残業時間の上限規制|2〜6か月平均の数え方と超える前に気づく管理

2026年 9月 11日

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上限規制の数字そのものは、調べれば5分で分かります。実務で事故が起きるのは、その数字をどう数えるかのほうです。時間外労働だけを見て安心していた、月ごとの残高は管理していたが平均は見ていなかった、年度で集計をリセットしていた。どれも珍しくありません。この記事では、残業時間の上限規制でつまずきやすい3つの数え方、適用の対象から外れる人の扱い、そして超えてから気づかないための勤怠管理の組み立て方を整理します。

残業時間の上限規制の全体像

時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合は特別条項付きの36協定で延ばせますが、年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2〜6か月平均で月80時間以内、月45時間を超えられるのは年6か月まで、という4つは超えられません。違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になります。

制度の成り立ちと36協定の届出の実務は「36協定とは?残業時間の上限と特別条項|罰則と実務の進め方を解説」にまとめました。ここから先は、その数字を運用する側の話です。

つまずくのは数え方:3つの落とし穴

時間外労働と休日労働を別々に管理している。 月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の2つは、時間外労働と休日労働を合算して判断します。時間外が44時間なら原則の45時間には収まりますが、法定休日に56時間働いていれば合計100時間で、特別条項の有無に関係なく違反です。勤怠システムの画面が時間外と休日を別の列で表示している場合、合計欄を作らないと誰も気づきません。振替休日と代休の扱いも確認してください。振替休日を事前に指定していれば休日労働になりませんが、事後に代休を与えた場合は休日労働として合算します。運用が曖昧な会社ほど、この差が集計に効いてきます。

平均を1つしか見ていない。 2〜6か月平均とは、2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均のすべてが80時間以内という意味です。6か月平均だけを確認して問題なしと判断すると、直近2か月が突出しているケースを取りこぼします。5通りすべてを毎月計算する必要があります。

年度でリセットしている。 平均の計算は暦の年度と関係なく、直前の月から遡って行います。3月と4月をまたぐ期間も対象です。年360時間や年6か月という枠は協定の対象期間で数えますが、平均のほうは切れ目なく続くと考えてください。

数え方を具体例で見ると分かりやすくなります。ある社員の時間外労働と休日労働の合計が次のように推移したとします。

1月2月3月4月5月6月
時間外+休日605595709085

6月時点で各平均を計算すると、2か月平均は87.5時間となり、この時点ですでに80時間を超えています。3か月平均は81.7時間でこれも超過、4か月平均は85.0時間、5か月平均は79.0時間、6か月平均は75.8時間です。6か月平均だけを見ていれば問題なしと判断してしまいますが、実際には2か月平均と3か月平均で違反しています。5通りをすべて計算する必要がある理由がここにあります。

誰に適用され、誰に適用されないか

区分上限規制の扱い
一般の労働者適用される
管理監督者(労基法第41条)労働時間の規定の適用外で、上限も及ばない。深夜割増と安全配慮義務は残る
裁量労働制の対象者みなし時間が適用されるが、上限規制の対象。みなし時間が長ければ協定の枠を圧迫する
フレックスタイム制清算期間を通じた法定労働時間の総枠を超えた分が時間外労働になる
固定残業代(みなし残業)の対象者手当を払っていても上限は動かない。定額に含まれる時間数と上限は別の話

固定残業代を月45時間分で設計している会社は注意が必要です。手当の設計と上限規制は無関係なので、45時間分を払っているからその手前まで働かせてよい、という運用にすると、特別条項なしで原則の上限に張り付くことになります。

管理監督者についても、役職名で判断していると実態から否定されます。労働時間の裁量、待遇、経営への関与といった要素で見られるため、課長職を一律に管理監督者として上限管理の対象外にしている場合は一度点検してください。

見落としやすいのが副業・兼業をしている社員です。労働基準法は事業場を異にする場合も労働時間を通算すると定めており、自社の勤務と他社の勤務は合算して判断します。自社では月20時間の時間外でも、副業先で40時間働いていれば合計60時間です。副業を許可制にしているなら、許可の段階で他社での見込み労働時間を申告してもらい、通算した上限を管理する必要があります。許可だけ出して時間を把握していない運用が、いちばん危ういところです。

超える前に気づく仕組みをつくる

上限を超えたかどうかを月末に集計して分かる体制では、分かった時点で打つ手がありません。実務としては、手前に線を引いておくのが唯一の対策です。

  • 月の途中で45時間の8割にあたる36時間を超えた時点で、本人と上長に自動で通知する
  • 2〜6か月平均が75時間を超えた部署を月次で洗い出し、翌月の予定を先に減らす
  • 特別条項を使った月数を人ごとに数え、4回目で警告する(上限は年6回)
  • 時間外と休日労働を合算した列を、勤怠の一覧に常設する

通知の宛先に上長を入れるのが要点です。本人だけに送っても、仕事量が変わらなければ結果は変わりません。

もう一段進めるなら、月次の集計は人単位だけでなく、部署単位でも並べてください。個人の超過は本人の頑張りとして処理されがちですが、同じ部署で複数人が手前の線に近づいているなら、それは配分の問題です。人事が把握できるのは部署単位の傾向で、そこから個別に降りていくほうが早く手が打てます。

繁忙期が読める業種であれば、期の初めに特別条項を使う月を先に決めておく方法もあります。使える月数は年6回と決まっているため、行き当たりばったりで消化すると、本当に必要な月に枠が残っていないという事態になります。

超えてしまったときにやること

見つかった時点で時間は戻せません。やるべきことは、事実の確定と再発の防止です。

まず、超過した労働者と月、超えた時間数、時間外と休日労働の内訳を確定します。勤怠の記録と入退館やPCのログが食い違っていないかもここで確認します。記録より実態が長い場合、その差が後から最も大きな問題になります。

次に、長時間労働者への医師の面接指導です。時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合、面接指導を行う義務があります。申出を待たず、対象者に該当した旨を通知する運用にしてください。

そのうえで、原因を業務量、人員配置、業務の進め方のどこにあるかで切り分けます。特定の担当者に集中しているなら配分の問題、部署全体が超えているなら要員か受注量の問題です。「気をつける」で終わらせると翌月も同じことが起きます。

上限を守っていても、辞める人は辞める

ここまでが法令対応です。ただ、上限に収まっていることと、その働き方が続けられることは別です。

Floraが一社の人事データを数年分たどった集計では、月あたりの平均残業時間で層を分けたとき、残業が月5時間未満の層と60時間以上の層で継続意欲は80.2から65.2へと15ポイント下がりました。同じ比較で、ウェルビーイングの指標は63.1から58.3へ5ポイントしか動きません。しかもウェルビーイングは最初のひと山で下がったあとほぼ横ばいになり、継続意欲だけが最後の層まで下がり続けます。60時間以上の層は上限規制には抵触していない範囲ですが、継続意欲は明確に低い水準にあります。

自発的に辞めた人と残った人の人事評価の差は−0.16で、ほとんど差がありませんでした。辞めていくのは評価の低い人ではありません。なお、この集計は各時点の状態を並べたもので、残業が継続意欲を下げたという因果を示すものではありません。継続意欲の低い人が残業の多い部署に残りやすい、という向きでも同じ数字は説明できます。

サーベイの数値が動かないまま人が抜けていく状況は「エンゲージメントサーベイは無駄?形骸化する原因や効果的な活用法を解説」で扱った形骸化とつながっています。表に出ないまま進む離職の兆しは「「大丈夫です」の裏にある離職リスク——静かな離職を防ぐ組織づくり」に、出勤していてもパフォーマンスが出ていない状態の金額換算は「プレゼンティーズムの測定方法:損失額の計算や分析方法から対策まで」にまとめています。

Floraの支援:勤怠と定着を同じ表で見る

Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員が日常的に使うヘルスケアアプリと管理職・全社員向けの研修に、導入前後を同じ指標で測る効果検証サーベイを組み合わせた健康経営支援サービスです。勤怠データを残業時間の層に分け、層ごとに継続意欲とウェルビーイングを並べるところから、どの部署で何が先に動いているかを可視化します。生理痛体験研修とあわせて、これまでに150社以上に導入されています。

まとめ

残業時間の上限規制でつまずくのは、数字ではなく数え方です。時間外と休日労働を合算する、2〜6か月平均を5通りすべて計算する、年度でリセットしない。この3つを勤怠の設計に組み込めば、月末に慌てる場面は減ります。

そのうえで、上限に収まっている層の継続意欲を一度見てください。法令の線と、人が働き続けられる線は同じ場所にありません。自社での進め方は無料相談でご案内しています。

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