東京都女性活躍推進条例と生理痛体験研修|事業者に求められる女性特有の健康課題への配慮

2026年 9月 10日

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2026年7月1日、「東京都雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例」が施行されました。都内の事業者は、規模や業種を問わず、女性特有の健康課題への配慮を含む取組が努力義務になっています。報道では「男性管理職への生理痛体験会」が話題になりましたが、条例と指針が実際に求めているのは何でしょうか。都が公表した指針と取組事例集を読み込み、事業者が今期やるべきことと、体験型の研修を取り入れる場合の設計の要点を整理しました。

東京都女性活躍推進条例の概要

項目内容
名称東京都雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例
成立・施行2025年12月17日 都議会で可決・成立(令和7年第4回定例会)/2026年7月1日 施行
対象都内の事業者(業種・規模を問わず)、経済団体、都民、都自身
性格事業者の責務は努力義務。罰則なし
指針・取組事例集2026年6月1日公表。指針は採用から登用までの段階別に課題分析の視点と対応のポイントを示す。事例集は都内事業者41事例
相談窓口女性活躍推進相談窓口 0120-502066(平日9:30〜17:00)。特設サイトのフォームは24時間受付

条例は都道府県として初めて、雇用・就業分野に絞って女性活躍を扱ったものです。事業者に求める取組は大きく4つあり、特定の性別に偏らない組織づくり、就業者に係る男女間の格差の解消、女性特有の健康課題への配慮、女性の尊厳を傷つける行為の禁止と就業者に対する措置、と整理されています。この記事は3つ目の健康課題を扱います。

指針が事業者に求めていること

指針は、令和5年度に都が実施した調査で、生理のつらい症状や更年期症状など女性特有の健康課題によって「キャリアアップや仕事を引き受けることなどを諦めた経験がある」と答えた人が3割を超えていたことを出発点にしています。労働環境や職場の健康支援が男性中心だった時代のままでは女性のキャリア継続の障壁になりうる、というのが都の問題意識です。

そのうえで、健康課題として5つのテーマを挙げています。生理・PMS、不妊治療、卵子凍結、更年期障害、女性特有のがん(乳がん・子宮頸がん等)です。あわせて参考として男性の更年期障害と前立腺の疾患にも触れ、女性と併せて配慮することが必要だとしています。

事業者の取組として指針が示す対応のポイントは、次の4点です。

  • 従業員等に対する研修や普及啓発を行う
  • 女性の健康上の特性に配慮した休暇制度の導入や、制度を利用しやすい仕組み(休暇名称の配慮等)を検討する
  • 従業員等が健康上の課題を相談できる体制を整備する
  • 取組を進めるにあたっては、本人の健康に関するプライバシーに十分配慮する

生理・PMSについては、労働基準法第68条の生理休暇が誰でも請求できる権利であるにもかかわらず、「利用している人が少ない・いない」「上司や周りに言いづらい」「雰囲気として取りづらい」という理由で取得が少ないという調査結果を引いています。取得しやすい環境をつくるには規則の見直しだけでなく、申し出方法の工夫と、生理や女性のホルモンバランスについて就業者全員が理解を深めるための社内の啓発や教育活動が大切だ、というのが指針の立場です。生理休暇の運用そのものは「生理休暇の取得率を上げるには?企業の制度設計のポイント」で扱っています。

東京都女性活躍推進条例にも指針にも「生理痛体験会」は書かれていない

2025年12月の都議会で、都は指針に示す取組例として「男性管理職への生理痛体験会」を挙げ、これが大きく報道されました。ただ、成立した条例の条文にその言葉はありません。2026年6月に公表された指針にもありません。指針にあるのは、上に引用したとおり「従業員等に対する研修や普及啓発」という表現です。

取組事例集の「女性特有の健康課題等への対応」の章には、都内事業者の事例が10件収められています。生理に関する2事例は、社内有志のワーキンググループと女性従業員アンケートから会議時間の見直しやスタンディングデスク導入、女性の健康課題を学ぶセミナー開催に至った建設業の例と、男性用トイレへのPMS理解促進ポスター掲示と婦人科検診の補助制度を進めた医療業の例です。広告業の例では、研修をきっかけに立場や性別を問わず健康課題について意見交換が行われるようになり、休暇制度の見直しにつながったとあります。

都が求めているのは「体験会」という特定の手法ではなく、職場の健康リテラシーを上げる取組です。体験型の研修はその方法の一つであり、選ぶかどうかは各社の判断に委ねられています。

体験型の生理痛体験研修を選ぶなら、任意参加と設計がすべて

都議会での言及後、参加を強制すれば法的な問題になりうると指摘する弁護士のコメントや、手法そのものへの疑問が報じられました。指摘は妥当です。指針自身がプライバシーへの配慮を求めており、体調や身体に関わる体験を業務命令で受けさせる設計は、条例の趣旨とも合いません。

一方で、任意参加で、講義と対話をセットにして丁寧に運営した場合の反応は、報道の印象とは異なります。Floraが2025年8月から2026年1月に実施した生理痛体験研修のうち、製造業・電機メーカー・商社系の4社で回収した参加者アンケート(計201名、管理職を中心とする参加者、Flora社調べ)では、研修全体の満足度が98.5%、疑似体験を「体験してよかった」が98.5%、「今後の行動を変えようと思った」が98.0%でした。普段を10としたときの生理痛がある状態でのパフォーマンスは、体感で平均約4です。

設計の要点は5つです。

  1. 参加は任意にし、事前に内容と目的を説明する。 管理職向けでも「業務の一環」と「強制」は別で、日程を押さえたうえで本人が選べる形にします。
  2. 体験だけで終わらせない。 専門家の講義と対話ワークを前後に置き、体験は理解の入口として扱います。
  3. 女性の健康だけを扱わない。 指針も男性の更年期障害に触れています。男性自身の健康課題を同じ枠組みで扱うと、自分の話として聞けます。
  4. 事前・事後で同じ設問のアンケートを取り、3か月後に行動の変化を確認する。 受講率だけでは効果は測れません。
  5. 実施日、対象層、人数、テーマ、事後の変化を記録する。 都の調査への回答と健康経営度調査Q48の根拠に、同じ様式で使えるようにしておきます。

研修形式の比較や効果測定の組み立ては「更年期研修を全社員向けに実施する意義と進め方」、管理職の対応は「更年期世代への対応マニュアル|管理職が知っておくべきこと」、当事者側の伝え方は「PMSを上司・同僚にどう伝える?」が参考になります。

都は「健康課題への対応の状況」を指標として追う

指針の第4章は、都域全体の政策目標と、その進捗を把握する指標を定めています。政策目標「誰もが働きやすい職場づくりに関する制度の導入や利用率の向上」の指標には、男女別の育児休業取得率、多様な働き方に関する制度の利用状況などと並んで「健康課題への対応の状況」が含まれています。都はこの進捗を国や都の既存調査を活用して把握し、ホームページで公表するとしています。

政策目標は都全体の目標であって個々の事業者に課すものではなく、事業者名が公表されることもありません。ただ、事業者には調査への協力が求められます。今期に実施した研修や制度の記録を残しておくことが、そのまま回答の準備になります。

都内の事業者が今期できる4つのこと

  1. 現状を把握する。 生理休暇や関連する休暇の取得実績、健康課題に関する従業員アンケートの有無、相談先の有無を確認します。数字がなければ、匿名の簡単なサーベイから始めます。
  2. 研修・啓発を実施する。 全社員向けの基礎知識と、管理職向けの対応を分けて設計します。体験型を入れるなら前項の5つの要点を守ります。
  3. 休暇制度を見直す。 生理休暇の名称、申し出方法、時間単位の取得、有給か無給かを確認します。制度の基礎は「生理休暇とは?」を参照してください。
  4. 相談できる体制をつくり、記録を残す。 担当者を決め、上司を通さずに相談できる経路を用意し、実施した取組は日付・対象・人数・テーマで記録します。

Floraの生理痛体験研修・ワークショップ

Flora株式会社の「生理痛体験研修・ワークショップ」は、専用デバイスによる疑似体験を、専門家の講義と対話ワークで挟む構成の研修です。参加は任意を前提に設計し、男性の更年期など男性自身の健康課題も同じ枠組みで扱います。事前・事後のアンケートを同じ設問で実施し、効果レポートを健康経営度調査や都の調査への回答に使える形でお渡しします。導入の一例は「東急電鉄が取り組むDEI施策とは?」をご覧ください。生理痛体験研修とWellflowをあわせて、これまでに150社以上に導入されています。

まとめ

東京都女性活躍推進条例は、都内の事業者に女性特有の健康課題への配慮を努力義務として求めています。指針が挙げる対応は、研修・普及啓発、休暇制度、相談体制、プライバシーへの配慮の4点で、生理痛体験会という手法は条例にも指針にもありません。体験型の研修を選ぶなら、任意参加、講義と対話とのセット、男性の健康課題の併記、事前・事後の測定、記録の5つを守ってください。都は健康課題への対応の状況を指標として追うため、今期の取組の記録がそのまま調査への備えになります。

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出典:東京都産業労働局「東京都雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例」、東京都「条例に係る指針」「取組事例集」(2026年6月1日公表)、Flora株式会社 生理痛体験研修 参加者アンケート(2025年8月〜2026年1月、4社・201名)。条例・指針に関する記述は2026年9月時点の公表資料にもとづきます。

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