職場のモラハラとは|モラルハラスメントの具体例と、企業が取るべき対策
2026年 9月 28日

職場におけるモラルハラスメント(モラハラ)とは、人格や尊厳を傷つける言動を継続的に行い、相手の就業環境を害することをいいます。身体的な暴力を伴わず、言葉や態度によって行われる点が特徴とされます。外から見えにくく、長く続きやすい類型です。
「モラハラ」という名称が法律に定められているわけではありません。内容によってパワーハラスメントの類型に当てはまり、その場合は事業主の措置義務の対象になります。
この記事では、どの類型に当てはまるのか、パワハラとの違いをどう考えるか、そして見つけにくいこの類型をどう扱うかを整理します。
モラハラの法律上の位置づけとパワハラとの関係
厚生労働省のパワーハラスメント指針は、モラルハラスメントという語を使っていません。ただし、モラハラと呼ばれる言動の多くは、次の類型に当てはまります。
| 言動 | 当てはまる類型 |
|---|---|
| 人格を否定するような言動 | 精神的な攻撃 |
| 長時間にわたる厳しい叱責の繰り返し | 精神的な攻撃 |
| 面前での大声の威圧的な叱責の繰り返し | 精神的な攻撃 |
| 無視、仲間外し、隔離 | 人間関係からの切り離し |
| 私的なことへの過度な立ち入り | 個の侵害 |
指針が精神的な攻撃の該当例として挙げているのは、人格を否定するような言動を行うこと、業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと、相手の能力を否定し罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信することです。
「繰り返し」「面前」「複数宛て」という言葉が並んでいることに注目してください。単発の強い言葉ではなく、継続性と公開性が判断の要素になっています。モラハラと呼ばれる言動の性質と重なります。
措置義務の対象になっている種類の全体像はハラスメントの種類一覧を、パワハラの3要素はパワハラとはをご覧ください。
(出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」令和2年厚生労働省告示第5号)
パワハラと呼ぶか、モラハラと呼ぶか
実務では、呼び分ける必要はありません。相談を受けたときに決めるのは、措置義務のあるどの類型に当てはまるかです。
モラハラという言葉が使われるのは、多くの場合、行為が目に見えにくいときです。怒鳴られたわけではない、明確な指示違反があったわけではない、けれど毎日つらい。この状態を説明する言葉として選ばれます。
会社が扱うときは、その説明を受け止めたうえで、事実として何が起きているかを整理し、類型に当てはめます。呼び方を訂正することから入ると、相談そのものが続きません。
具体例
- 挨拶を返さない、質問に答えない、という扱いを特定の人にだけ続ける
- 会議で発言すると必ず否定する、あるいは発言の機会を与えない
- 情報共有のメールから外す、打ち合わせの予定を伝えない
- ため息、舌打ち、書類を投げるといった態度で意思を示す
- 業務とは関係のない私生活について繰り返し詮索する
- 評価面談で、業務と無関係な人格への言及を行う
該当しない例
指針が精神的な攻撃に該当しないとしているのは、遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること、そして業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して一定程度強く注意をすることです。
判断にあたっては、労働者の行動が問題となる場合、その内容・程度と、それに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素になるとされています。
職場のモラハラはなぜ見つけにくいのか
モラハラが問題になるとき、会社が把握できていないことがほとんどです。理由は3つあります。
1つめは、単発では判断できないこと。挨拶を返さなかった一度の出来事は、問題として扱えません。繰り返されて初めて意味を持ちますが、繰り返しは記録がなければ見えません。
2つめは、目撃者が判断できないこと。周囲から見ると「相性が悪い」「厳しい人」に映ります。ハラスメントとして認識されないため、報告が上がりません。
3つめは、本人が説明しにくいこと。何をされたかを挙げても、一つひとつは小さく聞こえます。「気にしすぎではないか」と言われることを恐れて、相談自体をためらいます。
したがって、相談窓口が「明確な事案」を待っている設計だと拾えません。日常の違和感の段階で相談できる形になっているかが分かれ目になります。
同僚間・部下からの場合も対象になる
モラハラは上司から部下への行為として語られることが多いものですが、同僚間や部下から上司へという形でも起こります。
指針は「優越的な関係を背景とした」言動について、職務上の地位が上位の者による言動のほか、同僚または部下による言動で業務上必要な知識や豊富な経験を有しており協力を得なければ業務の円滑な遂行が困難であるもの、そして同僚または部下からの集団による行為で、抵抗または拒絶することが困難であるものを含むとしています。
集団での無視は、まさにこの形です。役職の上下で判断すると、対象から外れてしまいます。相談を受けたときに「相手が部下だから対象外」と整理しないでください。
企業が取るべき対策
- 相談の基準を下げる。 「ハラスメントかどうか分からない段階でも相談してよい」と明示します。判断は会社がします。
- 記録の取り方を案内する。 日付、場所、何があったか、誰がいたか。本人が記録を残せていれば、継続性を示せます。
- 部署単位の状態を定点で見る。 個別の相談を待たず、匿名アンケートで部署ごとの状態を追います。特定の部署だけ数値が低ければ、そこで何かが起きています。
- 管理職研修で「態度」を扱う。 言葉だけでなく、無視、ため息、情報を渡さないことも対象になると伝えます。
- 異動や退職の理由を拾う。 短期間での異動希望や退職が特定の部署に集中していないかを確認します。
相談を受けた後に決めておくこと
モラハラの相談で難しいのは、受けた後です。明確な一件がないため、「調査」という形に乗せにくいからです。あらかじめ決めておくと動きやすくなるのが、次の3点です。
どこまでを事実確認とするか。 行為者への聞き取りを行うかどうかは、相談者の意向を確認してから決めます。聞き取りを行えば相談したことが伝わるため、本人が望まない場合があります。望まない場合に何ができるかを、先に整理しておきます。
確認が取れなかった場合に何をするか。 「事実は確認できませんでした」で終えると、相談者は次から相談しません。部署の状態を見る、管理職研修を入れる、配置を検討するなど、個別の認定を伴わない対応の選択肢を持っておきます。
相談者へのフィードバックの形。 調査の内容は伝えられなくても、会社が何をしたかは伝えられます。伝え方を決めておかないと、対応したこと自体が相談者に届きません。
職場の状態を測る方法は心理的安全性の測り方で扱っています。判断に迷うケースの手順はハラスメントのグレーゾーンとはとハラスメントのグレーゾーン診断をご覧ください。
よくある失敗
「言った・言わない」で止める。 目撃者がいない事案は珍しくありません。事実確認ができないことと、何もしないことは別です。双方への聞き取り、部署の状態の確認、配置の検討など、できることがあります。
相性の問題として処理する。 相性という言葉で整理した時点で、対応が終わります。
行為者に自覚がないことを理由に軽く扱う。 自覚の有無は、該当性の判断要素ではありません。
被害を訴えた側を先に異動させる。 結果として不利益な取扱いに見えます。指針は、相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発することを措置として求めています。本人が異動を希望する場合を除き、順序と説明を慎重に扱ってください。
継続性を確認せずに一件で判断する。 逆方向の失敗です。一度の厳しい叱責を直ちにハラスメントと認定すると、管理職が指導そのものを避けるようになります。指針が該当例に「繰り返し」と書いていることを、判断する側も押さえておく必要があります。
記録がないことを相談者の落ち度にしない。 記録の残し方を案内するのは会社側の役割です。相談を受けてからでも、その後の記録は残せます。
Floraの支援:状態を定点で測る
モラハラは、個別の相談が上がる前に職場の状態として表れます。特定の部署でだけ継続意欲が下がる、体調不良の申出が増える、といった形です。
FloraのWellflowは、従業員の状態を把握する調査と、従業員が直接相談できる窓口、管理職向けの研修を提供しています。相談が上がってくるのを待つのではなく、部署単位の変化から確認する進め方ができます。
まとめ
職場のモラハラは法律上の独立した類型ではありませんが、人格を否定する言動や無視・仲間外しは、パワーハラスメントの精神的な攻撃や人間関係からの切り離しに当たり得ます。該当する場合は措置義務の対象です。
指針の該当例に「繰り返し」という言葉が繰り返し出てくるとおり、継続性が判断の要素になります。単発で判断できないため、相談の基準を下げることと、部署単位の状態を定点で見ることが実務上の備えになります。
よくある質問
モラハラとパワハラはどう違いますか。
無視や態度もハラスメントになりますか。
目撃者がいない場合はどうすればよいですか。
厳しい指導との線引きはどこにありますか。





