PHRデータの活用と健康経営度調査|令和7年度新設設問の結果と、令和8年度の改変ポイント

2026年 9月 10日

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PHR(Personal Health Record、パーソナルヘルスレコード)は、健康診断の結果をはじめ、体重・血圧・血糖値や日々の活動量・睡眠などの個人の保健医療情報を、本人が管理し活用できる形で記録したものです。健康経営度調査では令和7年度にPHRデータの活用に関する設問が新設され、大規模法人の約6割がすでに取組を実施していることが分かりました。令和8年度は設問が改変され、中小規模法人部門にも導入状況を問う項目が加わる見込みです。この記事では、新設設問の結果と改変のポイント、健診結果とライフログをどう組み合わせるか、そして女性の健康に関するデータを扱うときの注意点を解説します。

PHRデータの活用が健康経営度調査に入った背景

経済産業省は、個人の健康データの利活用とその環境整備を、デジタルヘルスサービス推進の柱にしています。政府の官民投資ロードマップでも「データやAIを活用したサービスの高度化と医療等との連携促進」が講じるべき政策として挙げられています。健康経営度調査にPHRの設問が入ったのは、企業がその入口になると考えられているからです。

企業の側では、健診結果はすでに手元にあります。それを従業員本人が見られる形にし、日々の記録と組み合わせて行動につなげることが、PHR活用の実務です。令和7年度からは、健診情報などを従業員が電子記録で閲覧できる環境の整備が、ヘルスリテラシー向上の取組としても評価されるようになりました。健康診断そのものの義務と運用は「会社の健康診断とは|義務・対象者・費用負担を人事担当者向けに解説」にまとめています。

PHRと一口に言っても、企業が関わるデータは性質の違う3種類に分かれます。どれを、誰が、どこまで扱うかを分けて考えると、設計が整理できます。

種類誰が持つか企業の関わり方
健診・検診の結果定期健康診断、特定健診、婦人科検診、ストレスチェック企業・健保が保有し、本人に通知本人が電子で閲覧できる環境をつくる。集計値で組織の傾向を見る
ライフログ歩数、睡眠、体重、食事、月経周期、症状の記録本人(アプリ・デバイス)記録の入口を提供する。個人の記録は見ない
医療・服薬の情報受診歴、処方、オンライン診療の記録本人・医療機関受診や相談への導線を置く。企業は原則関与しない

健康経営度調査の設問で問われているのは、主に1つ目と2つ目です。健診結果を本人が使える形にすること、ライフログを記録する仕組みを提供すること、そしてその2つを同じ場所で見られるようにすること。3つ目は企業が扱う領域というより、本人が必要なときに使える導線として用意しておくものです。企業がどこまで関わるかを最初に決めておくと、以降の設計で迷いません。

令和7年度の新設設問で分かったこと

令和7年度の健康経営度調査(大規模法人部門)の集計では、PHRデータの利用促進のための取組を実施している企業は約6割でした。提供しているデータの内訳は次のとおりです。

提供しているデータ企業の割合
健診結果とライフログを同じサービスで提供42%
健診結果とライフログを別のサービスで提供10%
健診結果のみ12%
ライフログのみ8%
提供していない28%

(出典:経済産業省 第6回健康経営推進検討会 資料、2026年7月14日)

読み取れるのは2つです。1つは、PHRの活用がすでに多数派になっていること。もう1つは、健診結果とライフログを同じサービスで見られる企業が4割強にとどまり、別サービスや片方だけの企業を合わせると3割あることです。健診結果は年1回の点、ライフログは日々の線です。同じ場所で見られて初めて、健診で指摘された数値と日々の行動の関係が本人に見えます。

令和8年度の改変ポイント

2026年7月の健康経営推進検討会では、令和8年度の調査で2つの変更案が示されました。

  1. 大規模法人部門の設問を改変する。 PHRデータの活用実態をさらに適切に把握するための設問に変えます。令和7年度は取組の有無と提供データの種類が中心でしたが、活用の実態(従業員がどれだけ使っているか、何に使っているか)に踏み込む方向です。
  2. 中小規模法人部門の認定申請書に、PHRデータの導入状況を問うアンケート項目を新設する。 認定の要件ではなくアンケートとしての新設ですが、中小企業でも組織全体の健康状態を客観的に把握し、取組の段階に応じた対策につなげることが課題とされています。

健康経営度調査全体の流れの中でのPHRの位置づけは、「現状把握」と「取組」の両方に関わります。健診受診率の向上(「健診受診率とは|現状データから向上施策まで」)と、健診結果を本人に返して行動を変える取組は、同じPHRの仕組みの上で動きます。認定要件との関係は「健康経営優良法人2027|認定基準と申請の全工程」を参照してください。

健診結果とライフログを組み合わせる4つの実務

  1. 健診結果を本人が閲覧できる環境をつくる。 紙の結果通知だけの企業は、まず電子で見られる形にします。これだけでヘルスリテラシー向上の取組として評価対象になります。
  2. ライフログの入口を1つに絞る。 歩数、睡眠、体重、症状の記録を別々のアプリに分けると続きません。健診結果と同じサービスで記録できる形にします。
  3. 企業が見るのは集計値だけにする。 個人のPHRは本人のものです。企業は年代・性別・部署などの集計値で組織の健康状態を把握し、個人のデータには触れない設計にします。この線引きを従業員に明示しないと、記録そのものが避けられます。
  4. サーベイの指標と結びつける。 PHRのデータは行動の記録で、パフォーマンスや体調の自己評価はサーベイで測ります。両方を同じ属性で集計すると、どの層でどの行動がパフォーマンスに関係しているかが見えます。プレゼンティーズムの測り方は「プレゼンティーズムの測定方法」を参照してください。

女性の健康に関するデータを扱うときの注意

PHRには、月経周期、症状、妊娠・不妊治療、更年期の症状など、女性の健康に関する記録が含まれることがあります。こうしたデータは本人にとって最も価値がある一方、企業側の扱いを誤ると記録が止まります。

原則は3つです。個人の記録は企業が見られない設計にすること。集計値でも、人数の少ない単位で女性の健康に関する項目を出さないこと。そして、記録した本人が受診や相談につながる導線をアプリの中に置くことです。婦人科検診の受診率が低い理由の1つは、自分の症状を記録し受診の目安を知る機会がないことにあります(「女性のがん検診受診率はなぜ低いのか」)。PHRは、その機会をつくる仕組みとして設計できます。フェムテック製品・サービスの導入と同じ考え方で、詳細は「フェムテックとは?企業が導入する意味とメリット」にまとめています。

導入の手順:中小規模法人が来年度に答えるために

令和8年度から中小規模法人部門の申請書にもPHRの導入状況を問う項目が入る見込みです。大規模法人の実施率が6割ある一方、中小企業は取組の段階に応じた支援ができていないことが課題とされています。ゼロから始める場合の手順です。

  1. 健診結果の電子閲覧から始める。 健診機関や健保組合が提供する閲覧サービスを従業員に案内するだけでも、取組の第一歩になります。
  2. ライフログの入口を1つ決める。 全員に配るデバイスは要りません。スマートフォンのアプリで、健診結果と同じ場所に記録できるものを選びます。
  3. 企業が見る範囲を先に決めて周知する。 集計値のみ、最小人数以上、女性の健康に関する項目は別ルール。この3点を導入時に文書で示します。
  4. 利用率を測る。 閲覧した人の割合、記録を続けている人の割合を四半期ごとに見ます。令和8年度の設問は活用の実態に踏み込む方向で、利用率がそのまま答えになります。

Floraの支援:Wellflow

Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員向けのヘルスケアアプリと管理職・全社員向けの研修、導入前後を同じ指標で測る効果検証サーベイを組み合わせた健康経営支援サービスです。アプリでは月経・PMS・更年期などの症状やコンディションを本人が記録し、セルフケアと受診・相談への導線を提供します。企業には個人の記録ではなく、年代・性別ごとの集計値とサーベイの指標をお渡しし、健康経営度調査のPHRの設問と女性の健康の設問の両方に使える形にします。生理痛体験研修とあわせて、これまでに150社以上に導入されています。

まとめ

PHRデータの活用は、令和7年度の健康経営度調査で設問が新設され、大規模法人の約6割が取組を実施していました。健診結果とライフログを同じサービスで提供している企業は42%です。令和8年度は設問が改変され、中小規模法人にも導入状況を問う項目が加わる見込みです。

実務は、健診結果の電子閲覧、ライフログの入口の一本化、企業は集計値だけを見る線引き、サーベイの指標との結びつけの4つです。女性の健康に関するデータは、個人の記録を企業が見ない設計と、受診・相談への導線を組み込むことで、記録が続き、行動につながります。

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