求職者等へのセクハラ防止措置|就活・インターンで企業が講ずべきこと
2026年 9月 24日

求職者等に対するセクシュアルハラスメントとは、事業主が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等による求職活動等が阻害されるものをいいます。2026年(令和8年)10月1日から、この防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが、男女雇用機会均等法にもとづく事業主の義務になります。
これまで均等法の措置義務は、自社で雇用する労働者を対象にしたものでした。10月1日からは、まだ雇用関係にない相手、つまり応募者やインターン生も対象に入ります。面接やOB・OG訪問のように、人事の管理が届きにくい場面ほど論点になります。
この記事では、誰が「求職者等」にあたるのか、講ずべき措置は何か、そして10月1日までに決めておくことを、指針にもとづいて整理します。
(出典:厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」。指針は令和8年厚生労働省告示第52号)
求職者等セクハラとは、均等法にもとづく措置義務
根拠は男女雇用機会均等法です。同じ10月1日に施行されるカスタマーハラスメントの措置義務が労働施策総合推進法にもとづくのとは、法律が別になります。社内で「10月からのハラスメント対応」としてまとめて扱うと、根拠条文も指針も混ざるため、分けて整理してください。
カスハラ側の要件は「カスハラ対策の義務化」にまとめています。自社で雇用する労働者に対するセクハラの措置義務は以前からあり、その全体像は「セクシュアルハラスメントとは」で扱っています。
「求職者等」と「求職活動等」の範囲
指針は、対象になる相手と場面をどちらも定義しています。ここを読み違えると、措置の対象範囲を取り違えます。
| 用語 | 指針が示す範囲 |
|---|---|
| 求職者等 | 求職者(企業の求人に応募する者)。および求職者以外の者であって、事業主の実施する労働者の採用に資する活動に参加する者、教育実習・看護実習その他の実習を受ける者 |
| 求職活動等 | 求職者が行う求職活動や、求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動。例として、企業の採用面接への参加、企業の就職説明会への参加、企業の雇用する労働者への訪問、インターンシップへの参加、教育実習・看護実習等の実習の受講 |
SNS等のオンラインを介したものや、オンライン上で行われるものも含まれます。 対面の面接だけを想定して設計すると、実務でいちばん起きやすい経路が抜けます。
注意したいのは、「採用に資する活動に参加する者」と「実習を受ける者」が明示されている点です。自社に応募していない学生でも、就職説明会に来た人や教育実習生は対象に入ります。また、企業の雇用する労働者への訪問、つまりOB・OG訪問が例として挙がっています。人事を経由しない個人的なやり取りが、法律上の対象場面になります。
求職者等セクハラの防止措置|事業主が講ずべき11項目
指針は、講じなければならない措置を次のように示しています。
| 区分 | 措置 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知・啓発 | ① 求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する<br>② 行った者を厳正に対処する旨の方針と対処の内容を、労働者に周知・啓発する<br>③ 求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者および求職者等に周知・啓発する |
| 相談体制の整備 | ④ 相談窓口をあらかじめ定め、求職者に周知する<br>⑤ 相談窓口担当者が適切に対応できるようにする |
| 事後の迅速かつ適切な対応 | ⑥ 事実関係を迅速かつ正確に確認する<br>⑦ 被害者に対する配慮のための措置を行う<br>⑧ 行為者に対する措置を適正に行う<br>⑨ 再発防止に向けた措置を講ずる |
| あわせて講ずべき措置 | ⑩ 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者および求職者等に周知する<br>⑪ 事業主の措置に協力したこと等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する |
このうち、他のハラスメント対応と内容が異なるのは③のルールの明確化と、④⑩の周知先に求職者等が含まれることです。社内向けの規程を整えるだけでは足りず、社外の相手に届く形にする必要があります。
③でいう「求職活動等に関するルール」として指針が挙げているのは、面談時間および場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定など、面談等を行う際の規則です。OB・OG訪問を個人のSNSで受けている状態は、ここで正面から問われます。
⑥から⑨の事後対応は、自社の労働者に対するセクハラ対応とほぼ同じ構成です。違うのは、被害を受けた相手がすでに自社を離れている可能性がある点です。選考が終わったあとに申し出があった場合、連絡経路が残っていなければ配慮の措置も再発防止の説明も届きません。相談を受けた時点で、その後どう連絡を取るかまで決めておいてください。
なお、①から⑪はいずれも「必ず講じなければならない」措置として示されています。優先順位をつけて一部だけ実施する、という整理にはなりません。
指針が挙げている例
指針は次の2つを例として挙げています。自社で研修資料を作るときは、この2例を出発点にしてください。実際にあった事案として創作した例を配ると、それ自体が不正確な理解を広げます。
- インターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと
- 求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること
どちらも、行為者は人事担当者とは限りません。現場の社員がリクルーターやOB・OG訪問の受け手として関わる場面が想定されています。措置の周知先を人事部門に限ると、想定されている場面を外します。
判断が分かれる言動の扱い方は「ハラスメントのグレーゾーンとは」で扱っています。事実の並べ方は「ハラスメント グレーゾーン整理ツール」も使えます。
10月1日までに決めること
11の措置を順に潰すより、決めごとを先に固めるほうが早く進みます。
- 誰が求職者等と接するかを洗い出す。 人事だけでなく、リクルーター、OB・OG訪問を受ける社員、インターンの受け入れ部署、実習の指導担当まで含めます。
- 面談のルールを決める。 時間と場所、実施体制、使うSNSの種類。これが③の中身になります。個人のアカウントでのやり取りを認めるかどうかは、ここで決めます。
- 相談窓口を求職者等に周知する経路を決める。 社内ポータルには出せません。募集要項、説明会資料、インターンの案内など、社外の相手が見る場所に置く必要があります。
- プライバシー保護と不利益取扱い禁止を、求職者等にも届く形で示す。 ⑩の周知先には求職者等が含まれます。
- 既存のセクハラ規程との関係を整理する。 自社の労働者に対する措置義務は従来からあります。新しい規程を別に作るのか、既存の規程の対象範囲を広げるのかを決めてください。
この5つのうち、時間がかかるのは1と3です。誰が求職者等と接しているかは人事部門だけでは把握できず、現場への確認が要ります。窓口の周知経路も、募集要項や説明会資料の改訂サイクルに乗せる必要があるため、印刷物を使っている場合は前倒しで動くことになります。
よくある失敗
- 社内規程の対象範囲を広げただけで終える。 ④と⑩は求職者等への周知を求めています。社内にしか出していない状態では、措置を講じたことになりません。
- 対面の面接だけを想定する。 指針はSNS等のオンラインを介したものを明示的に含めています。
- OB・OG訪問を個人の裁量のままにする。 指針が例として挙げている場面です。面談のルールを決めないまま放置すると、③を満たしません。
- インターン受け入れ部署に伝えない。 実習を受ける者は求職者等に含まれます。受け入れ部署が対象だと知らなければ、周知は届きません。
- カスハラ対応とまとめて一本の規程にする。 根拠法が違います。均等法にもとづく措置と労働施策総合推進法にもとづく措置を混ぜると、どちらの要件も検証しにくくなります。
Floraの支援:相談窓口を、届く形で用意する
Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員の健康と就業環境に関する相談を受ける経路を整えるサービスです。求職者等セクハラの措置で難しいのは、社外の相手に窓口を知らせ、相談を受けたあとに社内の対応につなぐところです。窓口の設計と、相談を受けた担当者が適切に対応できる体制づくりから相談を受けています。
まとめ
求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置は、2026年10月1日から男女雇用機会均等法にもとづく事業主の義務になります。対象は求職者と、採用に資する活動に参加する者、教育実習・看護実習その他の実習を受ける者です。
措置は11あり、他のハラスメント対応と違うのは、求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化すること、そして相談窓口とプライバシー保護の周知先に求職者等が含まれることです。社内規程の対象範囲を広げるだけでは足りません。まず、誰が求職者等と接しているかを洗い出すところから始めてください。
よくある質問
自社に応募していない学生も対象ですか。
OB・OG訪問も対象になりますか。
既存のセクハラ規程を広げれば足りますか。
罰則はありますか。





