勤務間インターバル制度とは?導入率5.7%の現状と休息時間の決め方
2026年 9月 11日

深夜まで対応した翌朝に定時出社を求めていないか。勤務間インターバル制度は、その一点だけを決める仕組みです。2019年4月から努力義務になっていますが、導入した企業は20社に1社ほどにとどまり、しかも前年より減りました。この記事では、制度の中身と導入率の実態、入れない理由として最も多い誤解、休息時間を9時間とするか11時間とするかの分かれ目、そして助成金の区分までを整理します。
勤務間インターバル制度とは
勤務が終わってから次の勤務が始まるまでに、一定時間以上の休息を必ず空ける制度です。労働時間等設定改善法にもとづき、2019年4月から事業主の努力義務になりました。義務ではないため罰則はありません。
残業時間の上限規制が「働かせすぎない」ための枠であるのに対し、勤務間インターバルは「休ませる」ための枠です。上限規制は月や年で合計を見ますが、インターバルは1日単位で効きます。月45時間に収まっていても、特定の週に深夜勤務が連続すれば身体は回復しません。合計では見えない負荷を止められる点が、この制度の役割です。上限規制そのものの実務は「残業時間の上限規制|2〜6か月平均の数え方と超える前に気づく管理」に、36協定の届出は「36協定とは?残業時間の上限と特別条項|罰則と実務の進め方を解説」にまとめています。
導入率は5.7%、しかも前年から下がっている
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度を導入している企業は5.7%でした。令和5年調査の6.0%から下がっています。導入を予定または検討している企業は15.6%で、こちらは11.8%から増えました。
| 企業規模 | 導入している | 1企業平均勤務間隔 | 予定・検討中 | 予定なし |
|---|---|---|---|---|
| 全企業 | 5.7% | 10時間40分 | 15.6% | 78.5% |
| 1,000人以上 | 16.1% | 10時間01分 | 21.1% | 62.6% |
| 300〜999人 | 7.4% | 10時間08分 | 19.3% | 73.0% |
| 100〜299人 | 7.0% | 11時間05分 | 19.5% | 73.2% |
| 30〜99人 | 4.8% | 10時間37分 | 13.8% | 81.3% |
1,000人以上の企業でも16.1%です。努力義務になって6年が経ってなお、8割近い企業が導入予定も検討もしていません。
入れない理由の1位は「必要性を感じない」
導入予定がなく検討もしていない企業に理由を聞くと、最も多いのは「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」で57.6%でした。令和5年調査の51.9%から増えています。
残業が少ないなら制度は要らない、という判断は一見すると筋が通っています。ただ、インターバル制度が効くのは平常時ではありません。障害対応やトラブル対応で深夜まで及んだ日の翌朝です。年に数回しか起きないからこそ、そのときの扱いを事前に決めておく意味があります。平常月の平均残業時間を根拠に必要性を判断すると、この年数回を取りこぼします。
「当該制度を知らなかったため」と答えた企業も、全企業に対する割合で14.7%ありました。令和5年調査の19.2%からは下がっています。周知は進んでいるものの、知ったうえで導入に至らない企業のほうが多い、という状態です。規模別に見ると、1,000人以上では「夜間も含め、常時顧客や取引相手の対応が必要なため」が20.7%と、中小企業より高い割合で挙がっています。顧客対応の体制そのものを見直さないと制度を入れられない、という事情がうかがえます。
休息時間を9時間にするか、11時間にするか
法律は具体的な時間数を定めていません。実務では9時間と11時間が目安として使われます。厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)が、9時間以上11時間未満と11時間以上で助成上限額を分けているためです。EU労働時間指令が11時間としていることも、11時間という数字がよく挙がる背景にあります。
調査では、実際に定められている勤務間隔の1企業平均は10時間40分でした。9時間と11時間の間に落ち着いている企業が多いことになります。
決め方の順序としては、通勤時間を差し引いて考えるのが現実的です。休息9時間は、往復2時間の通勤なら自宅にいられるのは7時間です。睡眠時間として確保したい時間から逆算すると、9時間では足りない職場が出てきます。一方で11時間に設定すると、22時退勤の翌日は9時始業になり、朝の会議や店舗の開店に影響します。始業を後ろにずらすのか、その日の労働時間を短縮扱いにするのかを、制度と一緒に決めておく必要があります。
制度として決めておく5つの項目
決めることは多くありません。休息時間数、対象者の範囲、始業が繰り下がったときの賃金の扱い、例外を認める場面、そして記録の取り方の5つです。
対象者の範囲は、全社員から始めるか、深夜勤務が発生する部署に限って始めるかで分かれます。助成金の区分が労働者の1/2超と1/4超1/2以下で分かれているのは、段階的な導入を想定しているためです。まず対象を絞って運用し、翌年に広げる進め方は現実的です。
記録の取り方は、勤怠システムで終業から次の始業までの間隔を自動計算できるかどうかで手間が変わります。手計算では続きません。既存のシステムに機能がない場合、助成対象の労務管理用ソフトウェアの導入も選択肢になります。
賃金の扱いは特に曖昧にしないでください。翌日の始業を9時から11時に繰り下げたとき、繰り下げた2時間を働いたものとみなして通常どおり支払うのか、その日の終業も後ろにずらすのかで、社員の受け取り方は変わります。前者を選ぶ企業が多いのは、後者だと結局その日も遅くなり、休息を確保した意味が薄れるためです。
例外は、災害への対応や重大なシステム障害など、場面を限定して書きます。「業務上やむを得ない場合」とだけ書くと、繁忙期は毎日が例外になります。
シフト勤務や交替制の職場では、勤務表を作る段階でインターバルを満たしているかを確認する仕組みが要ります。事後に気づいても勤務表は動かせません。
助成金の区分
働き方改革推進支援助成金の勤務間インターバル導入コースは、休息時間数と適用範囲で助成上限額が変わります。令和8年度の区分は次のとおりです。
| 適用範囲 | 休息時間数 | 補助率 | 1企業あたり上限額 |
|---|---|---|---|
| 労働者の1/2超に適用 | 9時間以上11時間未満 | 3/4 | 100万円 |
| 労働者の1/2超に適用 | 11時間以上 | 3/4 | 150万円 |
| 労働者の1/4超1/2以下に適用 | 9時間以上11時間未満 | 3/4 | 50万円 |
| 労働者の1/4超1/2以下に適用 | 11時間以上 | 3/4 | 75万円 |
対象となる取組には、労務管理担当者や労働者への研修、外部専門家によるコンサルティング、労務管理用機器やソフトウェアの導入などが含まれます。予算の制約があるため、受付が予告なく締め切られることがある点は例年どおりです。申請を検討するなら、年度の早い時期に動くほうが確実です。
制度を入れる前に、負荷がどこにあるかを見る
インターバル制度は、深夜まで働いた事実そのものは減らしません。翌朝の始業を遅らせるだけです。運用してみると、同じ人が繰り返し対象になる職場と、ほとんど発動しない職場に分かれます。前者は制度で緩和すべき対象というより、業務量の配分を見直すべき対象です。
Floraが一社の人事データを数年分たどった集計では、月あたりの平均残業時間で層を分けたとき、残業が月5時間未満の層と60時間以上の層で継続意欲は80.2から65.2へと15ポイント下がりました。同じ比較でウェルビーイングの指標は63.1から58.3へ5ポイントしか動かず、最初のひと山で下げ止まります。従業員サーベイでウェルビーイングを見ているだけでは、負荷の集中している部署が「やや低い」程度にしか見えません。なお、この集計は各時点の状態を並べたもので、因果を示すものではありません。
発動回数が多い人と部署を数えることは、負荷の集中を見つける手がかりになります。制度の運用ログをそのまま組織の課題として読む、という使い方です。四半期に一度、発動回数の多い順に部署を並べるだけで、どこに人を足すべきかの議論が具体的になります。
導入をためらう理由として挙がりやすいのが、翌朝の始業を遅らせると業務が回らないという懸念です。ただ、実際に運用してみると発動する日は想定より少ない企業がほとんどです。深夜まで及ぶ日が本当に多いのであれば、それはインターバル制度の可否ではなく、要員計画の問題として扱うべき状態にあります。試験的に一部署で3か月運用し、発動回数を数えてから全社に広げる進め方であれば、影響の大きさを先に把握できます。表に出ないまま進む離職の兆しは「「大丈夫です」の裏にある離職リスク——静かな離職を防ぐ組織づくり」で、出勤していてもパフォーマンスが出ていない状態の測り方は「プレゼンティーズムの測定方法:損失額の計算や分析方法から対策まで」で扱っています。
まとめ
勤務間インターバル制度は、導入率5.7%という数字が示すとおり、まだ例外的な取組です。入れない理由の第1位が「必要性を感じない」であることを踏まえると、平常月の残業時間よりも、年に数回起きる深夜対応の翌朝をどう扱うかで判断するほうが実態に合います。
休息時間は9時間か11時間から選び、通勤時間を差し引いて睡眠が確保できるかで決める。始業をずらすのか労働時間を短縮扱いにするのかを就業規則に書く。そのうえで、発動が特定の人に偏っていないかを見る。この順序で進められます。自社での設計は無料相談でご案内しています。
よくある質問
勤務間インターバル制度は義務ですか。
休息時間を確保できないときはどうしますか。
何時間に設定するのが一般的ですか。





