品を購入する場合は標準税率での支出になるという前提でコストを見積もる必要があります。

福利厚生費として非課税処理できるか

税率とは別の論点として、企業が生理用品を従業員に提供した場合に、それが給与とみなされて課税対象になるのか、それとも福利厚生費として非課税で処理できるのかという問題があります。

国税庁が示す給与等に係る経済的利益についての法令解釈通達では、企業が現物などの経済的利益を従業員に供与した場合の課税上の取り扱いの考え方が示されています。一般的に、全従業員を対象として一律に提供され、社会通念上妥当な範囲にとどまる現物給付は、従業員側で給与として課税されない余地があるとされています。ただし、国税庁がこの通達の中で生理用品の常備を名指しして非課税と明示しているわけではなく、あくまで一般的な経済的利益の考え方を当てはめた解釈です。特定の個人への金銭的な給付ではなく、誰でも使える共用備品として設置する形であれば、この考え方に沿った整理をしやすいと考えられます。

ただし、個別の処理が非課税に該当するかどうかは、支給形態や金額、対象範囲によって判断が変わり得る事項です。実際に制度化する際は、自社の顧問税理士等に個別の取り扱いを確認することをおすすめします。

導入コストと運用方法の選択肢

導入方法には大きく分けて二つの選択肢があります。

一つは自社で生理用品を購入し、ディスペンサーや設置スペースを用意して運用する自社購入・設置型です。この場合、購入コストに加えて、補充作業や在庫管理の手間が発生します。拠点数や従業員数が多い企業では、この管理負担が導入のハードルになることがあります。

もう一つは、企業向けに生理用品の職場設置を支援するプログラムを活用する方法です。花王が展開する「職場のロリエ」プロジェクトは、企業向けに生理用品を職場に備品化する取り組みを支援するプログラムで、導入企業数が拡大していることが同社のニュースリリースで公表されています。こうした企業向けプログラムを活用することで、自社で一からオペレーションを構築する負担を軽減しながら常備を実現できます。

導入企業に見る運用パターン

厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」では、生理休暇をはじめとした企業の取り組み事例が紹介されており、生理用品の常備を含めた職場環境の整備が、休暇制度と並ぶ支援策の一つとして位置づけられています。休暇制度が「症状が重いときに休める」仕組みであるのに対し、常備は「症状が軽度でも困らないようにする」日常的な備えという役割分担で捉えると、両者を補完的な施策として設計しやすくなります。

研修を通じて生理に関する正しい知識を社内に広げることも、常備という物理的な備えを形骸化させないために有効です。Flora(フローラ)が提供する法人向け女性の健康研修プログラム「Wellflow」のように、月経随伴症状への理解を深める研修と組み合わせることで、備品を置くだけでなく「使いやすい・相談しやすい職場」という土台まで含めて整備する企業も見られます。

まとめ

生理用品のオフィス常備は、トイレットペーパーと同様に職場の基本的な備品として位置づける発想から広がっている取り組みです。生理用品自体には軽減税率が適用されず標準税率10%が課される一方、全従業員を対象に社会通念上妥当な範囲で提供する場合は、福利厚生費として非課税処理できる余地があります。自社購入・設置型と企業向けプログラム活用型のいずれを選ぶかは、拠点数や管理体制に応じて検討し、非課税要件の該当性は税理士等に確認しながら制度化を進めることが実務上のポイントです。

出典・参考リンク

  • 国税庁「〔給与等に係る経済的利益〕」法令解釈通達 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
  • 花王株式会社「職場のロリエ」プロジェクト公式サイト https://www.kao.co.jp/laurier/project/shokuba/
  • 花王株式会社「『職場のロリエ』の導入企業数が300社に拡大」ニュースリリース https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2025/20250131-001/
  • 花王株式会社「職場のロリエ【法人向け】」 https://www.kao.co.jp/laurier/project/shokuba/biz/
  • 厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」生理休暇・企業取組事例 https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/special_company.html