女性の係長昇進が進まない理由|評価は同等、処遇だけが違う

2026年 9月 11日

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管理職候補が見つからない、という相談を受けて等級ごとに人数を並べると、候補になる手前の段ですでに女性が減っていることがあります。係長・課長代理といった、最初に部下を持つ段です。ここで何が起きているのかを、評価・処遇・候補者の選び方の3つから見ていきます。先に書いておくと、人事評価に差はありませんでした。差が出ていたのは、評価から先の処遇と登用の段です。

女性の係長昇進でボトルネックが起きている

Floraがある地方銀行(正社員約2,000名規模)の人事データを数年分たどった集計(Flora社調べ)では、主任・担当の段の女性比率は71.7%でした。その一つ上、係長・課長代理の段では36.6%です。35.1ポイント落ちています。管理職の段ではさらに10.1%まで下がりますが、比率の落ち幅としては主任から係長への段が最も大きくなっていました。

Floraの同じ集計で段ごとの昇進率を5年間で見ると、主任・担当から係長・課長代理へ上がった割合は女性29.1%、男性77.9%でした。同じ段にいた人の中で、上がる確率が48.8ポイント違うことになります。

段ごとの人数を並べる手順そのものは「女性管理職パイプラインの可視化|階層別の男女昇進率の出し方」にまとめています。なお、これらの集計は1社の中で観察された関連であり、因果を断定するものではありません。

評価は同等でした

昇進率に差があるとき、最初に検討されるのは能力や成果の差です。ところが同じデータで人事評価を見ると、女性の評価はむしろわずかに高い水準にありました。

年齢・勤続年数・性格特性を統制したうえで5年後の月給を比べると、女性は約15.1万円低いという結果が出ています。評価が同等かやや高いにもかかわらず、処遇には差が残る。この並びが示しているのは、評価の段ではなく、評価を処遇や登用に変換する段で差が生じているということです。

この点は打ち手の方向を大きく変えます。評価に差があるのなら、育成や研修で埋める話になります。評価が同等なら、育成の問題ではありません。誰を候補に挙げるか、誰に声をかけるか、誰を推薦するかという選抜の手続きのほうに要因を探すことになります。

候補者の選び方が結果を決める

高い潜在能力を持つ人材を選ぶとき、多くの企業は全体の中で上位何割かという基準を使います。この方法自体に、結果を左右する性質があります。

全体の順位で選ぶか、同性内の順位で選ぶかによって、女性の該当率は倍以上変わります。「女性の候補者が少ない」という認識は、事実というより判定方法の帰結である場合があります。判定の前提が結果をどう動かすかは「HiPo判定で女性が少なくなる理由|全体順位と同性内順位で結果が変わる」で詳しく扱っています。

選抜の手続きそのものにも目を向けてください。昇格の候補に挙がるまでの経路が、上長からの推薦だけになっている会社は多くあります。推薦が唯一の入口である場合、上長との接点の多さが候補になれるかどうかを左右します。自己推薦の経路を併設する、複数の管理職が候補を挙げる仕組みにするといった変更で、入口の幅は広がります。

選抜の透明性も要点です。推薦の基準が明文化されておらず、上長の裁量に委ねられている場合、日常的に接する機会の多い人が選ばれやすくなります。誰がどの基準で推薦したかを記録に残す運用にするだけでも、偏りは減ります。

昇進の打診を断られた記録も残してください。辞退が続いている場合、本人の意思の問題として処理されがちですが、辞退の理由を集めると共通する事情が見つかることがあります。転勤をともなうポストである、残業が前提の働き方になる、介護や育児との両立が難しい。いずれも制度で緩和できる範囲の話です。打診と辞退の記録がなければ、この検討自体が始まりません。

評価軸そのものを点検する

もう一つ、評価の中身にも目を向けてください。評価項目が自ら手を挙げる行動や周囲への働きかけといった側面に偏っていると、そうした行動の頻度に差がある集団の間で結果が分かれます。

同じデータでは、人事評価と正の相関を持つ性格特性として、達成欲求、顕示欲求、支配欲求、勤労意欲、自己信頼性、指導性といった項目が挙がりました。いずれも自ら前に出る力に関わるもので、この系統の特性には男女で中程度の差が見られています。

評価軸を変えることは簡単ではありませんが、少なくとも現在の軸が何を測っているかを把握しておく価値はあります。前に出る行動を高く評価する軸と、成果や周囲への貢献を評価する軸では、同じ人でも順位が変わります。女性管理職比率が上がらない要因の全体像は「女性管理職が増えない本当の理由」で扱っています。

世代交代で解決するか

時間が解決するという見方があります。若い世代では男女差が小さいのだから、その世代が上がってくれば自然に比率は改善する、という考え方です。

同じデータでは、この前提は成り立ちにくいという結果が出ています。管理職に就いている男性を基準に、40歳未満の女性の特性を比べると、指導性、支配欲求、積極性、危機耐性、自己信頼性といった項目で中程度の差が見られました。同じ比較を若手男性で行うと、差はごく小さくなります。

現在の評価軸と選抜の方法をそのままにしておくと、世代が入れ替わっても同じ結果が再生産される可能性があるということです。時間を待つより、軸と手続きに手を入れるほうが確実です。

育休についても、キャリアを止める原因として語られることがあります。ただ同じ分析では、育休を取得した人とそうでない人で5年後の等級に有意な差は見られませんでした。差が出ていたのは、復帰後に短時間勤務へ切り替えたまま長く続いた場合と、長時間勤務を前提とした管理職像が残っている場合です。制度の利用そのものより、復帰後の働き方の設計と、管理職の要件のほうに要因がありました。

この点も打ち手の方向を変えます。育休が問題なら取得を抑える話になりますが、復帰後の設計が問題なら、時短勤務でも就ける管理職ポストを作る、トラックを選び直せるようにするといった対応になります。

昇進したかどうかだけでなく、上がるまでにかかった年数も並べてください。同じ段に同じ年に入った人が、何年で次の段に移ったか。この分布を男女で比べると、率では見えない差が出ることがあります。

率が同じでも滞留年数が長ければ、生涯で到達できる段は低くなります。40代までに管理職に届かなければ、その先の経営層の候補にはなりません。昇進率だけを指標にしていると、速さの差が見過ごされます。

滞留年数の差が出ている場合、原因は昇格要件に置かれた経験の条件にあることがあります。特定の部署の経験、一定期間の転勤、大型案件の担当。これらが要件に入っていて、その機会の配分に偏りがあれば、要件を満たすまでの年数に差が生まれます。要件そのものより、要件を満たす機会がどう配られているかを見てください。

打てる手を3つに絞る

要因が評価から処遇への変換段にあるのなら、打ち手もそこに集中させます。

  1. 選抜基準を明文化する。 誰を候補とするか、どの基準で推薦するかを文書化し、記録を残す。
  2. 判定の前提を確認する。 全体順位で選抜しているなら、同性内順位で見た場合の候補者数も算出し、両方を並べて議論する。
  3. 絞りの段を指標にする。 女性管理職比率だけでなく、主任から係長への昇進率を男女別に持ち、毎年の昇格発令で進捗を確認する。

このうち1が最も早く着手できます。基準の文書化は制度改定を必要とせず、次の昇格の検討から適用できます。記録を残すこと自体が、推薦する側の判断を変える効果も持ちます。

2は数字を出すだけなら1日で終わります。判定の前提を変えるかどうかは経営の判断ですが、両方の数字を並べずに議論することはできません。まず算出してください。

3は指標の追加であるため、人事の運用に組み込む必要があります。年に一度の開示の作業に、絞りの段の昇進率を男女別に出す工程を足すところから始められます。

候補者層そのものを厚くする取組は「女性管理職の候補者育成|昇進率を上げる前に候補者プールを整える3つのこと」に、登用後に離脱を招く健康面の要因は「更年期による女性管理職の離職・昇進辞退」にまとめています。

Floraの支援:どの段で何が起きているかを特定する

Flora株式会社の「ダイバーシティデータプログラム」は、社内にある人事データと従業員サーベイを使って、段ごとの昇進率、評価と処遇の関係、選抜基準の前提までを分析し、どこに手を入れるかを特定するコンサルティングです。研修や制度整備だけでは動かなかった指標に対して、要因の側から設計します。これまでに150社以上の企業と取り組んできました。

まとめ

女性の係長昇進が進まない会社では、評価の段ではなく、評価を処遇と登用に変換する段に差が出ていることがあります。ある地方銀行の事例では、5年昇進率が女性29.1%に対し男性77.9%である一方、人事評価は女性がわずかに高い水準にありました。

Floraの分析が示したのは、育成で埋める問題ではなく、選抜と処遇の手続きの問題だという方向でした。どちらの話かによって打ち手はまったく変わります。まず自社の昇進率と評価を並べて、確かめてください。進め方は無料相談でご案内しています。

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