管理職研修のテーマ一覧|部下の健康課題を扱う回のつくり方
2026年 11月 5日

管理職研修とは、課長級以上などの管理職や、これから管理職になる人に、部下のマネジメントに必要な知識と対応の仕方を身につけてもらう研修です。厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査(常用労働者30人以上の7,194事業所が対象、有効回答率54.2%)では、事業所が実施したOFF-JT(職場を離れて行う研修)の内容として「新たに管理職となった者を対象とする研修」が44.3%、「マネジメント」が46.9%でした。テーマを決めるときに迷うのは、評価や育成のような自社の制度の話と、法令や指針が管理職への周知や教育を求めている話が混ざっていることです。この記事では、主なテーマを法令・指針の根拠とあわせて一覧にし、新任管理職研修で扱う順番と、部下の健康課題を扱う回の組み立て方を紹介します。
管理職研修とは:研修が法律上の義務になっている範囲
管理職研修のうち、法律が研修そのものを義務づけているのはごく一部です。建設業や製造業など政令で定める業種では、新たに職長など現場で直接指導・監督する立場に就く人に、計12時間以上の安全衛生教育を行う義務があります(労働安全衛生法第60条、職長等教育)。安全衛生教育の全体像は「安全衛生教育とは|義務となる種類・内容・実施方法を徹底解説」をご覧ください。
それ以外のテーマでは、法令や指針の書きぶりは「管理監督者を含む労働者に周知・啓発する」「研修の実施その他の必要な配慮をするよう努める」「教育研修を行うものとする」「行うことが望ましい」と段階があります。研修はその方法の例として挙げられることが多く、研修を行わないこと自体がすぐに違反になるわけではありません。それでも研修は、周知・啓発を管理職に届ける方法として使いやすく、誰が受けたかの記録も残せます。
実施状況には差があります。令和7年の労働安全衛生調査(実態調査、有効回答8,054事業所)では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は63.0%で、そのうち管理監督者への教育研修・情報提供を行っている事業所は29.1%でした。
管理職研修のテーマ一覧と、法令・指針の根拠
主なテーマと、管理職への周知や教育についての根拠をまとめると次のとおりです。2026年10月1日に改正法が施行され、パワハラの措置義務など一部の条文番号が変わっているため、旧番号も併記しています。
| テーマ | 主な内容 | 根拠と書きぶり |
|---|---|---|
| パワハラ・セクハラ・マタハラの防止 | 会社の方針、言動の線引き、相談を受けたときの対応 | 労働施策総合推進法第31条(2026年9月までは第30条の2)などの措置義務。指針は方針を「管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること」とし、研修・講習を例に挙げる。研修の実施は第32条第2項の努力義務 |
| カスタマーハラスメント | 対処の内容、報告を受けたときの管理職の動き | 2026年10月1日から同法第33条の措置義務。指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は対処の内容を管理監督者を含む労働者に周知し、研修・講習等を例に挙げる |
| メンタルヘルス(ラインケア) | 相談対応、職場環境の改善、職場復帰の支援 | 労働者の心の健康の保持増進のための指針は、事業者は管理監督者にラインによるケアの教育研修・情報提供を「行うものとする」とする |
| 労働時間・長時間労働 | 労働時間の状況の把握、医師の面接指導 | 労働安全衛生法第66条の8の3が労働時間の状況の把握を義務づけ、労働時間適正把握ガイドラインは、自己申告制で労働時間を把握する場合に、実際に労働時間を管理する者への「十分な説明」を求める |
| 育児・介護との両立 | 制度の内容、申出を受けたときの対応 | 育児・介護休業法第22条の雇用環境の整備で、研修は4つの選択肢の1つ。研修を選んだ場合、施行通達は「少なくとも管理職の者については研修を受けたことのある状態にすべき」とする |
| 治療と仕事の両立 | 申出・相談の受け方、支援制度 | 治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)は、管理職に申出や相談への対応方法と支援制度の研修等を行うことが「望ましい」とする |
| 女性の健康 | 月経随伴症状や更年期障害、相談の受け方 | 厚生労働省の事業者向けマニュアル(2026年1月公表)は、管理職研修を「最重要課題の一つ」と位置づける |
| 高年齢者の安全と健康 | 加齢による労働災害リスク、健康問題が経営に及ぼすリスク | 高年齢者の労働災害防止のための指針は、管理監督者への教育を行うことが「望ましい」とする |
| 評価・目標管理、育成、1on1 | 評価の基準、面談の進め方 | 法令上の定めはなく、自社の人事制度にもとづく |
カスタマーハラスメントの措置の詳細は「カスハラ(カスタマーハラスメント)とは|定義・具体例と、2026年10月義務化で企業が講じる措置」、ラインケアは「ラインケアの具体例と実践方法|メンタルヘルス対策をしよう」で扱っています。
新任管理職研修で扱う順番
新任管理職研修では、すべてのテーマを一度に扱うことはできません。部下を持った初日から判断を迫られるものから順に並べると、次のようになります。
- ハラスメント防止とカスタマーハラスメントへの対処。 会社が講じる措置の中心が、方針を管理職に周知することです。部下からの相談や、顧客からの言動の報告を受けたときに何をするかを、最初に押さえます。
- 労働時間の管理。 部下の労働時間の状況を正しく把握し、長時間労働が続く人を医師の面接指導につなぐ流れを確認します。
- 相談の受け方とメンタルヘルス。 話の聴き方、産業保健スタッフとのつなぎ方、休業した人の職場復帰の支援です。
- 評価と育成。 自社の評価制度と面談の進め方です。
- 部下の健康課題と両立支援。 育児・介護、治療、女性の健康、高年齢者への配慮を、制度と相談対応の両面から扱います。
5つ目は後回しになりがちですが、育児・介護休業法の施行通達は、研修を選んだ場合には少なくとも管理職が受講済みであるべきだとしており、早めに計画に入れておく必要があります。
部下の健康課題を扱う回のつくり方
メンタルヘルス、治療と仕事の両立、女性の健康は、テーマは違っても、管理職に求められることの骨組みが共通しています。指針やマニュアルが挙げる内容を並べると、次の5つに整理できます。
| 要素 | メンタルヘルス指針の教育項目 | 女性の健康マニュアルの研修内容 |
|---|---|---|
| 基礎知識 | ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識 | 月経随伴症状や更年期障害等に関する医学的な基礎知識、仕事への影響 |
| 管理職の役割 | 管理監督者の役割及び心の健康問題に対する正しい態度 | 関連する法令(労働契約法、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法等) |
| 相談の受け方 | 話の聴き方、情報提供及び助言の方法 | 傾聴、ハラスメントと受け取られない声かけ |
| つなぎ先 | 事業場内産業保健スタッフ等との連携、事業場外資源 | 社内の休暇・勤務制度、相談窓口、人事や産業保健スタッフとの連携 |
| 個人情報 | 健康情報を含む労働者の個人情報の保護 | 知り得た情報の適切な取り扱いと守秘義務 |
この5つを1回の研修に入れると、テーマを替えても同じ型で回せます。マニュアルは方法として、仮想事例を使ったロールプレイやグループディスカッションで、相談の受付から支援の計画づくり、フォローアップまでを実践的に学ぶことを挙げています。治療と仕事の両立は「治療と仕事の両立支援|制度のつくり方と両立支援プランの実務」、高年齢者は「エイジフレンドリー指針とは|2026年4月の努力義務と、会社が講じる5つの措置」もあわせてご覧ください。
個人情報の扱いは、特に丁寧に扱います。パワハラ指針は、労働者の病歴や不妊治療などの機微な個人情報を、本人の了解を得ずに他の労働者に暴露することを、パワハラに当たると考えられる例として挙げています。部下を気づかったつもりの共有が問題になる場面を、具体例で確認しておくと効果的です。
座学だけでは、見えにくい不調への理解は深まりにくいものです。女性の健康の回では、生理痛を疑似体験してから相談の受け方を話し合う体験型の研修も選択肢になります。形式ごとの違いは「男性管理職向け「女性の健康」研修の選び方|座学・eラーニング・体験型の比較」で比べています。
研修の効果を測る
管理職研修は、実施したことよりも、職場の対応が変わったかで評価します。研修の前後で同じ設問に答えてもらうアンケートで理解度の変化を測り、研修の最後に「明日から何をするか」を一人ひとり書いてもらうと、行動につながったかを後から確かめられます。
受講の記録も残しておきます。育児・介護休業法のQ&Aは、資料や動画を会社の掲示板に載せたり配ったりするだけでは研修を実施したことにはならないとし、オンライン研修の場合は受講管理で受講を担保するよう求めています。誰がいつ受講したかを記録しておけば、新任管理職が未受講のまま現場に出ることも防げます。
よくある失敗
一度きりで終わる。 管理職は毎年入れ替わります。新任管理職研修に組み込み、年に一度は振り返りの回を設けます。
資料の配付で済ませる。 先に触れたとおり、育児・介護休業法の研修では、資料や動画の掲示・配付だけでは研修を実施したことになりません。
古い資料を使い回す。 2026年10月1日の改正法の施行で、パワハラの措置義務の条文は労働施策総合推進法第30条の2から第31条に移り、男女雇用機会均等法でもマタハラの規定などの条文番号が変わりました。カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメントの措置も加わっています。研修資料の根拠の欄を見直してください。
管理職だけで話が完結する。 健康課題の回は、当事者の声や産業保健スタッフの説明があると具体的になります。
Floraの支援:女性の健康の回を、体験から組み立てる
Floraの生理痛体験研修・ワークショップは、生理痛を疑似体験したうえで、専門家の講義と、職場で何を変えるかを話し合うワークを行う60〜90分のプログラムです。管理職研修の中の女性の健康の回として組み込むこともでき、2026年10月時点で100社以上・延べ1万人以上に実施しています(Flora社調べ)。2025年8月から2026年1月に4社で回収した参加者アンケート(計201名、管理職が中心)では、研修全体の満足度が98.5%、「今後の行動を変えようと思った」が98.0%でした(Flora社調べ)。PMS・更年期などの基礎講座や、ラインケアと健康配慮マネジメントの研修と組み合わせることもできます。
まとめ
管理職研修のテーマは、ハラスメント防止、カスタマーハラスメント、メンタルヘルス、労働時間、育児・介護、治療と仕事の両立、女性の健康、高年齢者、そして評価と育成です。研修そのものが法律上の義務になっているのは職長等教育など一部ですが、多くのテーマで法令や指針が管理職への周知や教育を求めており、研修はそれを確実に届ける手段です。
部下の健康課題を扱う回は、基礎知識、管理職の役割、相談の受け方、つなぎ先、個人情報の5つの要素で組み立てると、テーマを替えても同じ型で回せます。2026年10月の改正で変わった一部の条文番号と、加わったカスタマーハラスメントの措置を、資料に反映しておくことも忘れないでください。
よくある質問
管理職研修は法律で義務づけられていますか。
新任管理職研修では、何から扱えばよいですか。
部下の健康課題の研修では、何に気をつければよいですか。





