衛生委員会の議題例|12か月のテーマ表と、2026年度に加えたい議題

2026年 10月 29日

衛生委員会とは、常時50人以上の労働者を使用する事業場に設置が義務づけられている会議体で、従業員の健康障害の防止と健康の保持増進について調査審議し、事業者に意見を述べる場です(労働安全衛生法第18条、同法施行令第9条)。毎月1回以上開くことが決まっているため(労働安全衛生規則第23条)、事務局を担う人事や総務の担当者からは「毎月の議題が思いつかない」「報告を読み上げるだけで終わる」という声がよく聞かれます。議題に迷ったら、法律が審議を求めている事項、毎月の定例報告、季節の行事、その年の制度変更の4つから組み立てると、1年分が無理なく埋まります。この記事では、調査審議事項の全体、12か月のテーマ例、そして2026年度に加えたい女性の健康や高年齢者の議題を、根拠とあわせて紹介します。

衛生委員会とは:設置・構成・開催のルール

まず、運営の基本ルールを確認しておきます。

項目ルール根拠
設置業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場安衛法第18条、施行令第9条
構成議長(総括安全衛生管理者など1名)、衛生管理者、産業医、衛生に関し経験を有する労働者。議長以外の半数は過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の推薦にもとづき指名安衛法第18条第2項・第4項
開催毎月1回以上安衛則第23条第1項
周知開催の都度、遅滞なく、議事の概要を掲示・書面・電子データのいずれかで労働者に周知安衛則第23条第3項
記録委員会の意見と、それを踏まえて講じた措置の内容、その他の重要な議事を記録し3年間保存安衛則第23条第4項
産業医労働者の健康を確保する観点から、必要な調査審議を求めることができる安衛則第23条第5項

安全委員会も必要な事業場は、両方をまとめた安全衛生委員会を1つ設けることもできます(安衛法第19条)。委員の人数に法令の定めはありません。50人未満の事業場には設置義務はありませんが、安全や衛生について関係労働者の意見を聴く機会を設ける必要があります(安衛則第23条の2)。

法律が定める調査審議事項

衛生委員会が調査審議する事項は、安衛法第18条第1項の4つと、それを具体化した安衛則第22条の12項目です。言葉を言い換えて並べると、次のようになります。

  1. 健康障害を防ぐ基本的な対策
  2. 健康の保持増進を図る基本的な対策
  3. 衛生に関わる労働災害の原因と再発防止策
  4. 衛生に関する規程の作成
  5. 衛生に関わるリスクアセスメントとその結果にもとづく措置
  6. 安全衛生計画(衛生の部分)の作成・実施・評価・改善
  7. 衛生教育の実施計画の作成
  8. 化学物質などの有害性の調査と対策
  9. 作業環境測定の結果と評価にもとづく対策
  10. 健康診断などの結果と、それにもとづく対策
  11. 健康の保持増進のための措置の実施計画の作成
  12. 長時間労働による健康障害を防ぐ対策
  13. 精神的健康(メンタルヘルス)の保持増進の対策
  14. 化学物質のばく露防止の措置と、関連する健康診断
  15. 労働基準監督署などから文書で受けた命令・指示・勧告・指導のうち、健康障害の防止に関すること

12か月のテーマは、どれもこのどこかに当てはまります。テーマを決めるときに「何号の議題か」を意識しておくと、議事録が後から読みやすくなります。

毎月の定例議題:法令が報告を求めているもの

テーマとは別に、毎月の会議の前半に置いておきたい定例の報告があります。労働安全衛生法や規則は、次の事項を衛生委員会(または安全衛生委員会)に報告するよう定めています。

  • 産業医から勧告を受けたときは、その内容と、講じた措置または講じようとする措置(講じない場合はその理由)を、勧告後遅滞なく報告します(安衛法第13条第6項、安衛則第14条の3)。
  • 健康診断の結果についての医師の意見、長時間労働者の面接指導やストレスチェック後の面接指導での医師の意見は、衛生委員会への報告などの適切な措置を講じます(安衛法第66条の5、第66条の8、第66条の10)。
  • 産業医が辞任したり解任されたりしたときも、その旨と理由を報告します(安衛則第13条第4項)。

労働者健康安全機構(JOHAS)の「衛生委員会活性化テキスト」も、毎月定例的に話し合うこととして労災の報告と長時間労働の状況を挙げています。面接指導の進め方は「産業医面談とは|義務となる基準・対象者・流れと拒否への対応を解説」、健診後の対応は「健康診断の有所見率とは?計算方法と事後措置の実務」をご覧ください。

衛生委員会の議題・テーマ例:12か月分(2026年度版)

JOHASのテキストにある「月ごとの議事(例)」と、厚生労働省の令和8年度の年間行事予定をもとに、2026年度の制度変更を加えたテーマ例をまとめました。健康診断とストレスチェックの回は、自社の実施時期に合わせて月を動かしてください。

月テーマ例関連する行事・根拠
4月新入社員・異動者の安全衛生ルール、年間計画の確認、高年齢者の労働災害防止エイジフレンドリー指針(2026年4月適用)
5月喫煙対策、熱中症対策の準備世界禁煙デー(5月31日)、禁煙週間、STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(5月1日〜9月30日)
6月熱中症の報告体制と悪化防止の手順の確認、食中毒安衛則第612条の2(2025年6月施行)、全国安全週間の準備期間
7月ストレスチェックの実施方法(実施時期に合わせて)ストレスチェック指針、全国安全週間(7月1日〜7日)
8月長時間労働の状況と対策食品衛生月間
9月健康診断の実施、全国労働衛生週間の準備(職場の総点検)、防災職場の健康診断実施強化月間、自殺予防週間(9月10日〜16日)
10月全国労働衛生週間、メンタルヘルス、THP指針の改正の共有全国労働衛生週間(10月1日〜7日)、世界メンタルヘルスデー(10月10日)
11月過重労働の防止、転倒を防ぐ体力づくり、夏の熱中症対策の振り返り過労死等防止啓発月間、アルコール関連問題啓発週間(11月10日〜16日)
12月ハラスメント防止、感染症対策、年末年始の飲酒職場のハラスメント撲滅月間
1月健康診断結果の見方と事後措置安衛則第22条(健康診断の結果に対する対策)
2月花粉症、化学物質の管理、次年度計画の素案化学物質管理強調月間
3月女性の健康、次年度の年間計画の審議女性の健康週間(3月1日〜8日)、自殺対策強化月間

令和8年度の全国労働衛生週間のスローガンは「ひとりひとりが貴重な人材 心も体も健やかに みんな生き生き健康職場」です。11月の熱中症の振り返りは、厚生労働省の熱中症ガイドライン(2026年3月18日)が、夏の対策の効果を秋や冬に同じ会議体で確認し、翌年に活かすことが望ましいとしていることによります。

JOHASのテキストは、議題がマンネリになる原因として、テーマが決まっていないことや、「衛生に関わること」のように範囲が広すぎてコメントしにくいことを挙げています。年度の初めに12か月分のテーマを決め、各回で「何を決めるか」を1つに絞ると、発言が出やすくなります。

女性の健康を議題にする回のつくり方

女性の健康は、衛生委員会で扱うことに公的な裏づけがあるテーマです。厚生労働省の「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル~事業者向け~」(2026年1月公表)は、衛生委員会等を活用して、相談しやすい職場風土に向けた体制、相談があったときの個人情報の扱い、対応手順と支援制度の3点を労使で話し合うよう求めています。令和8年度の全国労働衛生週間の実施要綱も、準備期間の総点検の項目に「女性の健康課題の理解促進」とこのマニュアルの活用を入れました。

1回の委員会で扱うなら、次の順番が進めやすいでしょう。

  1. 産業医や保健師から、月経関連の症状や更年期症状と仕事への影響を10分ほど説明してもらう。
  2. 健康診断の問診票に2026年4月に加わった女性特有の健康課題の質問について、委託先の健診機関がいつから使うか、「はい」の人数の集計を受け取るかを共有する(詳しくは「健康診断の問診に女性特有の健康課題の質問|2026年追加の1問と人事の準備」)。
  3. 相談窓口の置き場所と、相談内容の記録や共有の範囲を決める。
  4. 生理休暇の運用(名称や半日・時間単位の請求)、時間単位の年次有給休暇、在宅勤務などの制度を確認する。
  5. 管理職向けの研修の時期と対象を決める。

注意したいのは、個人の健康情報を委員会に持ち込まないことです。健診の問診への個々の回答は会社に提供されず、健診機関から受け取れる集計も受診者が10人以上の場合に限られます。部署ごとに細かく分けた数字を議題にすると、少人数の部署では個人が推測されてしまいます。3月の女性の健康週間に合わせるのが自然ですが、健康診断の時期の前に置くのも一案です。

2026年度に議題に加えたい制度の変更

2026年度は、衛生委員会での審議を名指しで求める指針の改正が続きました。自社の委員会でまだ取り上げていないものがないか、確認しておきます。

制度の変更時期委員会で扱うこと
高年齢者の労働災害防止のための指針(エイジフレンドリー指針)2026年4月1日適用高年齢者の労働災害防止対策の調査審議。体力チェックの基準や、体力の情報の扱いのルール
治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)2026年4月から(労働施策総合推進法第27条の3の努力義務)衛生委員会等での調査審議を経た、両立支援の基本方針と事業場内ルールの作成
健康診断の問診票への女性特有の健康課題の質問の追加2026年4月28日の通知健診機関との取り決め、相談体制、情報の扱い
THP指針(健康保持増進のための指針)の改正2026年10月19日適用がん検診や女性特有の健康課題などの受診勧奨(二次予防)の進め方
ストレスチェックの集団分析を個人が識別できない方法で行う規定2027年4月1日施行集団分析の集計単位の見直し
ストレスチェックの50人未満の事業場への義務化2028年4月1日施行50人未満の事業場は、関係労働者の意見を聴く機会で実施方法を話し合う

THP指針は、健康保持増進対策を衛生委員会等を活用して進めるとしており、今回の改正で女性特有の健康課題が二次予防の対象に加わりました。改正の内容は「THP指針とは|2026年10月の改正で加わった二次予防と、会社が見直すこと」、高年齢者の指針は「エイジフレンドリー指針とは|2026年4月の努力義務と、会社が講じる5つの措置」、両立支援は「治療と仕事の両立支援|制度のつくり方と両立支援プランの実務」で詳しく扱っています。ストレスチェックで委員会が審議すべき項目は「ストレスチェックの法律|労働安全衛生法の義務と罰則、実施手順」にまとめています。

健康経営に取り組む会社は、令和8年度の健康経営度調査(大規模法人部門)で、経営層の会議体を問う設問に、安全衛生委員会を健康経営の意思決定の場と位置づけて経営層が参加する、という選択肢が加わったことも押さえておくとよいでしょう。

議題を回すための運営のコツと、Floraの支援

議題の選び方と同じくらい大切なのが、決めたことを残す運営です。安衛則は、委員会の意見と、それを踏まえて講じた措置を記録するよう求めています。各回の最後に「委員会の意見」と「次回までに誰が何をするか」を1行ずつ書いておくと、翌月の定例報告がそのまま埋まり、3月の次年度計画の審議でも1年分を振り返りやすくなります。

テーマによっては、社外の専門家に説明を頼むと議論が深まります。女性の健康の回は、委員の多くが男性で知識に差がある場合に、説明が浅くなりがちです。FloraのWellflowは、月経や更年期について従業員が学び、相談できる法人向けサービスで、管理職向けの研修や、匿名のサーベイによる職場の状況把握も含みます。衛生委員会で女性の健康を扱う回の資料づくりや、委員会で決めた研修の実施をお手伝いできます。

まとめ

衛生委員会は、常時50人以上の事業場で毎月1回以上開き、議事の概要を周知し、委員会の意見と講じた措置を3年間記録する会議体です。議題は、法律が定める調査審議事項、産業医の勧告や医師の意見などの定例報告、季節の行事、その年の制度変更の4つから組み立てると、1年分が埋まります。

2026年度は、エイジフレンドリー指針、治療と就業の両立支援指針、健康診断の問診への女性の健康の質問の追加、THP指針の改正と、委員会での審議を前提にした変更が続きました。年度の初めに12か月のテーマを決め、各回で決めることを1つに絞って、記録を翌月の報告につなげてください。

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