エイジハラスメントとは|具体例と、企業が取るべき対策

2026年 9月 28日

エイジハラスメント(エイハラ)とは、年齢を理由とする侮辱的な言動や、年齢を前提とした役割の固定によって、働く人の就業環境が害されることをいいます。高年齢の従業員に向けられる場合と、若手に向けられる場合の両方があります。

「エイジハラスメント」という名称が法律に定められているわけではありません。ただし、内容によってはパワーハラスメントの類型に当てはまり、その場合は事業主の措置義務の対象になります。

この記事では、どの類型に当てはまるのか、具体例、そして企業側の対策を整理します。

エイジハラスメントの法律上の位置づけ

厚生労働省のパワーハラスメント指針は、年齢そのものを独立した項目として扱ってはいません。ただし、次の類型に当てはまる場合があります。

言動当てはまる類型
年齢を理由に人格を否定するような発言精神的な攻撃
能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない過小な要求
遂行不可能なことを強制する過大な要求
年齢を理由に情報共有や会議から外す人間関係からの切り離し

指針は、過小な要求の該当例として管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせることを挙げています。年齢を背景にこれが行われれば、エイジハラスメントであると同時にパワーハラスメントです。

一方、過小な要求に該当しない例として、労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減することが挙げられています。体力面への配慮として業務を調整することと、追い出すために仕事を取り上げることは、指針上も区別されています。

措置義務の対象になっている種類の全体像はハラスメントの種類一覧を、パワハラの3要素と6類型はパワハラとはをご覧ください。

(出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」令和2年厚生労働省告示第5号)

具体例

高年齢の従業員に向けられるもの

  • 「もう歳なんだから」「若い人に任せればいい」と、本人の意向を確認せずに役割を外す
  • 新しいシステムやツールの説明から外す。「どうせ覚えられない」という前提での扱い
  • 役職定年や再雇用を機に、業務を実質的にゼロに近づける
  • 会議や情報共有の対象から外す

若手に向けられるもの

  • 「若いんだから」で業務量や残業を当然視する
  • 年齢を理由に意見を取り合わない
  • 雑務だけを割り当て続ける

どちらも起きます。エイジハラスメントを高年齢者の問題として扱うと、若手側の事案が拾えません。

該当しない例

  • 本人と話し合ったうえで、体力面を考慮して業務内容を調整する
  • 役割の変更を、本人の希望と会社の説明を経て決める
  • 研修の対象を、経験年数に応じて分ける

分かれ目は、本人と話しているかどうかと理由が年齢そのものではなく業務上の必要性にあるかどうかです。

上司から部下へ、とは限らない

指針は「優越的な関係を背景とした」言動について、職務上の地位が上位の者による言動のほか、同僚または部下による言動で、業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その協力を得なければ業務の円滑な遂行が困難であるもの、そして同僚または部下からの集団による行為で、抵抗または拒絶することが困難であるものを挙げています。

エイジハラスメントでは、この形が現実に起こります。年上の部下が年下の上司を軽んじる、システムに詳しい若手が年長者を排除する、といった場面です。役職の上下だけで見ていると、これらが対象外に見えてしまいます。

なぜ「配慮」と「排除」が見分けにくいのか

この類型が扱いにくいのは、同じ行為が状況によって配慮にも排除にもなるからです。業務量を減らす、負荷の高い案件から外す、出張を減らす。どれも単体では判断できません。

判断を分けるのは、次の3点です。

本人の意向を確認したか。 確認していれば配慮、していなければ一方的な決定です。指針も、過小な要求に該当しない例として「労働者の能力に応じて」軽減することを挙げており、能力の把握には本人との対話が前提になります。

理由を説明したか。 理由が伝わっていなければ、本人には年齢だけを見た判断に映ります。説明の有無は記録で確認できます。

元に戻す条件があるか。 期限も条件もない軽減は、事実上の固定です。体調や状況が変われば戻す、という前提を共有しているかどうかで性格が変わります。

この3点は、育児や介護による時短、病気からの復職でも同じ構造です。年齢に限らず、配慮として業務を調整するときに共通して必要な手順だと考えてください。

高年齢者の健康と業務の関係

健康経営優良法人の認定要件には、「性差・年齢に配慮した職場づくり」という中項目があり、高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取り組みが評価項目のひとつとして置かれています。

この項目が求めているのは、年齢で一律に扱うことではなく、状況に応じた対応です。体力測定や健康状態の把握をしたうえで業務を設計するのと、年齢だけを見て役割を変えるのは別のものです。前者は評価される取り組みで、後者はハラスメントに近づきます。

自社で高年齢者向けの施策を検討するときは、この違いを最初に整理しておいてください。施策の設計次第で、同じ「配慮」が正反対の意味を持ちます。

企業が取るべき対策

  1. 方針に年齢を明記する。 「あらゆるハラスメント」という書き方だけでは、年齢に関する言動が対象だと認識されません。
  2. 役割変更のプロセスを文書化する。 役職定年、再雇用、配置転換のときに、誰がどう説明し、本人の意向をどう確認したかを記録します。過小な要求との線引きは、この記録で説明できます。
  3. 業務の割り当てを定期的に見る。 特定の年齢層に雑務が偏っていないか、逆に業務が実質ゼロになっている人がいないか。
  4. 研修の対象を年齢で切らない。 新しいツールの研修を若手だけに行うと、それ自体が切り離しになります。
  5. 年上の部下・年下の上司の組み合わせを把握する。 組織図から機械的に出せます。問題が起きやすい構造を先に知っておきます。
  6. 年齢に関する言動を研修の例に入れる。 一般的なハラスメント研修は上司から部下への言動を中心に組まれます。年齢の例を1つ入れるだけで、対象として認識されます。

記録として何を残すか

役割変更や業務調整をめぐって説明が必要になったとき、後から作れない記録があります。

  • 本人との面談の日付と、話した内容の要点
  • 会社が提示した選択肢と、本人が選んだもの
  • 変更の理由として説明したこと
  • 元に戻す条件を共有した場合はその内容

書式は自由です。重要なのは、本人と話したという事実と、その中身が残っていることです。面談記録が一行もない状態で「配慮でした」と説明しても、裏づけになりません。

判断に迷うケースの手順はハラスメントのグレーゾーンとはとハラスメントのグレーゾーン診断で確認できます。

健康課題との重なり

年齢に関する言動は、健康課題に関する言動と重なることがあります。更年期の不調を「歳のせい」で片づける、体調の変化を年齢の問題として扱って配慮も検討しない、といった形です。

この領域は、年齢の話でもあり健康の話でもあるため、どちらの窓口でも扱われずに残ることがあります。月経や更年期に関する言動は生理ハラ・更年期ハラで扱っています。

よくある失敗

配慮と取り上げを区別しないまま業務を減らす。 本人と話さずに減らすと、配慮のつもりでも過小な要求に近づきます。話した記録を残してください。

「本人のため」で説明を省く。 理由を伝えないまま役割を変えると、本人には排除として映ります。

若手側の事案を拾わない。 「若いんだから」は、年齢を理由とした業務量の押しつけです。

再雇用後の処遇を検討しないまま運用する。 業務内容と処遇の関係を説明できない状態は、紛争になったときに弱い立場になります。

年齢層ごとの相談件数を見ない。 ハラスメント相談を年齢層で分けて見ると、どの層で何が起きているかが分かります。全体の件数だけでは、特定の層に集中していても気づけません。

定年前後の面談を形式的に済ませる。 役割と処遇が大きく変わる時期は、説明の質がそのまま納得感を決めます。本人の希望を聞く場として設計されているか、決定を伝える場になっているかで、その後が変わります。

Floraの支援:年齢と健康が重なる部分を受ける

年齢に関する言動が問題になる場面では、本人が体調の変化を抱えていることが少なくありません。更年期の不調、持病の管理、体力の変化。これらを職場で説明することには抵抗があり、結果として「歳だから」という言葉だけが残ります。

FloraのWellflowは、従業員が健康について直接相談できる窓口と、管理職向けの研修を提供しています。配慮の根拠を本人が説明できる状態をつくることで、年齢だけを理由にした判断を減らせます。

まとめ

エイジハラスメントは法律上の独立した類型ではありませんが、年齢を理由とする侮辱的な言動は精神的な攻撃に、仕事を取り上げる行為は過小な要求に当たり得ます。その場合は措置義務の対象です。

高年齢者だけでなく若手にも起こります。配慮としての業務調整と、追い出すための取り上げを分けるのは、本人と話しているかどうかと、理由が業務上の必要性にあるかどうかです。役割変更のプロセスを記録しておくことが、実務上の備えになります。

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