ハラスメントの種類一覧|法律上の措置義務があるものと、ないものの違い

2026年 9月 28日

職場のハラスメントとは、立場や関係性を背景に行われる言動によって、働く人の就業環境が害されることをいいます。呼び名は数十種類ありますが、企業の実務では法律が事業主に措置を義務づけているものと、そうでないものの2つに分けて考えると整理がつきます。

前者は、やるかどうかを選べません。後者は法律上の分類ではありませんが、起きている問題は実在し、多くは前者のどれかに当てはめて対応することになります。

この記事では、種類ごとの根拠法と企業に求められる対応を一覧にし、それぞれの詳細な解説記事への入口をまとめます。自社のケースがどこに当たるか迷う場合は、ハラスメントのグレーゾーン診断で判断の手順を確認できます。

法律が事業主に措置を義務づけているハラスメント

種類根拠法措置義務
パワーハラスメント労働施策総合推進法2020年6月1日(大企業)/2022年4月1日(中小企業)
セクシュアルハラスメント男女雇用機会均等法全事業主
妊娠・出産等に関するハラスメント男女雇用機会均等法全事業主
育児休業等・介護休業等に関するハラスメント育児・介護休業法全事業主
カスタマーハラスメント労働施策総合推進法2026年10月1日から全事業主
求職者等に対するセクシュアルハラスメント男女雇用機会均等法2026年10月1日から全事業主

いずれも、方針の明確化と周知、相談体制の整備、発生後の迅速かつ適切な対応が共通して求められます。

この6つに共通するのは、行為があったかどうかとは別に、体制を整えていない状態そのものが法違反になるという点です。自社で一件も相談が起きていなくても、方針を定めて周知し、窓口を置いていなければ義務を果たしていません。実際の紛争より先に、行政指導の対象になり得るのはここです。

適用される労働者の範囲も広く取られています。正規雇用労働者だけでなく、パートタイム労働者や契約社員等の非正規雇用労働者を含む、雇用するすべての労働者が対象です。派遣労働者については、派遣先も指揮命令の下に労働させる派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、措置義務の規定が適用されます。

パワーハラスメント

優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものです。この3要素をすべて満たすものが該当し、適正な業務指示や指導は該当しません。6類型と指導との線引きはパワハラとは|3つの要素と6類型で扱っています。

セクシュアルハラスメント

性的な言動に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けるもの(対価型)と、性的な言動により就業環境が害されるもの(環境型)があります。詳しくはセクシュアルハラスメントとはをご覧ください。

妊娠・出産等、育児休業等・介護休業等に関するハラスメント

制度の利用や状態を理由とする言動が対象です。妊娠・出産等に関するものがマタニティハラスメント、男性の育児参加に関わるものがパタニティハラスメント、介護休業等に関わるものがケアハラスメントです。制度があるのに使わせない、使うと不利益に扱う、といった形で表れます。

カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメント

この2つは2026年10月1日から新たに義務になります。カスハラは顧客等の言動が社会通念上許容される範囲を超え、就業環境を害するもので、電話やSNS等インターネット上のものも含まれます。詳細はカスハラ(カスタマーハラスメント)とはに、就職活動やインターンシップの場面は求職者等へのセクハラ防止措置にまとめています。

法律上の分類ではないが、実務で使われるハラスメント

次の呼び名は、法律が独立した類型として定めているものではありません。ただし、内容によってはパワハラやセクハラ、あるいは妊娠・出産等に関するハラスメントに当てはまり、その場合は措置義務の対象になります。「法律にないから対応しなくてよい」ではなく、「どれに当てはまるかを見る」のが実務の進め方です。

そのほか、相談の場で使われる呼び名

下記は法律上の類型ではありませんが、相談や社内アンケートで実際に使われる言葉です。内容に応じて、パワハラの6類型やセクハラに当てはめて扱います。

  • モラルハラスメント(職場):人格や尊厳を傷つける言動を継続的に行うもの。精神的な攻撃に当たり得ます。
  • SOGIハラ:性的指向・性自認に関する侮辱的な言動や、本人の了解なく暴露する行為。指針は前者を精神的な攻撃の、後者を個の侵害の該当例に挙げています。
  • エイジハラスメント:年齢を理由とする侮辱的な言動や役割の固定。
  • ロジカルハラスメント:正論を過度に突きつけ、相手を追い詰める言動。継続性や態様によっては精神的な攻撃に当たり得ます。
  • 不機嫌ハラスメント:不機嫌な態度で周囲に緊張を強いるもの。
  • ちゃん付けハラスメント:役職や年齢にかかわらず「ちゃん」付けで呼ぶなど、対等な扱いを損なう呼称。

いずれも、呼び名が独り歩きしやすい領域です。社内で扱うときは、実際に何が行われたかを事実として記述し、そのうえで類型に当てはめてください。

ハラスメントの種類が増えても、当てはめ先は6つ

相談を受けたときに「これは何ハラか」を確定させようとすると止まります。実務で先に決めるのは、措置義務のあるどれに当てはまるかです。

たとえば不妊治療の事実を本人の了解なく共有された、という相談は、呼び名としては妊活ハラスメントですが、対応の根拠はパワハラの「個の侵害」になります。厚生労働省の指針は、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報を本人の了解を得ずに他の労働者に暴露することを、個の侵害の該当例として挙げています。根拠が決まれば、講じるべき措置も決まります。

呼び名は相談者が状況を説明するための言葉として役に立ちます。社内の分類としては、措置義務の6つに寄せてください。

種類にかかわらず共通してやること

ハラスメントの種類ごとに別々の規程と別々の窓口をつくる必要はありません。指針が求める措置はほぼ共通しているため、実務では次の4つを1セットで整えます。

  1. 方針の明確化と周知・啓発。何を許さないかと、行為者を厳正に対処する旨を明記し、全従業員に届ける。
  2. 相談窓口の設置と周知。窓口の担当者が適切に対応できる状態にする。種類を分けず、まず受ける窓口にします。
  3. 事後の迅速かつ適切な対応。事実関係の確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止。
  4. プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止。相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれます。

この4つは、種類が増えるたびに作り直すものではありません。2026年10月1日にカスハラと求職者等セクハラが加わったときも、追加で要るのは既存の窓口が新しい2種類も受けることの周知と、カスハラ固有の措置(特に悪質なケースへの対処方針と、それを行える体制)です。土台は共通しています。

判断に迷うケースの手順はハラスメントのグレーゾーンとはで、研修の進め方はeラーニングのハラスメント研修で扱っています。

Floraの支援:健康課題に関わる相談を、別の入口で受ける

ハラスメント窓口に寄せられる相談のうち、不妊治療、月経、更年期といった健康課題に関わるものは、本人が名前を出しづらい領域です。人事のラインに乗った時点で社内に知られる、と感じられると、相談そのものが起きません。

FloraのWellflowは、こうした健康課題について従業員が直接相談できる窓口と、管理職向けの研修を提供しています。ハラスメント窓口の手前に、健康課題として相談できる場所を置くことで、本人が共有の範囲を決められる状態をつくれます。

まとめ

職場のハラスメントは、法律が事業主に措置を義務づけている6つと、名称はあるが法律上の分類ではないものに分かれます。2026年10月1日からはカスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントが加わり、義務の対象が広がります。

呼び名の数に対応する必要はありません。相談を受けたら、措置義務のあるどれに当てはまるかを決め、共通の4つの措置で処理する。これが最も現実的な進め方です。

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