仕事と介護の両立支援|健康経営度調査の認定項目と2025年育介法改正で企業に求められること
2026年 9月 10日

働きながら家族の介護をしている人は365万人(総務省 令和4年就業構造基本調査)。介護を理由に離職した人は1年間で10.6万人にのぼります。仕事と介護の両立支援は、健康経営度調査では大規模法人・中小規模法人の両方で認定項目になり、2025年4月施行の改正育児・介護休業法では、雇用環境の整備と40歳到達時の情報提供が企業の義務になりました。この記事では、制度が企業に求めていること、他社がどこまで実施しているか、そして実態把握から始める企業の手順を解説します。介護そのものの基礎は「家族介護とは|現状と課題から仕事との両立と企業支援策まで解説」にまとめています。
仕事と介護の両立支援を企業に求める3つの制度と、健康経営度調査での位置づけ
| 制度 | 求めている内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 改正育児・介護休業法(2025年4月1日施行) | 介護に直面した従業員への個別の周知と意向確認、40歳到達時の早期情報提供、雇用環境の整備(研修・相談窓口・事例の収集提供・方針の周知から1つ以上)、介護のためのテレワークの努力義務、介護休暇の勤続6か月要件の撤廃 | 義務(テレワークは努力義務) |
| 健康経営度調査(経済産業省) | 経営層のメッセージ、担当役員・担当者の体制、従業員の介護状況の把握、プッシュ型の情報提供、研修、相談窓口の周知など | 大規模・中小の両部門で認定項目。令和8年度も継続 |
| 仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン(経済産業省、2024年3月) | Step1 経営層のコミットメント、Step2 実態の把握と対応、Step3 情報発信 | 健康経営度調査の選択肢はこのガイドラインの「企業が取り組むべき介護両立支援のアクション」を参照して整理された |
経済産業省のガイドラインは、2030年には働きながら介護をする人が約318万人になり、経済損失は約9兆円と試算しています。経済財政運営と改革の基本方針2026の原案でも、人材総活躍の観点から重要施策とされ、令和8年度の健康経営度調査でも設問が継続されることが2026年7月の健康経営推進検討会で示されました。健康経営度調査の認定項目全体は「健康経営優良法人2027|認定基準と申請の全工程」を参照してください。
他社はどこまで実施しているか
令和7年度の健康経営度調査(大規模法人部門)の集計で、仕事と介護の両立支援の各取組を実施している企業の割合は次のとおりです。
| 取組 | 大規模法人での実施率 |
|---|---|
| 担当者の設置等、体制を整備している | 71.1% |
| 社内制度の相談先や相談窓口の活用事例を伝えている | 68.8% |
| 従業員の現在・将来的な介護状況、課題等を把握している | 50.2% |
| 早い段階からプッシュ型で情報提供している | 34.5% |
| 両立支援に取り組むメッセージを経営層から発信している | 33.9% |
| 従業員向けの研修機会を設け、理解度を確認している | 33.0% |
| 担当役員を設置している | 29.8% |
| 管理職向けの研修機会を設け、理解度を確認している | 27.8% |
| 介護を行う従業員が活躍できる戦略が具体化できている | 17.3% |
| 支援充実のため定量的指標を設定し、PDCAを回している | 9.1% |
(出典:経済産業省 第6回健康経営推進検討会 資料、2026年7月14日)
中小規模法人部門(健康経営優良法人2026の申請書集計)では、担当者を置いた体制が31%、経営層のメッセージが28%、介護状況の把握が20%、早期の情報提供が19%、研修と経験談を共有する場がそれぞれ13%でした。
大規模法人でも、体制と相談窓口の周知は7割にあるのに、実態の把握は半分、指標を置いてPDCAを回している企業は1割未満です。制度はあるが誰が介護に直面しているかは分からない、という状態が多数派です。2025年の法改正で個別の周知と40歳時の情報提供が義務になったことで、「誰に」情報を届けるかを把握する必要が生まれ、この差が問われるようになりました。
介護を担うのは、管理職候補と同じ年代の従業員
就業構造基本調査では、介護をしている人629万人のうち女性が395万人、働きながら介護をしている365万人のうち女性が208万人です。男性も157万人で、この5年で50万人増えました。介護は女性だけの課題ではなくなりつつありますが、依然として女性に偏り、そして介護に直面する40代後半から50代は、管理職や管理職候補の年代と重なります。
同じ年代には更年期の課題も重なります。健康面の負担、介護の負担、昇進の判断時期が同じ数年に集中することが、この年代の女性の離職や昇進辞退の背景にあります。介護の両立支援を女性活躍の施策と別に設計すると、この重なりが見えません。更年期側の対応は「更年期と仕事の両立支援|企業が取り組むべき対応とは」と「更年期による女性管理職の離職・昇進辞退——企業が取り組むべき支援策」で扱っています。
実態把握から始める5つの手順
法改正への対応を制度の整備で終わらせず、健康経営度調査の設問に実績で答えるための手順です。
- 匿名サーベイで介護の現状と見込みを把握する。 現在介護をしているか、5年以内に見込みがあるか、両立で困っていることは何か。年代・性別・役職で集計できる設計にし、個人が特定されない粒度で見ます。ここが「介護状況を把握している」の根拠になります。
- 40歳到達時の情報提供を仕組みにする。 法律が求める早期の情報提供を、誕生月に自動で届く案内にします。介護保険の仕組み、社内制度、相談先を1枚にまとめ、「まだ関係ない」と思っている人にも届くようにします。
- 相談窓口を、上司を通さない経路にする。 介護の相談は評価への影響を心配して上司に言いにくいものです。ハラスメント相談窓口の運用(「ハラスメント相談窓口を社内に設置する方法」)と同じように、人事の担当者や外部窓口に直接つながる経路を用意します。
- 管理職の役割を「つなぐ」に限定する。 管理職向け研修では、介護の詳細を聞き出すことではなく、部下の変化に気づいて窓口を案内すること、介護を理由に仕事を外すといった対応がハラスメントにあたることを伝えます(「ケアハラスメントとは?」)。
- 指標を2つ置いて、翌年も測る。 サーベイの「両立に困っている」割合と、介護を理由にした離職者数。この2つの推移を追えば、定量的指標を設定してPDCAを回している企業の9.1%に入ります。
健康経営度調査に書くときの3つの根拠
調査票の選択肢はガイドラインのアクションに沿って整理されているため、手順の1〜5をそのまま実施すれば、選択肢のほとんどに実績で答えられます。書くときは、次の3つを根拠として手元に置いてください。
- 実態把握の記録。 サーベイの実施日、回答率、年代・性別・役職別の集計結果。「従業員の現在・将来的な介護状況、課題等を把握している」の根拠になります。
- 情報提供と研修の記録。 40歳時の案内を送った人数、研修の対象と参加率、理解度確認の結果。プッシュ型の情報提供と研修の項目に対応します。
- 指標の推移。 「両立に困っている」割合と介護を理由にした離職者数の前年比。定量的指標を設定してPDCAを回している、と答えるための数字です。
よくある失敗
制度の整備を対応の完了と考える。 介護休業や短時間勤務の制度はほぼすべての企業にあります。差が出るのは、誰が対象になりうるかを把握し、その人に情報が届いているかです。
介護に直面してから対応する。 介護は突然始まります。40歳時の情報提供と定期的なサーベイで、直面する前に知識と相談先を持ってもらうことが、離職を防ぐ最も確実な手段です。
女性活躍やヘルスケアの施策と切り離す。 介護、更年期、管理職登用は同じ年代に重なります。サーベイの設問も、研修も、相談窓口も、共通の設計にしたほうが従業員には使いやすく、人事にも運用しやすくなります。
実態を聞いて何もしない。 サーベイで困りごとを聞いたのに施策が変わらなければ、次回の回答率が下がります。結果の概要と対応方針を従業員に返すことまでを1サイクルにします。
Floraの支援:Wellflow
Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員向けのヘルスケアアプリと管理職・全社員向けの研修、導入前後を同じ指標で測る効果検証サーベイを組み合わせた健康経営支援サービスです。サーベイでは、健康課題と両立の負荷を年代・性別・役職ごとに把握し、介護・更年期・育児が重なる層を特定します。管理職研修では「つなぐ」役割を具体的に伝えます。結果は個人を特定しない形で集計し、健康経営度調査の実態把握の設問と、女性活躍の施策に共通で使える形でお渡しします。生理痛体験研修とあわせて、これまでに150社以上に導入されています。
まとめ
仕事と介護の両立支援は、健康経営度調査の認定項目であり、2025年4月からは育児・介護休業法で雇用環境の整備、個別の周知と意向確認、40歳時の情報提供が義務になりました。他社の実施状況を見ると、体制と相談窓口の周知は7割にありますが、実態の把握は半分、指標を置いてPDCAを回している企業は1割未満です。
介護を担う従業員の年代は、更年期と管理職登用の年代に重なります。匿名サーベイでの実態把握、40歳時の情報提供の仕組み化、上司を通さない相談経路、管理職の役割の限定、2つの指標の継続測定。この5つを、女性活躍やヘルスケアの施策と共通の設計で進めてください。
---
**Wellflowの資料請求・お問い合わせはこちら → Wellflow**
よくある質問
2025年4月施行の改正で、企業に新たに義務づけられたことは何ですか。
従業員の介護状況を把握するとき、プライバシーはどう守ればよいですか。
健康経営度調査で評価されるには、何から始めるべきですか。





