エイジフレンドリー指針とは|2026年4月の努力義務と、会社が講じる5つの措置

2026年 10月 29日

エイジフレンドリー指針とは、厚生労働省が2026年2月10日に公表した「高年齢者の労働災害防止のための指針」の通称で、高年齢の従業員が安全に働けるよう会社が講じる措置を示したものです。2026年4月1日に施行された改正労働安全衛生法の第62条の2で、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業の管理が事業者の努力義務となり、この指針がその中身を定めています。厚生労働省の集計では、2025年に休業4日以上の労働災害で被災した135,333人のうち、60歳以上は42,318人で31.3%でした。雇用者に占める60歳以上は19.6%なので、働く人の割合よりも被災する人の割合が大きく上回っています。この記事では、指針が求める5つの措置、人事が担うことになる健康と体力の把握、見落とされやすい女性の高年齢労働者、補助金と健康経営度調査との関係を順に確認します。

エイジフレンドリー指針とは

これまでも2020年の「エイジフレンドリーガイドライン」がありましたが、法律に根拠を持たない通知でした。2025年5月14日公布の改正法(令和7年法律第33号)で高年齢者の労働災害防止が法律上の努力義務になり、ガイドラインは2026年3月31日に廃止されて、大臣の指針に置き換わりました。

項目内容
法律労働安全衛生法 第62条の2(高年齢者の労働災害防止のための措置)、2026年4月1日施行
義務の種類努力義務(「措置を講ずるように努めなければならない」)
指針高年齢者の労働災害防止のための指針(公示第1号、2026年2月10日公示、4月1日適用)
通達基発0210第1号(2026年2月10日)。体力チェックの方法例やチェックリストを添付
旧ガイドラインエイジフレンドリーガイドライン(2020年)は2026年3月31日に廃止

法律にも指針にも、「高年齢者」が何歳からかという定義はありません。厚生労働省の統計や補助金の要件では60歳以上が使われているので、社内で対象を決めるときの目安になります。

なぜ今か:数字で見る高年齢労働者の労働災害

厚生労働省の「令和7年 労働災害発生状況」(2026年5月27日公表)によると、休業4日以上の死傷者に占める60歳以上の割合は31.3%で、2006年の15.2%から倍になりました。同じ期間に、60歳以上の雇用者は563万人から1,213万人に増えています。

年齢による差がはっきり出るのは転倒です。100万延べ実労働時間あたりの休業4日以上の死傷者数(度数率)で見ると、2025年の転倒は25〜29歳の0.089に対し、70〜74歳は1.556でした。厚生労働省の公表データをもとにFloraが計算すると、およそ17倍です。

けがをしたあとの休みも長くなります。休業見込みが1か月以上になった人の割合は、19歳以下の30.6%に対し、60代で59.4%、70歳以上で67.2%でした(厚生労働省の公表データをもとにFlora算出)。人が抜ける期間が長いほど、職場の負担も大きくなります。

一方で、取り組みはまだ広がっていません。検討会の報告書が引く令和5年の「労働安全衛生調査(実態調査)」では、エイジフレンドリーガイドラインを知っている事業場は23.1%で、取り組まない理由の最多は「自社の60歳以上の高年齢労働者は健康である」の48.1%でした。

指針が求める5つの措置

指針は、事業者が講じる措置を5つに分けています。

措置主な内容
1. 安全衛生管理体制の確立等経営トップによる方針の表明、安全衛生委員会等での調査審議、担当部署(人事労務部門が担当することも考えられる)、ヒヤリハット事例などからのリスクアセスメント
2. 職場環境の改善照度の確保、階段の手すりと段差の解消、防滑素材や防滑靴、聞き取りやすい中低音域の警報音、涼しい休憩場所、重量物のアシスト機器、身体機能の低下を考えた作業内容の見直し、短時間勤務や隔日勤務、定期的な休憩
3. 健康や体力の状況の把握雇入時と定期の健康診断の確実な実施と結果の説明、体力チェックの継続的な実施、健康や体力の情報の適切な取扱い
4. 健康や体力の状況に応じた対応産業医等の意見を聴いた就業上の措置、業務とのマッチング、治療と仕事の両立支援、運動指導や保健指導などの健康保持増進
5. 安全衛生教育写真や映像を使い時間をかけた教育、未経験の業務に就く再雇用者への丁寧な教育、危険予知訓練、管理監督者への教育

リスクを下げる対策の優先順位も示されています。危険な作業そのものをなくすか変える、手すりや段差の解消など設備で対応する、マニュアルの整備など管理面で対応する、最後に個人用の装備で補う、の順です。安全衛生教育の全体像は「安全衛生教育とは|義務となる種類・内容・実施方法を徹底解説」にまとめています。

健康と体力の把握は、人事の仕事になる

5つの措置のうち、3と4は人事と健康管理の担当者が中心になる部分です。

健康診断は、実施するだけでなく、産業保健スタッフが項目ごとの結果の意味を丁寧に説明することが求められています。健康診断の基本は「会社の健康診断とは|義務・対象者・費用負担を人事担当者向けに解説」をご覧ください。

体力チェックは、主に高年齢者を対象に継続して行うことが望ましいとされ、指針は青年・壮年期から始めることも勧めています。通達は、身体機能の低下が20代、30代から始まるという調査結果に触れ、方法の例として転倒等リスク評価セルフチェック票、ステップテスト、質問紙による全身持久力の評価、文部科学省の新体力テストを挙げています。評価の基準を設けるなら、職務の内容に照らして合理的な水準にします。

注意が要るのは、体力の情報の扱いです。指針は、健康情報等の取扱いの指針を踏まえ、不利益な取扱いを防ぐために本人の同意の取り方などの事業場内の手続きを定めるよう求めています。体力チェックの結果で配置や労働時間を見直すときは、産業医等の意見を聴き、本人の了解を得て、健康管理部門と人事労務部門が連携して進めます。治療を続けながら働く人への対応は、2026年4月の「治療と就業の両立支援指針」に沿います(「治療と仕事の両立支援|制度のつくり方と両立支援プランの実務」)。

通達には、在宅勤務が長く続くと筋力などの身体機能が低下する場合があるという注意もあります。オフィス中心の会社でも、関係のない話ではありません。

女性の高年齢労働者で見落とされやすいこと

年齢と性別で分けると、女性の数字の上がり方が目立ちます。2025年の度数率は、60〜64歳で女性2.35・男性1.74、70〜74歳で女性4.25・男性2.87でした。転倒に限ると、60〜64歳の女性は1.268で、同じ年代の男性0.423の約3倍です。検討会の報告書も、65歳以上の女性の発生率が増加傾向にあると指摘しています。

指針の本文には、更年期や骨粗しょう症という言葉は出てきません。ただ、通達は高年齢者への教育の一環として、骨密度が低いと転倒したときに骨折しやすく労働災害のリスクが高くなること、地域で骨粗しょう症検診を受けられる場合があることを周知するのが望ましいとしています。通達に添付されたチェックリストには、女性特有の健康上の課題への支援として、更年期障害の症状が強い場合の就業上の配慮や産婦人科への受診勧奨、若いうちからの骨粗しょう症の健康教育といった項目があります。

50代の女性の不調を「年齢のせい」で片づけず、転倒しにくい職場と、受診につなげる仕組みの両方から見ることが、指針の5つの措置を実際に効かせることになります。更年期の不調への職場の対応は「更年期世代への対応マニュアル|管理職が知っておくべきこと」で扱っています。年齢を理由にした言動が問題になる場面は「エイジハラスメント(エイハラ)とは」をご覧ください。

エイジフレンドリー補助金(令和8年度)

設備や体力チェックにかかる費用には、国のエイジフレンドリー補助金が使えます。対象は、1年以上事業を行い、労災保険が適用される60歳以上の労働者(役員を除く)が常時1名以上いる中小企業事業者です。

コース補助の対象補助率上限額(消費税を除く)
専門家総合対策コース(第1段階)専門家によるリスクアセスメント4/5第2段階との合計で100万円
同(第2段階)結果を踏まえた設備・装置の導入、転倒防止・腰痛予防のための身体機能チェックや運動指導1/2同上
熱中症対策コース暑熱環境での熱中症予防の装置・装備1/2100万円
コラボヘルスコース健康教育・研修、システム導入、栄養・保健指導など3/430万円

令和8年度の交付申請は11月20日(当日消印有効)までに延長されています。専門家総合対策コースの第1段階は9月30日で締め切られました。予算額に達した場合は期間内でも受付が終わることがあり、交付決定の前に発注したものは対象外です。申請前に厚生労働省のページで最新の状況を確認してください。

健康経営度調査との関係と、Floraの支援

健康経営優良法人2027の大規模法人部門では、評価項目「高年齢従業員の健康や体力の状況に応じた取り組み」がQ49に置かれ、女性の健康のQ47・Q48と並んでいます。通達も、健康経営の観点から健康づくりに取り組むことや、健康保険組合とのコラボヘルスに触れています。2026年10月に改正されたTHP指針は、高年齢者についてこのエイジフレンドリー指針を参照しています(「THP指針とは|2026年10月の改正で加わった二次予防と、会社が見直すこと」)。

FloraのWellflowは、更年期を含む女性の健康について、従業員が学び、相談し、受診につながるための法人向けサービスです。管理職向けの研修や、匿名のサーベイで年代ごとの不調の広がりをつかむこともできます。高年齢の従業員の中でも数字が上がりやすい50代以降の女性の不調を、職場の安全対策と並べて扱いたいときにご相談ください。

まとめ

2026年4月1日の改正労働安全衛生法の施行で、高年齢者の労働災害防止は事業者の努力義務になり、エイジフレンドリー指針がその中身を示しています。2025年の休業4日以上の死傷者の31.3%が60歳以上で、転倒の発生率は70代前半で20代後半のおよそ17倍、けがによる休業も長くなります。

指針の措置は、体制、職場環境、健康と体力の把握、状況に応じた対応、教育の5つです。人事が先に手をつけやすいのは、健康診断の結果説明と体力チェックの仕組みづくり、そして体力の情報を本人の同意のもとで扱う社内手続きです。女性の高年齢労働者については、通達とチェックリストにある骨粗しょう症と更年期の視点も加えてください。

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