女性管理職の候補者育成|昇進率を上げる前に候補者プールを整える3つのこと

2026年 9月 10日

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女性管理職を増やすための研修や登用目標を設けたのに、数字が動かない。そういう企業の人事データを見ると、原因は登用の場面にないことがほとんどです。管理職候補になる層に、そもそも女性がほとんどいない。この記事では、女性管理職の候補者育成に取り組む前に整えておくべき3つのこと、入口のコース設計、管理職の一段下の層への配置と選抜、途中で抜けない仕組みについて、実際の分析事例と東京都が2026年に示した指針をもとに整理します。

女性管理職の候補者育成が空回りする理由

管理職への登用は、候補者の中から選ぶ作業です。候補者が10人いて女性が1人なら、公平に選んでも女性管理職は10年に1人しか生まれません。登用を公平にする努力と、候補者の構成を変える努力は別のもので、多くの企業は前者だけに力を入れています。

厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、女性の割合は係長相当職で21.1%、課長相当職で12.3%、部長相当職で8.7%です。上の階層ほど薄くなるこの形は、どの段階で人が減っているかを示しています。全国平均でも、係長から課長の間で女性比率がほぼ半分になります。

Floraがある地方銀行(正社員約2,000名規模)の人事データを分析した事例では、この段差がどこにあるかがはっきり見えました。主任・担当層では女性が71.7%を占めていたのに、係長・課長代理層では36.6%、管理職層では10.1%です。5年間の昇進率は、主任・担当層から係長・課長代理層への段階で女性29.1%、男性77.9%でした。人事評価そのものに男女差はなく、評価点はむしろ女性がわずかに高い。評価は同等で、登用の手前で差がついていたことになります。

オフィス中心の従業員約1,000名規模の企業を分析した際は、別の形が見えました。等級ごとの滞留年数に男女差はなく、女性が昇進を待たされているわけではありません。ただ、管理職の一段下の等級で女性は1割弱しかおらず、その等級からの12か月間の昇格率は男性が約18%、女性が約7%でした。候補になる層が薄く、その薄い層も動かされていない状態です。

2社に共通するのは、問題が登用の場面より手前の層にあったことです。候補者プールをつくるとは、この手前の層に女性を増やし、そこから動く仕組みを整えることを指します。

1つ目:入口のコース設計を見直す

候補者プールがつくれない企業には、入口の段階で女性を管理職につながらないコースに振り分ける仕組みが残っています。

先の約1,000名規模の企業では、一般職に相当するコースの在籍者が約300名で、そのほぼ全員が女性でした。全年代で同じ構成です。女性社員の約3分の2が、昇進プロセスの公平さとは無関係に、管理職パイプラインの外側に置かれていました。コース転換の実績は年1%程度です。一方で、キャリア職の新卒採用に占める女性の割合はこの10年で1割弱から5割近くまで上がっていました。入口は変わり始めていても、並行して残る一般職相当のコースが、毎年同じ数の女性を吸収し続けている状態です。

東京都が2026年7月に施行した女性活躍推進条例の指針も、この点を課題分析の視点に挙げています。部署や雇用管理区分ごとに特定の性別に偏らない配置がなされているか、非正社員から正社員への転換制度があるか。えるぼし認定の「多様なキャリアコース」の基準でも、コース間の転換や非正社員から正社員への転換の実績が問われます。

見直しの手順は3つです。

  1. コース別・雇用管理区分別の男女比を出す。 見るのは全社の女性比率より、管理職につながるコースの女性比率です。ここが3割を切っていれば、候補者プールは構造的に小さいままです。
  2. 転換の実績と要件を確認する。 転換制度があっても年に数名しか使われていなければ、要件か運用のどちらかに壁があります。試験の内容、上司の推薦の要否、転換後の処遇を洗い直します。
  3. 新卒・中途の配属先を追う。 採用時の女性比率が上がっても、配属で管理職につながらない部門に偏れば効果は出ません。

2つ目:管理職の一段下の層に配置し、選抜の基準を透明にする

候補者プールの中核は、管理職のすぐ下の等級です。ここに女性がいなければ登用のしようがなく、いても選抜の基準が不透明なら動きません。

配置については、意思決定層への登用の前提となるポストの経験が鍵になります。東京都の指針は、女性に対してサポート業務を任せることが多くなっていないか、意思決定層への登用の前提となるポストに中長期的な視点で女性を配置しているかを、課題分析の視点として明記しています。管理職候補としての経験を積める部署やプロジェクトに、意図的に配置することが出発点です。

選抜については、2つの事例が示唆的です。地方銀行の分析では、人事評価と正の相関がある性格特性が達成欲求・支配欲求・自己信頼性といった「自ら動く力」に偏っており、若手女性は男性管理職を基準にするとこれらの特性が低く出ていました。同じ評価軸のまま「世代交代で自然に上がる」という前提は成り立ちにくい、というのが分析の結論です。同じ分析で、ハイパフォーマーの判定を全体の上位で行うと女性5.7%・男性18.1%になるのに対し、同性内の上位で行うと女性13.2%・男性13.1%とほぼ同じになりました。候補者が少なく見えるかどうかは、判定の前提に左右されます。

実務としては、次の3点を整えます。

  • 推薦・選抜の基準を文書化し、候補者に開示する。 何をもって候補とするかが上司の裁量に任されていると、部下の構成がそのまま候補者の構成になります。
  • 候補者名簿の女性比率を先行指標として毎期見る。 管理職比率は遅行指標です。名簿の段階で比率を把握していれば、登用の前に手が打てます。
  • 育児休業や短時間勤務が評価・登用で不利益になっていないかを確認する。 東京都の指針が対応のポイントに挙げている点で、長時間労働や緊急対応ができることを前提にした評価の慣行を見直します。

えるぼし認定の管理職比率の基準は、女性管理職比率が産業平均以上であることのほかに、課長級の一つ下からの昇進率が男性の8割以上であることでも満たせます。候補者プールから動かす仕組みが整えば、この昇進率のルートが現実的になります。基準の詳細は「えるぼし認定とは?3段階の基準・プラチナえるぼしの違いを解説」を参照してください。

3つ目:途中で抜けない仕組みをつくる

プールに入った候補者が、管理職に届く前に抜けてしまう経路が3つあります。健康、働き方の切り替え、そして職場環境です。

地方銀行の分析では、正社員の私傷病休職が女性は男性の2.5倍、30代に限ると3.7倍でした。管理職候補になる年代と、健康上の負担が重なる年代が一致しています。更年期世代の管理職離職や昇進辞退については「更年期による女性管理職の離職・昇進辞退——企業が取り組むべき支援策」で、管理職側の対応は「更年期世代への対応マニュアル|管理職が知っておくべきこと」で扱っています。

働き方の切り替えについては、同じ分析で意外な結果が出ています。育児休業を取ること自体は、5年後の等級や継続意欲に有意な差をもたらしていませんでした。差が生まれていたのは、復帰後に短時間勤務へ切り替え、そのまま長時間勤務を前提とした管理職の働き方から離れていく経路です。育休そのものより、復帰後の選択肢が時短か従来型の管理職かの二択になっていることが問題でした。短時間勤務のまま就ける管理職ポジションや、時短からフルタイムに戻る道筋を用意することが、プールの流出を止めます。男性側の育児休業の取り方も含めた制度設計は「男性育休の取得を後押しする企業の実務|2025年改正と制度設計」にまとめています。

職場環境については、男性が多数を占める部署にいる女性は、等級や給与に差はないものの継続意欲が低いという結果が出ています。候補者を意図的に配置した先で孤立させないこと、ロールモデルとなる社内外の女性管理職との交流やメンタリングの機会を用意することは、東京都の指針が対応のポイントに挙げている項目でもあります。

3つを順番に測る:候補者プールのKPI

候補者プールの整備は、管理職比率が動く数年前から進捗を測れます。次の順で指標を置いてください。

段階指標見るタイミング
入口管理職につながるコースの女性比率、コース転換の件数年1回
一段下の層管理職の一段下の等級の女性比率、候補者名簿の女性比率半期ごと
選抜一段下の等級から管理職への昇進率の男女比年1回、3年平均でも見る
流出候補者層の離職率・休職率・時短切替率の男女差半期ごと

この4つの指標がそろえば、女性管理職比率という遅行指標が動かない期間でも、進捗を説明できます。2026年4月から101人以上の企業に女性管理職比率の公表が義務化されており、公表する数字の背景を説明できるかどうかが問われる場面は増えています。公表義務の内容は「女性活躍推進法改正2026|公表義務拡大(101人以上)と企業の実務対応」、行動計画への落とし込みは「一般事業主行動計画とは|女性活躍推進法の策定手順と届出方法」を参照してください。

よくある5つの失敗

  1. 登用研修から始める。 候補者が10人中1人の状態で研修を充実させても、生まれる管理職の数は変わりません。まず一段下の層の構成を見ます。
  2. 全社の女性比率で安心する。 一般職相当のコースを含めた全社比率が高くても、管理職につながるコースの女性比率が低ければプールは小さいままです。
  3. 候補者の判定を全体の上位で行う。 評価軸が特定の特性に偏っている場合、全体上位での判定は候補者の構成を固定します。同性内での判定と併用して確認します。
  4. 育休を問題にする。 抜ける経路は育休そのものより、復帰後の働き方の二択にあります。時短のまま就ける管理職ポジションがあるかを確認します。
  5. 配置して終わりにする。 男性が多数の部署に配置した候補者を孤立させると、等級は上がっても継続意欲が下がります。

Floraの支援:候補者プールがどこで細っているかをデータで特定する

Flora株式会社の「ダイバーシティデータプログラム」は、既存の人事データと従業員サーベイから、階層別・コース別の女性比率と昇進率、評価と登用の関係、候補者層の離職や時短切替の状況を可視化し、候補者プールがどの段階で細っているかを特定する支援です。

本記事で挙げた分析、コース別の女性比率、一段下の層からの昇進率の男女比、評価と処遇の乖離、育休と時短切替の影響は、多くの企業がすでに持っている人事データから算出できます。どこに手を打つかの優先順位づけから、公表・開示に使える形での整理まで一貫して支援しています。

まとめ

女性管理職の候補者育成は、登用の場面ではなく、その手前で決まります。入口のコース設計で女性を管理職につながるコースに入れること、管理職の一段下の層に配置して選抜の基準を透明にすること、健康・働き方の切り替え・職場環境の3つの経路で抜けないようにすること。この3つを整えて初めて、登用研修や登用目標が効き始めます。

まずは、管理職につながるコースの女性比率と、管理職の一段下の等級の女性比率を出してみてください。この2つの数字が、自社の候補者プールの現在地です。

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