ISO30414とは?2025年改訂で69指標・14の要求指標へ|認証の要否と日本企業の使い方

2026年 9月 14日

ISO30414とは、人的資本に関する情報を社内外にどう報告するかを定めた国際規格です。国際標準化機構(ISO)が2018年に初版を出し、2025年8月26日に初めての改訂版(ISO 30414:2025)が発行されました。

改訂で性格が変わりました。初版の副題は「内部および外部への人的資本報告に関するガイドライン」でしたが、第2版は「人的資本報告および開示に関する要求事項および推奨事項」です。指標は58から69に増え、そのうち14が、企業規模を問わず外部に開示する要求指標になりました。日本語の解説記事の多くはまだ「11領域58指標」と書いていますが、その数字は旧版のものです。

この記事では、2025年改訂で何が変わったか、認証を取る必要があるのか、そして有価証券報告書やSSBJ基準といった日本の開示制度とどう重なるのかを整理します。

ISO30414が定めていること:11領域と指標の体系

ISO30414は、人的資本を11の領域に分け、領域ごとに測る指標を示しています。コンプライアンスと倫理、コスト、ダイバーシティ、リーダーシップ、組織文化、組織の健康・安全・幸福、生産性、採用・異動・離職、スキルと能力、後継者計画、労働力の確保といった区分です。2025年改訂でも領域の数は11のままですが、並び順がアルファベット順から意味のある順序に変わり、一部の領域は統合や分割が行われています。

規格が扱うのは、何を測るかと、どう報告するかです。どの水準なら良いかという基準値は定めていません。女性管理職比率が何%なら合格、という種類の規格ではない点は、最初に押さえておくところです。

対象も限定されていません。上場企業だけでなく、あらゆる規模と業種の組織が使える設計になっており、推奨指標は組織の規模に応じて分けられています。

2025年改訂で変わった4点

改訂の要点は4つです。

項目初版(2018)第2版(2025年8月26日)
位置づけガイドライン要求事項および推奨事項
指標数5869(要求14・推奨55)
領域11(アルファベット順)11(順序を変更、一部を統合・分割)
参照した枠組み主に人事領域の実務IFRS S1、米国SECの開示規則、欧州のESRSなどを参照

いちばん大きいのは、要求指標が生まれたことです。初版はすべてが推奨で、どれを出すかは企業の判断でした。第2版では14指標が、規模を問わず内部にも外部にも開示することを求められます。この14は11領域のうち7領域にまたがり、生産性とコストに関する指標が中心です。コンプライアンスと倫理の領域では、人権問題の件数・種類・結果が要求指標に含まれます。

なお、改訂の草案段階では要求指標は17でした。エンゲージメントを含む3指標が最終版で推奨に移り、14に落ち着いています。草案をもとにした解説記事では17と書かれていることがあるので、数字が食い違って見えたときは版を確かめてください。

もう1点、国際的な開示基準を参照して作られたことも実務に効きます。IFRS S1やESRSを見て作られているため、SSBJ基準にもとづく開示の準備と、ISO30414にもとづく整理は、同じデータを別の切り口で並べる作業になります。SSBJ基準の全体像は「SSBJ基準と人的資本開示|2027年3月期からの適用で女性活躍3項目はどう扱われるか」で解説しています。

認証は必須ではない

ISO30414には認証制度があり、国内でも取得を支援するサービスが増えています。ただし、規格に準拠することと、第三者認証を取ることは別です。

ISO30414の要求事項は客観的に評価できる形で書かれているため、規格への準拠に第三者認証は必須とされていません。自己評価で足ります。認証は、対外的に説明する手段のひとつという位置づけです。

判断の目安は、認証を誰に見せるかです。採用市場や海外投資家に対して第三者の裏づけが効く場面があるなら、費用に見合うかを検討する価値があります。社内の指標整備が目的なら、認証を取らずに規格の指標体系だけを使うほうが早く始められます。「ISO30414に取り組む」と「ISO30414の認証を取る」を、社内で最初に分けておくと、話が進みます。

日本の開示制度との重なり

日本企業にとって、ISO30414は義務ではありません。義務は別にあります。

枠組み位置づけ人的資本で求められるもの
有価証券報告書法定開示女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金差異(提出会社と連結子会社それぞれ)
女性活躍推進法・育児介護休業法法定公表法人ごとの公表。有価証券報告書の記載はこの公表値にもとづく
SSBJ基準法定開示(段階適用)ガバナンス・戦略・リスク管理・指標及び目標の4要素
ISO30414任意11領域の指標体系。14の要求指標は規格に準拠する場合に開示

法定3項目の出し方は「人的資本開示の女性活躍3項目|女性管理職比率・男性育休・男女間賃金差異の出し方」にまとめています。

実務で効いてくるのは、同じ指標を複数の枠組みに出すときです。ISO30414の離職率と、有価証券報告書に任意記載する離職率と、健康経営度調査に答える数字は、分母の取り方が違えば別の値になります。届け先を増やすほど、同じ名前の指標が違う数字で社外に出る可能性が上がります。この仕組みは「人的資本開示で数値が不一致になる理由|有報・女活法・健康経営度調査の算定範囲と定義差」で整理しました。

使うとしたら、どこから始めるか

ISO30414の69指標をいきなり全部そろえる必要はありません。実務的な順番は3段階です。

  1. すでに出している数字を、規格の領域に当てはめる。 有価証券報告書、女性活躍推進法の公表、健康経営度調査の回答に使った数字を、11領域のどこに入るかで並べ直します。多くの企業は、この時点で半分近くの領域が埋まります。
  2. 要求指標14のうち、空いているものを確かめる。 生産性とコストの領域は、人事が持っていないデータ(人件費、売上、EBIT)を経理から取る必要があります。誰に聞けば出るかを先に決めます。
  3. 指標ごとに定義を書く。 どの規格に出す数字かで定義が変わるので、指標名だけでは足りません。分母、対象期間、法人の範囲、出向者の扱いまで書いておくと、他の届け先と並べたときに差の理由が説明できます。

この3段階は、人事だけでは終わりません。要求指標の中心である生産性とコストの領域は、人件費・売上・利益といった経理の数字と、人員数という人事の数字を突き合わせて作ります。どちらかの部門が単独で出すと、分母の対象期間や法人の範囲がもう一方とずれます。誰がどの数字を出し、誰が突き合わせるかを、着手前に1枚の表にしておくと手戻りが減ります。

3段階目を飛ばすと、翌年に同じ指標を別の定義で作り直すことになります。指標をどこに載せ、どれを開示に使うかの整理は「人的資本の可視化に何を載せるか|ダッシュボードで開示に使える指標と使えない指標」で扱っています。

よくある誤解

  • ISO30414を取れば人的資本開示の義務を満たせる。 満たせません。法定開示は有価証券報告書と各法にもとづく公表で、ISO30414は任意の国際規格です。
  • 58指標をそろえればよい。 2025年8月の改訂で69になりました。旧版の数字で計画を立てると、要求指標が抜けます。
  • 認証を取らないと規格に準拠したと言えない。 準拠に第三者認証は必須ではなく、自己評価で足ります。
  • 人事だけで完結する。 要求指標の中心は生産性とコストで、人件費や利益の数字が要ります。経理との分担を先に決めます。
  • 基準値がある。 ISO30414は測り方と報告の仕方を定める規格で、何%なら良いという水準は示していません。

Floraの支援:同じ数字を、届け先ごとに説明できる形で

Flora株式会社の「CapLead」は、グループ各社に散在する人的資本の数字を一つの基盤で管理するデータ基盤です。指標ごとの定義レジストリで「何を・どの範囲で数えるか」を固定し、元ファイルの行まで遡れる出典を残し、届け先ごとに「どの数値を・どの根拠で」出したかを一覧にします。ISO30414の領域に並べ直すときも、有価証券報告書やSSBJ基準に出すときも、同じ根拠から出力します。

第三者保証を見据えた整理は「SSBJ基準の第三者保証に備える人的資本データ|2027年3月期までに整える3つのこと」にまとめました。まず30分、貴社グループの指標と届け先をお聞かせください。

まとめ

ISO30414は、人的資本を11領域に分けて報告する国際規格です。2025年8月26日の改訂で、位置づけがガイドラインから要求事項および推奨事項に変わり、指標は58から69に、うち14が規模を問わない要求指標になりました。要求指標は7領域にまたがり、生産性とコストが中心です。

日本企業にとっては任意の枠組みで、認証も必須ではありません。使う価値があるのは、すでに複数の届け先に出している数字を一つの体系に並べ直し、指標ごとに定義を書く作業のほうです。その整理は、SSBJ基準の適用と第三者保証の準備にそのまま使えます。

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