HiPo判定で女性が少なくなる理由|全体順位と同性内順位で結果が変わる

2026年 9月 11日

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次世代リーダー候補のリストを作ると、女性がほとんど入ってこない。そこから「候補となる女性がいない」という結論に進み、育成研修を増やす、という流れになりがちです。ただ、その前に確かめておくべきことがあります。候補が少ないのは母集団の実態なのか、それとも判定の方法によるものなのか。この記事では、判定の前提が結果をどう動かすかを実データで示し、選抜設計を見直すときの論点を整理します。

!全体順位と同性内順位でHiPo該当率がどう変わるかを示した図

HiPo判定とは:女性が少なくなる仕組み

High Potential、すなわち高い潜在能力を持つとみなされる人材を特定し、育成の対象とする仕組みです。次世代リーダー候補、選抜研修の対象者、サクセッションプランの母集団といった呼び方で運用されます。

判定に使われる材料は企業によりますが、人事評価の履歴、アセスメントの結果、上長の推薦、適性検査の得点などを組み合わせるのが一般的です。そのうえで、全体の中で上位何割かを候補とする、という形で線を引きます。

選ばれた人には、選抜研修、他部署への異動、経営層との対話といった機会が集中的に配分されます。この機会の差が数年積み重なると、実際の能力差として観測されるようになります。判定は将来を予測するだけの行為ではありません。結果を作る行為でもあります。だからこそ、最初の線の引き方が効いてきます。

問題はこの線の引き方にあります。同じ材料を使っても、どの集団の中で順位をつけるかによって、誰が選ばれるかが変わります。

判定の前提で結果が変わる

Floraがある地方銀行(正社員約2,000名規模)の人事データを分析した際(Flora社調べ)、同じ社員集団に対して2通りの判定を行いました。

判定方法女性の該当率男性の該当率
全体の順位で上位を選ぶ5.7%18.1%
同性内の順位で上位を選ぶ13.2%13.1%

全体順位で判定すると、女性の該当率は男性の3分の1以下になります。同性内順位に切り替えると、ほぼ同率になりました。使ったデータは同じで、変えたのは順位をつける集団だけです。

この結果は、「女性の候補者が少ない」という認識が、母集団の実態というより判定方法の帰結である可能性を示しています。なお、この集計は1社の中で観察された関連であり、因果を断定するものではありません。他社にそのまま当てはまる数値でもありません。

なぜ全体順位だと差が出るのか

判定の材料に使う指標が、特定の行動傾向を強く反映していると、その傾向に集団差があるときに順位が偏ります。

同じ分析では、人事評価と正の相関を持つ性格特性として、達成欲求、顕示欲求、支配欲求、勤労意欲、自己信頼性、指導性といった項目が挙がりました。いずれも自ら前に出る力に関わるもので、この系統の特性には男女で中程度の差が見られています。

自ら手を挙げる、目立つ場面で発言する、上位者に働きかける。こうした行動が評価やアセスメントに反映される設計であれば、行動の頻度に差がある集団の間で順位が分かれるのは自然な帰結です。能力の差というより、測っている対象の性質による差ということになります。

同じデータでは、管理職に就いている男性を基準に40歳未満の女性の特性を比べると、指導性、支配欲求、積極性、危機耐性、自己信頼性といった項目で中程度の差が見られました。同じ比較を若手男性で行うと差はごく小さくなります。世代が入れ替われば自然に解消するという見通しは、現在の判定方法を前提にする限り成り立ちにくいことになります。

どちらの判定が正しいのか

一方が正解という話ではありません。それぞれに意味があります。

全体順位は、現在の評価軸で測った順位をそのまま反映します。評価軸が組織にとって本当に必要な資質を測れているのであれば、この方法は妥当です。

同性内順位は、同じ条件に置かれた集団の中での相対的な位置を見ます。評価軸に集団差を生む性質があると考えるなら、この方法のほうが潜在能力を拾えます。

実務上の問題は、多くの企業がどちらを使っているかを意識しないまま前者を採用していることです。そして候補者リストに女性が少ないという結果だけを見て、母集団の問題だと解釈します。

議論を始めるには、両方の数字を出すところからです。全体順位で選んだ候補者リストと、同性内順位で選んだリストを並べる。重ならなかった人が誰かを見る。この作業を経ずに判定方法を変えるかどうかを決めることはできません。

重ならなかった人の顔ぶれを見ると、議論が具体的になります。同性内順位でのみ候補に入った人が、実際に成果を上げている人であれば、現在の判定が何かを取りこぼしている可能性が高くなります。逆に、全体順位でのみ候補に入った人が明らかに有力であれば、現在の判定は機能しているという判断になります。抽象的な制度論より、実在の人物のリストのほうが結論は早く出ます。

判定方法を変えずにできること

順位のつけ方を変えるのは、人事制度としては大きな変更です。すぐに動かせない場合でも、打てる手はあります。

判定材料の内訳を見る。 評価、アセスメント、推薦のどれが順位を決めているかを分解します。特定の材料が支配的であれば、そこに偏りの原因がある可能性があります。

推薦の経路を増やす。 上長からの推薦が唯一の入口になっている場合、上長との接点の多さが候補になれるかどうかを左右します。自己推薦や、複数の管理職からの推薦を併設してください。

候補者リストの構成を確認する。 選抜後のリストに、部署・職種・雇用区分・性別の偏りがないかを見ます。偏りがあること自体は問題ではありませんが、なぜそうなったかを説明できる状態にしておく必要があります。

外れた人の記録を残す。 惜しくも線の下だった人を記録しておくと、翌年以降に判定の安定性を確認できます。毎年同じ人が線の上下を行き来している場合、その線は実質的に恣意的です。

判定の頻度を上げる。 数年に一度の選抜では、その時点の状況が固定されます。育児や介護で一時的に業務量を抑えていた時期に判定が重なると、その後の数年が決まってしまいます。毎年見直す運用にすれば、一時的な状況で長期の機会が失われる事態を減らせます。

線を1本にしない。 上位数%を選ぶ単一の線に代えて、複数の観点で候補を出す方法もあります。成果、専門性、育成実績、変革の経験といった軸ごとに候補を挙げれば、単一の順位では拾えない人が入ってきます。管理職に求める資質が複数あるのなら、選抜の軸も複数あるほうが自然です。

昇進の段で何が起きているかは「女性の係長昇進が進まない理由|評価は同等、処遇だけが違う」に、段ごとの人数の並べ方は「女性管理職パイプラインの可視化|階層別の男女昇進率の出し方」にまとめています。候補者層そのものを厚くする取組は「女性管理職の候補者育成|昇進率を上げる前に候補者プールを整える3つのこと」で、要因の全体像は「女性管理職が増えない本当の理由」で扱っています。

選抜のあとに何を配るか

判定の見直しと同じくらい効くのが、選ばれたあとに何が配分されるかの設計です。

選抜研修だけを提供して、配属や担当業務は変えないという運用では、育成の効果は限られます。実際に力がつくのは、責任範囲の広がる仕事を任されたときです。研修は補助にとどまり、経験の代わりにはなりません。

配分される経験に偏りがないかも確認してください。同じHiPo候補でも、海外案件や大型プロジェクトの担当が一部に集中していれば、数年後の差はそこから生まれます。転勤や長時間の勤務を前提とした経験だけが昇格の要件になっている場合、その要件を満たせる人が限られ、判定を変えても結果は変わりません。

候補者に対する期待の伝え方も設計に含めてください。選抜されたことを本人に伝えていない企業は少なくありませんが、伝えられていなければ本人は機会を活かす準備ができません。伝えることで生じる周囲との関係への配慮は必要ですが、伝えないままの育成には限界があります。

Floraの支援:判定の前提から確かめる

Flora株式会社の「ダイバーシティデータプログラム」は、社内にある人事データと従業員サーベイを使って、選抜の判定方法が結果にどう影響しているかを分析するコンサルティングです。評価軸が何を測っているか、判定の前提を変えると候補者がどう変わるかを数値で示し、選抜設計の見直しまで支援します。これまでに150社以上の企業と取り組んできました。

まとめ

HiPo判定で女性が少なくなるとき、原因が母集団にあるとは限りません。判定の前提のほうを先に疑ってください。ある地方銀行の事例では、全体順位で5.7%だった女性の該当率が、同性内順位では13.2%になりました。判定の前提を変えただけで、候補者の数は倍以上動きます。

判定方法をすぐに変えられなくても、両方の数字を出して並べることはできます。そのうえで、判定材料の内訳を分解し、推薦の経路を増やす。この順序で進められます。並べ替えるだけの作業ですので、制度の議論を始める前に一度出しておくことをおすすめします。自社での確認は無料相談でご案内しています。

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