プレコンセプションケアとは|国の5か年計画と、企業にできること

2026年 9月 28日

プレコンセプションケアとは、性別を問わず、適切な時期に、性や健康に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行う取り組みです。こども家庭庁による説明です。

「プレコンセプション」という言葉から妊娠を望む人向けの取り組みと受け取られがちですが、こども家庭庁は妊娠を望む人に限られた取り組みではなく、性別やライフステージを問わず、すべての人にとって大切な取り組みだとしています。

2025年5月22日には「プレコンセプションケア推進5か年計画」がまとめられ、その中で企業の役割にも触れられています。この記事では、国の方針で企業に何が期待されているのかと、人事が始められることを整理します。医学的な助言は扱いません。

国の方針での位置づけ

プレコンセプションケアが政府の方針に組み込まれたのは2018年以降です。成育基本法に基づく「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」(令和3年2月9日閣議決定)に盛り込まれ、令和5年3月22日の閣議決定による改定で、「男女を問わず、性や妊娠に関する正しい知識の普及を図り、健康管理を促すプレコンセプションケアを推進する」とされました。

さらに「経済財政運営と改革の基本方針2024」(令和6年6月21日閣議決定)で5か年戦略の策定が盛り込まれ、2025年5月22日に「プレコンセプションケア推進5か年計画~性と健康に関する正しい知識の普及と相談支援の充実に向けて~」がまとめられています。

計画は今後5年間の集中的な取組として、①性や健康に関する正しい知識の普及と情報提供、②一般相談の充実、③医療機関等における専門相談の充実の3本を挙げています。企業が関わるのは主に①で、②の一般相談にも接点があります。

(出典:こども家庭庁 プレコンセプションケアの提供のあり方に関する検討会「プレコンセプションケア推進5か年計画」令和7年5月22日)

なぜ国が動いているのか

計画は背景として国内の課題を挙げています。出生数における低出生体重児の割合は1970年頃から2000年代にかけて増加し、その後9.5%前後で推移しています。その原因のひとつに妊婦のやせの問題があり、20歳代から30歳代の女性のやせは約20%で、中長期的には増加傾向にあるとされています。

あわせて、基礎疾患がある場合や出産年齢が高くなることなどによる周産期リスクの高い妊娠の増加、予期せぬ妊娠の場合に妊産婦の自殺や児童虐待に至る可能性があることも指摘されています。

国際的な経緯としては、2006年に米国疾病管理予防センター(CDC)が概念を提唱し、2012年には世界保健機関(WHO)が定義を示しました。2012年以降、英国やオーストラリア等では国家戦略に取り入れられています。

5か年計画がプレコンセプションケアで企業に期待していること

計画には、自治体・企業・教育機関等での取組のサポートという項目があります。企業に関して書かれているのは、おおむね次の3点です。

講演会の開催。 対象者の「当事者意識」を醸成し、必要な情報提供を行う観点から、企業等において講演会を開催することが有用であるとされています。講演会には医師や助産師等の外部講師の派遣や資料作成が必要になるため、人材育成や資料提供について国がサポートするとされています。

好事例の横展開。 企業等における好事例について、こども家庭庁のホームページ等で紹介するとされています。

プレコンサポーターの育成。 自治体・企業・教育機関等において、性別を問わず、性や健康に関する正しい知識の普及を図り、健康管理を行うよう促す人材を「プレコンサポーター」と位置づけ、育成を進めるとされています。

プレコンサポーターは専門職に限らない

ここは人事にとって重要な点です。計画は、プレコンサポーターについて専門職が中心となって活動する場合もあるが職種に限定されず、研修を修了すれば希望する人は誰でもなることができるとしています。

期待される活動としては、食事・運動・睡眠・飲酒・喫煙等の生活習慣や健康管理に関する知識、妊娠と出産に向けて特に重要となる知識などを発信する機会を企画することが挙げられています。

ただし条件もあります。出前講座や研修の講師等は基本的に専門職が担うことが想定されており、重要な知識の発信や研修の具体的な内容といった専門的な知見を要する企画については、専門職が担うか、プレコンサポーターが専門職でない場合は専門職と連携して行うことが必要とされています。ここでいう専門職は、医師、保健師、助産師、看護師、管理栄養士、養護教諭等が想定されています。

つまり、社内の推進役は人事担当者でも務まりますが、内容そのものを社内で作るのではなく、専門職と組む形が前提になっています。

健康経営の文脈でどう扱うか

プレコンセプションケアは、健康経営の枠組みとも重なります。5か年計画が挙げている発信内容は、食事・運動・睡眠・飲酒・喫煙といった生活習慣と、妊娠・出産に向けて重要となる知識です。前半は既存の健康施策とほぼ同じ領域です。

つまり企業にとっては、新しい施策を一から立てる話ではなく、既存の健康施策に若い世代向けの観点を足す話として扱えます。特定保健指導の対象は原則40歳以上ですが、プレコンセプションケアが対象にしているのはそれより手前の世代です。健診後の保健指導が届かない層に、何を届けているかという問いになります。

若い世代に向けた健康施策は、健康経営優良法人の認定要件でも「ヘルスリテラシーの向上」や「性差・年齢に配慮した職場づくり」として評価の対象になっています。プレコンセプションケアとして独立させるより、これらの項目の中身として設計するほうが、社内の承認も通りやすくなります。

人事が始められること

企業として取り組むときに、最初につまずくのが対象の設定です。妊娠を望む人向けの施策として設計すると、対象が狭くなり、参加した時点で意図が周囲に伝わってしまいます。

計画が「性別を問わず、ライフステージを問わず」と繰り返しているのは、この問題への答えでもあります。実務としては次の順が現実的です。

  1. 既存の健康施策の中に置く。 独立した「妊活支援」として立てず、生活習慣、睡眠、飲酒、喫煙といった既存のテーマと同じ枠で扱います。
  2. 全従業員を対象にする。 性別や年齢で対象を絞らない形にすると、参加が可視化されません。
  3. 外部の専門職と組む。 内容の設計と講師は専門職に委ねます。社内の担当者は企画と運営に回ります。
  4. 相談先を示す。 講演会だけで終わらせず、個別に相談できる先を併せて案内します。計画も一般相談と専門相談の充実を柱に挙げています。

関連する社内制度としては、不妊治療との両立支援が最も近い位置にあります。休暇制度の設計例は不妊治療と仕事の両立支援制度のつくり方に、認定制度との関係はくるみんプラスとはにまとめました。女性のがん検診受診率を上げる取り組みも同じ枠で扱えます(女性のがん検診受診率はなぜ低いのか)。月経や更年期に関する言動の問題は生理ハラ・更年期ハラをご覧ください。

扱うときの注意

医学的な助言を会社が行わないこと。 企業ができるのは知識に触れる機会と相談先の提供までです。個々の健康状態についての判断は専門職の領域です。

妊娠を促す施策に見せないこと。 計画はリプロダクティブ・ヘルス・ライツの視点に基づく提供が求められているとしています。産むことを勧める文脈になると、目的からも外れ、受け手の反発を招きます。

参加を把握しない形にすること。 誰が参加したかが人事に残る設計だと、参加そのものが情報になります。出席確認が必要な場合でも、人事評価や配置の判断に使われないことを明示してください。

「妊活」という言葉に寄せないこと。 社内の告知で妊活と書いた時点で、対象は狭まり、参加の意味も固定されます。5か年計画が使っているのは、性と健康に関する正しい知識という言い方です。告知の言葉をそろえるだけで、参加できる人の範囲が変わります。

相談窓口を健康相談と分けないこと。 プレコンセプションケア専用の窓口を作ると、そこに連絡した事実が情報になります。既存の健康相談の対象に含める形のほうが、実際に使われます。

Floraの支援:専門職と組む部分を引き受ける

計画が求めている形は、社内の推進役と外部の専門職の組み合わせです。人事担当者が企画を持ち、内容と講師は専門職が担う。この後半を社内だけで用意するのは難しいところです。

FloraのWellflowは、月経、更年期、不妊治療を含む健康課題について、従業員向けの研修と相談支援を提供しています。全従業員を対象にした形で設計できるため、対象を絞らずに始められます。

まとめ

プレコンセプションケアは、性別やライフステージを問わず、正しい知識をもとに将来を見据えて健康管理を行う取り組みです。2025年5月22日にこども家庭庁の検討会が推進5か年計画をまとめ、企業での講演会開催、好事例の横展開、プレコンサポーターの育成が示されました。

企業側の実務では、対象を妊娠希望者に絞らないこと、内容は専門職と組むこと、相談先を併せて示すことが要点になります。医学的な助言は企業の役割ではありません。

よくある質問