心理的安全性の測り方|7つの質問が測るものと、点数の読み方

2026年 9月 24日

心理的安全性の測り方とは、対人関係のリスクを取っても大丈夫だと思えているかを、複数の設問への回答から数値にする手続きです。エイミー・C・エドモンドソンが1999年の論文で用いた7項目の尺度が原型で、以後の調査の多くがこれを下敷きにしています。

設問そのものより難しいのは、出た点数をどう読むかです。全社平均を1つ出しても、打ち手は決まりません。この記事では、7項目が何を測っているのか、逆転項目をどう扱うのか、そして点数を部署別・階層別に読む手順を扱います。

7つの質問が測っているもの

原典の7項目は、次の7つの論点を1問ずつ尋ねる構成になっています。

#測っている論点
1ミスをしたとき、それが本人の不利益として扱われるか
2問題や言いにくい論点を、持ち出せるか
3他と違うことを理由に、人が退けられることがあるか
4リスクのある行動を取っても安全か
5他のメンバーに助けを求めることが難しくないか
6誰かが自分の仕事を意図的に妨げることはないと思えるか
7自分の技能や持ち味が評価され、活かされていると感じるか

原文の設問文をそのまま使う場合は、権利の確認をしてください。 原典は英語の論文で、日本語訳には訳者の権利が生じます。社内調査で使うだけであっても、出版された訳文を転記するのは避け、自社の言葉で設問を作るか、許諾を得たうえで使うのが安全です。上の表は各項目が何を測っているかの説明であって、設問文ではありません。

自社で設問を作るときは、7つの論点を1つずつ別の設問に分けてください。1問に2つの論点を入れると、どちらに答えたのか分からなくなります。「困ったときに助けを求めやすく、質問もしやすい」のような設問は、助けと質問のどちらが低いのかが読めません。

文言は具体的にします。「このチームは風通しが良い」では、回答者ごとに思い浮かべる場面が違います。「このチームでは、担当外の懸念を口に出しても問題にならない」のように、行動と場面を指定するほど、部署間で比べられる数字になります。

対象の単位も設問に書き込んでください。「この会社では」と「このチームでは」では、答えが変わります。心理的安全性はチーム単位で成立するため、設問はチームを主語にするのが基本です。

逆転項目を数え違えない

7項目のうち、1・3・5は逆転項目です。「ミスが不利益として扱われる」「違いを理由に退けられる」「助けを求めるのが難しい」に強く同意するほど、心理的安全性は低いことになります。

集計のとき、この3項目は点数を反転させてから合計します。7段階尺度なら、1を7に、2を6に、というように置き換えます。反転を忘れると、安全性が低い職場ほど高い点数が出るという、真逆の結果になります。

自社で設問を作り直す場合も、逆転項目を混ぜておく意味はあります。すべてを肯定形にすると、内容を読まずに同じ選択肢を選び続ける回答が混ざったとき、それを見つけられなくなるからです。

心理的安全性の測り方:4つのステップ

測定そのものは難しくありません。順番を間違えると使えない数字が出る、という種類の作業です。

1. 設問を決める。 上の7つの論点を、自社の言葉で1問ずつの設問にします。回答は5段階か7段階。段階数は途中で変えられないので、最初に決めてください。奇数段階にすると中央に回答が集まりやすく、偶数段階にすると態度を決めさせられます。どちらが良いというより、決めたら変えないことが重要です。

2. 集計の単位としきい値を決める。 部署別に出すのか、課単位まで下ろすのか。そして何人未満は出さないのかを、測る前に決めます。回答者が数名の単位では、点数から個人が推測できます。しきい値は5名や10名で置くことが多く、それ未満は上位の単位にまとめるか、集計から外します。この決定を後回しにすると、結果を見てから「この部署は出さないでおこう」という判断が入り、数字の信頼が落ちます。

3. 測る。 時期を固定します。繁忙期の直後と閑散期では、同じ職場でも点数が動きます。年2回なら、たとえば6月と12月のように固定して、以後ずらさないことです。

4. 読む。 逆転項目を反転させてから合計し、部署別・階層別・項目別に分解します。ここではじめて、どこに手を入れるかが決まります。

4つのうち、飛ばされやすいのは2です。設問を作ることと測ることに関心が集中して、集計の単位が後から決まる。そうすると結果が出たあとで単位を選ぶことになり、都合の良い切り方を選んだと見なされる余地が残ります。

もう一つ、回答率を先に見てください。回答率が5割を切った部署の点数は、そのまま読めません。答えなかった人が無関心なのか、答えにくいと感じたのかで意味が逆になるからです。回答率の低い部署ほど心理的安全性が低い可能性があり、点数だけを見ると実態より良く見えます。部署別の表には、点数と並べて回答率を置いてください。

設問を用意して集計するところまでを自分でやらずに試すなら「心理的安全性 セルフチェック」が使えます。7つの設問に答えると、逆転項目を反転させたうえで点数と次の一手が出ます。本調査の前に、測ると何が分かるのかを確かめる用途にも向きます。

平均点だけを見ると、差が消える

測った結果を全社平均で1つ出すと、たいてい「中の上」に着地します。そこから動きません。

点数は、分けて読んではじめて使えます。最低限、次の3つの切り口で出してください。

切り口見えるもの
部署別心理的安全性は組織全体ではなくチーム単位で成立する。平均は部署差を打ち消す
階層別管理職と非管理職で差が出るのが普通。管理職だけが高い場合、見えている景色が違う
項目別どの因子が弱いかで打ち手が変わる。話しやすさと助け合いでは対策が別

部署別に出すときは、人数の少ない部署の扱いを先に決めておいてください。回答者が数名の部署では、点数から個人が推測できます。しきい値を決めて、それ未満の部署は集計対象から外すか、上位の単位にまとめる。これは測る前に決めることです。

階層別に見ると、管理職のほうが高く出るのが普通です。発言してもリスクが小さい立場だからで、それ自体は異常ではありません。見るべきは差の大きさです。管理職と非管理職の差が他部署より開いている部署は、管理職からは見えていない何かが起きている可能性があります。

項目別の分解は、打ち手を決める段で効きます。同じ「点数が低い」でも、助けを求めにくいのか、違う意見が退けられるのかで、やることは別です。前者は業務量と役割分担の問題であることが多く、後者は会議の進め方の問題であることが多いためです。

因子ごとの読み方は「心理的安全性の作り方」で扱っています。

何回、いつ測るか

1回の測定では、点数が高いのか低いのかも判断できません。比較する相手が要ります。

現実的なのは、同じ設問で年2回、時期を固定して測ることです。施策を打った前後で比べるのではなく、定点で並べていきます。施策の前後比較は、季節性や組織変更の影響と区別がつかなくなるため、因果の証拠にはなりません。

頻度を上げすぎると回答が雑になります。毎月の測定に耐えるのは、設問を2〜3問に絞った簡易版までです。7項目の本調査は年2回までにとどめ、そのあいだは別の指標で見るほうが続きます。

測定の前に、結果を誰にどこまで返すかも決めておいてください。全社の数字だけを経営層に返して現場に何も戻さないと、次回の回答率が落ちます。少なくとも、自部署の結果はその部署の管理職に返す。返したうえで、点数の低さを個々の管理職の責任として扱わないと最初に宣言しておくことが、正直な回答を保つ条件になります。

よくある失敗

  • 逆転項目を反転させずに集計する。 結果が真逆になります。最初に確認すべき点です。
  • 全社平均だけを見る。 心理的安全性はチーム単位で成立します。全社で1つの数字を出しても、打つ手が決まりません。
  • 少人数の部署をそのまま出す。 回答者が数名の単位では、点数から個人が推測できます。しきい値は測る前に決めてください。
  • 設問を毎回変える。 比較できなくなります。設問を変えるなら、変えた年を記録し、前の設問との接続をあきらめる覚悟で変えてください。
  • 点数を管理職の評価に使う。 評価に連動した瞬間、点数を上げる圧力がかかり、測定そのものが機能しなくなります。
  • 出版された訳文をそのまま転記する。 訳文には訳者の権利があります。自社の言葉で作るか、許諾を得てください。

研修で手を入れる場合の設計は「心理的安全性のための研修とは」に、他社が何をしたかは「心理的安全性の取り組み事例7選」にまとめています。

Floraの支援:サーベイを人事データと同じ土台で読む

Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員サーベイと健康・勤怠のデータを同じ基盤で扱い、部署別・階層別に切り分けて読める形にします。心理的安全性の点数だけを単独で追っても、なぜ低いのかは分かりません。残業時間や休職の発生と重ねて見ると、手を入れる場所が絞れます。

少人数区分の非表示も、集計の段階ではなく出力の段階で効かせます。まずは現状の測り方の整理からご相談ください。

まとめ

心理的安全性の測り方は、7項目の尺度で測り、1・3・5の逆転項目を反転させて合計するのが基本です。原型はエドモンドソンが1999年の論文で用いた尺度で、日本語の設問文を使うときは訳文の権利を確認してください。

出た点数は、全社平均では使えません。部署別・階層別・項目別に分けて、はじめて打ち手につながります。少人数区分のしきい値は、測る前に決めておいてください。測定は同じ設問で年2回、時期を固定するのが続けやすい形です。部署別の表には、点数と回答率を必ず並べて置いてください。

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