36協定とは?残業時間の上限と特別条項|罰則と実務の進め方を解説

2026年 9月 11日

https://reliable-friends-900b141288.media.strapiapp.com/36_kyotei_zangyo_jougen_hero_e0a070c867.png

繁忙期に向けて特別条項を結ぼうとして、年間何時間まで延ばせるのかを調べ直す。人事の実務では毎年のように起きる場面です。36協定の上限は2019年の改正で罰則付きの法律になり、届出の書式も運用も変わりました。この記事では、届出が必要になる場面、月45時間・年360時間という原則、特別条項でも超えられない4つの数字、違反したときの罰則を順に整理します。あわせて、上限を守っている企業でも人が辞めていく理由を、Floraが人事データで見た結果から取り上げます。

36協定とは:残業をさせるために届け出るもの

労働基準法は1日8時間・週40時間を労働時間の原則としています。これを超えて働かせる、あるいは法定休日に働かせるには、労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する人と書面で協定を結び、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。労働基準法第36条にもとづくため、実務では36協定と呼ばれます。

過半数代表者は、その事業場のすべての労働者の過半数を代表している必要があります。管理監督者は代表者になれず、選出も投票や挙手など、選ぶ手続きが分かる方法で行います。会社が指名した人を形だけ立てた協定は無効になり得るという点は、毎年の更新で見落とされやすいところです。

協定は事業場ごとに結びます。本社で一括して締結していても、支社や工場に届出が届いていなければ、その事業場では残業をさせられません。一定の要件を満たせば本社で一括して届け出ることもでき、電子申請にも対応しています。

届出には様式第9号を使います。特別条項を設ける場合は様式第9号の2で、限度時間を超えて働かせる具体的な事由、超えられる回数、健康福祉確保措置などを書き込みます。書式が分かれている点は、更新の時期にまとめて確認しておくと迷いません。

36協定の残業時間の上限は月45時間・年360時間

2019年4月1日施行の改正労働基準法により、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間になりました。中小企業への適用は1年猶予され、2020年4月1日からです。ここでいう時間外労働に休日労働は含みません。

改正前にも同じ水準の上限はありましたが、大臣告示にとどまり罰則がなく、特別条項を設ければ実質的に上限なく延長できました。改正で法律に格上げされ、罰則が付いたことが大きな違いです。

上限は事業場単位ではなく労働者一人ひとりについて判断します。部署の平均が45時間に収まっていても、特定の担当者だけが超えていれば違反です。属人的に業務が積み上がっている職場ほど、平均値の管理では危険を見落とします。

なお、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は50%以上です。大企業には以前から適用されており、中小企業への猶予も2023年4月1日に終わりました。上限の管理と割増率の管理は別の話として整理しておく必要があります。

特別条項を結んでも超えられない4つの数字

臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合には、特別条項付きの36協定で原則を超えることができます。ただし、次の4つは超えられません。

項目上限
時間外労働年720時間以内
時間外労働+休日労働月100時間未満
時間外労働+休日労働2〜6か月のどの平均も月80時間以内
月45時間を超えられる月数年6か月まで

2〜6か月平均は、2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均のすべてが80時間以内である必要があります。ある1か月だけを見て判断すると足をすくわれます。年度をまたぐ月も対象になるため、4月に集計をリセットする運用にしていると見落とします。

特別条項が使えるのは、臨時的な特別の事情があるときに限られます。予算や決算の業務が集中する時期、大規模なクレームへの対応、機械のトラブルへの対応などが例として挙げられており、「業務の都合上必要なとき」のように恒常的な残業を想定した書き方は認められません。あわせて、限度時間を超える労働者への健康福祉確保措置を協定に定め、実際に実施する必要があります。

月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の2つは、休日労働を含めて計算します。時間外労働が44時間で原則の範囲に収まっていても、休日労働が56時間あれば合計100時間となり、法律違反です。特別条項を結んでいない事業場でも起こり得るため、時間外と休日を別々に管理している場合は集計方法を見直してください。

違反したときの罰則

上限に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあります。36協定を届け出ずに残業させた場合も同じ条文の対象です。

労働基準監督署の是正勧告にとどまるうちに手を打てればよいのですが、実務上の負担はそこではありません。上限を超えた月が見つかると、なぜ超えたのか、誰の指示だったのか、勤怠の記録と実態が合っているのかを遡って確認することになります。集計を月末にまとめて行っている企業ほど、この確認に時間がかかります。

現実的な備えは、月の途中で気づける仕組みを持つことです。45時間の8割にあたる36時間を超えた時点で本人と上長に通知する、2〜6か月平均が75時間を超えた部署を月次で洗い出す、といった手前の線を引いておくと、超えてから理由を探す作業がなくなります。

猶予されていた事業・業務は2024年4月に終わった

改正時に5年間の猶予が設けられた事業・業務があり、その猶予は2024年3月末で終わりました。2024年4月以降の扱いは業種で異なります。

事業・業務2024年4月以降
建設事業災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用
自動車運転の業務時間外労働の上限が年960時間
医師休日労働を含む上限が最大で年1,860時間

自社が対象でなくても、対象業種の取引先を抱えていれば納期や配送の前提が変わります。発注側の慣行が変わらないまま現場だけが上限を守ろうとすると、無理が下請けに移るだけになります。

上限を守っていても、人は辞める

ここまでが法律の話です。ただ、上限を守ることと、人が働き続けたいと思うことは別の問題です。

Floraが一社の人事データを数年分たどった集計では、月あたりの平均残業時間で5つの帯に分けたとき、残業が月5時間未満の層と60時間以上の層で継続意欲は80.2から65.2へと15ポイント下がりました。同じ比較でウェルビーイングの指標は63.1から58.3へ、5ポイントしか動いていません。

月あたり残業ウェルビーイング継続意欲人事評価
5時間未満63.180.22.22
5〜15時間58.871.22.14
15〜30時間59.569.22.15
30〜60時間58.366.82.19
60時間以上58.365.22.21

観測数は各帯およそ890件から4,750件で、在籍者数×年の延べ件数です。ウェルビーイングは5時間未満から5〜15時間のあいだで4.3ポイント下がり、そこから先はほぼ横ばいになります。継続意欲だけが最後の帯まで下がり続けます。

従業員サーベイでウェルビーイングを見ている限り、残業の多い部署も「やや低い」程度にしか見えません。判断を変えるほどの幅ではないため、対策の優先順位が上がらないまま時間が過ぎます。

自発的に辞めた人と残った人の人事評価の差は−0.16で、ほとんど同じでした。辞めていくのは評価の低い人ではありません。なお、この集計は各時点の状態を並べたもので、残業が継続意欲を下げたという因果を示すものではない点は補足しておきます。継続意欲の低い人が残業の多い部署に残りやすい、という向きでも同じ数字は説明できます。

見るべき指標を取り違えると、サーベイが「大丈夫」と答えているあいだに人が抜けます。サーベイ設計そのものの落とし穴は「エンゲージメントサーベイとは?企業成長を加速させる組織改善ツールを解説」に、表に出ないまま進む離職の兆しは「「大丈夫です」の裏にある離職リスク——静かな離職を防ぐ組織づくり」にまとめています。

出勤していても本来のパフォーマンスが出ていない状態を金額に換算する方法は「プレゼンティーズムの測定方法:損失額の計算や分析方法から対策まで」で、健康を理由とした離職を費用として見積もる方法は「更年期による離職・昇進辞退の企業コスト|46万人推計の中身と自社での試算方法」で扱っています。

Floraの支援:残業と定着を同じ画面で見る

Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員が日常的に使うヘルスケアアプリと管理職・全社員向けの研修に、導入前後を同じ指標で測る効果検証サーベイを組み合わせた健康経営支援サービスです。勤怠の数字と従業員サーベイを突き合わせ、どの部署でどの指標が先に動いているかを可視化するところから支援します。生理痛体験研修とあわせて、これまでに150社以上に導入されています。

まとめ

36協定の実務は、原則の月45時間・年360時間、特別条項の4つの数字、そして休日労働を合算して判断する2つの上限を押さえれば大きく外しません。そのうえで、上限を守れているかどうかとは別に、残業の多い部署で継続意欲が先に下がっていないかを見てください。ウェルビーイングの指標は、その動きを映しません。

まずは勤怠データを残業時間の帯で分け、帯ごとに継続意欲を並べるところから始められます。既存のサーベイに継続意欲を尋ねる項目が入っていれば、新しい調査を足さずに同じ表がつくれます。自社での進め方は無料相談でご案内しています。

よくある質問