コラボヘルスとは|保険者との連携が健康経営度調査のどこに効くか
2026年 9月 25日

コラボヘルスとは、健康保険組合等の保険者と事業主が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、加入者(従業員・家族)の予防・健康づくりを効果的・効率的に実行することです。厚生労働省が2017年7月に公表した「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」の定義です。
人事から見ると、これは概念というより分担の話です。保険者が保健事業を実施し、事業主が職場環境を整備する。その分担がはっきりしていて、かつ噛み合っている状態をコラボヘルスと呼びます。
この記事では、コラボヘルスが実務として何を指すのか、健康経営度調査と健康経営優良法人の認定要件のどこに現れるのか、そして自社で確認すべきことを整理します。
コラボヘルスの定義と、保険者に求められている6点
厚生労働省は「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」(平成16年7月30日厚生労働省告示第308号)で、保険者に次の6点を求めています。
- 事業主等に対して加入者の健康状況や健康課題を客観的な指標を用いて示すことなどにより、保健事業の必要性についての理解を得るよう努めること
- 事業主等に保健事業の内容・実施方法・期待される効果等を事前に十分に説明した上で、保健事業に参加しやすい職場環境を醸成すること
- 事業主等から加入者に保健事業への参加勧奨をしてもらうこと等について、事業主等の協力が得られるよう努めること
- 職場内禁煙等、加入者が健康づくりに自主的に取り組みやすい環境が職場において実現するよう、事業主等に働きかけること
- 事業主等と役割分担等を含めて十分な調整を行い、効率的な実施に努めること
- 事業主が実施する労働安全衛生法に基づく事業との積極的な連携に努めること
読み返すと、6点のうち5点が「事業主に対して」何かをすることです。保険者側の義務として書かれていますが、相手がいなければ成立しません。事業主が窓口を持っていない会社では、保険者がこれを果たそうとしても空振りになります。
厚生労働省は、この連携によって保険者による「保険者機能の発揮」と事業主による「健康経営の推進」が同時に実現する、と整理しています。
(出典:厚生労働省保険局「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」2017年7月)
実務としてのコラボヘルスは、おおむね3つ
健診データの授受
もっとも基本になるのが、事業主が労働安全衛生法に基づいて実施した健診の結果を保険者に提供することです。保険者はこのデータがないと特定健診・特定保健指導の対象者を把握できません。
逆方向もあります。保険者が持つレセプトや健診のデータを集団単位で分析し、事業主に自社の健康課題を示す流れです。ガイドラインが保険者に求めている1点目が、まさにこれにあたります。
特定保健指導の実施環境
特定保健指導は保険者の事業ですが、実施率は職場環境に大きく左右されます。ガイドラインは、実施率の高い健康保険組合の特徴として、就業時間中の保健指導の実施への配慮、40歳前からの健康づくりの働きかけ、加入者へのわかりやすい情報提供、受動喫煙防止の取組みなどを挙げています。
いずれも保険者だけでは決められません。就業時間中に実施してよいかどうかは事業主の判断です。
ガイドラインは、職場環境が指導の中身より効いてくる理由も示しています。2014年度の特定健康診査の質問票データ(約2,600万人)では、積極的支援に該当した人のうち男性の4〜6割、女性の1〜4割が喫煙者で、喫煙しているかどうかでリスクが1つ増え、保健指導のレベルが動機付け支援から積極的支援に上がっていました。積極的支援は動機付け支援と比べて約3倍のコストがかかるため、職場内禁煙のような環境整備が保険者側のコストにも直結します。
同じデータから、特定保健指導の該当者の6〜8割が20歳の時から体重が10kg以上増加していることも示されています。40歳からの特定保健指導だけでは遅い、という意味であり、40歳未満を対象にした健康づくりは事業主側でしか打てません。
重症化予防と受診勧奨
健診で要医療とされた人が実際に受診しているかを追い、受診勧奨を行う取組みです。ここでも、勧奨の連絡を誰がどの経路で出すのか、就業時間との関係をどうするのかで、事業主の関与が必要になります。
健康経営度調査と認定要件のどこに現れるか
ここが実務で押さえるべきところです。健康経営度調査票の中で「コラボヘルス」という言葉はほとんど使われていません。同じ内容が「健保組合等保険者との連携」という名前の設問群として置かれています。コラボヘルスで検索しても調査票では見つからない、という行き違いが起きやすい箇所です。
大規模法人部門で回答する健康経営度調査には、「健保組合等保険者との連携」という独立した中項目があり、次のような内容を尋ねます。
| 区分 | 調査で問われる内容 |
|---|---|
| 保険者の基本情報 | 保険者の種別 |
| データの授受 | 保険者への従業員の健康診断データの提供 |
| 連携の実態 | 健保組合等保険者との協議・連携 |
このうち「健保組合等保険者との協議・連携」は、健康経営銘柄の選定および健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定に関する要件に紐づく評価項目として位置づけられています。設問番号は年度ごとに動くため、申請の際は当該年度の調査票でご確認ください。
中小規模法人部門でも同じ趣旨が要件に入っています。健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の認定要件では、「組織体制」の中に(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供が必須項目として置かれています。健診データを保険者に渡せる状態にあることが、認定の入口条件になっているということです。
中小規模法人部門ではそもそも、申請の前提として保険者が実施する「健康宣言事業」への参加が必要です。申請の全工程は健康経営優良法人2027|認定基準と申請の全工程、上位認定の仕組みはブライト500とはとホワイト500とはで扱っています。
(出典:経済産業省・ACTION!健康経営「健康経営度調査票」および「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)認定要件」)
自社で確認する4つのこと
- 保険者の種別を正確に把握しているか。 健康保険組合か、協会けんぽか、共済組合か。調査票の最初に聞かれる項目ですが、グループ会社で異なることがあります。
- 健診データを提供しているか、提供できる状態か。 提供の有無だけでなく、どの範囲を、どの経路で渡しているのかを説明できる必要があります。保険者が用意する健診を利用していて、結果が保険者に届いている場合もデータ提供に該当します。
- 協議の場が定期的にあるか。 年1回でも、議事が残る形の協議があるかどうかが問われます。担当者同士の非公式なやり取りだけでは、協議・連携として説明しにくくなります。
- 費用の分担が整理されているか。 保険者が負担した分と事業主が負担した分の切り分けは、健康投資額の集計でも必要になります。詳しくは企業の健康投資額とはをご覧ください。
よくある失敗
保険者に任せきりにする。 特定保健指導の実施率が上がらない理由の多くは、保健指導の中身ではなく、就業時間中に受けられるかどうかといった職場側の条件にあります。実施率だけを保険者の成績として見ていると、打ち手が出てきません。
データを渡して終わりにする。 健診データの提供は入口です。保険者側の集団分析の結果を受け取り、自社の施策に反映するところまで回らないと、調査票の「協議・連携」としては弱くなります。
女性特有の健康課題が分担から漏れる。 月経や更年期に関する課題は、保険者の特定保健指導の枠組みにも、労働安全衛生法の健診にも収まりません。どちらの守備範囲でもないため、連携の議題に乗らないまま放置されやすい領域です。がん検診の受診率も同様で、事業主側の働きかけが効きます(女性のがん検診受診率はなぜ低いのか)。
Floraの支援:分担の隙間に落ちる領域を埋める
コラボヘルスの枠組みは、生活習慣病対策を中心に設計されています。特定健診・特定保健指導という制度がその土台にあるためです。一方で、月経、更年期、不妊治療といった課題は、保険者の保健事業としても事業主の健診としても拾いにくく、結果として分担の隙間に落ちます。
FloraのWellflowは、この領域について従業員向けの相談支援と研修を提供しています。保険者との協議で「うちは何をやっているか」を説明する際に、生活習慣病以外の取組みとして具体的に示せる材料になります。
まとめ
コラボヘルスとは、保険者と事業主が役割を分担しながら連携して、加入者の予防・健康づくりを実行することです。実務としては健診データの授受、特定保健指導の実施環境づくり、重症化予防と受診勧奨の3つが中心になります。
健康経営度調査では「健保組合等保険者との連携」という中項目に置かれ、協議・連携の状況は認定要件に紐づく評価項目です。中小規模法人部門でも、健診データの提供が必須項目として入っています。用語としてのコラボヘルスを探すより、調査票のこの中項目を起点に自社の状態を確認するのが早道です。
よくある質問
コラボヘルスの定義は何ですか。
健康経営度調査に「コラボヘルス」という設問はありますか。
中小企業にもコラボヘルスは関係しますか。
協会けんぽでもコラボヘルスはできますか。





