SOGIハラスメントとは|具体例と、企業が取るべき対策
2026年 9月 28日

SOGIハラスメント(SOGIハラ)とは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)に関する差別的な言動や、本人の了解を得ずにそれを他者に暴露する行為のことです。SOGIは両者の頭文字を取った言葉で、特定の人だけでなく、すべての人が持つ属性を指します。
「SOGIハラ」という名称が法律に定められているわけではありません。ただし中身は措置義務の対象です。厚生労働省のパワーハラスメント指針は、性的指向・性自認に関する言動を具体的に該当例として挙げています。名称で探すと法律に見当たらないため対象外と誤解されやすい、という点がこの類型の特徴です。
この記事では、指針が何を該当例としているか、企業に何が求められるかを整理します。
指針が挙げている2つの該当例
パワーハラスメント指針は、6類型のうち2つでSOGIに触れています。
精神的な攻撃
該当すると考えられる例として、人格を否定するような言動を行うことが挙げられ、そこに相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含むと明記されています。
個の侵害
該当すると考えられる例として、労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露することが挙げられています。これがいわゆるアウティングです。
一方、該当しないと考えられる例として、労働者の了解を得て、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すことが挙げられています。
つまり分かれ目は2つ、本人の了解があるかと必要な範囲にとどまっているかです。この2つは、病歴や不妊治療の情報を扱うときの基準とまったく同じです。
(出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」令和2年厚生労働省告示第5号)
SOGIハラの法律上の位置づけ
SOGIハラという独立した類型が法律にあるわけではありません。内容に応じて、次のいずれかに当てはまります。
| 言動 | 当てはまる類型 |
|---|---|
| 性的指向・性自認に関する侮辱的な言動 | パワハラの精神的な攻撃 |
| 本人の了解を得ないアウティング | パワハラの個の侵害 |
| 性的な言動により就業環境が害される場合 | セクシュアルハラスメント |
したがって、措置義務の対象です。「法律に名前がないから対応しなくてよい」ということにはなりません。措置義務の全体像はハラスメントの種類一覧を、パワハラの3要素と6類型はパワハラとはをご覧ください。
具体例
侮辱的な言動にあたる例
- 性的指向や性自認を揶揄する発言を、本人がいる場でも、いない場でも行う
- 「男らしくない」「女のくせに」といった、性別役割を前提にした人格への言及
- 呼称や代名詞について、本人が求めた扱いを繰り返し無視する
アウティングにあたる例
- 本人から打ち明けられた内容を、本人の了解なく同僚に話す
- 配慮のつもりで、上司が部署内に共有する
- 人事が所属部署へ伝える際に、本人が想定していない範囲まで広げる
2つめと3つめは、悪意がない場合に起きます。「支援するためには周囲が知っておいたほうがよい」という判断は、了解を取らなければアウティングになります。指針が該当しない例として挙げているのは「了解を得て、必要な範囲で」伝えることです。
起きやすいのが、相談を受けた上司が判断に困り、善意で人事や他の管理職に相談する場面です。上司にとっては適切な対応を探す行為ですが、本人から見れば了解していない共有です。相談を受けた側が誰かに相談したくなったときこそ、本人に確認する必要があります。
この順番を手順に落としておかないと、現場の上司は板挟みになります。「一人で抱えるな」と「勝手に広げるな」は、手順がなければ両立しません。本人に「人事に相談してよいか」を確認してから動く、という一段を入れるだけで解決します。
該当しない例
- 本人の了解を得て、人事労務部門の担当者に必要な範囲で伝達し、配慮を促す
- 制度の案内として、性別にかかわらず利用できる制度を全員に周知する
「聞くこと」自体はどう扱われるか
指針は、個の侵害に該当しない例として、労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うことも挙げています。
つまり、配慮のために尋ねること自体が直ちに問題になるわけではありません。問題になるのは、過度に立ち入ることと、得た情報を了解なく広げることです。
実務としては、業務上の必要性があるかと答えない自由があることを伝えているかの2点で整理できます。制度の利用に必要な範囲で確認し、答えたくない場合は答えなくてよいと明示する。この形であれば、配慮としてのヒアリングとして成立します。
逆に、必要のない場面で私生活に踏み込む質問を繰り返すことは、個の侵害に該当する方向に傾きます。指針が該当例に挙げているのは、職場外でも継続的に監視すること、私物の写真撮影をすることといった行為です。
情報が動く場面を洗い出す
対策を手順にするとき、まず必要なのはどの場面で情報が動くかを把握することです。実務では次のような場面があります。
- 本人が上司に打ち明ける
- 上司が人事に相談する
- 人事が産業医や相談窓口につなぐ
- 異動や配置転換の検討で、受け入れ側に伝える
- 健康診断や福利厚生の手続きで、担当者が知る
- 名簿、社内システム、座席表などに表示される
このうち後半3つは、誰かが意図して話す場面ではありません。手続きやシステムの設計上、自動的に情報が流れます。ここを放置したまま「本人の了解を得てから共有する」という方針だけ立てても、実態は変わりません。
システムの表示項目、申請フォームの必須欄、名簿の記載内容を確認してください。戸籍上の性別が必須項目として全社員に見える状態になっていないか、といった点です。
企業が取るべき対策
- 方針に明記する。 ハラスメント防止方針の中で、性的指向・性自認に関する言動が対象に含まれることを書きます。一般的な「ハラスメントを許しません」だけでは、対象と認識されません。
- 相談を受けたときの情報の扱いを先に決める。 誰に、どこまで、いつ伝えるかを本人と確認してから動く。この順番を手順に書いておきます。
- 相談窓口担当者に、了解の取り方を訓練する。 「人事に伝えてよいか」「上司に伝えてよいか」を分けて確認する必要があります。
- 制度を性別で閉じない。 慶弔、休暇、福利厚生の要件が戸籍上の性別や法律婚を前提にしていると、利用の申出自体がカミングアウトになります。要件を見直すかどうかは経営判断ですが、いまの規程がどうなっているかは確認しておいてください。
- 研修に含める。 一般的なハラスメント研修で抜けやすい領域です。指針の該当例をそのまま使うと、根拠が明確になります。
- 相談記録の保管場所と閲覧権限を決める。 記録が共有フォルダに置かれていれば、権限のない人が読めます。相談内容そのものが機微な個人情報です。
ジェンダーに関する言動全般はジェンダーハラスメントとは、性的な言動はセクシュアルハラスメントとはで扱っています。判断に迷うケースはハラスメントのグレーゾーン診断で確認できます。
よくある失敗
配慮のために共有する。 本人の了解が先です。共有の範囲も本人が決めます。
相談を受けた担当者が一人で抱える。 誰にも相談できないまま対応すると、担当者自身が消耗します。本人の了解を取ったうえで相談できる先を、あらかじめ決めておいてください。
「うちにはいない」を前提に設計する。 申し出がないことと、いないことは違います。申し出られない設計になっている可能性を先に検討してください。制度も相談窓口も、必要になってから作るのでは間に合いません。最初の相談が来たときに、すでにある状態にしておく必要があります。
呼称の問題を軽く扱う。 繰り返し行われれば、継続性のある言動として判断の対象になります。指針は、業務上必要かつ相当な範囲を超えたかどうかの判断において、言動の態様・頻度・継続性を考慮事項に挙げています。一度の言い間違いと、指摘を受けても続く扱いは別のものです。
「本人が気にしていないと言ったから」で終える。 打ち明けた直後に本人が「大丈夫です」と答えるのは自然なことです。その場の回答をもって了解と扱うのではなく、共有の範囲を具体的に確認してください。誰に、何を、どこまで、という形で聞きます。
Floraの支援:機微な情報の扱いを設計する
SOGIに関する情報は、病歴や不妊治療と同じく、指針がプライバシーとして保護を求めている機微な個人情報です。配慮のために共有が必要になる一方、共有のしかたを誤ればそれ自体がハラスメントになる、という構造が共通しています。
FloraのWellflowは、従業員が健康や働き方について直接相談できる窓口と、管理職向けの研修を提供しています。人事のラインに乗る前に本人が相談できる場所があることで、共有の範囲を本人が決められる状態をつくれます。
まとめ
SOGIハラは法律上の独立した類型ではありませんが、性的指向・性自認に関する侮辱的な言動はパワハラの精神的な攻撃に、本人の了解を得ないアウティングは個の侵害に、それぞれ指針の該当例として明記されています。措置義務の対象です。
対策の中心は、情報の扱いを手順として決めておくことです。本人の了解を得ているか、必要な範囲にとどまっているか。この2点が、配慮とハラスメントを分けます。
よくある質問
SOGIハラは法律上のハラスメントですか。
アウティングは悪意がなくても問題になりますか。
人事に伝えることもアウティングになりますか。
社内に該当者がいるか分からない場合も対策が必要ですか。





